上手くできてるといいなぁと思いながら投稿。
若干元スレの要素はありますが、微々たるものですので今回はリンク先は繋げていません。あしからず。
昼休み。教室に戻った康祐と杏那は、何人かから視線を浴びたのを感じた。やはりどんな内容で呼び出されたのか気になるのだろう。野次馬根性が透けて見える。
「ったく……お前らに話すことはありませーん。昼飯の時間が無くなるだろうが」
ハラハラと手を払い、自分の席に座る。鞄から弁当を取り出し、早速食べ始める。杏那も鼻歌を歌いながら、自分の弁当に手をつけ出す。
「いただきます。…………うん、やっぱり康祐のお母さんの作るお弁当は美味しい〜!」
杏那が弁当に舌鼓を打つ光景に、女子達は微笑ましく見守っていた。何人かの男子は、逆に羨ましげな視線を康祐へ向けていた。女子と関わりの薄い一部の男子生徒からすれば、康祐と杏那の関係にそう思いたくなるのも無理はない。
「ねえねえ、でさ、どうだったの? ミナト先生、杏那達の成績とか内申とかで呼んだわけじゃないっしょ?」
軽い口調で話しかけるのは、襟草ホースセンター乗馬部に所属している
「……ちょっと変なコトが起きてるみたいなのよ。なんでそんな事が起きたのか調べて欲しいって、ミナト先生から頼まれたの」
一瞬考え込んだが、杏那は答えることにした。
「えー、ミナト先生そんな事二人に頼んだの? なんか本当に探偵の依頼みたいじゃん!」
目を輝かせる瑠李奈に、杏那は苦笑いで流す。瑠李奈と杏那の会話に、聞き耳を立てていた俊は、「やっぱり依頼だったね」と悪戯っ子のような笑みを康祐に向けていた。
「うるせえ、オメエも早く昼飯食えよ。昼休みも終わっちまうぞ」
「あ、はい……じゃあ僕も食べるとするよ……」
軽く睨みつけると、俊はあっさりたじろいだ。康祐の睨みつけに押され、俊も昼食に買ってきた購買のカレーパンを食べ始めた。黙々と弁当を食べる康祐に、八神が康祐の隣の席にどかっと座る。
「で、ミナト先生から頼まれた変な事って何なんだよ? 俺達にも教えてくれないものなのか?」
「んぐ……いや、高校掲示板の方を見ればある程度はわかると思うぞ? 戻る時に掲示板の方を見てみたけど、お悩み相談スレが新しく出来てたし」
「どれどれ……お、ホントだ。直近で三件くらい奇妙な出来事が起きてるのか……」
スマホを開き、富良洲高校掲示板サイトを確認する。ポツポツと更新されるスレッドの内容に、「ふむ……」と考える仕草をとる。
「そういえば千秋も何かおかしな、というわけでもないが何か拾ったって言ってたな?」
「おいおい、千秋も拾い物したのかよ……」
思い当たる節があるのか、八神が俊に顔を向ける。それを訊いた康祐は、更新されるスレッドの画面を見ながら面倒な表情を見せる。二人の話を聞いていた俊は、「そんなに変な物拾ってないと思うけど……」と話に加わる。
「地球っぽいイラストのカードを拾っただけだよ?」
「なんじゃそりゃ……」
俊が拾ったという物の詳細に、康祐は少しだけ呆れた。それだけ訊いていたら、ただのトレーディングカードゲームのカードを拾ったとしか思えない。
「僕としては今度の学園祭で使う、色つきLEDのライトが足りないからそっちの方が欲しいんだけどね……」
そう言って俊は溜め息を吐く。彼は天文学部に所属しており、学園祭の催し物として太陽系の模型に使うライトを集めていたのだ。それが今になって数が足りなくなってきたというわけだ。
「なあ千秋、そのカード…今持ってるか?」
俊が愚痴を溢していると突然、宝太郎が割り込んでくるように話に入った。いきなり鬼気迫る勢いで聞いてきた彼に、どうしたのかと三人は戸惑う。
「え、いや……い、家に置いてあるけど……」
「………そうか……」
「一ノ瀬ー、気にしすぎだって。ふわあああ……」
「く、九堂? ま、まあそうかもだけど……」
欠伸をしながら俊の話を流すりんねに宝太郎は一瞬驚きを見せるも、すぐに自分のペースに戻り、席に座った。
そんなりんねの様子に静奈は「珍しいなぁ」と小さく呟いた。
「珍しいって……九堂さんのこと?」
