想伝・仮面ライダーガッチャード Unstaked memory 作:ホームズの弟子見習い
ウマ娘要素に加えてラブライブ!スーパースター!!要素もあります。
「こんちわーー!! 襟草ホースセンター乗馬部だぜ!!」
瑠李奈が自己紹介すると、講堂は歓声に包まれた。乗馬部の面々の顔立ちの良さももちろん、皆が認める程美人であるりんねも一緒なのだ。割れんばかりの歓声が起こるのも無理はない。
「突然だけどお前ら、馬のことをどれだけ知ってる? 農業、工業、交通、数多の戦争と復興……。馬は日本の歴史と、古来から密接に関わってきたんだ。襟草ホースセンターはそんな馬の文化を学び、体験できる研究施設なんだぜ。そして、あーし達は現役JKで馬術家!! 未来を担う一番星なのだ!!」
胸を張りながら、握り拳を自身の胸に叩きながら瑠李奈は乗馬部を紹介する。
誇らしげな瑠李奈の姿勢に感銘を受けたのか、何人かの観客はパチパチと拍手した。
「へへ、ありがとな。……で、この格好でダンスするなら本来、あーしゴルシちゃんがセンターなんだけどよ……。今回はスペシャルゲスト……そう! 九堂りんねの愛馬!! ユニコンだぜ!!」
そう言い放った直後に瑠李奈はりんねに目配せをし、ウィンクする。
瑠李奈の目配せを受け取ったりんねは瑠李奈よりも一歩前に出る。
「…ボクはユニコン!汚れなき心を持つ者の味方。聖なる
さながら王子様然とした態度で言い放つりんね。ヘアースタイルはいつもと同じ綺麗な黒いロングヘアーだったが、彼女の演技で普段とは違うものを感じさせる。
そんな彼女の演技に、観に来ていた同級生達や知己の面々は「おおー」と唸る。
「自己紹介ありがとなー! なんか観客に言いたいこととかあっか?」
瑠李奈の催促に、りんねは恥ずかしそうにしながらもキョロキョロと件の人物を探す。目当ての人物は、すぐに見つかった。クラスメイト達が中央付近の列に集まっていたのだ。
「一ノ瀬……あっ、いた」
小声で呟き宝太郎を見つけると、りんねは宝太郎へ向けて指差した。
「おい、宝太郎! 勘違いするなよ。ボクはキミを認めたわけじゃない。ご主人様が認めた相手だから……言う事聞いてるんだぜ? フンッ!」
ぷいっと照れ臭そうにそっぽを向くりんねに、宝太郎は苦笑いするしかなかった。他の生徒達は冷やかすようにヒューヒューと口笛を吹いたり、「名カップル〜!」と茶化していた。
「カップルって……俺と九堂はそういう関係じゃないって何度言ったらわかるんだよ……」
ぷくっと頬を膨らませる宝太郎に、加治木が「まあまあ」と宥める。
「はいツンデレ乙〜! ホントはだいちゅきなくせに……ってだだだだいだいいだいっ! わかったから軽く蹴るな蹴るな!」
揶揄う瑠李奈に、りんねは照れ隠しに何度も軽く彼女にローキックを繰り出す。
「いてて……揶揄うのもここまでにして、早速本題に入るぜ! ほいんじゃ参りましょう! 曲はもちろん、うまぴょい伝説! ミュージックスタート!」
そう言うと四人は所定の位置につき、直後にスピーカーから音声が鳴り出した。
「位置について……よーーーい……ドンっっっっ!!」
音声と共に音楽が奏でられる。割れんばかりの歓声と共に、ステージに立つ四人は踊り始めた。さながら各々コンセプトが異なるアイドルを演じているかのようだ。
「きょうの勝利の女神は
あたしだけにチュゥする」
そこまで歌うと、りんねは一日目と同様、ダンスの最中に投げキッスのモーションをウィンク付きで行う。視線の先は明らかに宝太郎に向けられており、彼の周囲の席に座っているクラスメイト達はすぐに察しただろう。
(やっぱりイッチー君の方! しかもウィンク! これなら絶対に気づくよね!)
