転生したら『海賊狩り』に成り代わっていて、先生をする件 作:ワニノコ
「みなさん、お疲れ様です。セリカちゃん、ケガはない?」
教室に入ると、アヤネが出迎えてくれて、セリカの心配をした。
「うん、私は大丈夫。見てよ、ピンピンして・・・」
セリカは口ではそう言っているが、足元がおぼつかなく、床に倒れそうなところをおれが腕で抱えた。
「誰か、セリカを保健室に連れてってくれ」
「私が保健室に連れていく」
シロコが名乗りをあげたので、おれはセリカを預けた。
そして、シロコは教室から出ていって、保健室に向かった。
そういや、Flak改って対空砲を食らったって言ってたな。
重火器に関しては詳しく分からねぇが、対空砲を食らって歩ける方がおかしいほうだな。
「今はゆっくり休ませてあげよー」
「大変なことになるところでした。先生がいなかったら・・・」
「気にすんなよ。これも仕事のうちだからな」
「流石、職業がストーカーなのは伊達じゃないね」
誰の職業がストーカーだ。
「・・・それと、皆さんこれを見てください」
アヤネは机の上に、何らかの破片を置いた。
「戦闘中に回収した、散らばった戦車の部品を確認したところ、キヴォトスでは使用が禁止されている違法機種と判明しました。もう少し調べる必要はありますが、ヘルメット団は自分たちでは入手できない武器を保有しているみたいです」
違法機種、か。
たかが不良集団が、何でそんなもんを持ってるんだ?
ここで考えたところで、結論は出ねぇが、何か強い力を感じるな。
「この部品の流通ルートを分析すれば、ヘルメット団の裏にいる存在を探し出せますね!」
「はい。ただのチンピラが、なぜここまで執拗に私たちの学校を狙っているのかも、明らかになるかもしれません」
「じゃあ、じっくり調べてみよっかー」
「・・・格下のチンピラ如きでは、あの程度が限界か。主力戦車まで送り出したというのに、このザマとは」
高層ビルのオフィスにいるスーツを着た大柄のロボットはそう呟いた。
「ふむ・・・となると、目には目を、生徒には生徒を・・・か。専門家に依頼するとしよう」
(プルルル、プルルル・・・ガチャ)
『はい、どんなことでも解決します。便利屋68です』
「仕事を頼みたい、便利屋」
そう言い、スーツを着た大柄のロボットは仕事の内容を話すのだった。
そして、その日の夜。
(ダダダダダダッ!)
カタカタヘルメット団のアジトが何者かによって襲撃された。
「うっ・・・何者だ、貴様らは・・・」
「ふふふ・・・私たちは、便利屋
その日の夜、おれはセリカの容態を確認するために、保健室に来ていた。
「・・・先生!?ど、どうしたの?」
「見舞いに来たが、タイミングが悪かったか?」
「そ、そんなことないわ、私なら大丈夫。いつまでもこうしちゃいられないし。アヤネちゃんや他のみんなも心配してるし・・・バイトにも行かなきゃだし。だから、お見舞いとかいいから!ほら見て、元気だし」
「それは良かった。それじゃ、また明日な」
「あ、あの!」
おれは保健室を出ようとすると、セリカに呼び止められた。
「どうした?やっぱり、身体の具合でも悪いのか?」
「そうじゃなくて・・・え、ええとね・・・そういえば、先生にちゃんとお礼を言ってなかったなぁって、思って・・・あ、ありがとう・・・色々と・・・でも!この程度でアビドスの役に立てたなんて思わないでよね!この借りはいつか必ず返すんだから!」
「ふっ・・・」
セリカは強い口調でそう言っているが、おれは思わず笑いが込み上げてしまった。
「な、何よ!?何ヘラヘラ笑ってんの!?」
「悪い、つい笑っちまった」
「はぁ、まったく。じゃあ・・・また明日ね!えっと・・・せ、先生」
そう言い、セリカは保健室から出ていった。
