大罪背負いしヒーローアカデミア   作:Ks5118

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第2話 雄英入試試験

 ──雄英入学、数ヶ月前──

 

 崩壊しかけた廃墟。静寂の中、砂埃だけがゆっくりと舞っている。

 

 中央に立つのは、海馬七罪。

 

 右目は赤。左目は黒。

 

 ゆっくりと息を整える。

 

 七罪[単体じゃない……全部繋げる……]

 

 七罪[戦場は止まらない……だから俺も止まるな……]

 

 七罪「……行くぞ」

 

 ■ 開始〈怠惰 → 嫉妬〉

 

 左目が黄色に変わる。

 

 空気が重くなる。

 

 半径20メートルに、怠惰の領域が広がる。

 

 七罪は歩き出す。

 

 七罪[まず“場”を作る……動きを削る……]

 

 そのまま、左目が白へ移行。

 

 嫉妬を重ねる。

 

 黄色と白の粒子が混ざる。

 

 七罪[全体を鈍らせて……その中で“選ぶ”……]

 

 視線を一点に集中。

 

 特定対象のみ、さらに弱体化。

 

 七罪「……捕まえた」

 

 ■ 接近〈憤怒〉

 

 左目が赤く燃える。

 

 同時に黒が混ざる。

 

 複合発動。

 

 七罪は地面を蹴る。

 

 ──ドンッ!! 

 

 一瞬で間合いを詰める。

 

 だが今回は違う。

 

 七罪[出力……抑えろ……! ]

 

 拳を振る。

 

 瓦礫の一部だけを正確に破壊。

 

 衝撃は最小限。

 

 七罪「……制御成功」

 

 ■ 中距離制圧〈暴食〉

 

 瓦礫が崩れ、破片が飛ぶ。

 

 七罪は手をかざす。

 

 左目が青に変わる。

 

 七罪「……吸え」

 

 黒い粒子が渦を巻き、すべてを飲み込む。

 

 破片、砂、衝撃。

 

 完全吸収。

 

 七罪[これで……被害は広がらない]

 

 一歩踏み込む。

 

 七罪「……返す」

 

 吸収した瓦礫を高速射出。

 

 ──ドォン!! 

 

 壁が砕ける。

 

 七罪[攻防一体……使える]

 

 ■ 分身〈傲慢〉

 

 左目が紫に変わる。

 

 同時に、分身を一体生成。

 

 七罪「……挟むぞ」

 

 本体が前へ。

 

 分身が横へ回り込む。

 

 時間差攻撃。

 

 斬撃、蹴り、体術。

 

 七罪[同時じゃない……ズラせ……読ませるな……]

 

 分身が囮になり、七罪本体が背後を取る。

 

 七罪「……取った」

 

 一撃。

 

 分身が消える。

 

 ■ 戦況判断〈強欲・思考」

 

 七罪は一瞬動きを止める。

 

 七罪[ここで強欲……使うなら……]

 

 七罪[相手の切り札か……それとも即戦力か……]

 

 手を握る。

 

 七罪「……判断が遅いと終わる」

 

 すぐに思考を切り替える。

 

 七罪[今は不要……次に繋げる]

 

 ■ フィニッシュ(複合制圧)

 

 左目が完全に黒へ染まる。

 

 黒い粒子が空間を支配する。

 

 七罪[全部使う……制御しろ……]

 

 怠惰(領域)

 

 +嫉妬(弱体)

 

 +憤怒(低出力)

 

 +暴食(防御)

 

 +傲慢(武器)

 

 同時発動。

 

 空気が重く歪む。

 

 七罪は踏み込む。

 

 鈍化した空間の中で、自分だけが動ける。

 

 七罪「……終わりだ」

 

 一閃。

 

 瓦礫が崩れ、戦場が静まる。

 

 ■ 終了

 

 黒い粒子がゆっくりと消える。

 

 左目が元の黒に戻る。

 

 静寂。

 

 七罪はその場に立ったまま、呼吸を整える。

 

 七罪「……はぁ……っ……」

 

 膝に手をつく。

 

 七罪[まだ……重い……]

 

 七罪[でも……繋がった……]

 

 顔を上げる。

 

 七罪[単体じゃ足りない……全部で一つだ……]

 

 ヒミコの記憶。

 

 転弧の記憶。

 

 七罪[守るなら……この形だ……]

 

 拳を握る。

 

 七罪「……なってやるよ」

 

 小さく笑う。

 

 七罪「最強最高のヒーローに」

 

 廃墟の中、黒い粒子の残像だけが、静かに揺れていた。

 

 ──雄英入試、筆記試験──

 