隣で踊っていた瑠李奈も当然のように気付いており、さすがにこれには宝太郎もりんねの投げキッスに気付くだろうと思っていた。
当の宝太郎の様子は、どこか惚けた雰囲気になっていた。
「サビー、今の撮ったか? お宝ちゃん、さすがに気付いたのか固まっとるで。これはどうなるか見ものやわぁ!」
「ああ、抜かりはないぜ。これで少しはアイツの鈍感ぶりも直るといいんだけどな……」
宝太郎の近くの席に座っていた蓮華と錆丸が、こっそり彼の様子を専用タブレットを用いて撮影していた。
「風を切って 大地けって
きみのなかに 光ともす
(どーきどきどきどきどきどきどきどき)」
「きみの愛馬が!
ずきゅんどきゅん 走り出しー(ふっふー)
ばきゅんぶきゅん かけてーゆくーよー
こんなーレースーはー はーじめてー(3 2 1 Fight!!)
ずきゅんどきゅん 胸が鳴り(ふっふー)
ばきゅんぶきゅん だいすーきーだーよー
今日もーかなでーるー
はぴはぴ だーりん 3 2 1 Go Fight
うぴうぴ はにー 3 2 1 (うーー Fight!!)」
乗馬部達の歌声ととも、観客達の合いの手が講堂内に響き渡る。あまりの勢いに、こういう比較的最近の曲に疎い宝太郎は思わず気圧されていた。
「おお、凄いなぁ……」
割れんばかりの拍手と歓声に、思わず宝太郎は感想を漏らす。宝太郎の言葉を訊いていた杏那が「そりゃ勿論」と返す。
「ライブでも結構盛り上がる曲だしね! でも瑠李奈達が踊ってここまで盛り上がるのは意外かも……」
興奮冷めやらぬ杏那に、宝太郎が「へえ」と返す。宝太郎もこのまま流れに身を任せて、合いの手を入れることにした。
とはいえ、杏那としては一般客がここまで盛り上がるとは思わなかった。競走馬に詳しい成人男性が合いの手を入れるのはわかるが、子供達まで一緒に盛り上がるのは少々意外だった。
やがて一曲フルコーラスで踊り終えると、割れんばかりの拍手と歓声が起こった。拍手と歓声に包まれた乗馬部とりんねの四人は、息を整えながらもその目は喜びに満ちていた。
「凄い盛り上がりだね! 今日は昨日とは一味違うよ!! りんりんちゃん、みんな、もう一曲踊れるよね!?」
三人に視線を向けると、悠姫と真菜佳とりんねは力強く頷いた。
「勿論、踊れます!」
「アレを踊るんですね?」
「うん! イケるよ!」
三者三様に返し、それぞれ所定の位置についた。瑠李奈も続いて所定の位置に立った。
「よーし、今度はちょっと趣の違うヤツを踊るよ! じゃあラスト一曲、“未来予報ハレルヤ!”」
先程センターに立っていたりんねは位置を変え、今度は瑠李奈がセンターに立ち、歌い始めた。
「大好きっていま叫ぼう
夢見るしかないでしょ!」
瑠李奈の歌声に、講堂内にいる女性客が大きく盛り上がりを見せた。男性客も勿論盛り上がっているが、先程の比ではないくらいに女子生徒を中心に歓声が起こっていた。
「ダメな自分にモヤモヤしてた
憧れまで隠してごまかしちゃうほど
けどね、ほんとは
なりふり構わず
頑張りたいわたしが 震えてたの」
康祐達はいつの間にか持参していたペンライトで、アイドルのライブ時の観客のように時折コールを入れる。他の観客も、康祐達を中心にコールを入れて盛り上げていた。
「交差点 はしゃぐ風 スカートひらり踊る
そのたび ときめいて
今ならきっと
変われる気がするから」
宝太郎はというと、自然とりんねに見惚れていた。彼女がこういうアイドルアニメの曲を歌うのもそうだが、普段の彼女とは違う元気な雰囲気に、目を奪われていた。
「大好きなキモチにもう
嘘はつけない
(泣いたっていいや!)
追いかけるよ」
そんな宝太郎に、八神は見逃さなかった。が、盛り上がっている現状に口を出すのも野暮だと思い、このままライブを観ることにした。
「つまずきも羽にして
飛べるさ よっしゃ!
(聞こえてくるよ)
未来予報 ハレルヤ!」
ワンコーラス歌い終わり、講堂内は一気に盛り上がりを見せた。だがここで終わらず、曲はラストサビへ駆け抜けていく。
「どんなに高い壁も
超えてゆくよ」
「大好きなキモチにもう
嘘はつけない
(泣いたっていいや!)
追いかけるよ」
「つまずきも羽にして
飛べるさ よっしゃ!
