転生したら『海賊狩り』に成り代わっていて、先生をする件 作:ワニノコ
翌日。
おれは静かなアビドスの市街地を歩いて、学校に向かっていると、アヤネに会った。
「あ、先生。おはようございます」
「あぁ。今日はいつもより早いが、学校に行くのか?」
「はい。今日は利息を返済する日でして・・・色々と準備があるんです。早めに登校して返済の準備もしないとですし、今後の計画も見直さないとなので・・・」
「・・・そうだな」
正直、アイツらの出した意見は偏りがあり過ぎて、計画として捉えて良いのかは疑問だが、一々そういうのにツッコミを入れていたらキリがない。
「そういえば、昨日の方々の情報が見つかりました。後ほど学校で詳細をご確認いただけますか?ゲヘナ学園の生徒だったのですが・・・」
おれはアヤネの説明を聞こうとしたが、近くから気配を感じたため、そちらに目線を向けると、見覚えのある奴が近づいてきた。
「あっ、先生じゃん!おっはよー!」
「なっ・・・!?」
昨日、学校を襲撃しようとした主犯格の一人がおれに抱きつこうとしたため、おれはバックステップで避け、いつでも刀を抜ける構えを取った。
「・・・何の用だ?」
「そんなに警戒しなくても良いじゃん」
「先生、大丈夫ですか?」
「・・・誰かと思いきや、アビドスのメガネっ娘ちゃんじゃーん?おっはよー、昨日ラーメン屋で会ったよね?」
「その後の学校の襲撃でもお会いしました!どういうことですか?いきなり馴れ馴れしく振る舞って・・・それに、メガネッ娘じゃなくて、アヤネです!」
昨日、未遂とはいえあれだけのことをやったんだ。
今度は何を企んでやがる?
「ん?だって私たち、別にメガネッ娘ちゃんたちのことが嫌いなわけじゃないし。ただ、部活で請け負ってる仕事だからさ。仕事以外の時は仲良くしたっていいじゃん?」
「お前、今更それはねぇだろ・・・」
公私を分けるのは悪いことではないが、今更言ったって遅すぎる。
それに、過去は変えられねぇからな。
「別にいいじゃん。それに『シャーレ』の先生は、あんたたちだけのモンじゃないでしょ?だよね、先生?」
「あぁ、確かにそうだ。だが、おれを目当てに小競り合いはするな」
「それは無理かなー。こっちも仕事だからね。アルちゃんがモチベ高くてさ、適当にやると怒られちゃうから。ま、いつかうちの便利屋に遊びにおいでよ、先生。アルちゃんもみんなも、きっと喜ぶからさ。そんじゃ、バイバ〜イ。アヤネちゃんもまた今度ね」
「また今度ではありません!今度会ったら撃ちます!」
「はいはーい」
アヤネの脅しに、軽い返事をして去って行った。
何というか、嵐みたいな奴だったな。
それからおれとアヤネは学校に向かうのだった。
「・・・お待たせしました。変動金利等を諸々適用し、利息は778万3250円ですね。全て現金でお支払いいただきました、以上となります。カイザーローンとお取引いただき、毎度ありがとうございます。来月もよろしくお願いします」
(ブロロロ・・・)
機械の姿をした銀行員は利息を受け取り、車に乗って走り去った。
「はぁ、今月も何とか乗り切ったねー」
「・・・完済まであとどれくらい?」
「309年返済なので・・・今までの分を入れると・・・」
「言わなくていいわよ、さらにストレスが溜まりそう・・・どうせ死ぬまで完済できないんだし!計算しても無駄でしょ!」
セリカの言うことは一理あるな。
だが、おれがコイツらに手を貸すと言ってしまった以上、何とかしないといけない。
「ところで、カイザーローンはなぜ現金でしか受け付けないのでしょうか?」
「今の時代、やろうと思えば数字を誤魔化せるからじゃねぇか?」
おれはノノミの疑問に自分の思っていること言った。
でも、そういう偽造はよっぽどそういう分野に強くないとできない筈だ。
少なくとも、今は憶測しか出ねぇから、考えても仕方ない。
そして、シロコが走り去った車を見続けている。
「シロコ先輩、襲っちゃダメだからね」
「うん、分かってる」
そう答えつつも、シロコは車から目を離さなかった。
おれはシロコが問題を起こす前に、無理矢理教室まで引っ張って、席に座らせた。
そして、会議が始まる。
「全員揃ったようなので始めます。まずは、2つの事案についてお話ししたいと思います。最初に、昨晩の襲撃の件です。私たちを襲ったのは『便利屋68』という部活です」
続けてアヤネは『便利屋68』の構成員の名前を言った。
社長が陸八魔アル。
室長が浅黄ムツキ。
課長が鬼方カヨコ。
平社員が伊草ハルカ。
以上が構成員らしい。
「ゲヘナでは、かなり危険で素行の悪い生徒たちとして知られています」
肩書きの割には構成員が少ないが、そこは指摘しないでおこう。
あげ出したらキリがなさそうだからな。
「続きまして、セリカちゃんを襲ったヘルメット団の黒幕についてです!先日の戦闘で手に入れた戦略兵器の破片を分析した結果・・・現在は取引されていない型番ということが判明しました」
「もう生産されてないってこと?」
「それをどうやって手に入れたのかしら?」
「生産が中止された型番を手に入れる方法は・・・キヴォトスでは『ブラックマーケット』しかありません」
「ブラックマーケット?どんな所なんだ?」
