転生したら『海賊狩り』に成り代わっていて、先生をする件   作:ワニノコ

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風紀委員会

 

「社長!ムツキ!ハルカ!早く隠れよう!奴らが来た!」

 

カヨコはいち早く状況を察知し、撤退の準備を始めている。

 

「奴らって?」

 

「うちの風紀の連中だよ!ここまで追ってくるなんて!それもこのタイミングで・・・!」

 

だが、カヨコはこの状況を見て、あることが脳裏によぎった。

 

「いや、こんなタイミングだからこそ・・・!?」

 

そうして便利屋68が物陰に隠れる一方、対策委員会側も状況を完璧に飲み込めていなかった。

 

「まさか、風紀委員会が便利屋を捕まえに来たってこと!?」

 

『まだ分かりません・・・しかし、私たちに友好的とは判断しかねます』

 

「確かに。砲撃範囲内には私たちもいた、あからさまにこっちを狙ったわけじゃないけど」

 

「冗談じゃないっての!便利屋は私たちの獲物なんだから!」

 

だが、ゲヘナの風紀委員会は他校の公認武力集団や、便利屋のような部活とは性質が違う。

一歩間違えれば、政治的な紛争の火種を生みかねない。

 

「それより、ホシノ先輩とはまだ連絡がつきませんか?」

 

『・・・はい。普段なら、ここまで連絡が取れないことはないはずなのに・・・』

 

「じゃあ先生は?」

 

『先生は私が叩き起こして、そちらに向かってもらっています。迷子になっていないといいのですが・・・』

 

それを聞いて、一瞬不安になる対策委員会のメンバーだったが、先生が来てくれると聞いて安心したような表情を浮かべた。

 

「ですが、私たちはどうすればいいのでしょうか?」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

ノノミの疑問に沈黙が流れる。

便利屋を引き渡すというのが最善だが、対策委員会側からすれば納得のいくものではない。

長い沈黙が流れた後、シロコが口を開いた。

 

「他に選択肢はない、風紀委員会を阻止する」

 

シロコの発言に皆驚いているが、背後からシロコの発言を肯定するような声が聞こえた。

 

「シロコの言う通りだ。ここはお前たちのシマでアイツらのシマじゃねぇ。例え風紀委員会だろうが、好き勝手して良い場所じゃねぇからな」

 

対策委員会のメンバーは振り向くと、そこにはシャーレの先生である『ロロノア・ゾロ』が歩いて来ていた。

 

 

 


 

おれはアヤネに叩き起こされ、アロナの案内の元、対策委員会の連中がいる場所に来た。

そして、その場には対策委員会や便利屋68以外にも、ゲヘナの風紀委員会がいた。

多分、ゲヘナの風紀委員会は便利屋68を捕らえに来たんだろう。

だが、そのためだけにこんな大所帯で来るのは疑問の余地が残るが・・・

 

「先生、二日酔いで気持ち悪いんじゃなかったの?」

 

「もう大丈夫だ。ここに来る途中で吐いてきたからな」

 

「吐いたの!?ま、まさか学校の中で・・・」

 

「ちゃんと学校の外だから安心しろ」

 

おれは、一先ず誤解を解いた。

ったく、お前らはおれを何だと思ってんだよ・・・

 

「それよりアヤネ、風紀委員会とやり合っても問題ねぇな?」

 

『・・・はい。便利屋の皆さんが問題を起こしたのは事実です。ですが、先ほど先生が言った通り、他の学園の風紀委員会が私たちに許可もなく、こんな暴挙を敢行していい理由はありません!』

 

「その通りだわ!これは私たちの学校の権利を無視するような真似よ!」

 

セリカの言う通りだな。

ついでに、カタギに手を出した便利屋68に説教をしねぇといけないからな。

おれはそんなことを思いながら、『閻魔』と『三代鬼徹』を鞘から抜くのだった。

 

 

 


 

「アビドスの生徒たち、臨戦態勢に突入しました」

 