(聞こえてくるよ)
未来予報 ハレルヤ!」
「信じよう ハレルヤ!」
ハア、ハア、と息継ぎをしながら曲を歌い終えた四人は、直後の歓声を一身に受けていた。
「ありがとー! ありがとー!」
「以上でアタシらのダンスパフォーマンスを終了します! みんなも襟草ホースセンターをよろしく! 校庭ではこのあとも引き続き写真撮影を行うぜ!! それじゃあな!!」
四人はそれぞれ色んな方向に手を振り返し、各々が着ているコスチュームをモチーフにしたウマ娘の決めポーズを取った。りんねは両手人差し指で鬼の角を模したポーズを取った後、くるりと回ってマジェードの決めポーズを見せた。
十秒後、歓声に包まれながらステージの四人は袖の方へ戻っていった。乗馬部のダンスパフォーマンスは、大盛況の中で終わったと言えるだろう。
「これにて、襟草ホースセンター乗馬部のダンスパフォーマンスを終了します。なお、ホースセンターからやってきた馬との写真撮影はこの後も行えますので、興味を持たれた方は是非、一緒に写真撮影をしてみてください」
放送部員のアナウンスで一区切りつくと、観客達はぞろぞろと立ち上がり、講堂を出ていった。
「凄かったな……」
そんな中、ステージの熱気に当てられた宝太郎は未だ立ち上がらずにポツリと呟く。それくらい彼女達のダンスは感銘を受けたということだろう。
「そうだな。しかし一ノ瀬、お前二曲目の時に九堂に釘付けだったろ?」
「え、あ、そ、そうだったかな?」
八神の指摘に、宝太郎は誤魔化すように顔を逸らし頭を掻く。反応的には図星なのがよくわかるので、宝太郎をよく知る周囲の人物達はニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「そういえば、みんなはこの後どうする?」
話題を強引に変えて、宝太郎は皆に訊ねる。既にぞろぞろと観客は講堂を出ていっており、残っているのは宝太郎を中心とした周りの生徒と錆丸と蓮華、そして後ろの席に座っていたグリオンと冥黒の三姉妹そっくりの四人だけだった。
「そりゃあ今のうちに昼飯買って食べるのがいいかな。確か十三時からだろ? 一ノ瀬も参加するモーターショー」
「あ、そうだった。この後控えてるんだった!」
康祐が予定を言うと、宝太郎が思い出したように目を大きく開く。康祐の言葉を訊いたモーターサイクル同好会の二人も「そうだった!」と異口同音で同じ反応を見せた。
「ちゃっちゃと飯を食って、リハに備えるぞ! じゃあなお前ら!」
「俺らも昨日とは一味違うモーターショーを見せるからな! 行くぞ一ノ瀬!!」
「わ、わかった! じゃあなみんな!」
和治と昭兵がいそいそと講堂を出ていき、遅れて宝太郎も走って出ていった。
「お宝ちゃんも大忙しやなぁ……ほんならウチらもお昼食べに行こっか」
「栗尾さん達も、一緒に食べます?」
錆丸はグリオンそっくりの一般人、
「保乃もいいだろ? 梢枝ちゃんと佳音ちゃんもどうだ?」
「はい! ホットドッグ食べたい!」
「私はフランクフルトがいいですね。あとたこ焼きも」
「冷し中華って売ってるのかな?」
保乃は快諾し、ラケシスにそっくりな女性の
「お二人さんもちゃっかりしてんなぁ。ま、せっかくの学校祭やし、楽しまなきゃ損やしな!」
『それじゃ、一緒に行こうぜ。善は急げだ』
錆丸の提案により、六人は談話しながら講堂を出ていった。残されたのは康祐、杏那、八神、加治木の四人だけになった。
「さて、俺はどうすっかね……ん? 姉貴からだ」
これからどうしようかと八神が考え始めると、スマホから通知音が鳴り出した。メッセージは八神の姉からだった。
内容は、体育館前で合流しないかというものだった。
「そういえば八神の姉さんってどんな感じの人なんだ?」
「うーん、まあ結構クールな感じかな。バリバリのキャリアウーマンだし、弟の俺に対して結構厳しいんだよなぁ……そうだ加治木。お前の彼女さん、今日も来てるのか?」
加治木の問いに、八神は姉の人物像を思い返しながら答える。そんな時、ふと思い出したように加治木に聖が今日も来てるのか訊く。
