転生したら『海賊狩り』に成り代わっていて、先生をする件   作:ワニノコ

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覆面水着団

 

「・・・ここまで来れば大丈夫でしょう」

 

あれからおれたちはヒフミに案内され、ブラックマーケットでも比較的安全と言われる場所に来ていた。

 

「その様子だと、ここのことはかなり知ってるんだな」

 

「と、当然です。連邦生徒会の手が及ばない場所の一つですから・・・」

 

当然なわけねぇだろ。

ブラックマーケットの名前は知ってても、その中身まで詳しく知っている奴の方が少ねぇだろ。

もしかしてコイツ、ここの常連なのか?

 

「それにここでは、様々な『企業』が、この場所で違法な事柄を巡って利権争いをしていると聞きました。それだけじゃありません。ここ専用の金融機関や治安機関があるほどですから・・・」

 

「銀行や警察があるってこと・・・!?そ、それってもちろん、認可されていない違法な団体よね!?」

 

「はい・・・そうです」

 

銀行や警察まであんのか・・・しかも、違法な団体。

そんな連中に絡まれたら、何をしてくるか分からねぇから避けるのが一番だな。

 

「よし、決めたー」

 

ホシノがそう言い、何かを閃いたような顔をした。

 

「助けてあげたお礼に、私たちの探し物が手に入るまで一緒に行動してもらうねー♪」

 

「えっ?ええっ?」

 

「そりゃいいな。ヒフミ、お前はおれたちに一つ貸しがあるんだ。変なことに使われる前にチャラにしたいとは思わねぇか?」

 

こんな広いところを宛てもなく彷徨うのは危険だし、非効率的だ。

ここは、ブラックマーケットのことをよく知っている案内人が欲しい。

 

「あ、あうぅ・・・私なんかでお役に立てるか分かりませんが・・・アビドスのみなさんや先生にはお世話になりましたし、借りを返すためにも引き受けます」

 

「よーし。それじゃあ、ちょっとだけ同行頼むねー」

 

そうして、おれたちはヒフミにブラックマーケットを案内してもらうのだった。

 

 

 


 

あれから数時間が経ち、おれたちはブラックマーケットをヒフミに案内されて歩いているが、手掛かりは見つかっていない。

 

「はぁ・・・しんど」

 

「もう数時間は歩きましたよね・・・」

 

「これは流石に、おじさんも参ったなー。腰も膝も悲鳴を上げてるよー」

 

「・・・ホシノさんはおいくつなのですか?」

 

「ほぼ同年代!」

 

「先生は大丈夫?」

 

「そうだな・・・そろそろ、一杯やりたくなってきたな」

 

おれの頭の中は、買った酒を冷蔵庫でキンキンに冷やして、喉に流し込むというシチュエーションが支配していた。

 

「いいねー。今夜、おじさんと一杯やらない?」

 

「そりゃいいな。ついでにツマミでも買ってくか」

 

「ホシノ先輩はお酒を飲んだらダメじゃない!先生も未成年にお酒を勧めちゃダメでしょ!」

 

おれとホシノはセリカに怒られてしまった。

別にいいだろ。おれはお前たちと同じぐらいの歳から酒は飲んでたぞ?

そうしてしばらく歩いていると、近くにたい焼き屋があった。

 

「あら!あそこにたい焼き屋さんが!」

 

「ホントだー。こんなところに屋台があるなんてね」

 

「あそこでちょっとひと休みしましょうか?たい焼き、私がご馳走します!」

 

「えっ!?ノノミ先輩、またカード使うの!?」

 

「先生の『大人のカード』もあるよ〜」

 

やかましいわ。

お前、さては他人の金で食う飯は最高に美味いってのを知ってるな?

