ストライクウィッチーズ-いつまでも君を-   作:フェネック

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仕事が忙しくて投稿遅れてしまいました、すいません。


#1 着任

1944年.7月.第501JFW基地/隊長執務室

 

 

 

 

「クルト・フラッハフェルト伍長、本日付けで第501統合戦闘航空団隷下、第1ストライカーユニット管理隊へ配属となります」

 

 

空軍整備兵の黒い作業服に身を包む青年、クルトが声を張って着任報告をする。

一方で執務用の椅子に座る彼女、第501統合戦闘航空団(ストライクウィッチーズ)隊長ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐は、着任指令書を片手に目を通しつつ頷く。

 

 

「確認しました。 それにしても......」

 

「僕が来るとは思っていなかった、かな?」

 

「敬語はどうしたの“フラッハフェルト伍長”?」

 

「......失礼しましたヴィルケ中佐」

 

 

ミーナからの指摘をうけたクルトは、視線を少し上に反省の言葉を口に出す。静かになる執務室。そのまま数秒が経って、最初に溜め息を吐き、音を上げ静寂を破ったのは、ミーナだった。

 

彼女が直立不動の姿勢を貫くクルトに「休め」と言う。

 

 

「“ミーナ”でいいわよ、クルト。 それとも、私も貴方を“フラッハフェルト伍長”と、呼べばいいのかしら?」

 

「分かったよ“ミーナ”」

 

 

彼にそう、名前を呼ばれたミーナは、その長髪の赤毛を揺らして微笑みを返した。

 

流石に公私共に「フラッハフェルト伍長」と呼ばれては堪らない様子のクルトは、素直に彼女の要求を呑むとした。

彼は少しだけ姿勢を崩して話を続ける。

 

 

「まさか君が、あの501航空団にいるなんてね」

 

 

あの階段での再会の後、色々と話を訊きたいのであろうミーナにクルトは執務室へと案内された。

窓から夏の日差しが射し込む執務室の中には、クルトとミーナの二人のみで、他には誰もいない。

 

書類を片付けるミーナをクルトが見つめる。

彼からすれば、彼女は最後に会った時と何も変わっていないように見える。

変わった事と言えば、身長や階級だと思うが、彼女の凛とした姿を一目見て、部隊指揮官として様になっているように見えてきたのだ。

 

書類を引き出しの中に収納したミーナにクルトが言う。

 

 

「しかも航空団の隊長、か」

 

「貴方宛に手紙で知らせていたのだけれど?」

 

 

頭の上に?を浮かべ首を傾げるミーナ。それに対しクルトは、バツが悪そうな顔を作る。

 

 

「いや、ここ3年ほどノイエ・カールスラントの実家には戻っていないんだ。今までストライカー関連で各国を行ったり来たりしていたからね。すまない」

 

「いえ、いいのよ。謝る必要なんて無いの。 それに......」

 

「それに?」

 

 

何かを言いかけたミーナにクルトが不思議そうな表情で、言いかけた言葉の続きを待つ。

だが、ミーナはハッとした表情を一瞬浮かべ、慌てた様子で両手をぶんぶんと振って話す。

 

 

「な、なんでもないわ! ただ、貴方が来てくれたらエーリカやトゥルーデも喜ぶかも、と......」

 

「バルクホルン中尉とハルトマン少尉もいるのか?」

 

「今は大尉と中尉よ。この基地が誇るダブルエースよ」

 

「そうか......あの二人もいるのか、此処には」

 

 

クルトが感慨深そうに二人の事を思い出していた。

彼は元々ミーナが以前所属していたJG53(第53戦闘航空団)のユニット管理班にいた。そのエース二人とは欧州大陸からの撤退を目的とした「ダイナモ作戦」以前に知り合い、度々JG53からJG52(第52戦闘航空団)へ、整備の支援に駆り出されていた。

彼が二人のユニットを整備する事もしばしばあった。

 

二人と会う度にハルトマンからはお菓子をねだられ、根負けしてお菓子をあげると、バルクホルンが「カールスラント軍人として弛んでいる!」とか何とか言い、説教が始まるのを思い出したクルトが小さく笑う。

 

「他にも、世界各国のエースたちがこの501に集まっているわ。貴方の腕が試されるわね、クルト」

 

「光栄だね。それで僕を此処に寄越したのか、あの人は」

 

「......ガランド少将ね?」

 

「そうだよ」

 

「ハァ......、だと思ったわ」

 