「ああ、この後合流する予定だよ」
「せっかくだし、途中でその彼女さんとも合流して一緒に姉貴と会うか? 姉貴結構気さくだから、すぐに打ち解けるだろうぜ」
八神の提案に、加治木は「いいのか?」と少し尻込みする。八神はそんな加治木に「あ、でも二人で回りたいって事もあるか」と悩ましげな様子を見せた。
「あ、じゃあ俺達が一緒に行っていいか?」
「八神君のお姉さんとお兄さんってどんな人なのか、見てみたかったのよね」
ここで康祐と杏那が名乗りをあげた。二人は如何にも興味津々といった目をしている。
「じゃあ一緒に会うか? 案外、穂積あたりは気が合うかもな」
「それじゃ、御相伴に預かりまーす!」
「ダンスパフォーマンスの感想戦は、モーターショーの後になりそうだなぁ〜」
そんな話をしながら、四人は講堂を出ていく。
ステージの袖では、瑠李奈達四人が水分補給のためにスポーツドリンクを飲みながら一息ついていた。
「いやーみんなお疲れ様!! りんりんちゃんも迫真の演技だったよ! ……で、言ってたことホントなの?」
「な、何が……?」
皆を労いながら、瑠李奈は口角を上げながらりんねに確かめる。りんねはどこか照れ臭そうに誤魔化そうとする。だが、それくらいで見逃す瑠李奈ではない。
「りんりんちゃんが、イッチー君のこと認めてるって♪」
「そ、それはまあ……友達だし」
あの時は勢い余って言ってしまったが、思い返してみると物凄く恥ずかしいことを言っていた気がする。公衆の面前で言えたのはきっと、衣装のおかげなのかもしれない。
「何よ何よ、ツンデレさ〜ん……って蹴るな蹴るないたーい! ヒールキックやめれー!!」
瑠李奈の揶揄いに、りんねは恥ずかしさのあまり彼女の臀部に蹴りを入れる。そんな二人のやり取りを見ていた後輩二人は、思わず呆れていた。
「あの二人、いつもああなのかなぁ……」
「そろそろ行きますよ、先輩方!!」
真菜佳が呼びかけると、瑠李奈とりんねはぴたりとじゃれ合いを止めた。
「そうだった! 早くお昼食べて、和治のモーターショー観に行かなくちゃ! はい撤収するよ撤収! 校庭いくよ!」
どたどたと慌てて瑠李奈は靴を校内用の上履きに履き替え、ダンス用の靴を持って走っていった。他の三人も瑠李奈に続いて、靴を履き替え講堂を出ていった。
●
午後十二時二十二分。康祐と杏那と八神は途中で加治木と別れ、八神の兄姉と合流しに体育館前に向かっていた。
「おーい、兵助。こっちこっち」
体育館の外の扉の前で、二十代の女性が八神に対して手を振っていた。女性の存在に気付いた八神は「姉貴!」と呼びながら駆け寄る。
「お。お友達も一緒かい?」
「ああ、男子が四月一日、女子は穂積だ」
「初めまして、四月一日康祐です。“
「穂積杏那です。わたしの名字は稲穂の“穂”に積荷の“積”です。ごくたまに康祐みたく日付で読むんじゃないかって邪推する人がいるんですよ〜」
八神が簡単に康祐と杏那を紹介し、二人は自己紹介をする。特に康祐は、自己紹介をする際の鉄板ネタを披露していた。
「ハハハ、面白い子達だね。あたしは兵助の姉、
妃花が自己紹介をし、礼を述べると「気にしないでください」と杏那が返した。
「むしろ八神君……兵助君は誰彼構わず仲良くしていますよ」
「まあそのおかげで、色んな女子生徒が八神の毒牙に掛かってるといいますか……」
杏那の八神を持ち上げる発言に、康祐が落とす発言を添える。思わず八神は「オイ!」と康祐にツッコミを入れた。
「誰が女子生徒を毒牙にかけてるって……?」
「いや、強ち間違いじゃないだろ。お前一学期で何人女子生徒から告白された?」
康祐からの質問に、八神は「うっ」と言葉を詰まらせた。
「素直に白状しなさい、今ならまだ間に合うわ!」
「なんで芝居がかったように詰めるんだよ……。十五人だよ」
芝居じみた口調で問い詰める杏那に八神は思わず呆れるも、素直に白状した。妃花はそれを訊いて、溜息を吐いた。
「ハハ。相変わらずのモテっぷりだね兵助……」
「ほっとけ、それより兄貴は?」