 

「ううん、私が食べたいからいいんですよ☆みんなで食べましょう、ねっ?」

 

そうしてノノミは屋台で全員分のたい焼きを買った。

 

「おいしい!」

 

「いやぁ、ちょうど甘いモノが欲しかったところだったんだー」

 

「あはは・・・いただきます」

 

「ほら・・・先生も」

 

おれはシロコからたい焼きを受け取り、食べる。

甘いチョコは苦手だが、たい焼きの中身は甘さ控えめのあんこだから、食べやすい。

 

「アヤネちゃんには、戻ったらちゃんとご馳走しますね。私たちだけでごめんなさい・・・」

 

『あはは。大丈夫ですよ、ノノミ先輩。私はここでお菓子とかつまんでますし・・・』

 

「しばしブレイクタイムだねー」

 

対策委員会メンバーとヒフミは雑談をしながら、たい焼きを食べ進める。

たい焼きを食べ終えたヒフミが、疑問に思っていることを呟いた。

 

「ここまで情報がないなんてありえません・・・妙ですね」

 

「妙?」

 

「はい。皆さんが探している物の情報が絶対どこかにあるはずなのに、探しても探しても出てきません。販売ルート、保管記録・・・全て何者かが意図的に隠しているような、そんな気がします。いくらここを牛耳っている企業でも、ここまで徹底してブラックマーケットを統制することは不可能なはず・・・」

 

確かにな。

ここは無法地帯だ。

そんな所を統制するなんて、かなりの労力が必要になる。

 

「そんなに異常なことなの?」

 

「異常というよりは・・・普通ここまでやりますか?という感じですね・・・ここに集まっている企業は、ある意味開き直って悪さをしていますから、逆に変に隠したりはしないんです。例えば、あそこのビル」

 

ヒフミは近くの巨大なビルを指差した。

 

「あれがブラックマーケットに名を馳せる闇銀行です」

 

「闇銀行?」

 

「ブラックマーケットで最も大きな銀行の一つです。聞いた話だと、キヴォトスで行われる犯罪の15%の盗品があそこに流されているそうです・・・横領、強盗、誘拐などなど、様々な犯罪によって獲得した財貨が、違法な武器や兵器に変えられてまた他の犯罪に使われる・・・そんな悪循環が続いているのです」

 

「・・・そんなの、銀行が犯罪を煽っているようなものじゃないですか」

 

ノノミは怒りを通り越して、呆れていた。

・・・もしかしたら、アビドスの借金問題も闇銀行を叩けば何かしら解決策が出てくるかもしれねぇな。

 

「はい。ここでは銀行も犯罪組織なのです・・・」

 

「ひどい!連邦生徒会は一体何やってんの?」

 

「理由は色々あるんだろうけどねー、どこもそれなりの事情があるだろうからさ」

 

「現実は、思った以上に汚れているんだね。私たちはアビドスばかりに気を取られすぎて、外のことをあまりにも知らな過ぎたかも・・・」

 

『お取り込み中失礼します!そちらに武装した集団が接近中!気付かれた様子はありませんが、まずは身を潜めてください!』

 

通信から、アヤネの声が聞こえた。

おれたちはアヤネの指示に従い、身を潜める。

おれたちは身を潜めると、複数のバイクのエンジン音が聞こえた。

 

「あれはなんだ?」

 

「あれはマーケットガードです。ここの治安機関でも最上位の組織です!・・・パトロール?護衛中のようですが・・・」

 

複数のマーケットガードは一台のトラックを護送していた。

そして、闇銀行の前に止まり、トラックの中から出てきた人を見て、対策委員会のメンバーは驚愕する。

 

「見てください・・・あの人・・・」

 

「な、何で!?アイツは毎月うちに来て利息を受け取っているあの銀行員・・・?」

 

「あれ、ホントだ」

 

トラックの中から出てきたのは、今朝利息を受け取った銀行員だった。

そして、何らかの書類にサインをしている。

 

「・・・どういうこと?」

 

「どうやら、カイザーローンと闇銀行は繋がってるみたいだな。車もよく見りゃ朝来たものと同じだ」

 

「か、カイザーローンですか!?」

 

「ヒフミちゃん、知ってるの?」

 

「カイザーローンと言えば・・・かの有名なカイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です・・・」

 

「有名?マズいところなの?」

 

「いえ、カイザーグループ自体は犯罪を起こしてはいません。しかし、グレーゾーンで上手く振る舞っている多角化企業で・・・もしかして、アビドスはカイザーローンから融資を・・・?」

 

ホシノはバツが悪そうな顔をしながら、答える。

 

