転生したら『海賊狩り』に成り代わっていて、先生をする件 作:ワニノコ
時間が進み、夜になった。
おれはアロナに案内されてメールで送られて来た座標の位置に向かうと、そこはどこにでもあるようなビルだった。
てっきり、ブラックマーケットみたいな無法地帯の座標だと思っていたが、一般的なビルだったから拍子抜けだ。
ま、そんなことはどうでもいい。
おれはビルに入り、エレベーターに乗って最上階に向かった。
そして、指定された扉を開ける。
「・・・お待ちしておりました、ゾロ先生。貴方とは一度こうして、顔を合わせてお話ししてみたかったのですよ」
紳士的な口調で、黒いスーツを着た異形の男が話しかけて来た。
おそらくコイツが、ホシノの言ってた『黒服』って奴なんだろう。
それにしてもコイツ、顔どうなってんだ?
全身の皮膚が真っ黒で、右目がある部分から白い炎みたいなのが漏れていて、そこから顔面に亀裂が走っている。
ホシノからある程度は説明されていたが、こういうタイプとは思わなかったな。
「話ってなんだ?一応言っとくが、今のおれは機嫌が悪いんだ。言葉は慎重に選べよ?」
「クックックッ・・・流石は『海賊狩りのゾロ』と呼ばれている男。とても威圧的ですね」
何で知ってやがる?
まぁ、知ってたところでおれに取ってはどうでもいい話だ。
黒服は椅子に座り、机に両肘を置いて、その手を組んでおれの方を見る。
「・・・ロロノア・ゾロ、連邦生徒会長が呼び出した不可解な存在。あのオーパーツ『シッテムの箱』の主であり、連邦捜査部『シャーレ』の先生。貴方のいた世界とは違い、キヴォトスでは貴方を過小評価する者もいるようですが、私たちは違います」
「へぇ・・・」
「・・・まず、はっきりさせておきましょう。私たちは、貴方と敵対するつもりはありません。むしろ、協力したいと考えています。私たちの計画において、一番な障害になりうるのは貴方だと考えているのです」
「良く分かってるじゃねぇか」
「私たちにとってアビドスなんて小さな学校は、全くもって大した問題ではありません。ですが先生、貴方は決して些事とは言えない。敵対することは避けたいのですよ」
敵対したくない、か・・・
だったら、ホシノを返せよって話だ。
「さっきから、私たちって言ってるが・・・一体何者だ?」
「・・・おっと、そういえば自己紹介をしていませんでしたね。私たちは貴方と同じ、キヴォトスの外部の者・・・ですが、貴方とはまた違った領域の存在です」
違った領域か・・・
「適切な名前がありましたので、今はそれを拝借して使っております。私たちのことは『ゲマトリア』とお呼びください。そして私のことは、『黒服』とでも。この名前が気に入ってましてね」
やっぱりコイツが『黒服』か。
そして、黒服が所属している組織の名前がゲマトリアか。
「私たちは、観察者であり、探究者であり、研究者です。貴方と同じ、『不可解な存在』だと考えていただいて問題ございません。一応お聞きしますが、ゲマトリアと協力するつもりはありませんか?」
「ねぇな」
「・・・左様ですか」
おれは即答で答えてやった。
そして黒服は残念そうな感じを出しつつ、話を続ける。
「真理と秘義を手に入れられるこの提案を断ってまで、貴方はキヴォトスで何を追求するおつもりなのですか?」
「そんなもんはねぇよ。それより、ホシノはどこだ?」
ったく、長々と話しやがって。
そういうのは、同族同士でやりやがれ。
「・・・何故貴方はホシノを探しているのですか?ホシノはもうアビドスの生徒ではありません。届け出を確認されていないのですか?」
「お前、知らないのか?あの届け出は、おれのサインがまだされてねぇんだよ」
「・・・」
おれがそう言い放つと、黒服は一瞬黙ってから口を開ける。
無駄に頭が回るから、その意味を理解したのだろう。
「・・・なるほど。貴方が『先生』である以上、担当生徒の去就には貴方のサインが必要・・・ふむ、中々に厄介な概念ですね」
口調に変わりはない。
だが、おれに感心するような目で見てくる。
「お前らはガキ共を騙し、心に傷を負わせた。どう落とし前付ける気だ?」
「えぇ、確かに仰る通り、私たちは自分たちの利益を優先し、他人を不幸にしました。それを否定はしません。善か悪かと問われればきっと悪でしょう。しかし、ルールの範疇です」
「あぁ?」