「杏那……うん。りんねって学校内じゃ凄く真面目で通ってるじゃない? そんなあの子が校内で欠伸をするなんて珍しいと思って」
静奈の呟きを聞き逃さなかった杏那が訊くと、静奈は頷いた。理由を訊いた杏那は確かに、と同意する。
そんな話をしている時だった。チャイム音が鳴り響き、教室内にいる生徒はそれぞれ自分の席に戻り、午後の授業時間の準備に取りかかろうとしていた。
「もう午後の授業かぁ……ねえ、次の授業なんだっけ?」
「現国よ。村山先生、優しそうな見た目だけど結構厳しいのよね……」
「えー、全然そんな気しないけど?」
杏那はボヤきながら、授業の準備の為に自分の席に座り教科書やノート、筆記用具を机の上に置いた。杏那のボヤきを受け止めながら、静奈もまた自分の席に戻り、授業の準備を始めるのだった。
●
午後三時五十八分。
買い物の中身は、今日の夕食の為に買ってきた食料品だ。夕食は特製牛丼と葱の味噌汁、スーパーで買ってきたコールスローサラダを予定している。所謂男飯に、引き取った少年が喜んでくれればいいが……。
そんな事を考えながら、自分達が住んでいるアパートの部屋へ向かっていると、少年が大きく手を振っているのが見えた。
「
「うん、僕宛に電話がかかってきたんだ。郵便物が届いているから確認してきてくれって」
「郵便物が? 電話の相手は誰なのかわかんないのか?」
春樹が帰ってきた理由に、怪訝そうに訊ねる道長。春樹は「それがなんか声がくぐもってたから……」と申し訳なさそうに返す。しょんぼりした顔を見せた春樹に、「気にするな」と頭を撫でる。
「それで郵便物には何が入っていたんだ?」
「ああうん、これがそうだよ」
そう言うと、春樹はズボンのポケットの中から洋形二号サイズの封筒を道長に見せた。封筒を眺めると、まだ開かれてはいないようだ。
「まあいい。まずは帰って買い物袋を置いておくか。今日は俺特製の牛丼だ」
「やった! 牛丼楽しみ!」
道長から夕食のメニューを訊かされた春樹は、楽しみな様子を見せた。
夕食を食べ終えると、道長は春樹から預かっていた封筒をテーブルの上に置いた。封筒の差出人は書かれていない。自分に因縁のある者が手紙を送ってきたのか。学生時代からそういう因縁を作ってきたからか、誰が送ってきたのか皆目見当がつかない。
とはいえ、手紙を開けてみないとこれ以上は考えようがない。意を決して開けてみると、二枚の紙があった。
『貴方の近所に富良洲高校に通っている生徒がいれば、その者に二枚目の内容を送ってください。スマホで撮影したり、直接渡したりと方法は問いません
パソコンで入力されたと思われる一枚目の手紙に、道長はどういう事かと困惑する。そのまま流れに身を任せて二枚目の手紙を読むことにした。
二枚目の手紙の内容は、文章ではなかった。“寺”が大きく一文字だけ書かれていた。ただし、その“寺”の字には右半分側だけが四角で囲われていた。
「これ、さっき話した手紙の中身?」
「ああ、そうだな」
二枚目の手紙の内容にさらに困惑していると、後ろから春樹の声が聞こえてきた。
道長は改めて手紙について考えを巡らせる。確か近所に、富良洲高校に通っている男子生徒がいる。
午後八時十一分。八神兵助は勉強に一区切りをつけると、スマホを見る。するとスマホに通知音が鳴り出した。近所に住む青年からのメッセージだった。
「うん、道長さんから? なんだ……?」
スマホのメッセージアプリを開くと、写真が送られていた。写真の内容が何故こんなものなのかを考えると、もしかすると康祐達がミナト先生から依頼を受けたという一連の奇妙な出来事と関係があるのだろうか。
そんな考えに思い至った彼は写真をダウンロードすると、康祐に宛てたショートメッセージを件の写真と一緒に送る事にした。
●
時間は少々遡り、午後七時四十七分。四月一日家ではつつがなく夕食の時間がとられていた。ダイニングテーブルにいるのは知華、康祐、そして居候している杏那だ。
「ほぉー……ミナト先生から依頼受けたのかい?」
団欒の話題は、ミナトから受けた依頼内容についてだった。奇妙な出来事が立て続けに起きたと、折角なので夕食を交えて知華に話していたところだ。
