大罪背負いしヒーローアカデミア   作:Ks5118

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第4話 対人訓練

 ──個性把握テストから数日後/1-A教室──

 

 昼下がり。

 

 窓から差し込む光が、教室の床をやわらかく照らしている。

 

 数日前の“試される空気”は薄れ、代わりに少しずつ“クラス”としてのざわめきが出来始めていた。

 

 上鳴「なあ、改めて思うけどさ」

 

 芦戸「ん?」

 

 上鳴「雄英って普通じゃなくね?」

 

 芦戸「それな! 入学初日からあれだよ!?」

 

 上鳴「除籍とか言われた時、マジで終わったと思ったんだけど!」

 

 芦戸「分かる分かる!!」

 

 お茶子「うち、あの時ほんまに泣きそうやったもん……」

 

 上鳴「俺もだよ!?」

 

 飯田「しかし結果的に我々は残った!」

 

 飯田「つまり、それを乗り越えたという事実こそ重要だ!」

 

 上鳴「いやポジティブすぎだろ!」

 

 芦戸「でもさ、なんかさ」

 

 芦戸「ちょっと楽しくなってきてない?」

 

 お茶子「……あー、それは分かるかも」

 

 上鳴「え、マジ? 俺まだ怖いんだけど」

 

 お茶子「でもさ、ちゃんと“ヒーローになる感じ”してきたやん?」

 

 飯田「その通りだ!!」

 

 上鳴「うるせぇ!!」

 

 笑いが起きる。

 

 だが——

 

 窓際。

 

 七罪「……」

 

 静かに外を見ている。

 

 七罪[空気は悪くない]

 

 七罪[雑音も、悪くないな]

 

 七罪[あとは——実戦か]

 

 緑谷が後ろからちらりと見る。

 

 緑谷[やっぱり……雰囲気が違う]

 

 緑谷[あの人、常に戦う前提で動いてる……]

 

 ガラッ。

 

 ドアが開く。

 

 空気が一瞬で張り詰める。

 

 オールマイト「私が来た!!」

 

 上鳴「うおおおお!!」

 

 芦戸「来た来た来た!!」

 

 飯田「オールマイト先生!!」

 

 お茶子「すごいタイミングやな毎回……!」

 

 オールマイト「いい反応だ!! 若者らしい!!」

 

 一歩前に出る。

 

 オールマイト「本日はヒーロー基礎学!!」

 

 オールマイト「内容は——対人戦闘訓練だ!!」

 

 一瞬の静寂。

 

 そして——

 

 ざわっ!! 

 

 上鳴「対人!? マジで!?」

 

 芦戸「もう戦うの!?」

 

 お茶子「ちょ、ちょっと待って心の準備が……!」

 

 緑谷「対人戦……個性の相性、戦術、心理……全部が絡む……!」

 

 飯田「ついに来たか……実戦形式……!」

 

 爆豪「……遅ぇんだよ」

 

 ボソッと吐き捨てる。

 

 爆豪「やっとかよ」

 

 七罪[……来たな]

 

 七罪[ようやく測れる]

 

 オールマイトが指を立てる。

 

 オールマイト「今回は移動教室!!」

 

 オールマイト「屋内戦闘施設を使用する!!」

 

 上鳴「施設まであるのかよ!?」

 

 芦戸「本気すぎでしょ雄英!!」

 

 お茶子「うわぁ……緊張してきた……!」

 

 オールマイト「では行くぞ!!」

 

 ──移動/施設前──

 

 巨大な建物。

 

 無機質な外壁。

 

 明らかに“戦うための場所”。

 

 上鳴「でっか……いやデカすぎだろこれ!!」

 

 芦戸「ちょっとしたダンジョンじゃん!!」

 

 お茶子「なんか映画みたいやな……」

 

 飯田「実戦環境を再現した施設だろう!」

 

 緑谷「屋内……死角……奇襲……うわ、やれること多すぎる……!」

 

 オールマイト「まずはコスチュームに着替える!!」

 

 上鳴「きたぁぁぁ!!」

 

 芦戸「待ってました!!」

 

 ──男子更衣室──

 

 ロッカーが並ぶ。

 

 上鳴「うおっ!! めっちゃカッコいい!!」

 

 切島「いいなこれ!! テンション上がる!!」

 

 爆豪は無言で着替える。

 

 七罪もケースを開く。

 

 中には——

 

 重厚な鎧。

 

 黒いローブ。

 