風紀委員会であるチナツは対策委員会側の動きを隣にいる銀鏡イオリに報告した。

 

「たかが5人で?こっちは一個中隊級の兵力なのに?」

 

イオリは対策委員会がやっていることに呆れていた。

 

「だけど、売られた喧嘩を買わないなんてことは、風紀委員会としてできない。総員、戦闘準備!」

 

イオリは風紀委員会の構成員に指示を出そうとしたが、慌てた様子の伝令兵が駆け付けてきた。

 

「報告!両手に刀を持った男が物凄い勢いでこちらに突っ込んできています!」

 

「両手に刀を持った男?何だそれ?」

 

イオリは伝令兵の報告の内容に首を傾げていると、チナツが何かを思い出したような表情をした。

 

「刀を持った男・・・まさか、シャーレのゾロ先生!?」

 

「ん?シャーレ?ゾロ?何だそれ?」

 

「シャーレの先生があっちにいるとしたら・・・この戦闘、勝ち目はありません!」

 

「どういうことだ?」

 

イオリはチナツが言ったことに疑問を持っていると、対策委員会のメンバーがすぐそこにまで接近してきた。

 

「アビドス、こちらに接近中。発砲します!」

 

「待ってくだ・・・」

 

チナツが発砲しようとする風紀委員会の構成員を制止しようとした次の瞬間

 

「ぐわっ!」

 

「がはっ!」

 

前方に十数人いた風紀委員会の構成員が斬り飛ばされた。

 

「よぉ、久しぶりだな、チナツ」

 

 

 


 

おれは目の前にいた風紀委員会の構成員を斬り飛ばすと、顔見知りがいたので声をかけた。

すると、その顔見知りであるチナツは少しの沈黙の後、申し訳なさそうに返事をした。

 

「先生・・・こんな形でお目にかかるとは・・・先生がそこにいらっしゃることを知った瞬間、勝ち目はないと判断して後退するべきでした・・・私たちの失策です」

 

「気にすんな。それより、お前らの頭はどこだ?おれはさっさとソイツに『挨拶』してカタギに手を出した便利屋に説教をしねぇといけないんだ。後、何でここにいる?」

 

「そ、それは・・・」

 

『それは私から答えさせていただきます』

 

風紀委員会のイオリってやつが答えるのを渋っていると、どこからか通信が聞こえた。

 

『通信・・・?』

 

「アコちゃん・・・?」

 

「アコ行政官・・・?」

 

『こんにちは、アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します。今の状況について少し説明させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?』

 

行政官か・・・多分、ゲヘナの風紀委員会を引き連れてきたのはコイツだな。

アビドスの権利を無視してまでここに来て、一体何を考えてやがる?

 

「・・・」

 

おれは『閻魔』と『三代鬼徹』を一旦鞘に戻すと、便利屋68のハルカが静かに風紀委員会に忍び寄っているのを見てしまった。

そして、案の定目が合った。

まぁ、今は見逃してやるか。

そしておれたちはアコの説明を聞く前に一つ聞くことにした。

 

「説明の前に、まずはおれたちを包囲している連中に銃を下ろさせたらどうだ?それとも、おれがコイツらの銃を下ろさせねぇといけないのか?」

 

『・・・失礼しました。全員、武器を下ろしてください』

 

アコがそういうと、おれたちを包囲していた風紀委員会の連中は銃を下ろした。

 

「あら・・・」

 

「本当に武器を下ろした・・・?」

 

「・・・」

 

ノノミとセリカは風紀委員会の連中が銃を下ろしたことに驚いているが、シロコは黙って警戒をしている。

他の学園の権利を平気で無視する連中だ。

警戒するのに越したことはない。

 

『先ほどまでの愚行は、私の方から謝罪させていただきます』

 