おれは初めて出てきた単語をアヤネに聞く。
「あそこでは中退、休学、退学・・・様々な理由で学校を辞めた生徒たちが集団を形成しており、連邦生徒会の許可を得ていない否認可の部活もたくさん活動している場所です。あの便利屋68も何度か騒ぎを起こしていると聞きました」
なるほど・・・話を聞く限り、ブラックマーケットってのはキヴォトス随一の無法地帯だが、おれたちが追っている問題が解決するかもしれない。
決まりだな。
「それじゃあ、課外授業といくか」
おれたちはブラックマーケットに着き、辺りを散策していた。
治安が悪いと聞いていたが、思った以上に賑わっている。
そして何より、街一つ分ぐらいの規模だ。
正直、連邦生徒会の手が及ばない場所が、ここまで巨大化しているとは思わなかった。
「お前ら、油断すんなよ。ここは無法地帯だ。何が起こっても不思議じゃねぇからな」
おれは近くにいる対策委員会のメンバーに促した。
だが、対策委員会のメンバーはおれの顔を見て、不思議そうな顔をしている。
「いやいや、先生が一番油断してるでしょ!両手が買った物で塞がってたら、隙だらけじゃない!」
セリカがおれの手に指を差してツッコミを入れる。
おれの両手に持っている袋・・・その中には、詰めれるだけ買いまくった酒が入ってる。
だって仕方ねぇだろ。
キヴォトスの一般的な店では、ノンアルかアルコール度数の低い酒しか売ってねぇからな。
それに対して、ブラックマーケットではアルコール度数の高い醸造酒、蒸留酒、混成酒その他諸々が売ってるから、ついつい衝動買いをしちまった。
「心配すんな。いざとなったら、刀を口に咥えて戦ってやるから」
(タタタタタッ!)
突如、近くで銃声が鳴り響いた。
「誰かー!助けてください!」
銃声が鳴った方向から、一人の少女が走ってきた。
『あの制服って・・・』
「待て!」
「待ちやがれ!」
「わわわっ、そこどいてくださいー!」
(ドンッ!)
走ってきた少女がシロコとぶつかった。
「大丈夫?・・・なわけないか、追われてるみたいだし」
そこに、追ってきた不良たちが合流してきた。
「どけ!アタシたちはそこのトリニティの生徒に用がある」
「わ、私は特に用はないのですけど・・・」
コイツはハスミやスズミと同じ、トリニティ総合学園の生徒か。
トリニティの生徒が何でこんな所にいやがるんだ?
「お前、トリニティの生徒なのか?」
「えっと・・・その・・・」
「そう、そしてキヴォトスで一番金を持っている学校でもある!だから拉致って身代金をたんまり頂こうってわけさ!」
「拉致って交渉!なかなかの財テクだろう?」
「どうだ、お前らも興味があるなら計画に乗るか?身代金の分け前は・・・」
「いるわけねぇだろ」
この金の重みも分からねぇガキが。
そんなに金が欲しいのなら、汗水流して稼ぎやがれ。
「あぁ!?」
「何だと!?」
不良たちがおれに気を取られているが、後ろには既にシロコとノノミが回り込んでいる。
(バスッ!バスッ!)
「うぎゃあ!」
シロコとノノミは不良たちを銃で殴り、制圧した。
「悪人は懲らしめないとです☆」
「うん」
「あ・・・えっ?えっ?」
あれからおれたちは、不良たちに追われていた少女・・・ヒフミに話を聞いた。
どうやらコイツは、学校をこっそり抜け出してきたらしい。
「・・・で、何でこんな場所に?」
「そ、それはですね・・・探し物がありまして・・・もう販売されていないので買うことができないのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて・・・」
「もしかして・・・戦車?」
「もしくは違法な火器?」
「化学兵器とかですか?」
「それとも酒か?」
「先生じゃないんだし、違うでしょ!」
ついノリに乗ってしまったら、セリカに怒られてしまった。
「い、いいえ・・・えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです」
「ペロロ?」
「限定グッズ?」
「はい!これです。ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ!限定生産で百体しか作られていないグッズなんですよ。ね?可愛いでしょう?」
ヒフミは鳥みたいなぬいぐるみの口にアイスを突っ込んだ感じのぬいぐるみを取り出した。
まぁ、可愛いの定義は人それぞれだからな。
そして、対策委員会メンバーが微妙な反応をしている中、ノノミが満面の笑みでヒフミに話し掛けた。
「モモフレンズですね!私も大好きです!ペロロちゃん可愛いですよねぇ!私はミスター・ニコライが好きなんです」
「分かります!ニコライさんも哲学的なところがカッコ良くて。最近出たニコライさんの本『善悪の彼方』も買いましたよ!それも初版で!」
完全に二人だけの世界が出来上がっていた。
「なぁ、何の話をしてるんだ?」
「さぁ?おじさんにはさっぱりだなー」
「ホシノ先輩と先生はファンシー系には全く興味ないでしょ」
「ふむ、最近の若いやつにはついていけん」
「あぁ、時間の流れってのは早いもんだ」
「先生はともかく、ホシノ先輩は歳の差、ほぼないじゃん・・・」.