「話すと長くなるんだよねー。アヤネちゃん、さっきの車の走行ルート、調べられる?」

 

『少々お待ちください・・・ダメですね。全てのデータをオフラインで管理しているようです。全然ヒットしません』

 

「だろうねー」

 

「そういえば、いつも返済は現金だけでしたよね。それはつまり・・・」

 

「お前たちの払っていた金が、ここに流れていた可能性があるな」

 

「じゃあ何?私たちはブラックマーケットに、犯罪資金を提供してたってこと!?」

 

「・・・ハッキリしたことは分からねぇと、何とも言えねぇな。証拠があれば確定なんだが・・・」

 

証拠か・・・状況証拠じゃなくて、物的証拠・・・ん?

 

「さっきサインしてた書類、もしかしたら証拠になるんじゃねぇか?」

 

「流石」

 

「ナイスアイデアだねー。先生」

 

だが、書類はすでに銀行の中だ。

銀行に入って書類をすんなり見せてくれるわけがない。

・・・仕方ねぇな。

 

「シロコ。あの覆面、まだ持ってるか?」

 

「ここにあるよ」

 

シロコはおれの方を向いて、目をキラキラさせながら覆面をカバンから取り出した。

 

「なるほど、あれかー。あれなのかー」

 

「あ・・・!そうですね、あの方法なら!」

 

「何?どういうこと?・・・まさか、あれなの?」

 

「そのまさかだ」

 

「う、嘘!?本気で!?だって先生、ダメって言ってたじゃん!」

 

「おれはカタギに手を出すなって言っただけだ。だが、ここにいる連中はカタギか?違うだろ?」

 

「・・・あ、あのう。全然話が見えないんですけど・・・『あの方法』って何ですか?」

 

「決まってんだろ。今から銀行を襲うんだ」

 

おれはヒフミに伝わりやすいように、簡単に説明した。

 

「はいっ!?」

 

ヒフミは驚愕している。

そして、対策委員会のメンバーは覆面を被っていた。

 

「だよねー、そういう展開になるよねー」

 

「はいいいっ!?!?」

 

「そしたら悪い銀行をやっつけるとしましょう!」

 

「えええっ!?!?ちょ、ちょっと待ってください!」

 

「・・・マジで?マジなんだよね・・・?」

 

セリカは若干戸惑いつつも、覆面を被った。

 

「それなら、とことんやるしかないか!」

 

「あ、うあ・・・?あわわ・・・?」

 

ヒフミは驚き過ぎて、呂律が回っていない。

 

『・・・はぁ、了解です。先生が銀行を襲うのに手を貸してくれれば、どうにかなる、はず・・・』

 

アヤネもなんだかんだで納得してくれた。

 

「後は、ヒフミだけだな。誰か、覆面の代わりになるものは持ってないか?」

 

「えぇ!?覆面・・・えっと、だから・・・あ、あう・・・」

 

「先生、これがありますよ」

 

ノノミはヒフミにさっき買ったたい焼きの紙袋を目だけ見えるようにして被せた。

 

「あううぅ・・・」

 

「ん、完璧」

 

「番号も振っておきました。ヒフミちゃんは5番です☆」

 

「案外、様になってるじゃねぇか」

 

「わ、私もご一緒するんですか?闇銀行の襲撃に・・・?」

 

「ヒフミちゃんは私たちに作った貸しがあるじゃーん?」

 

「う、うああ・・・わ、私、もう生徒会の人たちに合わせる顔がありません・・・」

 

「問題ないよ!悪いのはあっちだから!」

 

「そうそう。あとは先生だけだねー」

 

「先生、これを」

 

シロコはカバンの中から黒いサングラスを取り出した。

しかも、かなり濃い色をしたものだ。

だが、サングラスだけではすぐに身バレする。

おれは左上腕に巻いている黒い手拭いを取って、口から鼻を覆い隠すように巻き、シロコからサングラスを受け取って目に掛けた。

 

「これで問題ねぇだろ」

 

「先生、前見えるの?」

 

「見えねぇが、気配を常に探っていれば問題ねぇ」

 

目が見えないのはハンデになるかもしれないが、修行で左目を敢えて閉じて『見聞色の覇気』を鍛えたんだから、油断しなければ問題ない。

 