口先だけの謝罪だな。

イオリはアコの謝罪に対して「命令通りにやった」とアコに抗議しているが、『命令に、『まずは無差別に発砲せよ』なんて言葉が含まれましたか?』に続けて、『他の学園自治区の付近なのだから、その辺りを注意するのは当然でしょう?』と言って論破していた。

 

『失礼しました、対策委員会のみなさん。私たちゲヘナの風紀委員会はあくまで、私たちの学園の校則違反をした方々を逮捕するために来ました。あまり望ましくない出来事もありましたが、まだ違法行為とは言い切れないでしょうし・・・やむを得なかったということでご理解いただけますと幸いです』

 

そして最後にアコは、『風紀委員会としての活動に、ご協力をお願いできませんか?』と聞いてきた。

そんなもん、決まってるだろ。

 

『・・・そうはいきません!他の学校が別の学校の敷地内で、堂々と勝手に戦闘行為をするなんて!自治権の観点からして、明確な違反です!』

 

その通りだな。

いくら風紀委員会でもこんな横暴が許されるわけがねぇからな。

 

『便利屋の処遇は、私たちが決めます!』

 

アヤネの言葉に、他の対策委員会のメンバーも頷いている。

 

『・・・なるほど。では、シャーレの先生。あなたも、対策委員会と同じご意見ですか?』

 

「当たり前だ。それに、仁義を欠いたあのバカ共には大人であるおれが人の道ってのを教えねぇといけないからな」

 

おそらくアイツらは間違って店を爆破させたんだ。

だが、カタギに手を出したのは事実だ。

アイツらに引き渡すのではなく、こっちで教育をしないといけない。

それに、おおよそ見当はついているが、アイツらの背後にいる奴が分かってねぇからな。

 

『そういうわけで、交渉は決裂です!ゲヘナの風紀委員会、あなた方に退去を要求します!』

 

アヤネは通信越しに風紀委員会に向けて言い放った。

 

『・・・これは困りましたね・・・本当は穏便に済ませたかったのですが・・・やるしかなさそうですね?』

 

「・・・あぁ?」

 

アコがそういうと、ゲヘナの風紀委員会の連中は銃を構えたのだが

 

「うわぁ!?」

 

「ぐあっ!?」

 

風紀委員会の連中の背後から便利屋68のハルカが奇襲をしていた。

 

「許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!うあああああああああああっ!」

 

ハルカは錯乱したかのように銃を乱射している。

そしてたまに、気絶した奴の頭に弾丸を何発も撃ち込んでいる。

・・・中々エグいな。

おれがハルカの行動に若干引いていると、後ろから物陰に隠れていた便利屋68が走ってきた。

 

「嘘をつかないで、天雨アコ」

 

カヨコが通信越しのアコに詰め寄ってきた。

嘘だと?

 

「偶然なんかじゃないでしょ、最初からあんたが狙ってたのはこの状況だった」

 

アイツはこの状況を狙っていたのか。

この状況で狙えるもの・・・あぁ、そういうことか。

 

「・・・最初はどうして風紀委員会がここに現れたのか、理解できなかった。風紀委員会が他の自治区まで追ってくる理由、それも私たちを狙って?こんな非効率的な運用、風紀委員長のいつものやり方じゃない。だからアコ、これはあんたの独断的な行動に違いない」

 

そう言われて、アコは黙っている。

アイツの独断的な行動か。

行政官が何やってんだよ。

つまりコイツは、個人的な理由でこの数で来たってわけか。

こんな規模の組織を個人的な理由で動かすとか、バカじゃねぇか。

 

「それに、私たちを捕まえるだけにしては多過ぎる。だけど、他の集団との戦闘を想定していたとすれば、説明がつく。でも、アビドスには全校生徒を集めても5人しかいない・・・それなら結論は一つ」

 

カヨコは少し間を置いて言う。

 

「アコ、あんたの目的はシャーレ。最初から、先生を狙ってここまで来たんだ」

 

カヨコが出した結論に対策委員会のメンバーは驚いている。

やっぱそうか。

それにしても、おれを狙ってか・・・

 