 七罪[……予想通りだな]

 

 七罪[防御重視、だが機動も確保されてる]

 

 装着。

 

 金属音が響く。

 

 七罪「……問題ない」

 

 上鳴がガン見する。

 

 上鳴「いやいやいやそれ絶対重いだろ!?」

 

 七罪「見た目だけだ」

 

 七罪「可動域は確保されてる」

 

 上鳴「いや信じらんねぇって……!」

 

 切島「でも動きは軽そうだな!」

 

 七罪「止まる装備に意味はない」

 

 爆豪「……ふん」

 

 ──女子更衣室──

 

 芦戸「きたきたきた!!」

 

 お茶子「うわっ、軽い!」

 

 芦戸「いいじゃんそれ!」

 

 お茶子「うん! これなら浮かせやすい!」

 

 八百万「機能性重視の設計ですわね」

 

 蛙吹「動きやすいわ」

 

 葉隠「私のもちゃんとあるよー!」

 

 芦戸「ほんと不思議だよねそれ!」

 

 八百万が少し考える。

 

 八百万「……海馬さんの装備も、かなり戦術的でしょうね」

 

 お茶子「強そうやもんなぁ……」

 

 ──再集合──

 

 全員が揃う。

 

 ヒーローコスチューム。

 

 上鳴「うお……一気にそれっぽくなったな……」

 

 芦戸「みんなヒーローだよこれ!!」

 

 緑谷「すごい……」

 

 七罪は全員を見る。

 

 七罪[戦力は十分]

 

 七罪[配置次第でどうとでもなる]

 

 ──第一戦──

 

 ヒーロー:緑谷・お茶子

 

 ヴィラン:爆豪・飯田

 

 観戦。

 

 上鳴「緑谷いけんのか!?」

 

 芦戸「爆豪相手きつくない!?」

 

 お茶子「大丈夫やで……デク……!」

 

 緑谷「う、うん……!」

 

 戦闘開始。

 

 爆豪「来いデク!!」

 

 ドゴォン!! 

 

 緑谷「くっ……!」

 

 お茶子「デク!!」

 

 飯田「冷静に動け!」

 

 爆豪「甘ぇんだよ!!」

 

 七罪[……実力差は明確だな]

 

 結果——ヴィラン勝利。

 

 爆豪「こんなもんか」

 

 ──第二戦──

 

 ヒーロー:轟・八百万

 

 ヴィラン:上鳴・耳郎

 

 上鳴「いくぞ耳郎!!」

 

 耳郎「無理すんなよ!」

 

 轟「来るか」

 

 氷展開。

 

 上鳴「うわっ!?」

 

 耳郎「速っ……!」

 

 八百万「こちらです!」

 

 完全連携。

 

 七罪[完成度が高い]

 

 ──複数戦──

 

 切島「正面から行くぞ!!」

 

 芦戸「捕まえた!!」

 

 蛙吹「甘いわよ」

 

 戦闘が続く。

 

 七罪は静かに観察。

 

 七罪[全員の癖は把握した]

 

 七罪[出力も十分見えた]

 

 ──最終戦前──

 

 オールマイト「次で最後だ!!」

 

 ざわめき。

 

 七罪が前に出る。

 

 七罪「待ってくれ」

 

 全員が振り向く。

 

 上鳴「え?」

 

 芦戸「どうしたの?」

 

 七罪「提案がある」

 

 静かに言う。

 

 七罪「チーム戦、やめないか」

 

 空気が止まる。

 

 七罪「俺一人でいい」

 

 完全な沈黙。

 

 上鳴「は……?」

 

 芦戸「え、ちょっと待って!?」

 

 お茶子「一人って……!?」

 

 爆豪が笑う。

 

 爆豪「……やっと言ったな」

 

 爆豪「最初からそれで来いよ」

 

 轟「本気か」

 

 七罪「本気だ」

 

 八百万「それでは訓練の意義が——」

 

 七罪「成立する」

 

 七罪「“勝てるかどうか”を見るなら十分だ」

 

 切島「いいじゃねぇか!!」

 

 爆豪「四人で潰す」

 

 七罪「そうしてくれ」

 

 オールマイトが腕を組む。

 

 オールマイト「……いいだろう」

 

 オールマイト「条件付きで認める!!」

 

 上鳴「マジかよ!?」

 

 緑谷「四対一……!」

 

 ──最終戦/開始直前──

 

 建物内部。

 

 静寂。

 

 七罪「……」

 

 一人、立つ。

 

 七罪[四人]

 

 七罪[正面から捌く意味はない]

 

 七罪[なら——最初に終わらせる]

 

 ゆっくり目を閉じる。

 

 開く。

 

 左目が紫に染まる。

 

《傲慢》

 

 黒い粒子が——滲む。

 

 ──外部──

 

 オールマイト「スタート!!」

 

 爆豪「行くぞォ!!」

 

 ドンッッ!! 

