ストライクウィッチーズ-いつまでも君を-   作:フェネック

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#2 前途多難

第501JFW基地/格納庫/side.クルト

 

場所は執務室から変わり格納庫へと、僕は戻った。

既に昼になり、本来なら昼食の時間なのだが、僕は僕の上司であり先輩でもある整備班長の手伝いをしていた。

 

「クルト、そこにある────」

 

「ボルトですね、幾つですか?」

 

「────4つ頼む」

 

「了解です」

 

整備班長が求めたボルトを4つ、専用の工具箱から取り出すと、ストライカーユニットにかじりつくような態勢で内部の整備点検を行う班長に手渡した。

 

カチャカチャと、部品の音が格納庫内に鳴り渡る以外、この薄暗い格納庫は静寂に包まれていた。

他に作業を行う同僚達は、男性用食堂にて食事中だ。

 

ユニット側面部のアクセスパネルが開いた箇所をのぞき込む整備班長は、内部を走る配線に注意しつつ、手慣れた動作で老朽化した部品を新しい物と交換した。

整備兵を約4年している僕でもその技術に感嘆した。それを食い入るように見ていると不意に班長が僕を呼ぶ。

 

「クルト、お前は暫くの間俺の助手を担当だ」

 

「了解です、班長」

 

「お前は技量が良い。本当なら直ぐにでもワンユニットの専属にさせたいんだが......」

 

「他の整備兵達の機嫌を損ねる、ですか?」

 

そう訊ねると予想通り、班長は「その通りだ」と言った。

新参者である僕の腕がいいからと言って、配属早々そんな大役を抜擢されて、他の整備兵から反感を買うのは、僕自身も避けたい。

 

それに、この班長の助手を務められるという事は、ユニット専属整備兵よりも価値のある重要な仕事だ。今後の整備作業の為にも、班長の技術を学ばなければ。

 

そう考えていると、班長が「よし」と呟いてアクセスパネルを閉じた。ネジでパネルをしっかりと閉める。

 

「まぁ、お前のその性格なら直ぐに他の奴らと仲良くなるだろうから、その時が来れば俺がお前を専属整備兵に指名してやる。それまでは俺の『部下』であり『相棒』だ。頼んだぜ“キンダー”」

 

同僚の整備兵から名付けられた「子供」というあだ名で、班長が呼んだ事に僕は苦笑しつつ言い返す。

 

「そのあだ名はどうにかなりませんかね班長殿?」

 

「そいつは無理な話だな」ケラケラ

 

班長の名前は、ハインツ・メルテンズ。階級は曹長。

ここ第501統合戦闘航空団のストライカーユニット管理隊カールスラント整備班の班長で、ベテラン整備兵の一人。

整備班の中では最古参の人物で、原隊はJG52の第7中隊ユニット管理班。

 

スーパーエースのエーリカ・ハルトマン中尉が、第7中隊に新入りとして着任した時から彼女のユニットの専属整備兵を務めており、彼女からの推薦によりメルテンズ班長は、この501ユニット管理班に転属出来たそうだ。

 

転属後もハルトマン中尉の専属整備兵として任務を遂行しており、今もこうして彼女の愛機であるメッサーシャルフBf109戦闘脚を丁寧に隅々までチェックしている。

 

「整備の小さなミスが、使用するウィッチの命に関わるかもしれないからな。隅々まで怠らないのが俺の性分だ」

 

そう言って、水で濡らした布でユニットの表面についた汚れを綺麗に拭き取るメルテンズ班長。

 

ハルトマン中尉から信頼されている専属整備兵の誇りを持ち、常に彼女が万全の態勢で出撃できるよう、整備という任務を全うする姿勢を見せる班長は整備兵の鏡だ。

 

班長がユニットを拭き終わり、近くの木箱の上に置いていた整備表の項目にチェック済みの印を記入している時だった。僕の背後、格納庫の入り口からコツ、コツと足音が聞こえ始めた。

 

「やっほ~ビンメル。相変わらず頑張り屋だね」

 

のんびりとした口調の声。その声の主を確認しようと後ろを振り返る。

 

メルテンズ班長は“ビンメル”と呼ばれている。

なんでも、メルテンズ班長は少しでも苛ついた時に必ず“ゲビンメル”(クソ野郎)と言うそうだ。

それを聞いたハルトマン中尉が、班長に“ビンメル”とのニックネームを付けた、と同僚から聞いた。

結果、それが班長の通り名となり、班長自身このニックネームを気に入っているようだ。

 

振り返った先、格納庫の入り口付近に一人、僕より頭一つ分ほど背の低いウィッチが立っていた。僕はその子を知っていた。

 

ショートの金髪に青い瞳。

小柄な体型。上半身に着ている黒いジャケットはカールスラント空軍ウィッチに配給されている物で、肩の部分には中尉を表す階級章が縫い付けられている。

 

 

金髪(ブロンド)の女騎士”

 

黒い悪魔(シュヴァルツ・トイフェル)

 

 

そう呼ばれる彼女、エーリカ・ハルトマンは、まだあどけなさが残る顔で僕を見て表情を変えた。

 

「あれ? クルトじゃん! なんで此処にいるのさ」

 

タタタッと、僕の前に駆け寄ってきた彼女が訊ねた。

 

「お久しぶりですね、ハルトマン中尉」

 

「敬語はナシナシ! 前みたいに“フラウ”って呼んでよ」

 

“フラウ”とはカールスラントで「成人女性」を意味とする言葉で、小柄な彼女に同僚や先輩ウィッチ達が「早く大きくなれよ」との思いを込めて付けた愛称だ。

 

彼女とは親しかったので、撤退作戦の間はその愛称で呼ばせてもらっていたが、流石にこの基地内でその呼び名を使うと命が一つや二つあっても足りない気がする。

 

この基地の男達の中にはハルトマン中尉を“天使”と呼ぶ、所謂ファンクラブ的な集まりがあるらしく、そのメンバーにでも目をつけられてしまうと厄介極まりない。

 

「いや......それは────ッ!?」

 

突然、背中に突き刺さるような殺意を感じた。

 

「......」チラッ

 

恐る恐る背後を振り向くと、格納庫の入り口前でこちらを見つめる複数の影が......、食堂から戻ってきたのであろう整備班の仲間たちがそこにいた。

 

誰もがギラギラとした鋭い目で僕たちを......正確には僕だけを見ており、その目はこう語っていた。

 

『後でゆっくりと、話を聞かせろ』

 

「あ、アハハハ......は...」

 

......生きて帰れるだろうか、僕は......。






EMT!EMT!

お久しぶりです。

毎度毎度、亀よりも劣る更新ですいません。
なかなか思うように捗らなかったもので、今回は少し短めとなってしまいましたが、どうでしょうか?

次の更新がいつになるかは不明です。
エースウィッチーズもですが、その鳥は何処へ、とか......のこともありますが、加えて最近、仕事を辞めて再就職したばかりなので、遅くなりそうです。

こんな作品でも待っていただける方がいれば、ありがたいです。

それでは、次回でお会いしましょう。
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