 春の柔らかな光が差し込む教室。整然と並べられた机と椅子、その一つに海馬七罪は静かに腰を下ろしていた。

 

 周囲には同年代の受験生たち。緊張した空気が漂い、紙の擦れる音や小さな息遣いがやけに響く。

 

 七罪はペンを指先で軽く回しながら、問題用紙が配られるのを待つ。

 

 七罪[……まずは筆記……ここで落とすわけにはいかない]

 

 七罪[ヒーローになるなら、頭も必要だ]

 

 試験官の声が響く。

 

「──開始」

 

 その瞬間、空気が張り詰める。

 

 七罪はすぐに問題用紙をめくる。

 

 視線が走る。

 

 七罪[……把握]

 

 全体を一瞬で読み切る。

 

 難問、応用、計算、倫理、戦術理論。

 

 七罪[解ける]

 

 七罪[時間も余るな]

 

 迷いはない。

 

 ペンが紙の上を滑る。

 

 カリ、カリ、カリ──

 

 一定のリズム。

 

 止まらない。

 

 七罪[優先順位……難問から処理……]

 

 七罪[時間配分……残りを逆算……]

 

 最初に難しい問題へ取り掛かる。

 

 思考は冷静。

 

 感情は入らない。

 

 式を組み、理論を繋ぎ、答えへ到達する。

 

 七罪[……通る]

 

 すぐに次。

 

 無駄な確認はしない。

 

 確信があるからだ。

 

 周囲では、手が止まる音。

 

 ため息。

 

 焦り。

 

 だが七罪のペンは止まらない。

 

 七罪[“迷う時間”が一番無駄だ]

 

 七罪[わからない問題はない……全部解く]

 

 中盤を超える。

 

 既に大半が埋まっている。

 

 七罪は一度だけ手を止める。

 

 七罪[……確認]

 

 見直し。

 

 ミスを潰す。

 

 計算のズレ、記述の抜け。

 

 すべて拾う。

 

 七罪「……よし」

 

 小さく呟く。

 

 残り時間はまだ十分以上ある。

 

 周囲をちらりと見る。

 

 まだ半分も進んでいない者が多い。

 

 七罪[……関係ない]

 

 視線を戻す。

 

 再度、全体をチェック。

 

 七罪[穴はない]

 

 七罪[満点だ]

 

 ペンを置く。

 

 静かに背もたれに体を預ける。

 

 七罪[筆記は問題ない……次は実技]

 

 七罪[ここからが本番だ]

 

 窓の外に目を向ける。

 

 春の空は高く、青い。

 

 七罪[待ってろ……]

 

 七罪[今度こそ……ちゃんと守る]

 

 その瞳には、穏やかさと同時に、強い意志が宿っていた。

 

 ──雄英入試、筆記試験(終了)──

 

 ──雄英入試、実技試験──

 

 広大な実技試験会場。無機質な建物群が並び、コンクリートの地面がどこまでも広がっている。受験生たちがそれぞれの場所で待機し、緊張と高揚が入り混じった空気が漂っていた。

 

 海馬七罪は、その一角で静かに立っている。

 

 腕を軽く組み、周囲を観察する。

 

 七罪[……人、多いな……]

 

 七罪[能力もバラバラ……連携は期待できない……]

 

 七罪[なら、自分で全部やるしかない]

 

 視線が自然と動く。

 

 個性の雰囲気、体の動き、立ち方。

 

 戦えるかどうかを、無意識に判断していく。

 

 その時──

 

 少し離れた場所で、慌てた動きが目に入る。

 

 小柄な少年が、何かに引っかかるようにしてバランスを崩した。

 

 七罪[……危なっ]

 

 反射的に体が動く。

 

 七罪は一歩踏み出し、その少年の腕を掴んで支える。

 

 七罪「っと、大丈夫か?」

 

 少年は目を丸くして七罪を見る。

 

 緑色の髪、どこか気弱そうな表情。

 

 出久「は、はいっ! す、すみませんっ!」

 

 慌てて頭を下げる。

 

 七罪は軽く手を離す。

 

 七罪「いや、怪我してないならいい」

 

 出久はまだ少し緊張した様子で立ち直る。

 

 出久「ありがとうございます……! あの、僕……つい足がもつれて……」

 

 七罪「緊張してるんだろ」

 

 出久「は、はい……! やっぱり雄英の試験って思うと……」

 

 七罪は少しだけ笑う。

 

 七罪「まぁな。でも、焦ると余計ミスるぞ」

 

 出久はその言葉にハッとする。

 

 出久「……あ……はい……」

 

 少しだけ呼吸を整える。

 