「そこは誤解はしないでいただきましょうか。アビドスに降りかかった災難は、私たちのせいではありません。アビドスを襲ったあの砂嵐は、大変珍しいとはいえ、あくまで天変地異に過ぎません。私たちは、その機会を利用しただけ。砂漠で水を求めて死にゆく者に、水を提供する・・・ただし、一生奴隷として働いても返済できない額で。ただそれだけのことです。さして珍しくもない、世の中にはありふれた話でしょう。何も私たちが特別心を痛め、全ての責任を取るべきことではありません。私たちが初めて作った事例でもなければ、私たちがそれをしなかったところで消えるものでもないのですから」
「・・・」
黒服は笑って弁論をする。
正直に言ってしまえば、コイツは刀でぶった斬らなくても殺せる。
だがコイツが死んだら、ホシノの居場所が分からなくなってしまう。
だからコイツは、笑えることができる。
「持つ者が、持たざる者から搾取する。知識の多いものが、そうでない者から搾取する。大人なら誰もが知っている、厳然たる世の中の事実ではありませんか?」
「・・・そうだな」
「ほぅ・・・?」
「だが、お前らは度が過ぎるんだよ」
これは、おれの紛れもない本心だ。
確かに、黒服の言っていることには一理ある。
だが、それが原因で数え切れない程の命が散ったのを、おれはキヴォトスに来る前に見てきた。
「勘違いするなよ。おれは別に正義の味方じゃねぇ。だが、助けを求めるガキ共を見捨てるほど、おれは腐っちゃいねぇんだよ」
おれが黒服にそう吐き捨てると、黒服は黙り込んだ。
「・・・良いでしょう。交渉は決裂です、先生」
「あぁ、そうみたいだな」
おれは黒服が危害を加えてきた場合を想定し、『和道一文字』の柄を握る。
「先生、彼女を助けたいですか?」
「当たり前だ!」
おれがそう返すと、黒服はホシノの居場所を喋り始めた。
「ホシノは、アビドス砂漠のPMC基地の中央にある、実験室にいます。『ミメシス』で観測した神秘の裏側、つまり恐怖。それを、生きている生徒に適用することができるか・・・そんな実験を始めるつもりです。ホシノを実験体として」
「・・・それで?」
「そして、もしホシノが失敗したらあの狼の神が代わりに、と思っていたのですが・・・ふぅ、どうやら前提から崩れてしまったようですね。そういうことですので、精々頑張って生徒を助けると良いでしょう。微力ながら、幸運を祈ります」
掴みどころのねぇ奴だ。
急にベラベラと喋りやがって。
ま、そんなことはどうでもいい。
おれは黒服に背を向け、帰る。
「先生。・・・ゲマトリアは、貴方のことをずっと見ていますよ」
黒服との話を終え、おれは対策委員会の教室に行くと、ホシノを除いた四人が待っていた。
「おかえり、先生」
「先生、お待ちしておりました!」
「先生!」
「先生・・・」
「何か、掴んできた顔だね」
「まぁな」
おれは、ホシノの居場所と奴らの目的を全員に話した。
「それじゃあ、ホシノを助けに行くか」
「・・・ん、行こう」
「はい!みんなで『おかえり』って言ってあげましょう!『ただいま』と言えるように!」
「うん・・・えっ!?何それ、恥ずかしい!青春っぽい!背筋がゾワっとする!」
「私はする」
「セリカちゃんがしなくても、私もします!」
「わ、私も。ちょっと恥ずかしいけど・・・」
「か、勝手にして!私は絶対、そんな恥ずかしいこと言わないから!」
「あ、あはは・・・では、救出のための準備を・・・」
「でも、先生がいたとしても、今の私たちじゃ勝てるかどうか分からない。誰か協力者を・・・」
確かにそうだな。
全面戦争をするんだったら、味方は何人いても困らないからな。
「便利屋は?」
「確かに私たちのことを助けてくれましたが・・・もう一度お願いしても良いのでしょうか?」
「それぐらい大丈夫だって!」
「・・・おれに考えがある」
二つ、おれには便利屋68以外に心当たりのある連中がいた。
翌日、おれはゲヘナ学園に来た。
来た理由はもちろん、ヒナに相談があるからだ。
一応、連絡入れたのだが・・・
「げっ、本当に来た・・・」
「しかも、誰か引きずってますね・・・」
ご丁寧に、案内人を付けてくれた。
その案内人は、風紀委員会のイオリとチナツだった。
「あの、先生・・・その引きずってる方は・・・?」
チナツはおれが引きずっていた不良を心配そうに見ている。
「コイツか?コイツはおれがゲヘナの自治区に入った時にカツアゲをしてきたから、返り討ちにしてお前ら風紀委員会に引き渡そうと思ったんだが、いるか?」
「まぁ、はい・・・」
その後、イオリとチナツが風紀委員を数人呼んで、おれにカツアゲを仕掛けて返り討ちになった不良は回収されていった。
「では、今から会議室に案内いたします」
「ちゃんと着いてこいよ」
そう言い、チナツとイオリは歩き出す。
「先生、会議室まで少し時間がかかるので・・・って先生?」
「ちょっ、どこ行ってんだよ!」
「んあ?」
ったく、コイツらは何を言ってるんだ?
