転生したら『海賊狩り』に成り代わっていて、先生をする件 作:ワニノコ
「ミレニアムからの要請?」
おれは酒を口に流し込みながら、アロナに聞く。
確か、ミレニアムにはユウカがいたな。
『はい!送り主は・・・ミレニアムのゲーム開発部?みたいです。読んでみますね』
そう言い、アロナは送られて来た依頼の内容を読み始めた。
『ゲーム開発部は今、存続の危機に陥ってます。生徒会からの廃部命令により破滅が目の前に迫っている今、助けを求められる相手は貴方だけです。勇者よ、どうか私たちを助けてください!』
アロナは送られて来た依頼の内容を読み終わった。
それにしても、おれのことを勇者だと思っているのか・・・かなりの物好きだな。
『なるほど。すごく面白いと言いますか・・・かなり切羽詰まっているということは、ひしひしと伝わって来ますね・・・』
「そうだな」
『そういえば、先生はミレニアムサイエンススクールについてご存知ですか?』
「まぁ、ユウカがいることぐらいか?それ以外はあんまりだな」
『そうでしたか、ミレニアムサイエンススクールはご存知の通り・・・トリニティ、ゲヘナと合わせてキヴォトス三大学園と呼ばれる大きな学校です。通称ミレニアム、他のどんな学園よりも合理と技術に重きを置いていて、科学の研究に特化しており、理系の生徒さんたちが多く集まっていることが特徴ですね』
理系か・・・きっと、将来有望なガキ共が多いんだろうな。
それにしても、トリニティとゲヘナと同格として扱われているのか・・・今回も中々厄介な依頼になりそうだ。
『伝統ある名家のようなゲヘナとトリニティに比べると歴史は長くありませんが、影響力という点においては引けを取りません。キヴォトスで『最新鋭』或いは『最先端』の名を冠するものは、そのほとんどがミレニアムから生まれると言っても過言ではないくらいです』
ソイツはすげぇな。
もしかして、おれが使っている家具もミレニアム製のものがあるのだろうか?
『そんな学校なのですが・・・一体何があったのでしょうか?』
「さぁな。それより、今日はもう夜なんだ。出向くとすれば明日だな」
そう言い、おれは空になったグラスに酒を注いで飲む。
明日からまた、デカい仕事になるかもしれないことをやるんだ。
気合を入れておかねぇとな。
そんなことを思いながら、おれは良い感じに酔いが回るまで酒を飲み続けるのだった。
翌日。
おれはアロナの案内の元、ミレニアムに着いた。
「まずは、ゲーム開発部の部室を探すか・・・」
おれは敷地内に入り、入り口を探していると
「んあ?」
何かが窓から飛んできたので、左手で受け止めた。
左手で受け止めたものを見ると、ゲーム機のようなものだった。
「ちょっとお姉ちゃん!プライステーション投げないでよ!」
「だって!」
ゲーム機が飛んできた窓から二人の生徒が顔を出した。
「これはお前らのか?」
おれは窓に近づき、ゲーム機を渡す。
「もしかして、シャーレの先生ですか?」
「まぁ、周りからはそう言われてるな」
そう言うと、片方の生徒の表情が明るくなった。
「うわっ、本当に!?じゃあ私たちが送った手紙、読んでくれたんだ!もし読んでくれたとしても、本当に来てくれるなんて思ってなかった!」
ってことは、コイツらがゲーム開発部か。
おれは、ゲーム開発部の部室にある窓から部室に入った。
「じゃあ・・・ゲーム開発部へようこそ、先生!」
「先生に来ていただけて、嬉しいです」
そう言い、二人は自己紹介を始める。
「私はゲーム開発部、シナリオライターのモモイ!」
「私はミドリ。イラストレーターで、ゲームのビジュアル全般を担当してます」
「あと今はここにいないけど、企画周りを担当してる私たちの部長、ユズを含めて・・・私たちが、ミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部だよ!」
そう言い、モモイとミドリは自己紹介を終えた。
「よしっ!じゃあ先生も来たことだし、『廃墟』に行くとしよっか!」
「廃墟?」
「あっ、じゃあ最初から順に説明するね」
そう言い、モモイは廃墟に行く理由を説明し始めた。
「えっとね、まず私たちゲーム開発部は今までずっと、平和に16ビットのゲームとかを作ってだんだけど。ある日・・・急に生徒会から襲撃されたの!一昨日には、生徒会四天王の一人であるユウカから最後通牒を突きつけられて」
「最後通牒?」
「それに関しては、私から直接ご説明しましょうか?」
おれがそう聞くと、部室の扉が開いて声が聞こえた。
そして、モモイとミドリはその声を聞いて震え上がっている。
「出たな、生徒会四天王の一人!『冷酷な算術使い』の異名を持つ生徒会の会計、ユウカ!」
酷い言われようだな。