「・・・人気者は辛ぇな」

 

そう呟き、少しだけ口角が上がってしまった。

そして、さっきから黙っていたアコの口が開いた。

 

『・・・あぁ、便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れてました。呑気に雑談なんてしている場合ではありませんね・・・まぁ、構いません』

 

アコがそういうと

 

『12時の方向、それから6時の方向・・・3時、9時・・・風紀委員会のさらなる兵力が四方から集結しています・・・!』

 

風紀委員会の援軍が来た。

援軍か・・・確かに多いな。

 

『・・・少々やりすぎかと思いましたが・・・シャーレを相手にするのですから、これくらいはあっても困らないでしょうし・・・大は小を兼ねると言いますからね☆』

 

「二重の包囲網か・・・」

 

『はい、そうです。それにしても、流石カヨコさんですね。先ほどのお話は正解です。・・・いえ、得点としては半分くらいでしょうか?確かに私は、シャーレと衝突するという最悪のシチュエーションも想定していました。しかし、この状況を意図的に作り出したわけではありません。それだけは信じていただきたいのですが・・・どうやら、難しそうですね』

 

当たり前だろ。

それに、おれを狙ってるんだから、衝突は必須だろうが。

そして、アコは『仕方ありませんね』と言い、ことの顛末を話し始めた。

 

『きっかけは、ティーパーティーでした。ご存知ですよね、ゲヘナ学園と長きにわたって敵対関係にある、トリニティ総合学園の生徒会のことです。そのティーパーティーが、シャーレに関する報告書を手にしている・・・と。そんな話が、うちの情報部から上がってきまして。当初は私も『シャーレ』とは一体何なのか、全く知りませんでしたが・・・ティーパーティーが知っている情報となれば、私たちも知る必要があります。それで、チナツさんが書いた報告書を確認しました」

 

「(遅くないですか・・・?)」

 

チナツが何か言いたげだが、今は気にしないでおこう。

そして、アコは話を続ける。

 

『連邦生徒会長が残した正体不明の組織・・・大人の先生が担当している、超法規的な部活。どう考えても怪しい匂いがしませんか?シャーレという組織は、とても危険な不確定要素に見えます。これからのトリニティとの条約にも、どんな影響を及ぼすのか分かったものではありません。ですからせめて条約が無事締結されるまでは、私たち風紀委員会の庇護下に先生をお迎えさせていただきたいのです。ついでに、居合わせた不良生徒たちも処理した上で・・・といった形で』

 

嘘つけ。

何が庇護下に迎えるだ。

その条約ってのは詳しく知らねぇが、どうせシャーレの権力を使ってゲヘナ側を有利にしようって魂胆が見え見えなんだよ。

 

「ん、状況が分かりやすくなって良いかも」

 

「先生は渡さない!」

 

「酒が出るんだったらついて行ってやっても良いが・・・」

 

「先生は黙って!」

 

セリカに怒られてしまった。

ったく、冗談に決まってるだろ、冗談に。

上の許可なく組織を動かすバカの言いなりになるわけねぇだろうが。

 

『・・・やっぱりこうなりますか。それなら、仕方ありませんね。ゲヘナの風紀委員会は、必要でしたら実力行使をすることもあります。私たちは一度その判断をすれば、一切の遠慮をしません。たった5人で勝てると思ってるんですか?』

 

たった5人か・・・言ってくれるじゃねぇか。

おれは『閻魔』に手を掛けると、どこからか声が聞こえた。

 

「9人よ!」

 

声の聞こえる方向を見ると、アルがそう叫んでいた。

案外、肝が据わっているな。

 

「共闘するのは構わねぇが、儲けはねぇし、後でおれからの説教が待ってるぞ?それでも良いのか?」

 

「構わないわ。それより私はあの生意気な風紀委員会に一発食らわせないと気が済まないわ!」

 

どうやら、便利屋68はやる気みたいだな。

だが、対策委員会側はどうするんだか・・・

 