肩をすくめ、そう答えたクルトにミーナは溜め息を吐く。

執務用の椅子にどっと、もたれ掛かるミーナの姿に、クルトは心中を察し苦笑した。

 

「苦手かい? ガランド少将」

 

彼の言葉に「そうね」と正直に答えるミーナ。

クルトの異動を命じた人物であるガランド少将はミーナと付き合いがあり、苦手とする女性の上官だ。

 

アドルフィーネ・ガランド少将。

カールスラント空軍ウィッチ隊総監を務めており、カールスラント現皇帝フリードリヒ4世からの信任厚い有能な女性将官。既に“あがり”を迎えた元魔女(エクスウィッチ)

今は新型ストライカーの開発という分野で落ち着いている......ように見えて、実はこっそりとネウロイと戦い、撃墜記録を更新している。皇帝から出撃禁止と厳命されているのに関わらずだ。

 

クルトはダイナモ作戦中に負傷、暫くの間、前線から離れる羽目となった。療養生活を終え、復帰した直後に彼は件のガランド少将から呼び掛けを受けた。

『技術試験隊にリハビリを兼ねて来ないか?』と。

彼に軍本部からの復隊命令は来ておらず、宛が無かった。

断る理由も無かったクルトは、原隊であるJG53ユニット管理班から、未だ名前の無い試験隊へ転属となった。其処からは少将の命令により世界各国のストライカー技術や知識を学ぶ為に奔走した。

 

そして501の発足に伴い、指揮官がミーナである事を知っていたガランドに呼ばれ、501行きを命じられたのだ。当のクルトにはミーナがいることなど伝えはしなかった。

 

「あの人には困ったものだわ」

 

「まぁ、いいじゃないか、

現にこうして、ミーナと一緒にいられて僕は嬉しいよ」

 

笑みを浮かべ、そう言うクルト。その言葉を聞いたミーナは、ガタッと、椅子ごと倒れそうになったが、何とか持ち直す。この男はそんな台詞をそう自然と口に出せるのか不思議だ、との思いを含めた視線で彼を凝視するミーナ。

 

「貴方......そういう事はあまり人前では言わないでね?」

 

「うん? 何を?」

 

彼女の忠告に、意味が分かっていないクルトが首を傾げる。ミーナは本日何度目かの深い溜め息を吐く。

 

「ハァ......もういいわ。とりあえずは仕事に戻ってちょうだい。何かあれば、また呼ぶわ」

 

「分かっ......、了解しました、ミーナ中佐」

 

ミーナから下がるよう言われたクルトは、執務室から廊下へ出ると整備班の帽子を被り、駆け足で格納庫へと戻る。その足取りは軽く、しかもその表情は明るい。

 

幼なじみと再び会えたことが、幸福と言わんばかりに笑みを浮かべるクルト。この基地全体を襲う、うだるような暑さも忘れ、彼は軽やかに走る。

 

「さて......早く戻って、この航空団の管理班の作業手順を覚えないとな。各国の精鋭が集まっている、か......」

 

「各ウィッチと、使用ストライカーの確認が優先だな。ウィッチ自身が改造を施している場合も想定しておいて、その後は......」

 

ユニット管理班の整備兵として腕が疼くクルト。彼の、その新しい玩具を買ってもらう前の子供のような姿を見た同僚の整備兵から子供(キンダー)のあだ名を貰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クルトが執務室を出て数分後、

執務室の中では、ミーナがある人物と電話で話していた。

 

『......それで? 何が言いたいんだミーナ中佐?』

 

「彼を送ってきた本当の理由は何ですか?」

 

『早く彼を“撃墜”せよ。では、ダメかな?』

 

「ハァ......」

 

『いや冗談、冗談だよ。ミーナ』

 

日頃から、報告書などの書類整理を行うミーナにとって、この電話の相手との会話は頭痛の原因の一つだった。また一つ、溜め息を吐いた。これで何回目だろうか。

 

カップに注いだコーヒーを一口飲み、気を取り直すミーナ。受話器からは、黙している彼女に心配になって内心焦りまくっている相手が呼び掛けていた。

 

『お、おーい...み、ミーナ......?』

 

「聞こえていますよ、閣下?」

 

少しイラッとした気持ちで応答するミーナ。電話の相手であるガランド少将も、これ以上は刺激をしない方が身の為だとばかりに、ミーナの質問に答え始めた。

 