「まあ校内で起きた事だし、母さんが出張る程でもないとは思うけど……」
「気になる事といえば……うち二件にはアルファベットの“F”が関連していることかもですね。Fの形に貼られたメモ用紙、砂西君の鞄に入ってた小説のタイトル、“すべてがFになる”。まるで何か見えない関係性があるみたいな感じ……」
「ミッシングリンクってやつだね。ミステリーの定番だ」
「ミッシングリンクで思い出したけど、三人の苗字がさ行から順番になってるのも何か関係があるのかもしれないな……」
三人は連続的に起こる出来事に対しての議論を進める。そんな中、知華が「そういえばさ」とふと呟いた。
「何? 母さん?」
「その佐伯君とやらが突然眠ったのって、なんの授業の時間だったっけ?」
「確か、化学の時間ってミナト先生は言ってました」
「化学の時間か……」
佐伯が眠った時間を杏那が答えると、知華は考える仕草をとる。
「あの、お母さん……何か思い当たることがあるんですか?」
「いや、ちょっとね。化学の時間に眠りだしたのが気になってね」
「そういえば……放課後にその佐伯がいるクラスに行ってみたんだけどさ、その授業の直前に誰かと会ったってクラスメイトが言ってたんだよな」
康祐が思い出したクラスメイトの証言に、知華は「それが誰なのかわかんないのかい?」と訊いた。
「女子生徒だってことはわかってるよ。顔は後ろ姿だったから見れてないらしいけど」
「その女子生徒のヘアースタイルとかは? 後ろ姿なら多少の判別できるでしょ?」
答える康祐に、知華はさらに問い重ねる。康祐は思い出そうと眉間に人差し指をあて、「確か……」と呟く。
「そうだ、黒髪のロングヘアって言ってた。その様子を見てたクラスメイトがそう言ってたよ」
「それでも多少は絞られる。後は何か思い当たることはないのかい?」
「ううーん……逆に何も。佐伯君、その女子生徒と会ったことすら覚えてないの。それって今にして思えば変だなぁって」
杏那の証言を訊いた知華は、目を光らせた。例の出来事が起こったのはつい一週間前のことだ。その直前に会った生徒と会った事すら記憶にないのは何かしらの介入があったとしか思えない。
(まさかとは思うが……錬金術を駆使した? 錬金術は記憶の消去はもちろん、高い練度なら時間経過で眠らせる事もできる)
普通ならありえない可能性が、知華の脳内に浮上する。だがもしこの考えが合っているとすれば、自然と容疑者は一人に絞られてくる。
「ご馳走様でした。杏那、今日は俺が先にシャワー浴びてくるな」
「うん、わかった。わたしもご馳走様でした。じゃあお母さん、お話に付き合ってくれてありがとうございました」
「ああ……じゃあ皿はシンクで浸しておいてよ。後で洗うからさ」
思案に耽っていると息子と実質的義娘の声が、知華を現実に戻した。すぐに態度を取り繕うと自身も夕食を食べ終え、リビングに戻ることにした。
康祐が自分の部屋に戻ると、テーブルに置いてあったスマホの画面が点いているのが見えた。誰かからの着信が来たのだろうか。そう思った康祐はスマホを開く。
スマホには、八神から送られてきたメッセージが通知されていた。メッセージアプリを開いてみると、文章が書かれていた。
『近所の知り合いがこの写真を送ってきた。今回の件と何か関係があるかは分からないが共有の為にお前にも送っておく』
文章の下には、八神が道長から受け取った写真が添付されていた。暗号めいた写真の内容に、康祐は思わず考え込む。
(なんだこれ……“寺”
「康祐ー、お風呂早く入ってよー?」
「ああ、わかった! 八神が妙な写真を送ってきたから、お前のスマホにも送っとくわ!」
「ふーん……わかった、早くお風呂入ってよね!」
写真に対する考えに耽る康祐に、杏那の声が聞こえたことで思考は中断された。気を取り直した康祐は写真の件を杏那に伝え、例の写真を自分のスマホにダウンロードして、杏那にも送るのだった。
●