「よっし、便利屋!この風紀委員会をコテンパンにするわよ!」

 

「先生の矛になってもらう」

 

「先生と一緒に戦います、良いですね?」

 

これなら大丈夫そうだな。

例え和解はしてなくても、目の前に共通の敵がいるんだから、仲間割れは起こさねぇだろ。

 

『まぁ、これはこれで想定していた状況ではありましたが・・・まぁいいでしょう。風紀委員会の恐ろし・・・』

 

「長ぇんだよ」

 

「ぐはっ!」

 

「うわぁ!」

 

おれは『閻魔』を鞘から抜き、前方にいる風紀委員会の連中に斬撃を飛ばす。

 

『なっ・・・!?人が話している途中に攻撃をするなんて卑怯ですよ!』

 

「卑怯?眠てぇこと言ってんじゃねぇよ。ここは戦場だ。隙を見せた奴から死ぬんだよ」

 

ったく、コイツはおれを聖者とでも思ってんのか?

おれはシャーレの先生の肩書を持った『ロロノア・ゾロ』だ。

それ以上でもそれ以下でもねぇ存在だ。

あぁ、それと・・・

 

「一つだけ甘々のお前らに教えといてやるよ。追い詰められた人間ほど、何をしでかすか分からねぇぞ」

 

おれが不敵な笑みを浮かべながらそう言うと、風紀委員会の連中の顔が強張った。

そして、アコは声を少しだけ震えさせて、風紀委員会に指示を出した。

 

『ふ、風紀委員会、攻撃を開始します。対策委員会と便利屋を制圧して、先生を何としてでも確保してください!先生はキヴォトスの外部の人ですが、死ななければそれで構いません!』

 

アコに指示を出されて、一斉に向かってくる風紀委員会の連中。

それを迎え撃つ

ノノミとムツキが左を、ハルカとシロコが右、アルとセリカが後方から狙撃、アヤネが後方支援。そしておれは正面を悠々と歩き、弾丸が飛んできたら斬り落とすか避けるを繰り返す。

そして、弾丸の雨が止んだら、一気に距離を詰めて斬る。

そんなことをしながら歩いていると、おれの歩いた後には数えるのが面倒なぐらいの風紀委員会の連中が倒れていた。

さてと、コイツらに付き合ってるのも飽きて来たところだ。

 

「そろそろ、片をつけるか・・・」

 

「あまり調子に乗るな・・・!」

 

おれは『三代鬼徹』と『和道一文字』に手を伸ばそうとすると、イオリが俊敏な動きで距離を詰め、銃身を持って銃床をおれの脳天に目掛けて振り下ろすが

 

「なっ・・・!?」

 

「・・・惜しかったな」

 

『武装色の覇気』を左手の人差し指に纏わせ、受け止めた。

そして、おれから距離を取った。

おれが指一本で受け止めたことに動揺を隠せないイオリに、おれは不敵な笑みを浮かべながら一つ聞くことにした。

 

「おい・・・聞くがお前、絶対に人を噛まねぇと保証できる"猛獣"に会ったことはあるか?」

 

「は・・・?」

 

「おれは、ねぇな・・・」

 

おれはイオリの真正面から突っ込む。

 

「(な、何だ・・・何でだ・・・!?体が、動かない・・・!?)」

 

「一刀流」

 

おれは『閻魔』を大上段に構える。

 

「(き、斬られる・・・!)」

 

 

『ー"大辰撼"ー』

 

 

おれはイオリを縦一文字に斬りつけ・・・はせず、斬る直前で止めた。

斬る直前に気絶したからな。

おれは対策委員会のメンバーや便利屋を見ると、どこも善戦しているようだ。

そして次に、近くにいる風紀委員会の連中を見る。

 

「・・・次はどいつだ?」

 