 

 爆発で突撃。

 

 轟「……やはり単独か」

 

 八百万「追いますわ!」

 

 切島「置いてかれるな!!」

 

 四人が建物へ向かう。

 

 ──建物内部──

 

 七罪「……閉じる」

 

 黒い粒子が一気に拡散。

 

 壁。

 

 床。

 

 天井。

 

 空間そのものを侵食する。

 

 バチッ——

 

 完全封鎖。

 

 その瞬間——

 

 左目が黒に変わる。

 

《傲慢》《嫉妬》《怠惰》同時発動。

 

 以降、維持。

 

 黒い粒子が常に漂う。

 

 七罪[これでいい]

 

 ──入口──

 

 轟たちが入る。

 

 次の瞬間——

 

 上鳴[外から]「うわ!? 閉じた!?」

 

 芦戸「何あれ!?」

 

 轟が壁に触れる。

 

 轟「……抜けられない」

 

 八百万「空間封鎖……!」

 

 切島「マジかよ……!」

 

 ──内部全域──

 

 空気が重い。

 

 鈍い。

 

 意識が引きずられる。

 

 轟「……体が重い」

 

 八百万「行動意欲の低下……」

 

 切島「気合が……乗らねぇ……!」

 

 同時に——

 

 轟「個性も弱まっている」

 

 八百万「出力低下……!」

 

 ──別通路──

 

 爆豪が進む。

 

 爆豪「……チッ」

 

 火花。

 

 小さい。

 

 爆豪「弱体化か」

 

 爆豪[関係あるか]

 

 爆豪「ぶっ潰す!!」

 

 ドンッ!! 

 

 無理やり突破。

 

 ──中央通路──

 

 七罪が立つ。

 

 左目は黒。

 

 空間全体に粒子が漂う。

 

 七罪[来る]

 

 盾を生成。

 

《傲慢》

 

 七罪[迎撃準備完了]

 

 ──接敵──

 

 爆豪「見つけたぞォ!!」

 

 煙を裂いて突撃。

 

 爆豪「テメェ!!」

 

 七罪「遅いな」

 

 爆豪「ぶっ飛べ!!」

 

 ドンッ!! 

 

 爆発直撃。

 

 だが——

 

 完全防御。

 

 爆豪「……は?」

 

 七罪「軽い」

 

 爆豪「んだとォ!!?」

 

 七罪「その状態で来るなよ」

 

 爆豪「関係あるか!!」

 

 踏み込む。

 

 ──瞬間──

 

 七罪が前へ出る。

 

 爆豪の腕を掴む。

 

 七罪「触れた」

 

 左目——黒のまま。

 

 だが内部で切り替わる。

 

《強欲》

 

 コピー成立。

 

 爆豪「なっ……!?」

 

 七罪[これが爆破か]

 

 七罪「単純だな」

 

 ──即カウンター──

 

 七罪、掌を向ける。

 

 バチッ。

 

 爆豪の目が見開く。

 

 爆豪「は?」

 

 ドンッッ!!! 

 

 至近距離爆発。

 

 爆豪「ぐっ……!!」

 

 吹き飛ぶ。

 

 壁に激突。

 

 ──追撃なし──

 

 七罪は動かない。

 

 七罪[これで理解しただろ]

 

 爆豪が立ち上がる。

 

 爆豪「……はは」

 

 爆豪「面白ぇ」

 

 爆豪「なら——」

 

 爆豪「本気で行く」

 

 ──再突撃──

 

 だが——

 

 遅い。

 

 重い。

 

 七罪は冷静。

 

 七罪[怠惰が効いてる]

 

 七罪[嫉妬で出力も落ちてる]

 

 七罪が先に動く。

 

 爆発で加速。

 

 ドンッ!! 

 

 爆豪の横へ。

 

 爆豪「!?」

 

 七罪「遅い」

 

 ドンッ!! 