 出久[この人……落ち着いてる……]

 

 出久[なんか……安心する……]

 

 七罪は少年を一度見てから、視線を前へ戻す。

 

 七罪「名前は?」

 

 出久「え、あっ! 緑谷出久です!」

 

 七罪「海馬七罪」

 

 短く名乗る。

 

 出久「か、かいばさん……!」

 

 七罪「七罪でいい」

 

 出久「な、七罪くん……!」

 

 少しぎこちなく言い直す。

 

 七罪は小さく頷く。

 

 七罪「お前、ヒーロー志望なんだろ?」

 

 出久「も、もちろんです! 絶対に……なりたくて……!」

 

 その目は、さっきまでの弱さとは違う光を持っていた。

 

 七罪はそれを見て、わずかに目を細める。

 

 七罪[……いい目してる]

 

 七罪[怖がってるけど……折れてない]

 

 七罪「じゃあ大丈夫だな」

 

 出久「え?」

 

 七罪「その目してるやつは、簡単には諦めねぇよ」

 

 出久は驚いたように七罪を見る。

 

 出久「……あ……」

 

 少しだけ、表情が柔らぐ。

 

 出久[この人……すごいな……]

 

 出久[なんでそんなに……自信があるんだろう……]

 

 七罪は肩の力を抜きながら言う。

 

 七罪「まぁ、無理はすんな。死ななきゃ何とかなる」

 

 出久「そ、それはちょっと怖いですけど!?」

 

 思わずツッコミが出る。

 

 七罪は少し笑う。

 

 その時──

 

 スピーカーからアナウンスが響く。

 

「──実技試験を開始します」

 

 空気が一気に張り詰める。

 

 受験生たちの表情が変わる。

 

 七罪は前を向く。

 

 七罪[来たか……]

 

 拳を軽く握る。

 

 七罪[ここからが本番]

 

 横を見ると、出久も必死に前を見ている。

 

 七罪「……出久」

 

 出久「は、はい!」

 

 七罪「死ぬなよ」

 

 出久「はいっ!」

 

 七罪は小さく頷く。

 

 七罪「じゃあな」

 

 一歩、前へ出る。

 

 その背中は、もう完全に“戦う者”のものだった。

 

 出久はその背中を見つめる。

 

 出久[七罪くん……]

 

 出久[すごい……強そうだ……]

 

 試験開始の合図が鳴る。

 

 その瞬間──

 

 七罪は地面を蹴った。

 

 ──ドンッ!! 

 

 地面を蹴り抜き、一直線にロボへ突っ込む。

 

 七罪「……よし、まずは様子見だな」

 

 最初の一体が腕を振り上げる。

 

 七罪「遅いって」

 

 踏み込み、拳を叩き込む。

 

 ──バゴォン!! 

 

 装甲が歪む。

 

 七罪「っ……やっぱ硬ぇな」

 

 顔をしかめつつも、すぐに視線を下げる。

 

 七罪「でも関節は別だろ」

 

 膝へ蹴り。

 

 バキッ!! 

 

 崩れる。

 

 七罪「はい一体」

 

 そのまま蹴り飛ばす。

 

 背後から別のロボ。

 

 七罪「うわ、来た来た」

 

 振り向きざまに手をかざす。

 

 左目が青へ。

 

 七罪「……飲め」

 

 ロボの腕を吸収。

 

 七罪「よし」

 

 そのまま腕を振る。

 

 七罪「返すぞ」

 

 ──ドォン!! 

 

 別のロボへ直撃。

 

 七罪「お、いいなこれ」

 

 少し口元が緩む。

 

 さらに二体。

 

 七罪「……数で来るか」

 

 一瞬考える。

 

 七罪「じゃあ、こっちだな」

 

 左目が紫へ。

 

 黒い粒子が手に集まる。

 

 七罪「分身は無し……武器優先」

 

 片手剣が形成される。

 

 七罪「これの方が速い」

 

 踏み込む。

 

 一体目の攻撃を避けながら──

 

 七罪「まず一体!」

 

 斬る。

 

 ──ザンッ!! 

 

 関節が切断される。

 

 七罪「よしよし」

 

 すぐに反転。

 

 七罪「次!」

 

 横薙ぎ。

 

 センサー破壊。

 

 機能停止。

 

 七罪「やっぱ剣楽だな……」

 

 そのまま壁を蹴る。

 

 七罪「上から見るか」

 

 跳躍、翼展開。

 

 七罪「っと……」

 

 少しだけ揺れる。

 

 七罪「まだ慣れねぇなこれ」

 

 すぐに安定。

 

 下を見下ろす。

 

 七罪「……結構いるな」

 

 ロボの群れ。

 

 七罪「まとめていくか」

 

 一瞬だけ思考。

 

 七罪「いや……分身出したら武器消えるな」

 

 小さく舌打ち。

 

 七罪「じゃあこのまま行く」

 

 急降下。

 

 七罪「もらい!」

 

 剣を振り下ろす。

 

 ──バキィッ!! 

