転生したら『海賊狩り』に成り代わっていて、先生をする件   作:ワニノコ

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発覚

 

「はぁ・・・」

 

便利屋68の事務所でアルは荷物を見つめ、深いため息をついていた。

 

「アルちゃ〜ん、さっきからため息ばっかりだよ?テキパキ荷物運ぼう?」

 

「はぁぁ・・・」

 

ムツキにそう指摘されるが、アルは動く気力がなく、ため息を吐き続けるばかりだった。

 

「え、えっと、これはどこに運べばいいでしょうか?」

 

ハルカは壁にかかった『一日一悪』という文字が書かれた額縁を手に取り、ムツキに尋ねる。

 

「これ?・・・あぁ、アルちゃんが天賦の才を発揮した書道の死骸じゃん、あっちの燃えるゴミでいいよ」

 

「ダメに決まってるでしょ!」

 

アルはハルカから『一日一悪』と書かれた額縁を奪い取り、声を荒げる。

 

「でもこれ、書道の授業の宿題で書いたやつでしょ〜?ほんとに要るの?」

 

「き、きっと10年後には10億円ぐらいの価値が・・・」

 

そう言い掛けるが、アルは力なく床にへたり込んでしまう。

 

「・・・はぁ」

 

「打っても響かないし、元気ないねぇアルちゃん・・・」

 

いつものアルなら、元気の塊みたいな存在なのだが、今日は無気力状態であり、ため息ばかりをついている。

そして、アルの幼馴染であるムツキはその理由を知っている。

 

「社長、どうしたの?」

 

「事務所を引っ越すのがイヤみたい。でも、風紀委員会に場所を知られちゃったし、任務も失敗でクライアントからも狙われるだろうし、仕方ないでしょー?」

 

「結局、アビドスとの戦いも、中途半端な感じで終わったね」

 

カヨコがそう言うと、アルは立ち上がって反論してくる。

 

「し、仕方ないでしょ!一緒に背中を合わせて戦った人たちを今になって狙うなんて・・・そんなの、できるわけないじゃない!」

 

「はぁ・・・拾ったカバンに入ってたお金も、残りは全部あのラーメン屋の修理代として置いてきたし。本当にこの社長は・・・」

 

「う、うるさい!うるさい!だって、だって・・・!ハードボイルドなアウトローは・・・私は・・・」

 

段々と小さくなり、再び床にへたり込んでしまうアルを見て、思わず笑みがこぼれてしまう。

 

「はぁ・・・本当に、手のかかる社長だ」

 

「でも、こういうのがうちのアルちゃんだもんね?一緒にいてすっごい楽しい!」

 

「はい、私もそう思います!だから、元気出してください!私が一番尊敬しているのはアル様ですから!」

 

三人がアルを褒めちぎると、アルは顔が真っ赤になっており、勢いよく立ち上がる。

 

「う、うるさい!分かってるわよ!」

 

そんな感じでアルがやる気をだし、荷物をスムーズに運び終えた。

 

「よっ・・・と!これで全部です!積み終わりました!」

 

ハルカが最後の荷物をトラックの荷台に積み終えた。

 

「じゃあどこに行く?」

 

「まぁ、特に当てもないし、またゲヘナに戻る?」

 

「・・・」

 

アルは名残惜しそうに、今まで事務所だった建物を見つめている。

 

「お前ら、引っ越すのか?引っ越すんだったら、風邪引くなよ?」

 

 

 


 

おれは便利屋68の背後から声を掛けると、驚いた顔をしながらアルが聞いて来た。

 

「な、何で来たのよ!アビドスのことを手伝っている身でしょう!?」

 

「だから何だよ。おれは『シャーレ』の先生であって、アビドスの先生じゃねぇぞ?」

 

「だ、だとしても・・・」

 

アルは反論しようとしてくるが、ムツキが遮って来た。

 

「でもアルちゃん。先生とは仲良くしたくない?」

 

「はい、そうですね。風紀委員会と戦う時も、お世話になりましたし・・・」

 

「悪意があるようには見えないし・・・それに私たちはもう行くんだし、わざわざ敵対しなくてもいいでしょ」

 