「それじゃあ先生、合図を」

 

「あぁ、そうだな」

 

おれは物陰に酒の入った袋を置き、合図を出した。

 

「銀行を襲うぞ!」

 

 

 


 

一方その頃、便利屋68はアビドス襲撃のための資金を得るために、ブラックマーケットの闇銀行に来ており、融資の相談に来ていた。

しかし、受付を済ませたのは良いものの、すでに半日が経過していた。

そして、ようやく銀行審査員に呼ばれた。

 

「お待たせしました、お客様」

 

「本当に待ったわよ。それで、どうなの?」

 

「お客様。誠に残念ですが、融資は難しいですね」

 

「えっ、えーっ!?」

 

アルは驚きのあまり、白目を剥いてしまった。

そして、銀行審査官は追い打ちをかけるようにペーパーカンパニーだの、書類上では財政が破綻しているだの、事務所の賃貸料が高いだの、挙げ句の果てには、『肩書きの無駄遣いでは?』と言われてしまった。

 

「まずは、より堅実な職に就いてみてはいかがでしょうか。日雇いや期間工など、手っ取り早く始められるものもありますが?」

 

「は?はあぁ!?」

 

銀行審査員に事務的でありながら、言い返すことのできない正論を言われてしまった。

そしてアルは、悔しさのあまり、体が震えている。

 

「(ムカつく・・・もう大暴れして、銀行のお金を持ち出しちゃおうかしら?・・・いや、それはダメね。仮にお金を持ち出せたとしても、あちこちにマーケットガードがいる。・・・はぁ、やっぱ無理。ブラックマーケットを敵に回すなんて、そんな勇気ないわ・・・もう、何なのよ・・・キヴォトスいちのアウトローになるって心に決めたのに、私は融資だのなんだの・・・こんなつまらないことばかりに悩まされて・・・私が望んでいるのはこれじゃない・・・何事にも恐れず、何事にも縛られない、ハードボイルドなアウトロー・・・そうなりたかったのに・・・)

 

アルは自分の理想と現実の違いに打ちのめされている時、銀行内の電気を始めとした電子機器が全て消え、闇に包まれた。

 

「な、何事ですか?停電!?」

 

「い、一体誰が!?パソコンの電源も落ちてるじゃないか!」

 

(ダダダダダダダダダッ!ダダダダダダダダダッ!)

 

暗闇の銀行内から突如、銃声が鳴り響いた。

 

「うわっ!ああああっ!」

 

「うわああっ!」

 

「な、何が起きて・・・うああっ!」

 

数人のマーケットガードがダウンすると、電気がついた。

そして、そこにいたのは、覆面や紙袋を被った少女と、口から鼻を覆うように黒い手拭いを巻き、サングラスを掛けている、腰に三本の刀を差している男がいた。

 

 

 


 

「全員その場に伏せなさい!持っている武器を捨てて!」

 

シロコが先陣を切り、叫ぶ。

 

「言うことを聞かないと、痛い目にあいますよ☆」

 

「あ、あはは・・・みなさん、ケガしちゃいけないので・・・伏せてくださいね・・・」

 

ヒフミが注意している後ろで、マーケットガードの一人が銃を撃とうとしているのが見えたので、おれは『和道一文字』を鞘から抜き、『武装色の覇気』を纏わせて黒刀に変化させ、銃を切断する。

 

「・・・余計なことするんじゃねぇよ」

 

続けておれはマーケットガードの首に峰打ちを入れ、気絶させた。

そして、銀行員が近くの警報装置を何度も押しているが、反応はない。

 

「無駄無駄ー。外部に通報される警備システムの電源は落としちゃったからねー」

 

「ひ、ひい!」

 

銀行員にショットガンを突き付けたまま、ホシノはヒフミに顔を向ける。

 

「うへ〜ここまでは計画通り!次のステップに進もうー!リーダーのファウストさん!指示を願う!