おれがそう言うと、風紀委員会の連中は顔を青くし、後退を始める。

いくら風紀委員会といえど、所詮はガキの集まり。

こういう集団をどうにかするのだったら、恐怖を植え付けるのが一番手っ取り早い。

だが、アコはそれを許すほど、甘くはない。

 

『何をやってるんですか!目の前にいる先生を今すぐ確保してください!最悪、死体でも構いません!』

 

アコは風紀委員会の連中に喝を入れる。

無茶苦茶言うなコイツ。

これには近くにいるチナツも頭を抱えて呆れ返っている。

そうしてアコは、追加の兵力を投入してくる。

 

『第八部隊。後方待機をやめて、突入してください』

 

何人来ようが、戦況を変えるつもりはない。

だが、後ろから『風紀委員長』という言葉が聞こえてくる。

そうして後ろを一瞬だけ見ると、便利屋68が撤退の準備をしているようなものが見えた。

 

『ふふっ・・・これ以上は流石に・・・委員長に知られてしまったら、イオリと仲良く反省文ですね・・・では、風紀委員会、攻撃を・・・』

 

『アコ』

 

アコが風紀委員会に指示を出そうとした瞬間、別の通信が聞こえて来た。

 

『ひ、ひ、ヒナ委員長!?』

 

「委員長?」

 

「あ、あの通信相手が・・・?委員長ってことは、風紀委員会のトップ・・・?」

 

アコは通信越しにでも動揺しているというのが分かるぐらい、声を震わせながらヒナっていう名前の委員長に聞く。

 

『い、い、委員長がどうしてこんな時間に・・・?』

 

『アコ、今どこ?』

 

『わ、私ですか?私は・・・そ、その・・・えっと・・・げ、ゲヘナ近郊の市内辺りです!風紀委員のメンバーとパトロールを・・・』

 

コイツ、こんな騒ぎ起こしておいて今さら言い逃れしようってのか?

だが、ヒナは全部知ってるだろうな。

 

『そ、それより委員長はどうしてこんな時間に・・・出張中だったのでは?』

 

『さっき帰ってきた』

 

『そ、そうでしたか・・・!その、私、迅速に処理しなくてはいけない用事がありまして・・・後ほどご連絡いたします!い、今はちょっと立て込んでいまして・・・!』

 

『立て込んでいること、ね・・・それって他学園の自治区で、委員会のメンバーを独断で運用していること?』

 

『・・・えっ?』

 

ヒナは通信越しにそういうと、風紀委員会の連中の背後から歩いて来た。

 

『・・・え、ええええっ!?』

 

動揺しすぎだろ。

さっきまでの威勢はどうしたんだよ・・・

それにしても、ヒナっていう奴・・・コイツの前じゃ他の風紀委員会の連中が霞んで見えるな。

 

「・・・この状況、きちんと説明してもらう」

 

『そ、その・・・これは、素行の悪い生徒たちを捕まえようと・・・』

 

「便利屋68のこと?どこにいるの?」

 

『便利屋ならそこに・・・』

 

だが、便利屋68は見当たらない。

アイツら、ヒナが来るって察して逃げやがったな。

 

『なっ・・・!?さっきまでそこにいたはずなのに・・・!え、えっと・・・委員長、全て説明いたします』

 

「・・・いや、もういい。だいたい把握した。要するに、ゲヘナにとっての不安要素の確認及び排除。そういう政治的な活動の一環ってところね」

 

『・・・』

 

「アコ、私たちは風紀委員会なの。生徒会じゃない。そういうのは『万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)』のタヌキたちにでも任せておけばいい」

 

『ッ・・・』

 

「詳しい話は帰ってから。校舎で謹慎していなさい」

 

ヒナの圧にビビったのか、アコは小さく『はい』と言い、通信を切った。

そうしてヒナはおれたちの方を向く。

 

『こちら、アビドスの対策委員会です。ゲヘナの風紀委員長ですね、この状況については理解されてますでしょうか?』

 

「・・・もちろん。事前通達無しでの他校自治区における無断兵力運用、及び他校の生徒たちとの衝突。・・・けれど、風紀委員会の公務を妨害したのも事実。違う?」

 