ムツキ、カヨコ、ハルカに言われてアルは納得したような顔をしている。

 

「それで、次はどこに行くんだ?」

 

「ま、また別の依頼を求めてちょっと移動するだけよ!」

 

嘘だな。

どうせ金銭問題とか、風紀委員会の連中から逃げるためだろうが、アルの面子が潰れないようにここは気づかないフリでもするか。

 

「・・・それじゃあ、元気にやれよ」

 

「もちろんよ!先生、あなたとは事業パートナーとして協業するのも悪くなさそうだし。ただ、今はうちが忙しくてバタバタしてるから、また今度ね、今度」

 

「まぁ、アビドスに二度と来ないってわけでもないし。ここ、良いところだったからね」

 

「まぁ・・・それはそうだね」

 

「はい、本当に」

 

「も、もちろんまた来るわ、ラーメンを食べに!・・・本当に美味しかった、から」

 

そして、便利屋68はトラックに乗り込んで路地の向こうへと消えていった。

・・・そういえば、何か忘れていると思ったら、アイツらに説教をしてねぇな。

 

「・・・ま、反省はしてるみたいだし、今回は見逃してやるか」

 

 

 


 

便利屋68を見送った後、おれは病院に行ってアヤネとセリカと合流し、柴大将の見舞いに来ていた。

 

「おはようございます、大将。お見舞いに来ました」

 

「大将、大丈夫?」

 

「やぁ、セリカちゃん。それにアヤネちゃんも。こんな早い時間からありがとう」

 

「体は大丈夫なのか?」

 

「あぁ、先生まで。なぁに、ちょっと擦りむいただけだ」

 

明らかに擦りむいたじゃ収まらない傷があるが、セリカとアヤネを心配させないための強がりだろう。

 

「でも・・・お店が・・・」

 

「あぁ、ごめんなセリカちゃん。バイトができなくなって。でも、もうすぐ店を畳む予定だったからな。その予定がちょっと早くなっただけだ」

 

店を畳む?

何でだ?

アヤネとセリカもおれと同じ考えで、その発言に困惑している。

 

「ちょっと前から退去通知を受け取っていてね」

 

「た、退去通知って・・・何の話ですか?アビドス自治区の建物の所有者は、アビドス高校で・・・」

 

「・・・そうか、君たちは知らなかったんだな」

 

柴大将は少し間をおいて語り出した。

 

「何年か前、アビドスの生徒会が借金を返せなくて、建物と土地の所有者が移ったんだ」

 

柴大将の話を聞いて、アヤネとセリカは建物と土地の所有者が移ったことに驚愕していた。

 

「それって、カイザーコーポレーションか?」

 

「うーん・・・そんな名前だったような気もするが・・・悪いな、はっきり覚えてねぇや」

 

「そんな・・・でも、そういうことなら・・・」

 

アヤネが何かを察したかのような顔をして、おれとセリカの方を見る。

 

「セリカちゃん、先生。お二人は先に学校へ戻っていてください。私は確認したいことがあるので、別のところに寄ってから行きます」

 

「何のこと?よく分からないけど・・・私も一緒に行く!」

 

「では、先生は教室に戻っていてください!私たちもすぐに戻りますので!」

 

「分かった。おれも話さねぇといけねぇことがあるから、早く帰ってこいよ?」

 

おれがそういうと、アヤネは「はい」と言い、病室から出ていった。

 

「大将、まだ引退とか考えないでよ!分かった!?」

 

「お、おぉ・・・あっ、そういえば、お店のところにお金が入った変なカバンがあったんだけど、何か知ってるかい?」

 

・・・そのカバンっておれたちが銀行を襲った時に付いて来た副産物みたいなものだよな・・・

あの状況から見て、拾ったのは一番近くにいた便利屋68か?