午後九時五十七分。康祐の部屋に部屋の主である康祐と杏那が、それぞれベッドや椅子に腰掛けていた。テーブルの上にはタブレット端末が置かれており、画面には八神から送られてきた写真が写っている。二人は写真の内容について考えを巡らせていた。
「これが八神君の知り合いが受け取った手紙の中身……。なんでこんな手紙が送られてきたのかしら」
「風呂上がりに八神に確認してみたけど、その近所の知り合いが言うには、そういう暗号を送るような間柄の知り合いはいないってよ」
「そっか……。そういえば、その手紙が送られてきた八神君の知り合いってどんな人なの?」
「あ、そういえば訊いてなかったな。まだ起きてると思うけど、電話して訊いてみるか」
杏那の一声で八神の知り合いの男性の素性を知らなかった事を思い至った康祐は、早速八神に電話をかけてみることにした。
「もしもし、四月一日か? こんな時間にどうした?」
三十秒程のコールを経て、八神が康祐の電話に出た。声のトーンもハッキリしていることから、まだ彼の眠る時間帯ではないようだ。
「おっす、八神。さっきお前が送ってきた写真について訊きたいことがあるんだけどいいか?」
「ああ、いいぞ。何を訊きたいんだ?」
「あ、ちょっと待ってくれ。杏那もいるから今スピーカーにするな。……よし、これでっと」
康祐は自分のスマホのスピーカーをONにすると、そのままテーブルの上に置いた。
「そういえば穂積、お前ん家に住まわせてもらってるんだっけか」
「そゆこと。じゃあいくつか質問したいけどいいか?」
「ああ、何を訊きたいんだ?」
「そうだな……あの例の手紙がその人に送られてきた経緯って分かるか?」
康祐の質問に、八神は「うーんと……」と思い返すように考え込む。十数秒程思い巡らせると、「ああそうだ、思い出した」という声が電話口から聞こえた。
そのまま八神は、知り合いが手紙を受け取った経緯を語った。その知り合いが自分のもとで育てている少年に電話がかかってきて、手紙が届いているか確認してほしいということ。
それを件の知り合いの青年に渡してほしいということ。
手紙の中身は二枚の紙があり、一枚には近所に富良洲高校の生徒がいればその人物に二枚目の紙を写真で撮って送るなり直接渡すなりしてほしいということ。
つい二時間程前に、八神はそれを知り合いからスマホのメッセージアプリを通して受け取ったことが語られた。
「俺がその暗号みたいなのを受け取ったのは、こういう訳だ。他に何か知りたい事とかあるか?」
語り終えた八神に、康祐と杏那はふむ、と考える。八神の知り合いに手紙が送られてきた経緯はわかった。次の質問に移るとしよう。
「じゃあ次は……ねえ、その八神君の知り合いってどんな人なの?」
「知り合いがどんな人か? なんでそんな事訊きたいんだよ?」
杏那の質問に、八神の訝しげな声が聴こえる。もしかして何かあらぬ疑いをかけられているのだろうか────。
「別に疑ってるわけじゃないわよ? その知り合いがどんな人か知ることで、何か手がかりが掴めるかもしれないじゃない?」
「意外な切り口から真相が見えることだってあるだろ?」
「お前ら……本当に小説に出てくる探偵みたいだな」
取り繕う杏那に、康祐のフォローが入る。そんな二人に八神は、呆れ混じりの声色を自然と出していた。
「そうか? まあ、俺の母さんも父さんも警察官だしな。捜査のノウハウは受け継がれてるんだよきっと」
「ハハハ、成程確かにそうだ。知り合いがどんな人か……そうだな、性格面で言えば、不器用だけど優しいって感じだな」
「なるほどな……。そうだ、その知り合いの関係者でそういう暗号を送り合う仲のいい人っているか?」
「いや、あの人の職業は所謂
思い返す八神に、康祐達は内心謎が深まってきた事を感じた。なぜその八神の知り合いが手紙を受け取らなければならないのか、ますます解らなくなってきた。
「その八神君の知り合い……いやもう面倒くさいわね……。その人の名前ってなんて言うの?」
痺れを切らした杏那が、八神の知り合いの名前を訊く。確かに言われてみれば名前を知らないせいで二人は知り合いと呼んでいたが、そのせいで不便さが増していたのは否めない。