「勝手に変な異名を付けて、人をモンスターか何かみたいに呼ばないでくれる?失礼ね。それよりも・・・先生」
「久々だな、ユウカ」
ユウカはおれの顔を見ると、何やら複雑そうな表情を浮かべる。
「・・・はぁ、こんな形で会うなんて。先生とは色々と話したいこともありますが、それはまた後にするとして・・・モモイ」
ユウカに名前を呼ばれ、モモイは肩を震わせて反応する。
そして、ユウカは呆れた表情を浮かべながら話し始めた。
「本当に諦めが悪いわね。廃部を食い止めるために、わざわざ『シャーレ』まで巻き込むだなんて。けど、そんなことをしても無意味よ。例え連邦生徒会のシャーレだとしても・・・いえ、あの連邦生徒会長が戻って来たとしても!部活の運営については概ね、各学校の生徒会に委ねられてるんだから。ゲーム開発部の廃部はもう決まったことなの、これはもう誰にも覆せない」
「なぁ、ユウカ」
おれは話について来れないので、少し割り込むことにした。
「何ですか先生?」
「部外者のおれが聞くのも変な話だが、何でゲーム開発部が廃部になるんだ?」
「ゲーム開発部は部員数が規定人数に達しておらず、部活としての成果も出しておりません。その状態が、もう何ヶ月も経っているんです。廃部になっても、何も異議はないはずです」
「あぁ、そういうことか」
っていうことは、おれはコイツらの悪あがきに巻き込まれたってことか。
それに、これに関してはユウカが正しいな。
「ぐぬぬぬっ・・・私たちだって全力で部活動をしてる!だからあの、何だっけ・・・上場閣僚?とかいうのがあっても良いはず!」
「それを言うなら『情状酌量』な」
おれがそうモモイに注意し、ユウカの方を見ると、ユウカは怒りで静かに震えていた。
「今なんて言ったかしら?全力で活動してる・・・笑わせないで!」
ユウカはモモイを一喝し、ゲーム開発部がこれまでにして来た所業を言い始めた。
「校内に変な建物を建てたと思ったら、まるでカジノみたいに装飾してギャンブル大会を始まるし、レトロゲームを探すとか言いながら古代史研究会を襲撃するし・・・おかしいでしょう!?『全力』かもしれないけど、部活動としては間違ってるわよ!それに、これだけ各所に迷惑をかけておいて、よく毎度のように部費なんか請求できるわね!?」
おれはもう、呆れて天を仰ぐことしかできなかった。
マジで何やってんだコイツら・・・
ユウカの言う通り、各所に迷惑をかけておいて部費を請求できるとか、どんだけ面の皮が厚いんだよ。
これはもう、廃部は避けられねぇな・・・いや、待てよ。
「ゲーム開発部なら、一つぐらい結果はあるんじゃねぇのか?」
「おぉ!ナイス先生!私たちも、ゲームを開発してるんだから、結果だってあるもん!」
「そ、そうですよ!『テイルズ・サガ・クロニクル』はちゃんと、『あのコンテスト』で受賞も・・・」
「『テイルズ・サガ・クロニクル』?」
それが受賞したゲームの名前か。
中々良い名前だな。
「・・・そうね。確かに受賞、してたわ。その反応を見るに、先生はご存じないようですね。『テイルズ・サガ・クロニクル』・・・このゲーム開発部における、唯一の成果です。ゲームそのものもさることながら、レビューが大変印象的でした」
そうしてユウカは少し間を開けて話し始めた。
そのゲームはユウカがやってきたゲーム史上、ダントツで『絶望的』なRPG。
何が絶望的かと言うと、ゲームとしての完成度らしい。
そして、ユウカが一番足りていないと思ったのは『正気』だ。
このゲームをプレイした後だと、『デッドクリームゾーン』というゲームが名作の部類に入ると思うらしい。
・・・聞けば聞くほど酷いな。
「まさかとは思うが、お前らが言っている成果ってのは・・・」
「はい。ゲーム開発部の結果は『今年のクソゲーランキング1位』だけです」
おいおいマジかよ・・・
そんな結果一つでよく今まで部活を存続できてたな・・・
「・・・まぁ、一応一位を取ったんだからすげぇんじゃねぇか?」
おれは一応フォローをしたが、モモイとミドリは泣き出してしまった。
・・・多分、傷口に塩を塗ってしまった。
「・・・とにかく。貴女たちのような部活がこのまま活動していても、かえって学校の名誉を傷つけるだけよ。それに、その分の部費を他に回せば、きちんと意義のある活動をしてる生徒たちのためにもなる・・・だから、もし自分たちの活動にも意義があるのだと主張したいのなら・・・証明してみなさい」
「証明、って・・・?」
「何度も言ったでしょう。きちんとした功績や成果を証明すれば、廃部は撤回するって」
「例えば、何かの大会で受賞するとか?」
大会か・・・だが、そんな都合良く廃部を撤回できるような賞を取れるような大会があんのか?
