想伝・仮面ライダーガッチャード Unstaked memory   作:ホームズの弟子見習い

9 / 9
戦闘のイメージはジャンプ漫画をイメージしてそれなりに盛ったつもりです。
仮面ライダーSPIRITSとかみたいにいけたかな…?


第8話:ケアのこもった決戦

 

 

 

 ガッチャードとマジェードの戦いは熾烈を極めていた。この一年極めてきた錬金術の腕前。それがこんな形で披露するとは、宝太郎は思いもしなかった。

 ガッチャートルネード同士の剣戟は激しくなる。武器を振るえば、その勢いで風圧が起こるほどだ。並の人間なら、その風圧で吹き飛ばされるだろう。

 

「ぐっ………はああっ!」

「はあっ!」

 

 男と女の体格差があるとはいえ、ここまで拮抗するとは思わなかったガッチャードは、一旦バックステップを取る。基本フォームであるスチームホッパーは、基本的に徒手空拳やガッチャートルネードを使うのが主な戦闘スタイルだ。だが接近しなければ分が悪い。宝太郎は手段を変えることにした。

 

〈HAWKSTAR! SABONEEDLE!〉

〈ガッチャーンコ! ニードルホーク!〉

 

 ニードルホークにフォームチェンジし、遠距離攻撃を仕掛けることにした。マジェードの真上に飛翔し全身から棘を射出する。マジェードは慌てることなく、右手を掲げて射出された棘を寸前で止めた。

 

「!?」

 

 仮面の下で宝太郎は驚く。いくら変身している状態だからと言っても、上空から無数に放たれた棘を寸前に止めるには錬金術師の練度が高くなければいけないだろう。

 マジェードはそのまま右掌を押し出すと、寸前で止まった棘をガッチャードに向きを変え、そのまま放たれた。

 

(コントロール権を奪われた!?)

 

 驚愕しながらも、ガッチャードは滑空を繰り返しながら棘をなんとか躱す。避けきれないと判断した棘については、ガッチャージガンのエネルギー弾を撃つことで相殺させた。

 

「遠くからの攻撃なんて、一ノ瀬らしくないんじゃない?」

 

 そんなマジェードの挑発に、ガッチャードは乗ることはない。努めて冷静に、戦況を見極める。そしてガッチャードがマジェードを観察する中、彼は気付いた。彼女の右手が地面に向けられていることに。何かを仕掛けてくるつもりなのか────?

 その予想は当たった。マジェードは右手の中指に付けられているハイアルケミストリングを光らせると、彼女の立っていた地面が隆起し始めたのだ。五メートル程地面が隆起すると、その勢いを利用してマジェードは飛行状態のガッチャードへジャンプしたのだ。

 

「つーかまーえた♪ ハアッ!!」

「ぐあ……っ!」

 

 飛行しているガッチャードの右腕を掴まえると、そのまま一本背負いの要領で地面に投げ落とす。そのまま地面に叩きつけられたガッチャードは起きあがろうとするが、そうすることは出来なかった。飛翔するための翼〈ウイングシャープ〉が地面と同化し、身動きが取れなくなっていたのだ。

 

「さすが九堂……錬金術の技術はやっぱり俺よりも凄いな……」

「もー。煽てても何も出ないよ?」

 

 わざと照れ臭そうな態度を取るマジェードに、ガッチャードは内心「うへぇ…」と苦く思った。かつてズキュンパイアに乗っ取られたとはまた違う、奇妙な嫌悪感を覚えてしまった自分が嫌になる。

 だがそんなことも言ってられない。身動きできない自分に一気に接近してくるマジェードが、踏みつけようとする。

 

〈WRESTLER G! ANTROOPER!〉

〈ガッチャーンコ! アントレスラー!〉

 

 アントレスラーにフォームチェンジしたガッチャードは地面につけた腕のバネを利用して、その勢いでドロップキックを放つ。ドロップキックはマジェードの踏みつけと相殺され、その衝撃で両者は互いに距離をとる。

 

「おりゃあっ!!」

「ぐ……っ!」

 

 助走をつけてアックスボンバーを当てようとする。マジェードは防御体勢をとるが、ガッチャードの勢いは殺されず、そのままダメージを喰らった。

 今度はラリアットを喰らわせようとするガッチャードだったが、マジェードはそれを柔術の要領で受け流し、ガッチャードの背後に後ろ蹴りを当てた。

 

「うわっ!」

 

 背中に蹴りを喰らい、ガッチャードはそのまま地べたに這いつくばる。その隙をついて、マジェードは次の手を使う。

 

〈〈YOACERBERUS! NEMINEMOON! As above, so below…〉〉

〈〈ガガガガッチャーンコ! スリーヘッドスリーパー! ムーンケルベロス!〉〉

 