「ああ、そういえば……まだ言ってなかったな。吾妻道長さんだ。その道長さんが、件の手紙を受け取ったってわけだ」
「道長さんか……下の名前だけ訊くと、やっぱり歴史上の人物の名前を思い浮かべるな」
名前を伝えた八神に、康祐の頭の中には平安時代の歌人、藤原道長が思い浮かんでいた。それを訊いた杏那は、何か引っ掛かるものを感じた。
「どうした杏那?」
「いや……何か引っかかるものを感じて……何かしら?」
「道長さんの名前で何か違和感があったか?」
奇妙な違和感を覚えた杏那に、八神が訊く。
「道長さんに送られた手紙……藤原道長……寺……」
「……まさか、あの手紙はそういう事か?」
ふと康祐の呟きが部屋に響いた。杏那の視線が康祐に向けられた。電話越しの八神も、康祐の次の言葉を待っているのがわかった。
「もしかして康祐、手紙の意味がわかったの?」
「……確証はないんだ。もし送り主が俺の考えている人物なら、動機がもっとわからなくなる。なあ八神?」
「ん? なんだ?」
「悪いけど、もう電話を切っていいか? 上手くいけば、もしかしたらあと一日か二日経過で手紙の送り主も学校内の謎も解けるかもしれない」
康祐の発言に、八神が電話越しながら息を呑むのが聴こえた。十秒程経つと、スピーカーから八神の声が聞こえ始める。
「………………明後日か、明々後日には解るんだな?」
「あくまで上手くいけば、だな。正直言って確証がないから、明々後日にはそれを掴みたい。でも八神には普段通り振る舞っていて欲しいんだ」
「……探っている人数が多ければ多いほど、勘付かれやすい。そういうことね?」
康祐の意図を察した杏那が、言葉を紡ぐ。真剣な表情で言葉を発した彼女に、康祐は「そういうこと」と答えた。
「はあ……わかった。お前がそう言うなら俺はこれ以上何も追及しない。だがもし犯人に確証を持てたなら、俺にも教えてくれ」
「ああ、その時はお前にも教えるよ」
「ありがとうな、じゃあまたな八神」
そこで電話を切ると、康祐はふう、と息を吐いた。直後に考えをとる仕草を取ると、杏那は康祐をじっと見つめた。しばらく見つめていると、杏那は目を見開いた。
「まさかとは思うけど、康祐……手紙の送り主と学校内で起きた一連の謎って、全てあの人の仕業って事になるの?」
「俺の推測とお前の推測が合っていればな。だけど明後日か明々後日までにならないと、確証が掴めない……せめて動機がわかればいいんだが」
椅子の背もたれに身を委ね、康祐は「あ〜〜」と唸り声を出す。そんな時だった。コンコンと部屋の扉をノックする音が聴こえた。
「康祐、杏那ちゃん。いるかい?」
●
翌日、午前八時二十三分。富良洲高校三年A組教室内。生徒達は思い思いに過ごしていた。まだ登校していなかった生徒も、徐々に教室に入っていくのがわかる。
「おっはよー静奈! 今日もイケてるね!」
「お、おはようりんね。いつになく元気一杯だね……?」
「えー、そう?」
九堂りんねも、その一人だった。いつもの態度とは違うハイテンションなりんねに、静奈は思わず押されてしまっていた。りんねの態度に、彼女を知る十数人のクラスメイトは二度見をする程驚いていた。
「ね、ねえ……クドーさんどうしたのアレ? なんか、いつもの雰囲気と違くない……?」
「わ……わからん。何か変な物でも食ったか?」
さすがの瑠李奈も、りんねの雰囲気に呑まれていた。瑠李奈の彼氏である
「おい四月一日、穂積……。まさかとは思うが……」
八神がこっそり康祐達に話しかけると、康祐はしーっと人差し指を唇に当てる。
今日の授業は何事もなく進み、生徒達はそのまま帰っていった。
95:名無しの富良洲高生
昼休みなう、今のところここ最近起きたような奇妙な出来事は起きてないなー
96:名無しの富良洲高生
>>95
学校内は事件らしい事件は起きてないから……そうそう起きてたまるか
97:名無しの富良洲高生
事件らしい事件って、去年の冬に英語の先生がいなくなった事くらいでしょ
98:名無しの富良洲高生
>>97
あの英語の先生、結局どうなったの?
