転生したら『海賊狩り』に成り代わっていて、先生をする件 作:ワニノコ
おれたちは現在、アビドス砂漠に来ている。
途中までは電車で行けたが、ここから先は移動手段は自分の足だ。
『少し進めばアビドス砂漠・・・このアビドスにおける砂漠化が進む前から、元々砂漠だった場所です』
アヤネ曰く、ここでは壊れたドローンや警備ロボット、オートマタが徘徊しているらしい。
警備ロボットやオートマタはともかく、壊れたドローンは機能が停止するんじゃないか?
『今は強行突破するしかありません。皆さん、今一度火器のチェックをお願いします』
あやねに通信越しで言われ、対策委員会のメンバーは銃の確認をしている。
おれは問題ないが、コイツらが持っている銃に砂埃が入ったら、戦闘ができなくなるからな。
「アビドス砂漠で、カイザーコーポレーションが一体何を企んでいるのか・・・実際に行って、確かめることにしましょう」
アヤネにそう言われ、おれたちはアビドス砂漠の奥へと向かう。
おれたちが歩いていると、セリカが疑問を口にする。
「・・・けどさ、アヤネちゃん。よく考えると、その情報をくれたのってゲヘナの風紀委員長でしょ。いくら風紀委員長とはいえ、どうして他の学園の生徒が、うちの自宅のことをそこまで知ってるわけ?」
『うーん、あくまで推測に過ぎないけど・・・ゲヘナの風紀委員会はかなり情報収集能力に秀でてるって聞いたことが・・・だから、アビドスみたいな小規模な学校では考えられないような情報網を持ってる、とか・・・?』
「まぁ、そんな感じだろ。それにヒナは元々情報部出身で、今は風紀委員長だ。いろんな情報が入って来ても不思議じゃないだろ」
『・・・そういえばあの時、あちらの行政官が『他の学園の自治区の付近なのだから』っと言っていました。自治区の『中』ではなく、あくまで『付近』、と』
確か、そんなことを言ってイオリを論破していたような気がするな。
『それに・・・『まだ違法行為とは言いきれない」・・・あの言葉も、よく考えてみると・・・最初はてっきり苦しい言い訳かと思っていましたが・・・もしかしたら向こうは本当に、不法侵入の意図は無かったのかもしれません』
アヤネが納得したように話す。
まぁ、不法侵入の意図は無かったのかもしれねぇが、アビドス自治区であることには変わりない。
それに、目的を達成するために交渉をすっ飛ばして戦闘をした。
戦争は究極の外交手段と言われているが、あのアコとかいう行政官はいきなり最終手段を使ってきやがったからな。
「けど、あの時の風紀委員会には、明らかに侵犯行為だと取れる言動が多々あった。あそこがアビドスの所持している自治区かどうかは、そんなに重要じゃない。それに、あのアコの行動は明確な敵対行為。それだけで十分。あの時のアヤネの判断は間違ってない」
シロコもおれと同じ意見みたいだな。
っていうかお前、そんな理論的なことを話せたんだな。
おれはシロコを少しだけ見直した。
『・・・はい、そうですね。ありがとうございます、シロコ先輩。ですが・・・あの行政官は、私たちの知らなかった事実を知っていた。もしくはその可能性がある。そうなると、ゲヘナの風紀委員長が私たちの知らないことを知っているとしても、何もおかしくありません』
「ま、行ってみたらそれも含めて、きっと色々分かるでしょ。セリカちゃんが言ってた通り、直接この目で確かめれば早いんだしさ〜。じゃ、引き続き進むとしよっか〜?」
そして、おれたちはアビドス砂漠の奥へと足を進める。
途中、ガラクタ共と遭遇したが、刀でぶった斬ったり、銃で撃ち抜いたりした。
そんな感じで歩き続けると、砂漠と荒野が混ざった殺風景のような場所に着いた。
多分ここからが、目的の場所だ。
