転生したら『海賊狩り』に成り代わっていて、先生をする件   作:ワニノコ

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攻防戦

 

おれたちは市街地に辿り着いた。

そして、カイザーPMCの連中が整列して道を開けると、奥からガラクタ野郎が歩いてきた。

その歩き方はまるで、自分が王と主張しているかのような佇まいだ。

 

「ふむ。学校まで出向こうと思ったのだが、お出迎えとは感心だ」

 

そう言い、一歩一歩とゆっくり近づき、話しかけてくる。

その喋り方は、おれたちを見下しているみたいだ。

 

「これは何の真似ですか?企業が街を攻撃するなんて・・・いくら貴方たちが土地の所有者だとしても、そんな権利は無い筈です!」

 

『それに、学校はまだ私たちアビドスのものです!進攻は明白な不法行為!連邦生徒会に通報しますよ!』

 

「スカウトなんて、最初から嘘だったってこと?・・・いや、それよりもホシノ先輩はどこ?」

 

「この悪党め・・・ホシノ先輩を返して!」

 

「・・・くくくっ、何を言ってるのやら」

 

ガラクタ野郎は、そう嘲笑した。

それに、ホシノと取引しているのはあくまでも黒服って奴だ。

ガラクタ野郎が知らないとしても、無理はないだろう。

 

「連邦生徒会に通報だと?面白いことを言うじゃないか、今すぐにでもやってみたらどうだ?君たちはこの状況について、今まで何度も連邦生徒会に嘆願してきたのだろう?それで、一度でも動いてくれたことがあったか?」

 

ガラクタ野郎のその言葉に、対策委員会の全員が黙り込む。

 

「無かった筈だ。何せ連邦生徒会は今、動けないからな。連邦生徒会でなくとも良い。今までどこか他の学園が、君たちのことを助けてくれたことはあったか?・・・そろそろ分かっただろう?」

 

アヤネが言ってたな。

誰も手を貸してくれず、闇金に頼るしか無かったって。

 

「誰一人、君たちに手を差し伸べる者はいない。そして、アビドスの最後の生徒会メンバー、小鳥遊ホシノが退学した。アビドスの生徒会は、もう存在しないも同然。君たちはもう、何者でもない」

 

「・・・!」

 

「公的な部活も、委員会も、生徒会も、自宅すらも無いアビドスは、学園都市の学校として自立・存続が不可能だと判断・・・仕方ないな、この自治区の主人である我がカイザーコーポレーションが、あの学校を引き受けるとしよう。そうだな、新しい学校の名前は『カイザー職業訓練学校』にでもしようか」

 

声色ではっきりと分かる。

コイツは弱者を虐げることを愉悦だと思っている。

そして、自分が世界の中心だと思っている。

コイツはもう、ぶった斬るしか救う道はなさそうだな。

 

「え・・・?な、何を言ってるの・・・!?生徒会が無くても、アビドスには対策委員会がある!私たちがまだいるのに、そんな言い分が通じる筈ないでしょ!」

 

『それは・・・』

 

「アヤネちゃん?」

 

『対策委員会は、公式に許可を受けている委員会じゃない・・・』

 

「・・・えっ!?」

 

『対策委員会が出来た時には、もうアビドスには生徒会が無かったから・・・』

 

「え、えっ・・・!?」

 

おいおいマジかよ・・・

まさかとは思うが、ホシノは全員に言ってなかったのか?

連れ帰ったら、説教が必要だな。

 

「そうだ。所詮非公認の委員会、正式な書類の承認も下りていない。つまり、君たちの存在を示すものは何も無い。だが喜べ。アビドス高等学校が無くなれば、君たちは借金地獄から解放されるのだからな」

 

金を借りたのはアビドスだが、少なくともお前が借金地獄って言う筋合いはねぇぞ。

 

「そんな、そんなことになったら、今までの私たちの努力が・・・」

 

「・・・ほぅ、まさか本気だったのか?本気で何百年もかけて、借金を返済するつもりだったと?これは驚きだ。てっきり、最後に諦める時『でも頑張ったから』と自分を慰める言い訳をするために、程々に頑張っているのだと思っていたが・・・」

 

「・・・ッ!」

 

「いったい君たちは、どうしてあんなに努力をしていたんだ?何のために?」

 

コイツ・・・好き放題言いやがって・・・お前の立っているそこは、おれの間合いなんだぞ?