それなら、色々と納得がいくな。

 

「まぁ、店の再建に使ったら良いんじゃねぇか?」

 

「そ、それが一番良いよ!・・・それじゃあ先生、また後でね!」

 

そう言い残し、セリカはひと足先に病室を出たアヤネを追うのだった。

 

 

 


 

おれは学校に着くと、校門の前にノノミとシロコがいた。

 

「先生、おはようございます」

 

「ん、おはよう」

 

ノノミとシロコに挨拶をされたので、おれは短く「あぁ」と返した。

 

「そういえば、ホシノは?」

 

「ホシノ先輩は多分、学校のどこかでお昼寝中かと・・・」

 

「そうか」

 

何というか、ホシノらしいな。

 

「・・・先生、大将の容体は?」

 

「一応、身体の方は無事だ。だが、それとは別に色々と厄介なことになっている」

 

おれは最後に「全員が集まったら、改めて話す」と言った。

それにシロコとノノミは納得してくれた。

 

「じゃあ、先に入ってるね」

 

シロコはおれたちよりもひと足先に学校へ入って行った。

だが、その背中を見ると、どこか変に思えてしまう。

 

「シロコちゃん、なんだかちょっと・・・変ですね」

 

「・・・だな」

 

「やっぱり、先生もそう思います?」

 

「あぁ。不安を感じているか、焦っている感じかもな」

 

「気のせいだと良いのですが・・・とりあえず、私たちも中に入りましょう」

 

そうしておれたちは学校に入ると、教室の中から大きな物音とシロコがホシノに何かを問い詰めているような声が聞こえた。

朝から何を騒いでいるんだ?

そうしておれとノノミが物音のした教室に入った。

 

「おいお前ら、朝から何を騒いでるんだ?」

 

「ん、その・・・」

 

「一体、何があったんですか・・・?」

 

「・・・ホシノ先輩に、用事があるの」

 

シロコがそう言い、おれはホシノの方を見ると、ホシノは黙っていた。

 

「・・・悪いけど、二人きりにして」

 

「それはダメです☆対策委員会に、『二人だけの秘密♡』みたいなものは許されません。何と言っても、運命共同体ですから」

 

中々、重いことを言うな・・・

おれがそんなことを思っていると、ノノミはシロコに笑顔で詰め寄っていた。

 

「ですので、きちんと状況の説明もしてくれない悪い子には・・・お仕置き☆しちゃいますよ?」

 

「う、うーん・・・」

 

これには、流石のシロコも若干引いている。

そして、さっきから黙っていたホシノが口を開いた。

 

「・・・えっとねぇ、実は、おじさんがこっそりお昼寝をしてたのがバレちゃったんだよね〜。私の怠け癖なんて、今に始まったことじゃないとは思うけど、おじさんもここ最近ちょ〜と寝過ぎだったかも。まぁ、それで叱られちゃったのさ〜」

 

「あ、う、うん・・・」

 

本当か?

朝からあんなに騒いで、内容がお昼寝ってどれだけ寝てたんだよ・・・

 

「それじゃあ、そろそろ集まる時間だし、行こっかー」

 

そうしてホシノは教室から出て行く。

シロコは一瞬だけ、おれの顔を見て教室から出て行った。

それにしたって、ホシノの長々とした弁明は怪し過ぎる。

 

「・・・ホシノの奴、何を隠してやがる?」

 

「何か、言いたくないことがあるみたいですね」

 

どうやら、おれとノノミは同じ意見のようだ。

まぁ、人間誰しも隠し事の一つや二つくらい持ってるものだが、学校に関わることなら早めに言って欲しいな。

 

「おれたちも戻るか。そろそろ、アヤネとセリカが帰ってくるかもしれねぇからな」

 

「そうですね」

 

そうしておれとノノミは教室を出て、いつも集まる教室に戻って来たのだが

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

さっきのアレがあったからかは知らないが、誰も喋ろうとはせず、皆が皆、気まずい思いをしていた。

だが、そこにアヤネとセリカが扉を勢いよく開けて入って来た。

 

「皆大変!これ見て!」

 

「アビドス自治区の関係書類を持って来ました!これを・・・」

 

アヤネが机の上に書類を並べようとするが、この教室の雰囲気を感じ取ったのか、動きが止まった。

 

「・・・な、何?この雰囲気?」

 

「何かあったんですか・・・?」

 

「まぁ、何かはあったが、とりあえずは大丈夫だ。続けてくれ」

 

おれがそう言うと、アヤネは机の上に書類を並べた。

 

「皆さん、まずはこれを見てください!」

 

アヤネはそう言い、アビドス自治区と思われる地図を取り出した。

 