「ここからが、捨てられた砂漠・・・」
「砂だらけの市街地に行ったことはありましたが、ここから先は私も初めてです・・・」
「いや〜、久しぶりだねぇこの景色も」
「先輩は、ここに来たことあるの?」
「うん、前に生徒会の仕事で何度かね〜。もう少し進めばそこにはなんと、かつてアビドスの砂祭りが開かれていたオアシスが!」
「オアシス?こんなところに?」
おれたちは辺りを見渡すが、オアシスどころか、水の面影すらない。
あるのは砂だけだ。
「うん、まぁ今はもう全部干上がっちゃったんだけどね〜。元々はそこんじょらの湖より広くって、船を浮かべれるくらいだったとか。ま、私も実際に見たことはないんだけど〜」
「砂祭り・・・私も聞いたことある。アビドスでは有名なお祭りで、すごい数の人が集まるって」
「そうそう、別の学校からもそのお祭り見たさに人が来るくらいだったからね。ま、砂漠化が進み始めるより何十年も前のことだけど」
「へぇ、今となってはこんな光景になっちゃってるけど、ここでそんなすごいお祭りが・・・?」
「前までは、この辺りも結構住みやすい場所だったらしいよ〜。その時はこんな砂埃もなかったし」
アビドスの砂祭り、か・・・それがアビドスの過去の栄光なんだろう。
この過去の栄光が直接的な原因ではないが、当時の生徒は母校を守るために借金をした。
そして、それを利用した悪い大人は生徒を罠に嵌めて土地を奪った。
おれも悪い大人の部類には入るが、これをやった奴らは越えちゃいけねぇ一線を越えた。
許せねぇな・・・
「アヤネ、目的地はまだか?」
『ゲヘナの風紀委員長が言っていたセクターまでは、もう少し時間がかかりそうです。見たところ、この辺りは特に何も無さそうですが・・・とりあえず、警戒しつつ前進してください』
アヤネににそう言われ、おれたちは前進する。
そしてまた、ガラクタ共と遭遇したが、前回と同じで刀でぶった斬ったり、銃で撃ち抜いたりした。
そして前進し続けると、砂嵐と砂埃が酷くなって来ている。
「それにしても、あのガラクタ共・・・なんでこんな場所で動いてんだよ・・・」
おれは前々から思っていたことを愚痴っていると、アヤネから通信が入った。
『皆さん、前方に何かあります!砂埃ではっきりと姿が見えないのですが・・・!巨大な町・・・?いえ工場、或いは駐屯地・・・?と、とにかく、ものすごい大きな施設のようなものが・・・?』
おれたちには干からびたオアシスしか見えないが、アヤネが言っているのだから、嘘ではないだろう。
おれたちはアヤネの言っているものを肉眼で見るために前へ進むと、本当に施設みたいなものがあった。
「何これ・・・」
「この張り巡らされている有刺鉄線、優に数キロメートル先までありそう・・・」
「工場・・・?石油ボーリング施設、ではなさそうな・・・一体何なのでしょう、この建物は・・・?」
「こんなの、昔は無かった・・・」
ホシノの発言から考えると、二年前はなかった施設だ。
つまり、二年の間で建てられた施設ってことだな。
建物の周りを見ても、割と新しいものだ。
おれは施設を見渡していると、何らかのマークを見つけた。
「お前ら、あれって・・・」
「・・・カイザーPMC」
PMC、か・・・それもカイザーの。
まぁ、PMCってのは予想外だったが、カイザー系列の施設ってのは予想通りではあるな。
『・・・はい。ホシノ先輩の仰る通り、カイザーPMCです』
「まさか、こいつらもカイザーコーポレーションってこと!?」
「みたいだな」
それにしても、何でこんな場所にPMCなんかの基地なんて建てたんだ?
野生のガラクタ共の対策にしては過剰過ぎる。
おれがこの基地を建てた理由を考えていると
(ヴイイイィィィィーーーン!)