 

 再度爆発。

 

 爆豪を吹き飛ばす。

 

 ──その時──

 

 轟「そこか」

 

 氷が走る。

 

 八百万「援護します!」

 

 切島「間に合った!!」

 

 三人合流。

 

 ──対峙──

 

 四人 vs 一人。

 

 だが——

 

 空間は黒。

 

 支配下。

 

 七罪「遅かったな」

 

 轟「……随分やるな」

 

 八百万「この環境……厄介ですわ」

 

 切島「でも関係ねぇ!!」

 

 爆豪「……最初から全員で潰す」

 

 七罪「来い」

 

 左目は黒のまま。

 

 粒子が揺らぐ。

 

 七罪「ここはもう——俺の戦場だ」

 

 ──中央フロア/交戦継続──

 

 爆発の残煙が揺れる。

 

 黒い粒子が、空間に満ちている。

 

 重い。

 

 鈍い。

 

 だが——

 

 その中で、さらに異質な光。

 

 バチッ。

 

 七罪の掌から、火花が散る。

 

 轟「……待て」

 

 轟の目が細くなる。

 

 轟「その爆発……」

 

 八百万「……え?」

 

 切島「どうした?」

 

 七罪が、何気なく掌を振る。

 

 ドンッ!! 

 

 小規模な爆発。

 

 だが、その“質”が——

 

 完全に同じ。

 

 轟「……爆豪の個性だ」

 

 沈黙。

 

 八百万「……そんな、まさか……」

 

 切島「は? いやいや待てって」

 

 切島「なんでだよ!?」

 

 爆豪「……気づいたか」

 

 低く笑う。

 

 爆豪「コイツ、触れてコピーしやがる」

 

 八百万「コピー……!?」

 

 轟「……個性複製型か」

 

 轟の視線が鋭くなる。

 

 轟「だが——」

 

 轟「さっきまで使っていなかった」

 

 轟「つまり、条件付きだ」

 

 七罪「正解だ」

 

 平然と答える。

 

 七罪「触れた相手の個性を使う」

 

 七罪「今はこいつのだ」

 

 軽く顎で爆豪を示す。

 

 八百万「……そんな……」

 

 八百万「それでは戦術の前提が崩れますわ……!」

 

 切島「やべぇだろそれ!!」

 

 切島「どうすりゃいいんだよ!?」

 

 轟「……いや」

 

 轟が冷静に言う。

 

 轟「無制限ではないはずだ」

 

 轟「でなければ、最初から使っている」

 

 一拍。

 

 轟「何か制約がある」

 

 七罪「あるな」

 

 あっさり認める。

 

 七罪「一人だけだ」

 

 七罪「コピーは一つ」

 

 七罪「時間制限もある」

 

 八百万「……!」

 

 轟の目がさらに鋭くなる。

 

 轟「つまり——」

 

 轟「今は爆豪の個性しか使えない」

 

 七罪「そういうことだ」

 

 爆豪が笑う。

 

 爆豪「ははっ!!」

 

 爆豪「なら話は早ぇな!!」

 

 爆豪「俺の土俵だろ!!」

 

 七罪「違うな」

 

 即答。

 

 七罪「ここは俺の戦場だ」

 

 黒い粒子が、さらに濃くなる。

 

 怠惰と嫉妬が、じわりと削る。

 

 切島「くそ……!」

 

 切島「体が重ぇ……!」

 

 八百万「思考も鈍っています……!」

 

 轟「……厄介だ」

 

 轟「領域内での戦闘は不利」

 

 爆豪「関係ねぇ!!」

 

 ドンッ!! 

 

 突撃。

 

 七罪も同時に動く。

 

 ドンッ!! 

 

 爆発と爆発がぶつかる。

 

 ──衝突──

 

 爆豪「落ちろォ!!」

 

 七罪「無理だな」

 

 爆豪「なんでだよ!!」

 

 七罪「出力が違う」

 

 爆豪「は!?」

 

 七罪「お前は弱体化してる」

 

 七罪「俺はしてない」

 

 一拍。

 

 七罪「同じ個性でもな」

 

 爆豪の顔が歪む。

 

 爆豪「……チッ!!」

 

 ──後方──

 

 八百万「……つまり、彼は環境で優位を作り」

 

 八百万「その上で個性を奪い、さらに同等以上の出力で使用している……」

 

 八百万「……最悪ですわね」

 

 切島「でもよ!!」

 

 切島「やるしかねぇだろ!!」

 

 切島「止まってたら終わりだ!!」

 

 轟「……ああ」

 

 轟が構える。

 