「そっちは別の建物ですよ!」
「ちゃんと着いてこいって言っただろ!」
チナツとイオリはおれに近づき、おれの腕をそれぞれ片方ずつ引っ張って歩き出した。
「なぁ、先生って方向音痴なのか?」
「おそらくは・・・」
なんでコイツらはおれを方向音痴扱いすんだよ。
「おい離せよ」
「離したらどこかに行くだろ」
「行かねぇよ」
おれはなんとかチナツとイオリを説得し、手を離してもらった。
とは言っても、左にチナツ、右にイオリがいて常に見張られているが。
「そういや、お前らのとこの行政官はどうなってるんだ?」
おれはただ歩いているだけなのも暇なので、少し気になったことを聞いてみた。
「アコ行政官は現在、反省文を書かれています」
「ざっと、200枚以上は書いてたと思うぞ」
てっきり、クビになったかと思ったが反省文か・・・
それも、200枚以上。
そこまで書いたら、書く内容がなくなって手の運動になるだけだろ。
おれがそんなことを思っていると、会議室についた。
おれは会議室にある椅子に適当に座ると、ヒナが来て、椅子に座った。
「先生、用って何?」
「それはだな・・・」
おれはヒナに全て話した。
「分かったわ。ただし、貸し一つね」
「あぁ、約束する。何なら、お前が邪魔だと思っている組織を一つ潰してやってもいいぞ?」
「・・・まぁ、考えておくわ」
こうして、ゲヘナの風紀委員会がホシノを救出するための戦力として加わってくれた。
おれはゲヘナ学園から出ると、携帯から電話がかかってきた。
『先生、ナギサ様に相談してみたら、牽引式榴弾砲で援護をしてくれるそうです!』
「おぉ、そうか」
おれは、ゲヘナ学園に来る前に、ヒフミに連絡を入れて、トリニティ総合学園のティーパーティーに協力してくれないかっと言った。
そしたら案の定、協力してくれた。
おれはヒフミに礼を言い、電話を切った。
「それじゃあ、アイツらのとこに戻るか」
おれはアビドス高校に戻るのだった。
便利屋68は柴大将が新しくオープンした屋台でラーメンを食べていた。
「・・・社長、本当に行くの?」
カヨコがアルを疑いの目で見るのも無理はない。
この戦いは、便利屋68には何のメリットもない。
何なら、PMCと戦っても報酬は出ないのだ。
「・・・ふん」
「カヨコちゃん、よく見てみなよ」
ムツキにそう言われ、カヨコはアルの目を見る。
「アルちゃんのその顔を見れば分かるでしょ?『依頼料なんて、このラーメンが味わえただけで十分よ』って今にも言い出しそうじゃん!」
「・・・」
「な、なるほど!流石アル様です!多くは語らず、一杯のラーメンで地獄へと赴くその姿、まさにハードボイルドです!わ、私も真のアウトローになるために頑張ります!今度こそ、ちゃんと全部消してみせます!」
「・・・ふふっ。私と一緒に地獄の底までついてくる覚悟はできたかしら?」
アルは部下の前で決めゼリフを言った。
だが、内心は・・・
(言っちゃったーーーー!元々ラーメン食べたら帰るつもりだったのに、流されてカッコいいセリフをーーーー!?こ、これはもう引き返せない雰囲気だし・・・!?)
滅茶苦茶焦っていた。
(今から逃げるって手は・・・うぅ・・・で、でも・・・あの後アビドスの連中から『ありがとう』とか『見直した』とか、色々言ってもらっちゃったし・・・それに今回の相手はマーケットガードどころかPMC・・・勝敗なんて目に見えてるじゃない!?ど、どうすればいいのよこの状況!?)
「ほら、ラーメン食べ終わったし、行こ!アルちゃん!」
「じ、地獄の底までお供します!」
「はぁ、何だか損してばっかりだけど・・・仕方ないね」
便利屋68はカイザーPMCとの戦いのため、準備をするのだった。
おれはアビドス高校に着くと、校門の前でホシノ以外の全員が集まっていた。
「ん、準備完了」
「補給も十分、おやつもたっぷり入れておきました!」
「こっちも準備できたわ!どっからでもかかってきなさい!」
「私の方も、アビドスの古い地図を全て最新化しておきました。先生に教えていただいた情報ですと、ホシノ先輩はカイザーPMCの第51地区の中央あたりにいるはずです。一番安全なルートで案内します、行きましょう!」
「それじゃあ、出発だ!」
役者は揃った。
後は、ホシノを取り返して、カイザーPMCをぶった斬るだけだ。