おれは鞘に納めている刀を握る自身の力が、無意識のうちに強くなっていった。

 

「あんた、それ以上言ったら・・・」

 

「撃つよ」

 

セリカとシロコが銃をガラクタ野郎に向ける。

 

「で、ですが・・・」

 

『・・・今ここで戦って、何かが変わるんでしょうか?』

 

「アヤネちゃん!?」

 

『今も、すごい数の兵力がこちらに向かって来ています・・・例え、戦って勝てたとしても・・・その後はどうすれば・・・学校が無くなったら、もう戦う意味がありません。学校をどうにか取り戻せたとしても、私たちにはまだ、大きな借金が残ったまま・・・』

 

「アヤネちゃん・・・」

 

『取引された土地だって戻って来ません。何より、ホシノ先輩もいない、生徒会も無い、こんな状態で・・・私たちみたいな非公認の委員会なんかに、これ以上、一体何が・・・どうして、どうして私たちだけ、こんな・・・ホシノ先輩・・・私たち、どうすれば・・・』

 

(ドカアァァァァン!)

 

「!?!?」

 

突如、爆発音が鳴り響き、アヤネの声を掻き消した。

 

「なっ!?き、北から大きな爆発を確認!」

 

『合流予定のブラボー小隊が巻き込まれて・・・!』

 

「何!?」

 

(ドカアァァァァン!)

 

さらに、爆発音が鳴り響く。

 

『東の方でも確認!合流予定だったマイク小隊も、大量のC4の爆発で・・・!』

 

「何が起きている!?アビドスの連中は、ここにいるので全員のはず・・・!」

 

(カツンッ、カツンッ)

 

後ろから、ハイヒールの音を立てながら、この爆発を起こした張本人であろう人物たちが背後から現れる。

 

「全く・・・大人しく聞いていれば、何を泣き言ばっかり言ってるのかしら・・・あなたたち覆面水着団はその程度なの?」

 

「あ、あなたは!?」

 

背後から現れたのは、陸八魔アル率いる便利屋68だった。

 

「何をすればいいのか分からない、どうすればいいのかも分からない。やる事なす事、全部失敗に終わる・・・ここを潜り抜けたところで、この先にも逆境と苦難しかない・・・」

 

そう言って、アルは少し間を開けて叫ぶ。

 

「だから何なのよっっっ!」

 

『え、えっ・・・?』

 

「仲間が危機に瀕してるんでしょう!?それなのに、くだらないことばっかり考えて、このまま全部奪われて、それで納得できるわけ!?あなたたちは、そんな情けない集団だったの!?」

 

なるほど。

これが陸八魔アルか。

厳しく叱咤するが、それ以上に味方を奮い立たせ、士気をあげる。

アウトローに相応しいかはともかく、最高のリーダーだな。

 

「いやいや、アルちゃん。その辺で勘弁してあげなよ。メガネっ娘ちゃんは繊細なんだから、こう言う時もあるって」

 

『ど、どうしてあなたたちが・・・!?』

 

「あはっ。それにしても、私の可愛いメガネっ娘ちゃんを泣かした罪は重いよ?だからもうこれは・・・ぶっ殺すしかないよね!」

 

「ふふっ、ふふふふふ・・・準備はできています、アル様。仕込んだ爆弾もまだまだありますので・・・」

 

「はぁ。ただ、ラーメンを食べに来ただけなのに・・・」

 

そのラーメン屋は、お前たちが吹っ飛ばしただろ。

でもまぁ、これで反撃に出られるな。

 

「目を開けなさい。腑抜けた状態のあなたたちに今から、真のアウトローの戦い方を見せてあげるわ」

 

そう言って、アルはハルカに指示を出した。

そうしてハルカは起爆装置を取り出し、押した。

 

(ドカアァァァァン!)

 

(ドドドドドドドオオオォォン!)

 

(ドカアアアアァァァァン!)

 

前方にいるカイザーPMCが爆発で吹っ飛んだ。

 

「さぁ、今こそ協業の時よ!合わせられるわよね、先生!?」

 

「当たり前だ!」

 

おれは左上腕に巻いた黒い手拭いを頭に巻き、気合いを入れた。

 

「お前ら、後のことは後のことなんだ。今は目先のことだけに集中しろ!」

 

おれは後ろにいる対策委員会のメンバーに檄を飛ばした。

 

「確かにそうだね」

 

「・・・お陰様で目が覚めました。私たちに今、こうして迷っている時間はありません」

 

「そうだよ!何よりもまず、ホシノ先輩を取り戻さないと!非公認だか知らないけど、不法組織だって構わない!そんなことは今、何の関係もない!」

 

「ホシノ先輩を助ける、今大事なのはそれだけ」

 

どうやら全員、目が覚めたようだな。

これで、おれもガラクタ野郎に溜まった鬱憤を晴らせる。

 