「直近までの取引が記憶されてる、アビドス自治区の土地の台帳・・・『地籍図』と呼ばれるものです」

 

「『地籍図』?それって土地の所有者を確認できる書類か?」

 

「でも、わざわざ書類なんて見なくても、アビドスの土地は当然アビドス高校の所有で・・・」

 

ノノミはアヤネが『地籍図』を見せた意味が分からないのか、アビドスの土地はアビドス高校のものと主張している途中で、セリカが口を挟んできた。

 

「私もさっきまではそう思ってた!でもそうじゃなかったの!」

 

「先生とお見舞いに行った時に、大将から聞いたんです。柴関ラーメンが入っている建物はもちろんのこと、このアビドス自治区のほとんどが・・・私たちの所有していることに、なっていませんでした」

 

アヤネが悔しそうな顔をしながらそう言う。

そして、アヤネの説明にシロコとノノミが驚いている中、ホシノが一枚の書類を手に取る。

 

「・・・これって」

 

「現在の所有者は・・・」

 

「カイザーコンストラクション・・・そう書かれています」

 

やっぱりカイザー、か・・・

 

「カイザーコンストラクション・・・カイザーコーポレーションの系列ですか・・・!?」

 

つまり、アビドスの自治区のほとんどをカイザーコーポレーションが所有しているってことになるな。

 

「・・・柴関ラーメンも?」

 

「・・・はい。大将はそのことを知っていて、ずいぶん前から退去命令が出ていたとかで・・・大将は、元々お店を畳むことを決めていたそうです」

 

この事実を知って話しているアヤネと、聞いているセリカは悲しそうな目をしていた。

一方、知らなかったシロコ、ノノミ、ホシノは驚いていた。

 

「・・・すでに砂漠になってしまった、本来のアビドス高校本館と、その周辺数万坪の荒れ地。そしてまだ砂漠化が進んでいない、市内の建物や土地まで・・・所有権が渡っていないのは、この校舎と、その周辺の一部の地域だけでした・・・」

 

「だが、誰がこんなことをしたんだ?」

 

まさかとは思うが、この中に裏切り者がいるのか?

おれは皆の顔を見ていると、おれの疑問にホシノが答えた。

 

「・・・アビドスの生徒会、でしょ。学校の資産の議決権は、生徒会にある。それが可能なのは普通に考えて、その学校の生徒会だけ」

 

「・・・はい、その通りです。取引の主体は、アビドスの前生徒会でした」

 

なるほど。

それなら筋が通る。

おれはこの中に裏切り者がいないことに安堵していると、セリカが机を叩いて叫んだ。

 

「何やってんのよ、その生徒会の奴らは!学校の土地を売る?それもカイザーコーポレーションに!?」

 

「・・・それぞれの学校の自治区は、学校のもの。当たり前の常識すぎて、借金ばかりに気を取られて、気づくことが出来ませんでした。私の落ち度です・・・」

 

アヤネは責任を感じているのか、俯いてしまっているが、ホシノがフォローを入れる。

 

「それはアヤネちゃんが気にすることじゃないよ。これは対策委員会ができるよりも前のことなんだから」

 

「・・・ホシノ先輩、何か知ってるの?」

 

「あ、そうです!ホシノ先輩も、アビドスの生徒会でしたよね?」

 

「え?そ、そうだったの!?」

 

「確か最後の生徒会の、副会長だったと聞きました」

 

最後の生徒会の規模は分からないが、副会長ってことはそれなりに知っているはずだ。

だが、ホシノから帰って来た返答は・・・

 

「・・・うへ〜、まぁ、そんなこともあったねぇ。2年前のことだし、そもそも私もその辺の生徒会の先輩たちとは、実際に関わりはなかってさー。それに、私が生徒会に入った時には、もう生徒会の人たちはほとんど辞めちゃってたから。その時はもう在校生も二桁になってたし、教職員もいない。授業なんてものは、もうとっくの昔に途絶えていた。そもそも最後の生徒会って言ったって、新任の生徒会長と私の二人だけだったし、引き継ぎの書類と呼べるものもなかったよ」

 