変わらずに異性に好かれる弟に妃花は苦笑いをこぼす。八神は拗ねて、兄の所在についての話題に強引に変えた。
「将吾は飲み物を買いに行ったよ。もうそろそろ戻ってくると思うけど……」
「そうか……と、噂をすれば影、だな」
八神が辺りを見回すと、ペットボトルを二本持ってきた青年がやってきた。おそらく彼が八神の兄、将吾なのだろう。
「持ってきたぞ姉貴。お、兵助の友達かい?」
冷えた麦茶のペットボトルを妃花に渡し、康祐と杏那に話しかける。二人は軽く会釈した。
「姉貴達はどうする? この後お昼食って、モーターショーを観に行こうと思ってるんだが」
「モーターショーか。そりゃあいい。あたし達も一緒に観ようかな」
「だな、どんなものか楽しみだ」
八神は二人の予定を訊ねる。兄姉の二人は弟の予定についていくことにした。
●
午後十二時五十三分。康祐と杏那と八神三姉弟は場所取りのため、客席を歩き回っていた。複数人が座れる場所がないかと探していたところだ。
「おーーい、ワタくーん! ほづみーん! やがみーん!」
声のする方に顔を向けると瑠李奈が手を振ってきており、彼女を含めた乗馬部とりんねの四人がいた。康祐達は彼女達のもとへ駆け寄った。
「ようお前ら、ダンス凄かったぞ」
「二曲もお披露目するなんて凄かったわね。凄い歓声だったわよ」
「へへーん、ありがとね!」
康祐と杏那は先程のダンスパフォーマンスを絶賛すると、瑠李奈はにっかりと歯を見せて微笑みながらピースサインをした。
「ダンスパフォーマンス?」
「ああ、さっきこの四人が講堂で踊っていたんだよ。凄い賑わいだったぜ」
何のことかわからなかった将吾に、八神が答える。将吾は「ほー……」と唸った。
「そんなに人気なら、俺達も観ておくんだったなぁ」
「あ、わたし録画してますよ。後で送りましょうか?」
少し残念そうに漏らす将吾に、杏那は自分のスマホを見せびらかした。
「へえ。じゃあその動画、ありがたく見せてもらおうかな。スマホは……っと。これ俺のID。姉貴のも一緒に登録するか?」
「あ、どうもありがとうございます」
そのまま杏那と将吾はアプリのIDを見せ合い、友達登録を終えた。そのまま将吾に勧められるがまま、杏那は妃花とも友達登録をした。
「他のみんなはどうしたの?」
「それぞれ散り散りに別れたよ。加治木は彼女さんと合流、一ノ瀬達は見ての通りリハーサル。あと錆丸さんと蓮華さんだったか?その二人は栗尾さん達と一緒に行ったな」
りんねが訊ねると、八神が答え返す。りんねは「そっか」と頷いた。
「九堂も楽しみだろ? 一ノ瀬のモーターショー」
「えっ……そ、それは……まあ、勿論友達だし?」
意地悪く訊ねる八神に、りんねはモゴモゴと口を動かしながらも応える。
「ま、そういう風に捉えておくか」
「兵助、それに妃花さんに将吾も」
男性の声がした方へ振り向くと、そこには道長と春樹がいた。
「道長さん、春樹君」
「パンフレットによると、宝太郎がこのモーターショーに参加するみたいだからな。興味が湧いてきたんだ」
「そっか、今回は黒鋼先輩も参加するから楽しみにしててね」
「スパナか……アイツのこと苦手なんだよなぁ」
そう言うと、道長と春樹は用意された椅子に座った。昨年の冬に共闘したことのあるスパナと道長だが、どうやら苦手意識を抱いているようだ。
「まあ……あの時よりは性格が丸くなってるから」
そう言って苦笑いするりんねに、道長は「ならいいんだがなぁ」と返すしかなかった。
「あら、九堂さん! ここにいたのねぇ」
今度は女性の声が聴こえて、その方向に振り向くと宝太郎の母である珠美が手を振りながらやってきた。
「珠美さん!」
「イッチー君のお母さんだぁ! もしかして息子さんの晴れ舞台を見に来た感じですか?」
りんねと瑠李奈が、喜んで珠美を迎え入れる。道長は彼女を見ながら「この人が宝太郎の母さんか……」と感慨深げに呟いた。
「そうなのよ、昨日宝太郎がモーターショーでお披露目するから楽しみにしててって言われてね。お店は休んできちゃったわ〜」