 ムーンケルベロスにフォームチェンジしたマジェードは、ファイティングポーズをとる。正面からの殴り合いを仕掛けるつもりだ。

 

「……ハハッ。よし、九堂! 思いっきりかかってこい!!」

 

 力と力の純粋な勝負にガッチャードは思わず笑みを溢し、大きく手招きをする。マジェードは彼の誘いに応えるように、ボクシングのファイティングポーズのまま一気に接近し、左ジャブを仕掛けた。ガッチャードも彼女の左拳と鏡写しになるかのように、右手で突っ張りを放つ。奇しくも拳を平手で受け止める、所謂ジャンケンでいう“グー”と“パー”の図式になっていた。

 このままではジリ貧だと察したマジェードは、ムーンケルベロスの能力をフル活用することにした。今度は右ストレートを放つマジェード。だが放たれたパンチはただのものではなかった。先程と同じく相殺しようとしたガッチャードだったが、顔面にもろに喰らって思わず仰け反る。

 

「ぐ……」

 

 ムーンケルベロスの腕部〈トリニティクレセント〉は高速の三連撃を撃つことができる機能を持っている。そのせいで、ガッチャードはマジェードのパンチを受け止めきれなかったのだ。マジェードの連続パンチは続き、猛攻はこれだけに留まらない。

 

「な…んだ!? だんだん体が……重く……」

 

 連続パンチを受けたガッチャードは、ムーンケルベロスの重力操作によって次第に身体に負荷がかかっていったのだ。

 押し潰されそうになるガッチャードに対して、マジェードはさらに負荷のかかる攻撃を仕掛けた。錬金術でグラウンドの地面の一部を掘り起こし、巨大ブロック状に形成する。

 

「うっ……ぐぐ……うう……おおお…………!」

 

 重力負荷を抱えながらも、なんとしてでも起きあがろうとするガッチャード。しかしマジェードの錬金術の形成の方が先だった。浮遊した巨大なブロックはガッチャードの真上から落下した。

 

「があああああっっっっっっ!!!」

 

 ブロックはガッチャードを押し潰し、そのまま埋もれてしまった。マジェードは埋もれてしまったガッチャードを見続ける。その目が語るのは、「まだ終わっていないだろう」というものだった。

 

〈VENOMDAKE! DEEPMARINER!〉

〈ガッチャーンコ! ヴェノムマリナー!〉

 

 直前にディープマリナーにフォームチェンジし地中に潜り込んでいたガッチャードが、マジェードの背後に浮上して空中回し蹴りを放った。注意深く観察していたつもりだったが、ガッチャードの背後からの奇襲に対応しきれなかったマジェードはガードを試みた。しかし衝撃に耐えきれなかったためかブロックの落下箇所まで大きく吹き飛ばされてしまった。

 

「が……は……。はあ、はあ……やるじゃん一ノ瀬……」

 

 背中の痛みを堪え、なんとか起き上がる。息も絶え絶えながら、マジェードに戦いを辞める選択肢はない。脚部の〈シンコピィチェイサー〉の能力を活かし、一気にガッチャードに接近を図る。

 ガッチャードは再び地中に潜り、マジェードの攻撃を躱す。攻撃を躱されたマジェードは小さく舌打ちすると、脚部の機能を活かして大きくジャンプをする。こうすることで、ヴェノムマリナーの奇襲から回避できる算段だ。マジェードは拳に力を込めると、ガッチャードが潜伏している地面に向けてパンチを放った。

 すると地面が崩れ出し、ガッチャードが地中から出現した。ムーンケルベロスの重力操作の影響で、地上に出てこざるをえなくなったのだ。

 

「うわわわ……っ! ハッ! ぐああっ!!」

 

 地上から出てきたガッチャードは空中に浮かぶ地面の瓦礫へ四方八方に飛び移る。その隙をついたマジェードが思いきり彼の腹部に左ストレートを叩き込んだ。腹部にもろに喰らったガッチャードは一瞬で地面に伏した。その規模は、クレーターが出来てしまう程だった。

 

「が……は……ああ、くっ……」

 

 大きなダメージを貰い、息も絶え絶えに起き上がろうとするガッチャード。しかしそう簡単に起き上がれず、何度も仰向けに体が倒れ込んでしまう。

 

〈アルケミスリンク!〉

 

 地面に着地したマジェードが、アルケミスドライバーにハイアルケミストリングをかざす。音声を聴いたガッチャードは内心不味いと感じた。このままではとどめを刺されてしまう。何とか力を振り絞って、この状況を回避できる手を使わなければ────。

 

〈ムーンケルベロス! ノヴァ!〉

 

 マジェードはアルケミスドライバーのレバー部分にあたる〈セミアルトヴォーク〉を操作し、そのまま跳躍しライダーキックをガッチャードへ放つ。

 一気に迫ってくるマジェードに、ガッチャードは何とか腕を動かそうと試みる。

 

(間に合え…………!!)