99:名無しの富良洲高生
>>99
あたしは知らないなー、誰か知ってる人いる?
100:名無しの富良洲高生
そもそもそんな先生いたんですね〜、初耳です〜
101:名無しの富良洲高生
>>100
お前今年度の新入生か?なら知らなくても仕方ないわ
102:名無しの富良洲高生
九堂あたりに聞けば分かると思うよー、確かその場に居合わせたって噂を聞いたし
103:名無しの富良洲高生
>>102
いたっけ?よく覚えてないや
104:名無しの富良洲高生
まあ過ぎた事だしな……。
この話題は先生達に任せるか
105:推理研一年・砂西
結局誰が俺の鞄にあの小説を入れたのか……四月一日副部長や穂積部長に色々聞かれたけど、わからずじまいだったな
106:名無しの富良洲高生
>>105
砂西君乙
例の三件の謎、あの二人が依頼を受けたらしいな
107:名無しの富良洲高生
推理研の部長副部長がかよ?
誰がそんな依頼したんだよ
108:名無しの富良洲高生
>>107
ミナト先生らしい……数学の成績の事で呼び出されてたうちのクラスメイトが、あの二人が職員室に入ってくのを見かけたって
109:名無しの富良洲高生
>>108
ええ……何かあったらどうすんだよ?先生責任取る気あんのか?
110:名無しの富良洲高生
>>109
まあ取る気がなかったらそもそも依頼しないでしょ……大丈夫だよね?
111:名無しの富良洲高生
今日のところは何ともなかったな……やっぱり平和が一番ってね
112:名無しの富良洲高生
>>111
ホントか?ホントに平和だったか?
あの九堂さんがなんかいつになくハイテンションだったんだぞ?
113:名無しの富良洲高生
>>112
ギリギリ平和の範疇に入るだろ……多分
114:名無しの富良洲高生
あの態度の変わり様は事件でいいのか判断に苦しむところではある
115:名無しの富良洲高生
>>114
まあ校内で起きた出来事で言うなら細やかだけど事件の範囲内ではあるんじゃない?
明日も平和に過ごせればいいな〜〜
さらに翌日。高校掲示板に立てられているお悩み相談スレはぽつぽつと更新されていき、様々な情報や噂が巡っていた。「銀色のコインの様なメダルを拾った」という報告だったり、昨日と比べてりんねの態度はいつも通りだったといったような話題が掲示板内では囁かれていた。
そして授業を経てHRを終え、次第に生徒達も下校していったそんな時だった。私の下足置き場に、手紙が置かれてるのがわかった。手紙を取ってみると、手書きで「love letter」と書かれていた。
友人がラブレターだと囃し立てていたが、私はとても誰かと付き合う気にはなれなかった。一応悪戯の可能性も考えられるので、手紙を開けてみた。
『今日の放課後、グラウンドに来てください。貴方に話があります。』
やっぱり手紙じゃん! と大はしゃぎする友人を抑え、先に帰るよう促す。友人と玄関口で別れると、そのまま鞄を肩にかけてグラウンドへ歩き進める。グラウンドへ歩く中、キョロキョロと辺りを見回す。野球部やサッカー部、バスケ部や柔道部の喧騒が心地良く聞こえるのは、彼と関わって心境が変化したからかもしれない。
そんなことを考えているうちに、グラウンドに着いた。グラウンドには一人の女子生徒が此方から見て同じ方向を向いていた。
「来てくれたのね、ありがとう」
「前に貴方に貸したノートが返ってきた時に、貼ってた付箋に書かれた筆跡とそっくりだったから」
礼を言う女子生徒に、私は彼女にここに行くに足る理由を話す。女子生徒は「そっか」とだけ短く頷いた。
「それで? なんで私の下足置き場にあの手紙を置いたの?」
「貴方に確認をしたくて。今回起きた三件の謎について、どうしても話をつけたかったの」
「三件の謎って……掲示板内で噂になってる、あの?」
私の確認に、女子生徒は「ええ」と言いながらこくりと頷く。
「単刀直入に言うわ。今回の三件の出来事を仕組んだのは……貴方でしょ?」
そう言って彼女────穂積杏那は此方に体の向きを変え、鋭い視線が私の目と合った。
────────九堂りんねさん。
疑惑を向けられた私は、そのまま説明を促すよう視線をそのまま合わせるのだった。
次回、真相パート。