 轟「条件は見えた」

 

 轟「なら——崩せる」

 

 七罪がそれを聞く。

 

 七罪「やってみろ」

 

 七罪「できるならな」

 

 ──再編成──

 

 轟「役割を分ける」

 

 轟「爆豪が前」

 

 轟「切島が盾」

 

 轟「八百万が支援」

 

 轟「俺が制圧」

 

 八百万「了解ですわ!」

 

 切島「任せろ!!」

 

 爆豪「言われなくても行く!!」

 

 ──七罪──

 

 黒い粒子の中心。

 

 静かに構える。

 

 七罪[いいな]

 

 七罪[ようやく“戦い”になってきた]

 

 七罪「来いよ」

 

 ──四対一、本格戦術戦へ。

 

 ──中央フロア/最終局面──

 

 黒い粒子に覆われた空間。

 

 重い。

 

 鈍い。

 

 だが——

 

 轟「……目的を切り替える」

 

 低く言う。

 

 轟「敵じゃない」

 

 轟「爆弾だ」

 

 爆豪「はっ、最初からそうだろ」

 

 切島「一直線だな!!」

 

 八百万「なら——ルートを作ります!」

 

 ──即時再編──

 

 轟が手を振る。

 

 氷が走る。

 

 床を凍らせ、一直線の道を形成。

 

 八百万「滑走補助、入れます!」

 

 小型のグリップ装置を生成、足元に装着。

 

 切島「前は任せろォ!!」

 

 硬化、先頭へ。

 

 爆豪「遅れんなよ!!」

 

 ドンッ!! 

 

 爆発加速。

 

 四人、一直線に突っ込む。

 

 ──七罪──

 

 爆弾の前。

 

 動かない。

 

 七罪[狙いは変わった]

 

 七罪[なら、処理も単純だ]

 

 一歩、位置をずらす。

 

 爆弾と——自分を一直線に重ねる。

 

 七罪「来い」

 

 ──突入──

 

 境界を越えた瞬間——

 

 ズンッ……

 

 空気が落ちる。

 

 切島「ぐっ……!!」

 

 爆豪「チッ……重ぃ!!」

 

 八百万「思考が……遅い……!」

 

 轟「……止まるな」

 

 だが、進む。

 

 ──迎撃──

 

 七罪、動く。

 

 最小動作。

 

 ドンッ!! 

 

 爆破。

 

 先頭の切島へ直撃。

 

 切島「があっ!!」

 

 吹き飛び——だが踏みとどまる。

 

 切島「まだ行ける!!」

 

 爆豪が横を抜く。

 

 爆豪「どけェ!!」

 

 ドンッ!! 

 

 最大加速。

 

 七罪、盾。

 

 ガキィィン!! 

 

 受ける。

 

 爆豪「抜ける!!」

 

 押し込む。

 

 だが——

 

 七罪「無理だ」

 

 角度をずらす。

 

 爆豪の軌道が逸れる。

 

 ──同時──

 

 轟「止める」

 

 氷壁、展開。

 

 左右から挟み込む。

 

 七罪の動線を制限。

 

 八百万「今です!!」

 

 ワイヤー射出。

 

 バシュッ!! 

 

 拘束を狙う。

 

 ──一瞬の好機──

 

 爆豪が、爆弾へ一直線。

 

 あと数メートル。

 

 爆豪「届く……!!」

 

 ──七罪──

 

 七罪[一手遅い]

 

 踏み込む。

 

 最短距離。

 

 ドンッ!! 

 

 爆発で加速。

 

 爆豪の“内側”へ潜り込む。

 

 爆豪「なっ——!?」

 

 至近。

 

 七罪「触らせない」

 

 ドンッッ!! 

 

 爆豪、弾き飛ばされる。

 

 壁へ激突。

 

 ──崩れ──

 

 切島「爆豪ォ!!」

 

 足が止まる。

 

 その瞬間——

 

 ドンッ!! 