「くっ、この期に及んで無意味な抵抗を・・・!よくも・・・!」

 

「よくも?それはこっちのセリフだ!」

 

おれは『和道一文字』を鞘から抜き、ガラクタ野郎に向けた。

おれが刀を向けると、ガラクタ野郎はビビったような素振りを見せた。

 

「ホシノを返してもらうぞ、ガラクタ野郎」

 

「ふ、ふざけるな!貴様にそんな権利が・・・!?」

 

おれの横から対策委員会と便利屋68のメンバーが立った。

ガラクタ野郎は一瞬怯んだ様子を見せたが、突然不敵に笑い始めた。

 

「ふははははっ!いいだろう・・・こうなったら、こちらも最大戦力を使うのみ!来い!『ゴリアテ』!」

 

ガラクタ野郎がそう叫ぶと、上空から巨大な兵器が落ちて来た。

そして、ガラクタ野郎はその兵器に乗り込む。

 

「アル、爆弾はあと何個残ってる?」

 

「もちろん、ゼロよ」

 

アルが自信満々に答える。

いや、誇れることじゃねぇからな。

 

「さっきので全部使っちゃったからね」

 

「そうかよ・・・よし分かった。あのデカブツはおれが相手する。お前らは周りにいる雑魚どもを蹴散らせ」

 

「分かったわ!」

 

『どうか、お気をつけて!』

 

そうして、おれは手に持っていた『和道一文字』を口に咥え、『閻魔』と『三代鬼徹』を鞘から抜いてデカブツに向かって歩き出す。

そして後ろからは、激しい銃声が聞こえた。

前を見ると、デカブツの周りにいるカイザーPMCが倒れていた。

 

「シャーレの先生・・・刀如きでいったい何ができる?」

 

「決まってんだろ・・・お前をぶった斬る」

 

「ほぅ・・・やれるものならやってみろ!」

 

そう言い、デカブツに乗ったガラクタ野郎は左右のガトリング砲をぶっ放して来た。

 

「全部、見えてんだよ!」

 

おれはデカブツから放たれた銃弾を、全て避けた。

そして、あのデカブツを見て思ったことがある。

機動力は図体の割には高いが、ぶっ放す前に数秒間機体が停止する。

どうやら未調整なもののようだ。

 

「三刀流」

 

おれは刀に『武装色の覇気』を纏わせて黒刀に変化させ、両腕を交差させた。

 

「もらった!」

 

ガラクタ野郎がそう言い、背中に搭載した巨大な砲塔をぶっ放して来た。

砲弾が地面に着弾する前に、おれは地面が砕ける程の力を両足に込め、デカブツに向かって一直線に跳んだ。

 

 

『ー"煉獄鬼斬り"ー』

 

 

おれは両腕を振り抜いてデカブツの胴体部分を斜め十字に斬り裂き、真っ二つにした。

 

(ドカアァァァァン!)

 

「ぐああぁぁ・・・!」

 

デカブツが爆散し、乗り込んでいたガラクタ野郎が地面に放り出された。

 

「理事、傷が・・・!すぐに治療を!」

 

「くっ、一度退却だ!兵力の再整備に入れ!」

 

「は、はいっ!」

 

「覚えておけ、この代償は高くつくぞ・・・!」

 

ガラクタ野郎が負け惜しみみたいな事を言いながら、退却していった。

 

『敵兵力、退却していきます・・・』

 

「そうか・・・」

 

おれは『和道一文字』、『三代鬼徹』、『閻魔』を鞘に戻し、手拭いを取って左上腕に巻き直した。

 

「いや〜、あれこそ正に本物の三流悪党のセリフって感じだね。『覚えておけー』なんて実際に初めて聞いたよ」

 

「想定通り、大体上手く行った」

 

「先生、追わなくていいの?」

 

シロコがおれに近づき、聞いて来た。

 

「あぁ。追い討ちをかけなくても、また来るからな。それに、今は帰って休むべきだ」

 

『はい、先生。きっとこの次は・・・今までで一番大きな戦いになると思います。まずは帰って、ホシノ先輩を助ける方法を探さないといけません』

 

「そうだな」

 

おれたちはその場で解散した。

そして、おれはシャーレに戻ると、一通のメールが届いていた。

書いてあるのは、時刻と座標だけ。

このタイミングでこういうメールが来るってことは、アビドスの問題と無関係ってわけじゃなさそうだ。

それに、ホシノの情報が手に入るかもしれない。

 

「行くしかねぇな」

 

仮に罠だとしても、罠を仕掛けた奴をぶった斬れば良いだけの話だ。

おれは、指定された時間になるまでシャーレで待つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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