相変わらず、当たりは強いが、なんだかんだ蟠りはなくなったみたいだな。
翌日。
おれはアビドス対策委員会の定例会議に参加させてもらっている。
「・・・それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます。本日は先生にもお越しいただいたので、いつもより真面目な議論ができると思うのですが・・・」
「は〜い☆」
「もちろん」
「何よ、いつもは不真面目みたいじゃない・・・」
「よろしくねー、先生」
「あぁ」
アヤネは何を心配しているかは分からないが、多分大丈夫だろ。
「早速議題に入ります。本日は、私たちにとって非常に重要な問題・・・『学校の負債をどう返済するか』について、具体的な方法を議論します。ご意見のある方は、挙手をお願いします!」
負債か。
億越えの賞金首がキヴォトスにゴロゴロといれば楽な話なんだが・・・生憎、億越えの懸賞金をかけられている指名手配犯はいないらしい。
となると、後はコイツらの意見を参考に何かを考えるしかない。
だが、コイツらから出てきた意見は・・・
まず、セリカが出した意見は『運気を上げるゲルマニウム麦飯石ブレスレットを買って一攫千金を狙う』だ。
当然ながら却下だ。
セリカがこの意見を言った時、教室内が気まずい空気になった。
セリカはアヤネにマルチ商法と言われるまで気づかなかったみたいだ。
アヤネにマルチ商法と教えられた時のセリカの表情は滑稽で、思わず吹き出しそうになってしまった。
っていうか、そんな変なブレスレットで借金がどうにかなるんだったら、そもそも借金なんてしてねぇよ。
次は、ホシノが出した意見は『他校のスクールバスを拉致る』だ。
もちろん却下だ。
シロコは賛同したが、そんなことやったら他校の風紀委員会が黙っていない。
最悪、戦争になって学校が物理的に消えちまうかもしれねぇからな。
そして、これはホシノが冗談混じりで言った意見みたいだ。
学校の今後の方針を決める会議なんだから、もうちょっと真面目にしてくれ・・・
そして、シロコが出した意見は『銀行強盗』だ。
これにはアヤネも動揺を隠せていない。
もちろんおれもだ。
そして、おれがアビドス高等学校に始めてきた時に、シロコがおれを拉致したと誤解された理由がようやく分かった気がする。
本人は5分で1億は稼げると言い、覆面も用意していた。
コイツ、マジでやろうとしてるんだな。
シロコの用意した覆面をノノミは被り、はしゃいでいるが、こんなの却下に決まってるだろうが。
最後はノノミだ。出した意見は『アイドル』だ。
まぁ、他三人と比べたらまだマシだが、これも却下だ。
借金を返すには現実味が無さすぎるし、仮にやるとしても、色々なところで金を使わねぇといけねぇから、結果的にはマイナスになるかもしれねぇからな。
とまぁ、コイツらから出てきた意見はこんな感じだ。
そして、現在。おれがコイツらから出てきた意見を選ぶという流れになっている。
ぶっちゃけ、どれも選びたくはない。
そして、おれが出した結論は・・・
「全部却下だ。考え直せ」
「「「「・・・えっ?」」」」
全て却下した。
当たり前だ。
「まずホシノ。仮にそんなことをやったら学校が地図から物理的に消えるぞ」
「うへ〜、やっぱりかー」
「次にシロコ。理論上一番手っ取り早いが、カタギには絶対に手を出すんじゃねぇ」
「先生も理論上は納得している」
「理論上はな。最後にノノミ・・・ホシノとシロコよりかはマシだが、現実味が無さすぎる」
「えー、徹夜で考えたのに・・・」
正論で叩いてやった。
アヤネからは「先生がまともで良かった・・・」と聞こえた。
まさかとは思うが、コイツらいつもこんな調子なのか?