「そう。ゲーム開発部なら、そういうコンテストも色々あると思うけど・・・とはいえ、出せば何とかなるとも思えないわね。貴女たちの能力は、あのクソゲーランキングが証明済み」
「ぐっ・・・」
「どうせなら、お互い楽な形で済ませましょう?今すぐ部室を空けて、この辺のガラクタも捨てて」
「・・・が、ガラクタとか言わないで・・・!」
「・・・じゃあ何なの?」
「そ、それは・・・分かった。全部、結果で示す」
どうやら、モモイは本気みたいだな。
案外、やれる奴かもしれねぇ。
「へぇ・・・?」
「そのための準備だって、もう出来てるんだから!」
「え?」
「そうなの!?」
「何でミドリが驚くのさ!?とにかく、私たちには切り札がある。その切り札を使って、今回の『ミレニアムプライス』に私たちのゲーム・・・『
やる気はあるみたいだな。
それにしても、ミレニアムプライスか・・・
「その大会で受賞すれば、廃部は撤回されるのか?」
「・・・まぁ、そうですね。受賞できたなら、の話ですが」
まだ、可能性は残ってるみたいだな。
おれがそう思っていると、ユウカはモモイの方に向き直り、ミレニアムプライスで受賞する難しさを説明する。
「けどねモモイ、これは運動部がインターハイに出場するとか、そういうレベルじゃなくて・・・『高校球児がいきなりメジャーリーグに出る』みたいな、雲を掴むような話よ」
確かにそれは難しいな。
ただ、可能性は残されている。
それに、何もやらずに廃部になるより、やれることをやって廃部になった方が納得はいくからな。
「・・・まぁ良いわ。何でだろ、私もちょっと楽しみになってきたし。分かった、じゃあそこまでは待ちましょう。今日からミレニアムプライスまで二週間・・・この短い時間でどんな結果を出せるのか、楽しみにしてるわ」
ユウカはそう言い、モモイたちに最後の慈悲を与え終えた。
「・・・ふぅ。まさか先生の前でこんな、可愛くないところを見せてしまうことになるなんて・・・」
ユウカは小さな声で何かを言い、おれの方に向いた。
「ただ、これも生徒会の仕事なので。次はもっと違った、落ち着いた状況でお会いしましょうね、先生。それではまた」
そう言い、ユウカはゲーム開発部の部室から出ていった。
時間は二週間。
正直、おれに手伝えることは少ないが、ミレニアムプライスまでやれることをやるしかない。
「お姉ちゃん・・・どっちも確率は低いだろうけど・・・今から私たちがゲームを作るより、部員を募集する方がまだ良いんじゃないの?」
「それならこの一ヶ月、散々やってみたでしょ・・・結局、誰も入ってくれなかったし」
「・・・」
「ユウカの卑怯者め!私たちみたいなオタクは友達が少ないってことを利用するなんて!許せない!」
「いや・・・それはユウカじゃなくて、100%私たちの自業自得だと思うけど」
まぁそうだな。
これに関しては全く否定できない。
逆に、今まで部活が存続できたのが奇跡と言っていいほどだ。
「とにかく、これ以上部員の募集をしても明るい未来は見えない。それに、まだ他に希望はある」
「もしかして、さっき言ってた『切り札』のこと?」
「もちろん!それは先生のことだよ」
「・・・おれが?」
何でおれが希望なんだよ。
おれにはゲームを作る知識なんてものはねぇぞ。
おれがそう思っていると、モモイは話題を変える。
「話を戻すと、私たちの目的は『廃墟』にあるの。『廃墟』っていうのは・・・元々は連邦生徒会が出入りを制限してた、ミレニアム近郊の謎の領域。出入りを制限してたのは『危険な地域だから』って言われてたけど・・・実際のところ、具体的に何がどう危険なのかを誰も知らない・・・そういう、謎に包まれた場所があるの」
「・・・で、その『廃墟』とゲーム作りに何の関係があるんだ?」
おれがそう聞くと、モモイはおれに近づいて、あることを聞いてきた。
「先生、G.Bible・・・って、知ってる?」
モモイはおれにG.Bibleについて聞いてくるのだった。