 

「えっ!?えっ!?ファウストって、わ、私ですか?リーダーですか?私が!?」

 

「リーダーです!ボスです!ちなみに私は・・・覆面水着団のクリスティーナだお♧」

 

・・・ダッセ。

セリカもおれと同じ意見みたいで、ダサいとツッコミを入れている。

そして、ヒフミがリーダーなのは初耳だが、面白そうなので放っておこう。

おれも、面白半分でヒフミをからかってみる。

 

「ファウストさんはな、一度怒ったらその場にいる全員を皆殺しにするんだぞ?」

 

おれの脅し半分、ヒフミへのからかい半分の言葉に銀行員たちは震え上がっている。

 

「そんなことはしませんよ・・・それに、リーダーになっちゃいました・・・これじゃあ、ティーパーティーの名に泥を塗る羽目に・・・」

 

お前が学校をこっそり抜け出して、おれたちに貸しを作ったのが運の尽きだったな。

一通り銀行内を制圧し、辺りを見渡すと、便利屋68のメンバーがいたが、特に敵意はなさそうだ。

そして、シロコはカウンターの方に銃口を向けながら歩き、近づいている。

 

「全員、無駄な抵抗はしないこと。そこのあなた、このバッグに入れて。少し前に到着した現金輸送車の・・・」

 

「わ、分かりました!何でも差し上げます!現金でも、債券でも、金塊でも!」

 

「そ、そうじゃなくて・・・集金記録を・・・」

 

銀行員は色んなものを詰めれるだけ詰めて、シロコに渡した。

 

「あの、シロ・・・いや、ブルー先輩!ブツは手に入った?」

 

「う、うん。確保した」

 

「それじゃあ全員撤収だ!さっさとずらかるぞ!」

 

「アディオース☆」

 

「け、ケガ人はいないようですし・・・さよならっ!」

 

おれたちは銀行から出た。

そして、おれが物陰に置いた酒の袋を回収して、その場を後にするのだった。

 

 

 


 

おれたちはマーケットガードの包囲網が構築される前に安全な所に到着した。

 

『本当にブラックマーケットの闇銀行を襲っちゃうなんて・・・ふぅ・・・』

 

「シロコちゃん、集金記録の書類はちゃんと持ってるよね?」

 

「う、うん・・・バッグの中に」

 

シロコはバッグを開けると、中には札束がぎっしりと詰められていた。

そしてシロコは、案の定、盗んだと誤解を受けている。

 

「ち、違う・・・目当ての書類はちゃんとある。このお金は、銀行の人が勝手に勘違いして入れただけで・・・」

 

「うへ、軽く1億はあるね」

 

「やったぁ!早く持って帰るわよ!」

 

セリカはバッグを持って帰ろうとするが、おれは待ったをかける。

 

「ちょっと待て。そんなことをしたら、本当に犯罪になるぞ」

 

「・・・」

 

おれの指摘に誰もが沈黙する。

だが、セリカは声をあげて反論してきた。

 

「は、犯罪だから何!?このお金はそもそも、私たちが汗水流して稼いだお金なんだよ!それがあの闇銀行に流れてたんだよ!」

 

セリカの言うことは確かにそうだ。

この金をそのままにしておけば、武器や兵器に変えられていたかもしれない。

だが、このまま金を盗めば、対策委員会のメンバーは、犯罪者になってしまう。

 

「悪人のお金を盗んで、何が悪いの!?」

 

「・・・私はセリカちゃんの意見に賛成です。犯罪者の資金ですし、私たちが正しい使い方をした方がいいと思います」

 

「ほらね!これさえあれば、学校の借金はかなり減るんだよ!?」

 

「・・・お前らは本当にそれでいいのか?」

 

おれは静かに呟いた。

だが、その言葉は全員に聞こえていたみたいだ。

 

「それでいいのかって何がよ?」

 

「・・・確かに、その金はお前たちの金かもしれない。だがな、その金を盗めばお前らは名実ともに犯罪者だ。そして、お前らから金を搾り続けた連中と同じ土俵に立つことになるんだぞ!」

 

「ッ・・・!」

 

おれの言葉にセリカとノノミは動揺する。

そして、ホシノも金を持ち帰るのに反対した。

 

「おじさんは先生の意見に賛成かなー。私たちに必要なのは書類だけ。お金じゃない。今回のは悪人の犯罪資金だからいいとして、次はどうする?その次は?」

 