楽しみが隠しきれない様子で、珠美は空いている椅子に座った。案外、宝太郎は母親からこういう一面を受け継いだのかもしれない。
そんな話をしているりんね達とは離れたスタンバイ場所で、モーターサイクル同好会の面々と特別参加者の宝太郎とスパナが待機していた。
「黒鋼先輩、改めて礼を言わせてください、モーターショーに参加してくれてありがとうございます」
ぺこりと九十度頭を下げる和治に、スパナは「よせ」と遮った。
「俺としては正直言って今でも反対寄りの立場だが、一ノ瀬に説得されたんでな。それに、
変わらずクールな態度で返すスパナに、宝太郎は「スパナもだいぶ丸くなったよなぁ」と笑い飛ばす。
「それを言うならお前もだ。俺に参加させる時にかなり理詰めに説得してきたのは驚いたぞ」
「スパナさん、どんな風に説得を受けたんですか?」
気になって訊ねる昭兵に、スパナは「それは秘密だ」と受け流した。
「じゃあ緑川。お前が音頭を取れ」
スパナが和治に音頭を取るように促すと、和治は「ウッス!」と返した。
「みんな、今日は一ノ瀬とスパナさんという強力な助っ人が来てくれた。だがこの二人に頼りっきりの俺達じゃねえ!! モーターサイクル同好会の意地を見せつけようぜ!!」
和治の前置きに、部員達は「おおーーーーっ!!」と声を上げた。
「よし、行くぞ!!」
和治の号令とともに、何人かの部員達がそれぞれのバイクに乗り、グラウンドの中央に駆けた。
「みなさんこんにちは!! ようこそ富高祭へ!! 僕達はモータースポーツ同好会です!! 本日もよろしくお願いします!!」
MC役を務める昭兵がマイク越しに盛り上げる。観客達は歓声を上げた。
「モータースポーツ同好会は四年前、衰退しつつある学生バイクの文化を広めるために結成されました。しばらく部員も少なく寂しい日々を送っていましたが、ある日救世主が現れました……」
そこまで言うと、いそいそとグラウンドの隅に引き返し、宝太郎を連れて戻ってきた。
「ご紹介致します!! 三年生の一ノ瀬くん!! 愛車はおなじみ、HONDAアフリカツイン!! 彼は平日は学校へバイクで通い!! 家業の手伝いで出前を運び!! 休日は彼女の九堂さんを乗せツーリング!! 我々バイク男子の憧れる生活です!!」
直後、男子生徒から野太い歓声が湧き上がった。他にも「羨ましいぞー!」や「リア充爆発しろー!」と言った茶化すような声も見受けられる。
「とにかく! 彼のおかげでなんと部員は、過去最低三人から過去最高の三十人へアップ!! 十倍ですよ十倍!! 一ノ瀬くん、本当にありがとう!」
噛み締めるように宝太郎の手を握る昭兵に、宝太郎は「どういたしまして!」と爽やかに返す。
「俺のおかげでみんながバイクを楽しんでくれて嬉しいです!! でもオレと九堂は付き合ってな……」
そこまで言いかけると、昭兵は「はいはいありがとう!」と強引に切り上げた。
「昨日に引き続き、今回のショーでは我が高校初の実技走行演技を行います!! メンバーはまず三年! 僕、立花と緑川くん! 二年の鳴海くん! そしてスペシャルゲスト一ノ瀬くん!! 黒鋼先輩のV8インターセプター!! さあ、気合い入れて行きましょう!! まずはぼくと鳴海くんの走行演技です!! 音楽はa-haのTake On Me! 行くぜ!!」
直後、音楽が流れ出し、昭兵の駆るKX450Fと鳴海の駆るシルクロードが前に出た。
設定・小ネタ・登場人物解説コーナー
【グリオンと冥黒の三姉妹にそっくりな一般人】
グリオンに瓜二つな男は、「栗尾賢太」という。
アトロポスそっくりの少女は「後路保乃」という名。
ラケシスそっくりの女性は「生野梢枝」という名前。
クロトー瓜二つの女性は「黒戸佳音」という名前。
九堂家の遠縁の親戚らしいが、錬金術師ではなく一般人とのこと。
一日目では栗尾がミナトからグリオンに間違われる事態になり、散々な目に遭う。ミナトは当然ながら怒られた。
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