最後にホシノは「とにかく大変だったねー」と言った。

ホシノの返答を聞いて、対策委員会のメンバーは同情の目を向けている。

 

「・・・ホシノ先輩が責任を感じることじゃない。昔の事情は知らないけど、今のアビドスに対策委員会ができたのは、間違いなくホシノ先輩のおかげ」

 

「う、うん・・・?」

 

「・・・ホシノ先輩は怠け者だし、色々とはぐらかしてばっかりだけど、大事な瞬間には絶対に誰よりも前に立ってる」

 

「そうです。セリカちゃんが行方不明になった時、真っ先に先生に助けを求めるように言ったのもホシノ先輩でしたし・・・」

 

「・・・うへ〜、そうだっけ?よく覚えてな・・・」

 

ホシノは照れ隠しか知らねぇが、逃げようとしている。

だが、そんなことをさせるつもりはない。

 

「そうだったな、ホシノはいつも先陣を切ってる」

 

「ホシノ先輩は色々とダメなところもあるけど、尊敬はしてる」

 

それは貶しているのか誉めているのかは分からないが、ホシノの顔が少しだけ赤くなっている。

 

「ど、どうしたのシロコちゃん!?おじさんこういう青春みたいな雰囲気、ちょっと苦手なんだけど!?」

 

「・・・まぁ、なんとなく」

 

「えぇ・・・?」

 

重苦しい雰囲気は、一応なくなった。

だが、話の内容がそれ過ぎたため、アヤネによって話が戻された。

 

「・・・では、どうして前の生徒会は、カイザーコーポレーションなんかにアビドスの土地を売ったんでしょうか?」

 

そんなの、単純なことだろ。

 

「借金返済のためだろ」

 

人間ってのは目先のことで頭がいっぱいになると、少し先のことが見えなくなるからな。

 

「おじさんも先生と同じ意見かなー。最初は借金を返そうとして〜って感じなんだろうな〜」

 

「借金のために、土地を・・・」

 

「はい、私もそう思います。当時の学校の借金は、かなり膨れ上がった状態でした。ですが、、アビドスの土地に高値は付かず、借金を減らすには至らなかった・・・」

 

「完全に悪循環だな」

 

改めて客観視してみると、当時の必死さが見て取れるな。

ただ、どう考えてもおかしい。

最初からどうしようもないって言えばいいのか・・・あぁ、そういうことか。

 

「狙いは、それだったか」

 

「狙い?どういうこと?」

 

「アビドスは、罠に嵌められたんだよ」

 

おれの発言に対策委員会のメンバーは驚いているが、ホシノとシロコは納得したような顔をしていた。

 

「あ〜・・・なるほど、そっか」

 

「・・・アビドスにお金を貸したのは、カイザーコーポレーション」

 

「ということは・・・」

 

「カイザーローンが、学校の手に負えないぐらいのお金を貸して、利子だけでも払ってもらうために土地を売るように仕向ける」

 

これが、大まかな結論だろうな。

どうせ最初は、甘い言葉を吐いて、生徒会側の人間はそれを鵜呑みにしたんだろう。

だが、土地は安値で借金が減るわけがなく、土地が取られるだけで、アビドスがどの道カイザーコーポレーションのものになるってとこだろう。

 

「元々、そういうことになると計算してやってたかもしれねぇな」

 

ここまで頭が切れるのだったら、相手をするのは一筋縄じゃいかねぇかもな。

 

「だいぶ前から計画してたのかもね。それこそ、何十年も前から・・・それくらい、規模の大きな計画だったのかも・・・」

 

仮にそうだとしたら、何で何十年も待つんだ?

忍耐力が高いと言ってしまえばそれまでだが、おれだったら、その大きな計画のためにすぐに取りに行くけどな。

それとも逆に、何十年も待たないといけないような計画だったのか?