そんなんでよく利息を返せてたな。
だが、コイツらはおれが全て却下したことに不満があるようだ。
「先生も理論上は納得してるんだから、銀行を襲おう」
「アイドルはロマンがありますよ!」
「先生は何か意見はないのー?」
「そうよ!全て却下したんだから、意見の一つや二つ言いなさいよ!」
とまぁ、こんな感じでおれが責められてしまっている。
おれはアヤネに助けを求めようとし、アヤネの方を見ると、体が震えていた。
一応、耳を塞いでおこう。
これから雷が降るからな。
「・・・い・・・」
「い・・・?」
「いい加減にしてください!」
アヤネは怒号を上げると同時に、机をちゃぶ台返しのようにひっくり返した。
そして、アヤネ以外の対策委員会のメンバーは顔が引き攣っていた。
「もう、ちゃんと真面目にやってください!いつもふざけてばっかり!銀行強盗とかマルチ商法とかそんなことばっかり言って!」
この後おれの目の前では、アヤネによってめちゃくちゃ説教をされている対策委員会のメンバーが正座をしているのだった。
昼になり、おれたちは柴関ラーメンを食べにきていた。
アヤネは最初こそ不機嫌だったが、対策委員会のメンバーが育児プレイみたいなことをしていると、なんだかんだで機嫌が直っていた。
そして、アヤネの機嫌が直りかけていた時に、新たな客が来店してきた。
「あ・・・あのう・・・」
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「・・・こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」
店に入っていきなり値段を聞くなんて、不思議な奴もいるもんだな。
おれはそんなことを思いながら、麺を啜りつつ、会話に聞き耳を立てることにした。
「一番安いのは・・・580円の柴関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」
「あ、ありがとうございます!」
そう言い、少女は店を出ていった。
「・・・?」
(ガララッ)
店に、さっき入ってきた少女の後ろから、新たに三人が入ってきた。
「えへへ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」
「ふふふ。ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ」
「そ、そうでしたか、さすが社長、何でもご存知ですね・・・」
「はぁ・・・」
「四名様ですか?お先にご案内しますね」
「んーん、どうせ一杯しか頼まないし大丈夫」
「一杯だけ・・・?でも・・・どうせならごゆっくりお席へどうぞ。今は暇な時間なので、空いている席も多いですし」
「おー、親切な店員さんだね!ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて。あ、わがままのついでに、箸は四膳でよろしく。優しいバイトちゃん」
「えっ?四膳ですか?ま、まさか一杯を四人で分け合うつもり?」
「ご、が、ごめんなさい。貧乏ですみません!お金がなくてすみません!」
「あ、あ、いや・・・!別にそんなに謝らなくても・・・」
「いいえ!お金がないのは首がないのも同じ!生きる資格なんてないんです!虫けらにも劣る存在なのです!虫けら以下ですみません・・・!」
「はぁ・・・ちょっと声デカいよ、ハルカ。周りに迷惑・・・」
「そんな!お金がないのは罪じゃないよ!胸を張って!」
「へ?・・・はい!?」
「お金は天下の回りもの、ってね。そもそもまだ学生だし!それでも、小銭をかき集めて食べに来てくれたんでしょ?そういうのが大事なんだよ!もう少し待っててね。すぐに持ってくるから」
そう言い、セリカは四人の少女を席に案内した。
何やら、騒々しい奴らが来たな。
そう思い、今度は席に座ったアイツらに聞き耳を立ててみると、『アビドスを襲撃するために全財産をはたいて人を雇った』と聞こえてきた。
アイツら、一体何考えてやがる?
おれがそんなことを考えていると、セリカがアイツらの席にラーメンを届けたのだが・・・
(ダンッ!)
「ひぇっ、何これ!?ラーメン超大盛じゃん!」
「ざっと、十人前はあるね・・・」
「こ、これはオーダーミスなのでは?こんなの食べるお金、ありませんよう・・・」
「いやいや、これで合ってますって。580円の柴関ラーメン並!ですよね、大将?」
「あぁ、ちょっと手元が狂って量が増えちまったんだ。気にしないでくれ」
「大将もあぁ言ってるんだから、遠慮しないで!それじゃ、ごゆっくりどうぞー!」
大将も気前がいいな。
まぁ、今は放っておくか。
「う、うわぁ・・・」
「よくわかんないけど、ラッキー!いただきまーす!」
「・・・ふふふ、さすがにこれは想定外だったけど、厚意に応えて、ありがたく頂かないとね」
「食べよ!」
(ズズズズーッ)
四人の少女はラーメンを啜り、目を輝かせる。
「「「「美味しい!」」」」
その言葉を聞き、別の席にいた対策委員会のメンバーが話しかける。
「でしょう、でしょう?美味しいでしょう?ここのラーメンは本当に最高なんです」
ノノミが話しかけると、赤髪の少女が反応した。
「えぇ、分かるわ。色んな所で色んなのを食べてきたけど、このレベルのラーメンはなかなかお目にかかれないもの」
「えへへ・・・私たち、ここの常連なんです。他の学校のみなさんに食べていただけるなんて、なんか嬉しいです・・・」
「その制服、ゲヘナ?遠くから来たんだね」
「あ・・・はい・・・」
「私、こういう光景を見たことがあります。一杯のラーメン、でしたっけ・・・」
「うへ〜、それは一杯のかけそばじゃなかったっけ?」
赤髪の少女は対策委員会のメンバーと仲良く談笑をしている。
コイツら、本当にアビドスを襲撃するのか?