基地全体に聞こえるように警報が鳴り響いた。
『大規模な兵力が接近中!こちらを包囲しに来ています!それに、装甲車以外にも戦車やヘリまで・・・!ものすごい数です!包囲が完成する前に離脱してください!まずは急いで、その場から脱出を・・・』
だが、時すでに遅しだ。
おれたちはすでに囲まれてしまった。
そして、アヤネの声が聞こえなくなった。
多分、通信を妨害されたな。
「・・・絶対絶命?」
「包囲されちゃったかー・・・」
「・・・」
おれたちが包囲されていると、前方の兵士たちが整列して道を開け出した。
そして、そこから歩いて来たのは、スーツを着た図体がデカいロボットだった。
「侵入者とは聞いていたが・・・アビドスだったとは」
「な、何よこいつ・・・」
「お前が、カイザーPMCのボスか?」
「察しが良いな、シャーレの先生。だが、正確に紹介すると、カイザーコーポレーション、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事を務めている者だ。今は、カイザーPMCの代表取締役も務めている」
なるほどな。
要するに、アビドスが頭を抱えている問題の全ての元凶。
自ら来てくれるとはありがたいな。
わざわざ探す手間が省ける。
「それはどうでもいいけど、要はあなたがアビドス高校を騙して、搾取した張本人ってことで良い?」
「・・・ほう」
「そうよ!ヘルメット団と便利屋を仕向けて、ここまで私たちをずっと苦しませてきたのはあんたってことでしょ!?あんたのせいで私たちは・・・アビドスは・・・!」
「落ち着けお前ら。確かにコイツは土地を買ったが、合法的な取引で記録でもそう残ってたろ」
おれは感情のままに暴走しそうになった対策委員会のメンバーを止める。
「どうやら、先生は我々に協力的なようだ」
「調子に乗るな。それより、てめぇらはここで何をしてやがる?」
おれは目の前にいるガラクタ野郎を睨みつける。
「まぁ良いだろう。私たちはアビドスのどこかに埋められているという、宝物を探しているのだ」
「宝?」
大の大人が何を言い出すかと思えば、宝探しだと?
冗談も休み休み言いやがれ。
「そんなでまかせ、信じるわけないでしょ!」
「それはそう。もしそうだとすると、このPMCの兵力について説明がつかない。この兵力は、私たちの自治区を武力で占拠するため。違う?」
「・・・数百両もの戦車、数百名もの選ばれし兵士たち。数百トンもの火薬に弾薬。たった5人しかいない学校のために、これほどの用意をするとでも?冗談じゃない。あくまでこれは、どこかの集団に宝探しを妨害された時のためのもの。君たちのために用意したものではない」
ガラクタ野郎は呆れたように首を横に振る。
それにしても、絶対に邪魔されたくないと思うような宝か・・・一体なんなんだ?
「それに、君たち程度、どうとでもできるのだよ・・・例えば、こういう風にな」
そう言い、ガラクタ野郎は携帯を取り出してどこかへ連絡する。
「残念なお知らせだ。どうやら、君たちの学校の信用が落ちてしまったそうだよ」
信用が落ちた?
何のことだ?と思っていると、アヤネの通信が回復した。
『皆さん、大変です!』
アヤネは通信越しで叫び、そっちに掛かってきた電話の内容を話した。
内容は、変動金利を3000%上昇させられた。
よって、来月以降の利子の金額は9130万円になったらしい。
・・・滅茶苦茶だな。
「ちょっ、本気で言ってんの!?」
「あぁ、本気だとも。しかしこれだけでは面白みに欠けるか・・・そうだな、9億円の借金に対する保証金でも貰っておくとしよう。一週間以内に、我がカイザーローンに3億円を預託してもらおうか」
そして最後に、「この利率でも借金返済できるということを、証明してもらわねばな」と抜かしやがった。
ホント、滅茶苦茶だな。
闇金業者が滅茶苦茶言うのは当然だが、度が過ぎるな。
それにコイツらは、利子を払うだけでもやっとだ。
詰み、か・・・?
「・・・みんな、帰ろう。これ以上ここで言い争っても意味が無い、弄ばれるだけ」
ホシノはそう言い、ガラクタ野郎から背を向け、歩き出した。
「ほう・・・流石は副生徒会長、君は賢そうだな。・・・あぁ、思い出したよ。賢そうな君と一緒にいた、あの全くもってバカな生徒会長のこともな」
「ッ・・・!」
ガラクタ野郎にそう言われ、ホシノは目を見開き、手に持っていた銃を向けた。
「挑発に乗るな、ホシノ。自分の口で言ったことを忘れたのか?」
「・・・」
ホシノは銃を下ろした。
「では、保証金と来月以降の返済についてはよろしく頼むよ。お客様。ふふっふははははは・・・!」
コイツ・・・初めからこの機会を待ってやがったな。
解決の糸口を見つめたと、おれたちが思った瞬間を。
だが、これはヒナの情報提供があろうがなかろうが起こっていたことだ。
腹を括るしか無い。
「存外悪くない時間だったな。さぁ、お客様を入り口まで案内して差し上げろ」
おれたちは帰路についた。
コイツらは最悪な気分だろう。
もちろん、おれもだ。
・・・この屈辱は、しっかり返させてもらう。