 

 頭部破壊。

 

 七罪「ナイス」

 

 着地と同時に次へ。

 

 ロボの腕が振り下ろされる。

 

 七罪「っと危な」

 

 剣で受け流す。

 

 火花が散る。

 

 七罪「力任せだなほんと」

 

 懐に潜る。

 

 七罪「ここだろ」

 

 突き。

 

 内部へ貫く。

 

 停止。

 

 七罪「……よし」

 

 さらにもう一体突進。

 

 七罪「しつこいな!」

 

 横に避ける。

 

 手をかざす。

 

 左目が青へ。

 

 七罪「……飲め」

 

 突進エネルギーごと吸収。

 

 七罪「……よし」

 

 振り抜く。

 

 七罪「返す!」

 

 ──ドォン!! 

 

 吹き飛ばす。

 

 七罪「はぁ……」

 

 軽く息を吐く。

 

 七罪「悪くねぇな、今の」

 

 その時──

 

 ドゴォォォォン……!! 

 

 地面が揺れる。

 

 七罪「……なんだよ今の……」

 

 振り向いた先、視界いっぱいに広がる巨体。

 

 七罪「……でけぇな、おい」

 

 0ポイントロボ。

 

 受験生たちが一斉に逃げ出している。

 

 七罪「まぁ、普通はそうなるよな……」

 

 そう言いながらも、足は止まったまま。

 

 視線が横へズレる。

 

 瓦礫の下、動けない受験生。

 

 七罪「……あー……見えちまった」

 

 小さく息を吐く。

 

 七罪「……仕方ねぇな、ほんと」

 

 肩を回す。

 

 左目が黒く染まる。

 

 七罪「助けてから考えるか……!」

 

 翼を展開。

 

 ──ドンッ!! 

 

 地面を蹴り、一直線に飛び出す。

 

 その瞬間──

 

 別方向から飛び出す影。

 

 七罪「……は?」

 

 緑の髪。

 

 さっきの少年。

 

 七罪「出久……!?」

 

 出久が空中へ跳び上がる。

 

 腕を振りかぶる。

 

 七罪[あいつ……やる気かよ!? ]

 

 一瞬の驚き。

 

 だが、すぐに口元が上がる。

 

 七罪「……いいじゃん」

 

 黒い粒子が腕に集まる。

 

 七罪「じゃあ、合わせるぞ!」

 

 粒子が形を成す。

 

 拳を覆う──ガントレット。

 

 七罪「これなら……ぶち抜ける!」

 

 加速。

 

 空中へ。

 

 七罪「行くぞ!!」

 

 出久「うおおおおおおおおッ!!」

 

 七罪「ぶっ壊すッ!!」

 

 ──ドォォォォォンッ!!! 

 

 出久の一撃がロボの上部を粉砕し、

 

 同時に、七罪のガントレットがコアへ叩き込まれる。

 

 重なる衝撃。

 

 巨体が歪む。

 

 装甲がひしゃげ、内部構造が露出する。

 

 七罪「まだいける!!」

 

 そのまま追撃。

 

 七罪「砕けろォ!!」

 

 ──バキィィィン!! 

 

 決定打。

 

 0ポイントロボが崩壊を始める。

 

 巨体が傾く。

 

 七罪「……っ、崩れるぞ!」

 

 瓦礫が降る。

 

 その中で、出久の体が力尽きて落ちていく。

 

 七罪「おい、マジかよ!」

 

 すぐに翼を広げる。

 

 急降下。

 

 七罪「落ちんな!!」

 

 ギリギリでキャッチ。

 

 七罪「……っぶねぇ……」

 

 衝撃を殺して着地。

 

 出久は気を失っている。

 

 腕はボロボロ。

 

 七罪「……やりすぎだろ」

 

 少し呆れたように笑う。

 

 七罪「でもまぁ……根性あるな」

 

 視線を上げる。

 

 崩れ続ける0ポイントロボ。

 

 七罪「……まだ残ってるな」

 

 左目が青へ。

 

 七罪「片付けるか」

 

 ガントレットを解き、手をかざす。

 

 黒い粒子が広がる。

 

 七罪「……全部、飲め」

 

 瓦礫、鉄塊、崩壊する巨体。

 