そう思っていると、いつの間にかラーメンを食べ終わっていた。
「それじゃあ、気を付けてね!」
「お仕事、上手くいきますように!」
「あなたたちも学校の復興、頑張ってね!私も応援してるから!」
そう言い、対策委員会のメンバーは四人の少女を見送った。
余計なことをしないといいのだが・・・
だが、その日の夕方
「校舎より南15km地点付近で大規模な兵力を確認!」
「まさか、ヘルメット団が?」
「ち、違います!・・・傭兵です!おそらく日雇いの傭兵!」
「へぇー、傭兵かぁ。結構高いはずだけど」
「これ以上接近されるのは危険です!先生、出動命令を!」
・・・傭兵か。
そういや、あの時全財産をはたいて人を雇ったとか言ってたな。
「それじゃあ、さっさと片付けるか」
おれはそう言い、アヤネを残して対策委員会のメンバーとその場に向かった。
『前方に傭兵を率いている集団を確認!』
「あれって・・・ラーメン屋さんの・・・?」
やっぱりコイツらか。
いくら仕事とはいえ、恩知らずだな。
「ぐ、ぐぐ・・・」
「誰かと思えばあんたたちだったのね!ラーメンも無料で特盛にしたのに、この恩知らず!」
「あははは、その件はありがと。でも、こっちは仕事だからさ」
「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」
「・・・なるほど。その仕事っていうのが、便利屋だったんだ」
「もう!学生なら、もっと健全なアルバイトがあるでしょう?」
「あ、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!肩書きだってあるんだから!私が社長!あっちが室長で、こっちが課長!」
「はぁ・・・社長。ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つ・・・」
ごもっともだな。
だが、コイツらの実力は本物だ。
「誰の差し金?・・・いや、答えるわけないか」
「もちろん、企業秘密よ」
「・・・だったら、力尽くで口を割らせるまでだ」
おれはそう言い、『和道一文字』を鞘から抜いた。
そして、赤髪の少女は後ろいる傭兵に指示を出した。
「総員!攻撃!」
傭兵たちはおれたちに銃を向けたのだが
(キーンコーンカーンコーン)
学校のチャイムが鳴った。
「・・・あ、定時だ」
「今日の日当だとここまでね。あとは自分たちで何とかして。みんな、帰るわよ」
傭兵たちは撤退の準備を始めた。
「はぁ!?ちょ、ちょっと待ってよ!」
赤髪の少女は傭兵たちを止めるが、無視され、傭兵たちはそのまま帰っていった。
「こらー!ちょっ、どういうことよ!?ちょっと!帰っちゃダメ!」
「・・・はぁ」
「こりゃヤバいね。まさか戦う前に時間が来ちゃうなんて・・・アルちゃん、どうする?逃げる?」
「あ・・・うぅ・・・こ、これで終わったと思わないことね!アビドス!」
「あはは、アルちゃん、完全に三流悪役のセリフじゃんそれ」
「うるさい!逃げ・・・じゃなくて、退却するわよ!」
そう言い、便利屋は逃げ・・・退却した。
・・・一体、何がしたかったんだ?
アイツらに依頼した奴はアホなのか?
おれはそんなことを思いながら、『和道一文字』を鞘に戻した。
「アイツら、逃げ足は一級品だな」
「そうだねー。アヤネちゃん、どうする?」
『・・・詳しいことは分かりませんが、敵兵力は退勤・・・いえ、退却を確認。困りましたね・・・妙な便利屋にまで狙われるとは、先が思いやられます・・・一体何が起きているのでしょうか・・・』
「まぁ、まずは社長のアルって子の身元から洗ってみたら?何か出てくるよ、きっと」
『はい。皆さん、お疲れ様でした。一旦、帰還してください』
おれたちは帰還するのだった。