おれたちがこんな会話を続けていると、ヒフミとノノミの二人だけの世界は終わったようだ。
「・・・ところで、アビドスのみなさんはなぜこちらへ?」
「私たちも似たようなもんだよ。探し物があるんだー」
「そう。今は生産されていなくて手に入れにくい物なんだけど、ここにあるって話を聞いて」
「そうなんですか、似たような感じなんですね」
まぁ、探し物をしているのは同じだが、おれたちの探しているものは全くと言っていい程可愛くはねぇがな。
だが、悠長に雑談をしている暇はないみたいだ。
『皆さん、大変です!四方から武装した人たちが向かってきています!』
アヤネから通信が入ると、四方から不良たちが来た。
「あいつらだ!」
「やってくれたな!痛い目に合わせてやるぜ!」
『先ほど撃退したチンピラの仲間のようです!完全に敵対モードです!』
「みたいだな」
「望むところ」
「まったく、なんでこんなのばかり絡んでくるの?私たち、何か悪いことした?」
『愚痴は後にして・・・応戦しましょう、皆さん!』
「あぁ。それとヒフミ、お前はこれを持ってどっかに隠れてろ」
おれは両手にある酒の入った袋をヒフミに押し付けた。
「えっ?ちょっと!って重っ・・・!?どれだけ買ったんですか!?」
ヒフミは何か言っているが、おれは聞き流し、『閻魔』と『三代鬼徹』を鞘から抜き、『和道一文字』を鞘から抜いて口に咥えた。
「オラァ!囲め囲め!」
「逃すなぁ!」
おれたちは不良やオートマタと呼ばれるロボット兵に囲まれた。
「お前ら、やることは分かってるな?」
「もちろん〜」
「ボコボコにしてやるわ!」
「お仕置きの時間ですね〜☆」
「ん、ボコす」
『援護はお任せを!』
そうしておれは、目の前の不良やオートマタに斬りかかった。
不良やオートマタはおれに躊躇うことなく銃をぶっ放してくるが、おれは自分に当たる弾丸だけを斬り落とし、接近して斬り伏せる。
途中、盾持ちのオートマタが現れたが、『武装色の覇気』を刀に纏わせ、硬化させて盾ごと斬り伏せた。
「これで、大方片付いたな」
だが、おれの背後から何かの物体が飛んでくる気配を感じた。
おれは首を少し傾げて避けると、通過した物体が建物に直撃して爆発した。
おれは物体が飛んできた方向に振り向くと、ロケットランチャーを持ったオートマタがいた。
「先生、大丈夫?」
「あぁ、問題ねぇ。それより、行儀の悪い奴がいるみてぇだな」
おれは不敵な笑みを浮かべながら、ロケットランチャーをぶっ放したオートマタに刀を向けた。
「心配して来てくれたとこ悪いが、アイツはおれがもらう」
「ん、先生にあげる」
おれは、爆発音を聞いて駆け付けてくれたシロコに許可みたいなものを貰い、体制を低くする。
「三刀流」
おれは三刀を構え、相手に突進した。
突進している最中に、ロケットランチャーをぶっ放してきたが、撥ね除けた。
そして、渾身の突きを放ち、オートマタを一撃で沈め、ぶっ飛ばした。
『ー"牛鬼勇爪"ー』
おれはオートマタをぶっ飛ばし、辺りを見て見ると、敵がかなり減っている。
そして、後退を始めている。
『敵、後退しています!だけどこのままでは・・・』
「援軍が来るのか・・・だったら、援軍が尽きるまで戦うまでだ」
「ま、待ってください!それ以上戦っちゃダメです!」
物陰からおれが半ば強引に押し付けておいた酒の入った袋を持ったヒフミが飛び出してきた。
「ん?どうして?」
「だ、だって・・・ブラックマーケットで騒ぎを起こしたら、ここを管理している治安機関に見つかってしまうかもしれません!」
確かに、それは面倒だな。
それじゃあ、ブラックマーケットのことはおれたちよりもヒフミの方が詳しそうだから、案内をしてもらおうか。
「分かった。おれたちはお前に従うから、案内してくれ」
「分かりました。こっちです!」
おれは『閻魔』、『三代鬼徹』、『和道一文字』を鞘に戻し、ヒフミから酒の入った袋を受け取り、対策委員会メンバーと一緒に安全な場所に案内してもらうのだった。