 すべてが渦に巻き込まれ、吸い込まれていく。

 

 ギギギ……と音を立てながら圧縮され、消失。

 

 完全沈黙。

 

 七罪「……よし」

 

 手を下ろす。

 

 七罪「これで二次被害もなし、っと」

 

 出久を見下ろす。

 

 七罪「ほんと……無茶するやつだな」

 

 少しだけ柔らかく笑う。

 

 七罪「でも、嫌いじゃねぇよ」

 

 空を見上げる。

 

 七罪「……悪くねぇな、今回」

 

 静かに息を吐いた。

 

 ──雄英入試、実技試験(終了)──

 

 ──視聴室、教師陣──

 

 薄暗い視聴室。壁一面のモニターに、実技試験の映像が映し出されている。

 

 教師たちは同じ部屋に集まり、それぞれの視線を画面へ向けていた。

 

 爆音が響く中、ひときわ大きな影が映る。

 

 0ポイントロボ。

 

 その前で──

 

 二人の受験生が同時に動いた。

 

 プレゼント・マイク「YO!! 来たぞ!! 問題児ゾーン!!」

 

 身を乗り出す。

 

 マイク「……って、おい! あの緑のやつ!」

 

 緑谷出久が走り出す。

 

 止まらない。

 

 迷いもない。

 

 ただ一直線に。

 

 マイク「ちょっと待て!! あいつ止まる気ねぇぞ!?」

 

 出久は跳ぶ。

 

 考えていない。

 

 ただ“助ける”という一点だけで動いている。

 

 相澤「……無我夢中だな」

 

 相澤消太がぽつりと呟く。

 

 相澤「状況判断も、戦術もない」

 

 相澤「ただ突っ込んでるだけだ」

 

 マイク「いやいや無茶すぎるだろ!! 死ぬぞあれ!?」

 

 その瞬間──

 

 もう一つの影が動く。

 

 七罪。

 

 マイク「……あっちは冷静だな」

 

 七罪が加速する。

 

 出久を見ている。

 

 ロボも見ている。

 

 全体を把握した上で──動く。

 

 相澤「……いや」

 

 首をわずかに振る。

 

 相澤「あれも衝動だ」

 

 マイク「は?」

 

 相澤「ただし、質が違う」

 

 相澤「“突っ込む”衝動と、“成立させる”衝動だ」

 

 次の瞬間──

 

 ──ドォォォォォンッ!!! 

 

 出久の一撃が上部を砕き、

 

 七罪のガントレットがコアを叩き潰す。

 

 マイク「うおおおおおおお!! 同時ヒット!!」

 

 セメントス「即興とは思えない精度だな……」

 

 エクトプラズム「対照的デスネ。片方ハ無我夢中、片方ハ状況把握」

 

 ロボが崩壊する。

 

 その中で──

 

 出久が落ちる。

 

 完全に力尽きている。

 

 マイク「やっぱりだ!! 落ちた!!」

 

 七罪が即座に動く。

 

 空中でキャッチ。

 

 リカバリーガール「ほらね。あの子、ちゃんと見てるよ」

 

 相澤「……ああ」

 

 相澤「無我夢中の方は、自分すら見えてない」

 

 相澤「だが、もう一人は──全部見えてる」

 

 その後。

 

 七罪が手をかざす。

 

 瓦礫が吸い込まれていく。

 

 マイク「……出たよまた!! 全部消すやつ!!」

 

 セメントス「崩落の危険も完全に排除したか」

 

 エクトプラズム「戦闘後ノ処理マデ完璧デスネ」

 

 静かに座っていた校長が口を開く。

 

 根津「実に面白い対比だ」

 

 根津「無我夢中で突き進む者」

 

 根津「そして、それを成立させる者」

 

 マイク「なんかコンビみてぇだな!」

 

 相澤「……まだコンビじゃない」

 

 小さく否定する。

 

 相澤「だが──」

 

 一瞬、言葉を選ぶ。

 

 相澤「相性は悪くないな」

 

 モニターには、

 

 倒れた出久と、それを支える七罪の姿。

 

 根津「どちらも未完成」

 

 根津「だが、どちらも“ヒーローの原石”だ」

 

 リカバリーガール「無茶する子と、それを支える子……ね」

 

 マイク「うわぁ、クラス入ったら面白くなりそうだな!!」

 

 相澤は小さく息を吐く。

 

 視線は外さない。

 

 相澤「……ああ」

 

 静かな肯定。

 

 その一言で十分だった。

 

 この瞬間、視聴室にいる全員の中で──

 

 二人の名前が、強く刻まれた。

 

 ──視聴室、教師陣(終了)──

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