 

 切島にも追撃。

 

 吹き飛び、床に転がる。

 

 八百万「……っ!」

 

 判断が遅れる。

 

 ワイヤーのタイミングがズレる。

 

 七罪が一歩引く。

 

 すべて回避。

 

 轟、最後に残る。

 

 氷を構える。

 

 轟「……まだだ」

 

 七罪「来るか」

 

 轟、踏み出す。

 

 だが——

 

 ズンッ……

 

 足が、重い。

 

 一瞬の遅れ。

 

 七罪、接近。

 

 盾で氷を弾き——

 

 懐へ。

 

 轟「……!」

 

 動けない。

 

 ピタッ。

 

 手が、胸元で止まる。

 

 テープ圏内。

 

 完全に入っている。

 

 七罪「終わりだ」

 

 ──静寂──

 

 四人、倒れる。

 

 動けない。

 

 爆弾は——そのまま。

 

 ──外部──

 

 オールマイトが腕を組む。

 

 オールマイト「……決着だ」

 

 ──内部──

 

 黒い粒子が、ゆっくり薄れていく。

 

 七罪が一人、立つ。

 

 七罪「……30分もいらないな」

 

 一言。

 

 ──結果──

 

 ヴィラン側勝利。

 

 ──観戦室──

 

 モニターに映る、静まり返った中央フロア。

 

 黒い粒子が消え、七罪だけが立っている。

 

 沈黙。

 

 上鳴「……マジかよ」

 

 芦戸「四人で……勝てないの……?」

 

 お茶子「……強すぎるやろ……」

 

 緑谷「……違う」

 

 小さく、だがはっきりと。

 

 全員が振り向く。

 

 緑谷は画面を見たまま、言う。

 

 緑谷「あの人は……強いんじゃない」

 

 緑谷「“勝つ配置しか取ってない”んだ」

 

 一同「……?」

 

 緑谷「まず、戦う場所を限定した」

 

 緑谷「逃げられない、距離も取れない」

 

 緑谷「それだけで相手の選択肢を削ってる」

 

 緑谷「その上で——」

 

 緑谷「近づいたら弱くなる」

 

 緑谷「動きも鈍る」

 

 緑谷「つまり」

 

 緑谷「“勝つための条件”を先に作ってから戦ってる」

 

 芦戸「なにそれ……ずるくない?」

 

 緑谷「ううん」

 

 首を振る。

 

 緑谷「それが一番合理的なんだと思う」

 

 緑谷「しかも——」

 

 緑谷の目が鋭くなる。

 

 緑谷「攻めてない」

 

 上鳴「は?」

 

 緑谷「爆弾の前から、ほとんど動いてない」

 

 緑谷「迎撃だけで全部処理してる」

 

 緑谷「……つまり」

 

 一拍。

 

 緑谷「“相手に戦わせてる”」

 

 静寂。

 

 オールマイト「その通りだ」

 

 低く、しかしはっきりと。

 

 オールマイトが前に出る。

 

 オールマイト「彼の戦い方は極めて理にかなっている」

 

 オールマイト「ヒーローは“動く側”だ」

 

 オールマイト「救助、制圧、突破——」

 

 オールマイト「必ず“目的のために動く”」

 

 オールマイト「だが彼は違う」

 

 モニターを見る。

 

 七罪が、静かに立っている。

 

 オールマイト「動かない」

 

 オールマイト「動かずに、相手を動かす」

 

 オールマイト「その結果——」

 

 オールマイト「相手が“崩れる”」

 

 飯田「……なんという戦術だ……」

 

 オールマイト「そしてもう一つ」

 

 少しだけ、声が低くなる。

 

 オールマイト「彼は——“最適解を迷わない”」

 

 緑谷「……!」

 

 オールマイト「普通は躊躇する」

 

 オールマイト「攻めるか、防ぐか、助けるか」

 

 オールマイト「判断が遅れる」

 

 オールマイト「だが彼は違う」

 

 オールマイト「最初から最後まで」

 

 オールマイト「“守る”という一点に最適化している」

 

 静寂。

 

 お茶子「……ヒーローと、真逆やね……」

 

 オールマイト「……ああ」

 

 小さく頷く。

 

 オールマイト「だが——」

 

 一拍。

 

 オールマイト「それが“ヴィランとして最適”だ」

 

 緑谷の手が、無意識に握られる。

 

 緑谷[あの人は……]

 

 緑谷[状況を作って、選択肢を奪って、勝つ]

 

 緑谷[正面からじゃない]

 

 緑谷[でも——]

 

 緑谷[負けない戦い方だ]

 

 モニターの中。

 

 七罪がゆっくりと歩き出す。

 

 その背中を見ながら——

 

 オールマイト「覚えておけ、少年少女たち」

 

 オールマイト「“強さ”とは、力だけではない」

 

 オールマイト「状況を支配する者こそ——」

 

 オールマイト「戦場を制する」

 

 ──静かに、次の授業へと繋がっていく。

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