ヒナの言葉におれ以外の全員が臆した瞬間、コイツらが頼りにしている奴がやって来た。

 

「うへ〜、こいつはまた・・・すごいことになってるじゃ〜ん」

 

『ほ、ホシノ先輩!?』

 

「ごめんごめん。ちょっと昼寝しててね〜」

 

ホシノが来たことにより、対策委員会のメンバーはいつもの調子に戻った。

 

「もう!こっちはゲヘナのやつらが来て色々大変だったのに!」

 

「でも、もう全員撃退した」

 

「まだ全員ではないですが・・・6割ぐらいは片付けました」

 

ホシノは対策委員会のメンバーと談笑をし終えると、ヒナの方を向いて尋ねた。

尋ねられたヒナは、ホシノを見て色々なことに困惑しているように見えた。

 

「それで、ゲヘナの風紀委員会は便利屋を追ってここまで来たの?」

 

「・・・」

 

「事情はよく分からないけど、対策委員会はこれで勢揃いだよ、ついでに先生もね。改めてやり合ってみる?風紀委員長ちゃん?」

 

ホシノは挑発気味にヒナに尋ねる。

そしてコイツ、おれの名前もついでに入れやがったな。

そんなこと言われたら、参加しねぇといけなくなるじゃねぇか・・・

 

「・・・一年生の時とは随分変わった、人違いじゃないかと思うくらいに」

 

「・・・ん?私のこと知ってるの?」

 

「情報部にいた頃、各自治区の要注意生徒たちをある程度把握してたから。特に小鳥遊ホシノ・・・貴女はね。あの事件の後、アビドスを去ったと思ったけど」

 

あの事件?

もしかして、さっきノノミが言ってたホシノの先輩のことか?

だが、その当事者であるホシノがヒナに事件のことを触れられた瞬間、顔が険しくなり、手に持っている銃を握る力が強くなっていた。

 

「・・・そうか、だからシャーレが・・・」

 

ヒナは何かを察したようにおれの方を見てくる。

そして、一息入れた後、風紀委員会全員に聞こえるように声を張る。

 

「撤収準備、帰るよ」

 

その言葉に風紀委員会の連中と対策委員会のメンバーは驚きの声を上げて困惑する。

さらに、次にヒナが取った行動により、コイツらはさらに困惑する。

ヒナが対策委員会のメンバーとおれに頭を下げたからだ。

 

「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと。このことについては私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドスの対策委員会に対して公式に謝罪する」

 

部下があれなら、その上司もあれだと思っていたが、ヒナは出来るやつみたいだ。

おれはこれ以上の戦闘はないと判断し、『閻魔』を鞘に戻した。

だが、風紀委員会の連中は便利屋をどうするんだ!?っとヒナに聞いていたが、ヒナはひと睨みで黙らせ、撤退の準備をさせていた。

そして、風紀委員会の連中が撤退の準備をしている中、ヒナはおれに近づき、『とあること』を教えてくれた。

そうして風紀委員会はヒナの指揮の元、撤退していった。

それからおれたちもその場で解散になったのだが、シロコがヒナに言われたことを聞いて来た。

 

「・・・先生。風紀委員長が、先生に何か話しかけていたけど・・・何の話?」

 

「・・・」

 

おれはヒナに言われたことを思い返す。

 

『アビドスの捨てられた砂漠・・・あそこで、カイザーコーポレーションが何かを企んでいる』

 

またしてもカイザーコーポレーションか・・・

おれはシロコにこのことを教えた。

 

「後で、みんなの前で話す。シロコも今日は早く家に帰って休んどけ。これから先は、今日以上に忙しくなるかもしれねぇからな」

 

「・・・うん、分かった」

 

シロコは口ではそう言っているが、不安だろうな。

これから先はどうなるんだか・・・

そんなことを思いながら、おれはシャーレに戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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