「・・・」

 

「こんな方法に慣れちゃうと・・・ゆくゆくは、きっと平気で同じことをするようになるよ。そしたら、この先またピンチになった時・・・『仕方ないよね』とか言いながら、やっちゃいけないことに手を出すと思う」

 

紛れもない正論だな。

確かに、人ってのは一度楽なことに味を占めたら、何度も同じことをやっちまうからな。

 

「おじさんとしては、カワイイ後輩がそうなっちゃうのはイヤだなー」

 

普段はのんびりしていて、どこか抜けている感じがする奴だが、頼りになる先輩じゃねぇか。

 

「こんな方法を使うくらいなら、最初からノノミちゃんが持ってるゴールドカードに頼ってたはずだよー」

 

「・・・そうでしたね。きちんとした方法で返済をしない限り、アビドスはアビドスではなってしまう・・・」

 

「うへ、そういうこと」

 

どうやら、考えがまとまったみたいだな。

おれはバッグの中から書類を取り出す。

 

「それじゃ、とっとと帰るぞ。おれたちの目的は書類だけだからな」

 

全員が納得し、おれたちはその場を離れようとしたのだが

 

「ま、待って!」

 

便利屋68のアルが息を切らしながら、走ってきた。

おれたちはいつでも戦えるように身構える。

 

「あ、落ち着いて。私は敵じゃないから・・・」

 

仮にそうだとしても、何でいるんだよ。

銀行から追ってくる連中なんて、マーケットガードぐらいしかいねぇだろ。

 

「あ、あの・・・大したことじゃないんだけど・・・銀行の襲撃、見せてもらったわ・・・ブラックマーケットの銀行をものの5分で攻略して撤収・・・あなたたち、稀に見るアウトローっぷりだったわ」

 

「・・・!?」

 

「正直、すごく衝撃的だったというか、このご時世にあんな大胆なことができるなんて・・・感動的というか。わ、私も頑張るわ!法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂!そんなアウトローになりたいから!」

 

・・・一体、何の話をしているんだか。

とりあえず、コイツがアウトローになりたいのは分かった。

 

「そ、そういうことだから・・・な、名前を教えて!」

 

「名前・・・!?」

 

「その、組織っていうか、チーム名とかあるでしょ?私が今日の雄姿を心に刻んでおけるように!」

 

何やら、盛大な勘違いをしているみたいだな。

おれたちにそんなもの、あるわけがない。

 

「・・・はい!おっしゃることは、よーく分かりました!」

 

ノノミか・・・嫌な予感がする。

 

「私たちは、人呼んで・・・覆面水着団!」

 

「・・・覆面水着団!?」

 

・・・ダッセ。

セリカに至っては、頭を抱えている。

そして、反応はというと

 

「や、やばい・・・!超クール!カッコ良すぎるわ!」

 

・・・人のセンスってヤツは、よく分からん。

そして、ホシノがさらに付け加える。

 

「本来はスクール水着に覆面が正装なんだけど、ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面だけなんだー」

 

もはや、何が何だか分からなくなっている。

そしてさらに、ノノミも『普段はアイドル活動、夜は悪人を倒す正義の怪盗』という意味の分からん設定を付け足して、何が何だか分からなくなってきた。

おれと同じ気持ちになったのかは知らないが、セリカが小声で「もういいでしょ?適当に逃げようよ!」と言っていた。

 

「それじゃあこの辺で。アディオス〜☆」

 

「行こう!夕日に向かって!」

 

「夕日、まだですけど・・・」

 

おれたちは逃げるように、足早に去っていくのだった。

そして、おれたちは学校に着き、あることに気がつく。

 

「そういや、金が入ったバッグはどうした?」

 

「・・・あれ?・・・置いてきちゃいました」

 

「どうせ捨てるつもりだったし、気にしない、気にしない」

 

「うん。誰かに拾われるでしょ、きっと」

 

「ですよね☆お金に困ってる人が拾ってくれるといいですね」

 

ま、良いことをしたと思っておけば良いか。

それが、世のため人のためになるだろう。

おれはそんなことを言い聞かせながら、対策委員会のメンバーとヒフミ一緒に書類を確認するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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