『く、クルトを501に送った理由、だったわね?』

 

「そうです。この時期に、しかも補充されたのが彼一人のみ。そして、そんな一介の整備兵を転属させた人物が閣下、貴女です。裏があって当然です」

 

『そう断定されると、正直へこむわね』

 

「自業自得です」

 

『相変わらず厳しいわねミーナ。

......彼を其方に送ったのは、501(そこ)が安全地帯だからだ』

 

「安全地帯......? それはどういう......」

 

先ほどのおちゃらけた雰囲気は何処かへ行き、声のトーンを少し抑えたガランドの返答にミーナが訊く。

 

『此処からは機密に触る事だが......聞きたいか?』

 

「勿体ぶらずに言ってください」

 

焦らすように訊ねるガランドにミーナが急かす。

 

『彼......クルトは、世界各地を周りユニット技術や運用に関する知識を得たわ。各国の航空ユニットの知識と言う、蓄積されたノウハウを欲しがる国は多い』

 

「それだけの為に国が?」

 

『特にカールスラントの技術に関して、か。彼が新型ストライカーの試験を行う部隊に居たという事は、既に各国は把握している。要は彼を自国のユニット、兵器開発に利用したいんだろう』

 

『彼が帰国した際に何度か勧誘された、という話を聞いた。喉から手が出るほど彼が欲しいのだろう。最悪、拉致してでも手に入れようとする国もあるかもな』

 

「......」

 

今は戦時下。ネウロイとの戦いに集中すべき筈が、もう戦後を見据えた取り組みに掛かっている各国の思惑に、ミーナは思わず頭を押さえる。

 

互いに戦後の主導権(イニシアチブ)を握りたいが為に、今のうちから新兵器を作っておいて、戦後の外交材料として他国にチラつかせたいのだろう。

 

戦後に“新たなネウロイが現れなければ”の話だが。

 

『どうするミーナ? そちらに置いておくのが迷惑なら他の航空団に......いや、なんなら私の部下に......』

 

再び含み笑いで訊いてくるガランド。この意地の悪い上官に頭を悩まされているミーナだったが、此処で断って彼を戻せばどんな事態になるか予想出来ない。

 

これ以上、クルトを危険な目に遭わせるわけにはいかない、と。そう考えたミーナの決断は早かった。

 

「───彼は此方で預かります。誰にも手は出させません」

 

“誰にも手は出させない”

その言葉を聞いたガランドは満足したようだ。

 

『誰にも渡さないって、言うところじゃないの?今の』

 

「閣下」

 

『すまないすまない。だからそう怒らないでくれ』

 

「まったく......」

 

『ではクルトの事は任せたよミーナ。後はよろしく』

 

「え? ちょ!閣下、まだ話はっ......!」

 

ミーナの話を聞かずして電話を切るガランド。もう一度掛けてみようとするミーナだが、断念した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受話器を置いたガランドは椅子から立ち上がり、執務室の窓から外の景色を眺める。

 

「......今の段階で言えるわけがないな、アレは」

 

チラリと、彼女が視線を机上に向けると、数枚の報告書の紙切れが見えていた。

そのどれもが紙の端に『CLASSIFIED(極秘)』の印鑑が押され、その文書の重要性を物語っていた。

 

「まさか、彼があの計画の一端を担っていたとは......ね。本人は気づかずに利用されていた可能性が高いわね」

 

顎に手を当て考え込むガランド。

 

「やはり彼を501に送ったのは正解だった。だが......」

 

────コンコン

 

執務室内にノック音が鳴り、ガランドが「どうぞ」と返事をする。

 

「失礼します」と言ってドアを開け、入室してきたのは彼女の秘書を務めるウィッチだった。

 

「閣下、そろそろ御準備の方を」

 

「あぁ、もうそんな時間か、すまない」

 

机上の報告書を纏めファイルの中に入れると、秘書と共に足早に執務室を出て行くガランド。

 

だが一枚だけ、机の下に落ちていた文書があった。

その文書のある部分にこう記されていた。

 

 

ウォーロック計画、と......。




OVAでミーナ中佐の活躍を目にしてヒャッハーっと発狂した筆者が通ります。

クルトが着任した日ですが、時期的には第1期第7話の後日ということにします。第8話はあれですが......。

久しぶりに電光超人グリッドマン見たんだが、あまりの懐かしさに涙が出てきた。てか、見本市で出た一発アニメ版を1年アニメで出て欲しいと願った。
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