 

「何それ!?それじゃあカイザーコーポレーションの奴らに弄ばれてるだけじゃん!生徒会の奴ら、どんだけ無能なわけ!?こんな詐欺みたいなやり方に、騙されて・・・!」

 

「落ち着けセリカ」

 

おれはセリカの言葉を遮るようにそう言った。

 

「悪いのは、騙された側じゃねぇ。騙した側だ。それだけは履き違えるな」

 

おれがそういうと、対策委員会のメンバーは黙った。

そしてセリカは、頬を赤くしながら言い返してくる。

 

「・・・わ、分かってるわよ!私もそういうのには騙されるし、下手したらここの誰よりも分かってる!悪いのは騙した方だってことは!でも・・・」

 

「悔しい、そうだろ?」

 

おれがセリカに聞くと、セリカの目は潤んでいた。

 

「セリカちゃん・・・」

 

「・・・苦しんでいる人たち程、切羽詰まりやすくなっちゃうからね〜」

 

「・・・え?」

 

「切羽詰まると、人は何でもやっちゃうものなんだよ・・・ま、よくある話だけどね。ただそれだけだと思うよ、セリカちゃん」

 

ホシノがセリカをそう諭す。

だが、おれにはどこか含みがあるように聞こえた。

・・・気のせいだといいが。

まぁ、話は戻すが、これでカイザーコーポレーションの目的は金じゃなくて土地だってことが分かったな。

ただコイツらは、カイザーコーポレーションが何故荒れ地と砂漠、砂まみれの廃墟だらけのアビドス自治区を欲しがっているのか疑問に思っているみたいだ。

ヒナが教えてくれたことをコイツらに言うか。

 

「これはヒナが教えてくれたことだが、アビドスの捨てられた砂漠でカイザーコーポレーションが何か企んでいるらしい」

 

おれがそう言い終えると、対策委員会のメンバーは一瞬驚いたが、ヒナが知っていたことや、おれに教えたことに疑問を持っていた。

まぁ、それに関してはヒナ本人にしか分からないが・・・

 

「それなら、実際に行ってみれば良いじゃん!アビドスの砂漠はうちの自治区なんだから!」

 

「ん、そうだね」

 

「いや〜良いこと言うねぇ。ママは嬉しくて泣いちゃいそう。先生、ティシュちょうだい」

 

「これでいいか?」

 

おれは近くにあったポケットティッシュをホシノに渡した。

 

「からかわないでホシノ先輩!あと先生もティッシュ渡さなくていいから!」

 

「あ、あはは・・・ですが、セリカちゃんの言う通りです」

 

「それじゃあ、準備が出来たら行くか」

 

おれがそういうと、全員が返事をした。

そして、各々準備をするために教室を出たのだが、おれが教室を出ると、シロコが声をかけて来た。

 

「・・・先生。出発する前に、ちょっと時間が欲しい。・・・相談したいことがあって」

 

相談、か・・・

まぁ、これも先生としての仕事の一つだな。

おれはシロコに付いて行き、近くの教室に入った。

 

「・・・これ」

 

シロコはおれに封筒みたいなものを渡して来た。

 

「・・・ホシノ先輩のバッグの中から見つけたの」

 

「退部届、か・・・」

 

「うん、書かれてる通りの意味だと思う」

 

「・・・これを知ってるのはおれとシロコだけか?」

 

「先生以外には見せてないし、言ってないけど・・・バッグを漁ったことは、ホシノ先輩にバレてる気がする」

 

バッグを漁った、か。

気軽に犯罪まがいなことをするなよ・・・

 

「一応聞くが、何でバッグを漁ったりした?」

 

「・・・ホシノ先輩があそこまで長い時間席を外すなんて、今までに無かった。それに、先生がいたとはいえ、風紀委員会の時もあんなに遅く来るなんて・・・」

 

「それが引っかかったから、ホシノのバッグを漁ったのか?」

 

おれがそう聞くと、シロコは頷いた。

 

「悪いことをしたのは分かってる。ホシノ先輩からはもちろん、生徒として先生に怒られても仕方ない」

 

「・・・まぁ、一旦これは秘密にしておくか」

 

「・・・うん。先生もわかってると思うけど・・・ホシノ先輩、何か隠し事をしている」

 

「あぁ、そうだな」

 

シロコに関しては、落ち着いたら説教をするとして、ホシノは一体何を考えてるんだ?

おれはそんなことを思いながら、シロコからもらったホシノの退部届を懐に仕舞い、シロコと一緒に準備を終えて校門の前で待っている対策委員会のメンバーと合流するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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