「ハアアアアアアアアッ!!!」

 

 掛け声と共に放たれるキックがガッチャードに命中し、大きな爆発を起こす。音声を聴き、二人に目を向けたミナト達は、爆発の勢いを防御するために思わず目を塞いでしまう。火花が静かに鳴り響く音が聴こえ、塞いでいた目を徐々に開ける。そこにはガッチャードの姿も、変身解除した宝太郎の姿もなく、一同は大きく目を見開いた。

 

「い………一ノ瀬ぇーーーーーーーー!!!!」

 

 八神の宝太郎を呼ぶ声が、グラウンドに木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガッチャードとマジェードが戦いを始めた頃。康祐、杏那、八神、ミナト、ジョージは離れ離れにそれぞれ屑ヤミーと対峙していた。屑ヤミーは動きが鈍重で、さながらゲームに出てくるゾンビを彷彿とさせるものだった。

 

「この動きなら、俺も対処できそうだ…!」

 

 屑ヤミーの行動を見定めていた八神が、我流の喧嘩殺法で何体か屑ヤミーを殴り飛ばしていた。戦い慣れた宝太郎やりんねと比べると荒削りな部分はあるが、それでも屑ヤミーを相手取るには充分な腕前だ。

 

「オラァ!」

 

 荒っぽい掛け声と共に、八神は向かってきた屑ヤミーを肘打ちで顔面に殴りつける。顔面をやられた屑ヤミーは悶えてしまっていた。

 他にも襲いかかってきた個体には、見様見真似で繰り出したシャイニングウィザードを繰り出したり、背後から回り込んだ馬跳び壊撃で二、三体程蹴り飛ばしていた。

 一方、康祐も洗練された武術をもって対処していた。康祐はフランス発祥の武術、サバットを繰り出して屑ヤミーにダメージを与えていた。しなやかに鞭打つような回し蹴り、フエッテや拳を用いたジャブとストレートで迎え撃っていた。

 

「はっ、この程度か? 時々遭遇するヤクザの方がまだ倒し甲斐があったぞ!!」

 

 康祐の挑発ともとれる発言を真に受けたのか、彼の背後から屑ヤミーの一体が羽交い締めをした。群体で動いてるためか、連携が必要な場面でよく取れてる────。内心康祐はそう評価した。

 だが慌てることなく康祐は深く息を吸い込むと、思いきり自分に羽交い締めした屑ヤミーの腹部に肘打ちを叩き込む。喰らった屑ヤミーは崩れ落ち、腹を押さえ込んだ。その隙を突いて、康祐は踵落としを締めていた屑ヤミーの脳天に決めた。

 一連の流れを見ていた他の屑ヤミーは、じりじりとにじり寄る。攻撃するチャンスを窺っているのは明白だ。康祐は手を伸ばし手招きをした。

 

「どうした? 来ないのか?」

 

 明らかな挑発に、前方にいた屑ヤミーの数体は勢いよく飛びかかった。

 

 

 

 

 

 杏那もまた、洗練された武術をもって屑ヤミーと対峙していた。ただし彼女の武術の心得があるのは、康祐と同じサバットではない。杏那は截拳道で屑ヤミーを次々と倒していったのだ。

 その筋では有名なワンインチパンチ、相手の攻撃を利用したカウンターキック、そしてフィンガージャブなど多彩な攻撃を繰り出して、屑ヤミーを何体も地に伏せさせていた。

 

「わたしでも倒せるのね……必要とあらば先生から武器でも貰おうと思っていたけど……」

 

 呆気なく倒れていく屑ヤミー達に、杏那はそんな感想を漏らす。そんな彼女の言葉とは裏腹に、その雰囲気からは全く油断は感じていなかった。

 そんな時、後ろから屑ヤミーが背後から飛びかかってきた。杏那は動じることなく、裏拳を顔面に叩き込む。裏拳がヒットした屑ヤミーは顔面をさすり、そのまま向かい合った杏那は胴回し回転蹴りを放つ。渾身の蹴りを喰らった屑ヤミーは吹っ飛び、他の個体も巻き添えに倒れていった。

 

「全くアイツら……よくもまあ、あそこまで上手く立ち回れるもんだ」

 

 三人の屑ヤミーへの対処に、思わずそんな感想を漏らすミナト。大人としては一般人の彼等を守る立場にいたかったが、屑ヤミーの人数がそうはいかなかった。

 そんな心情とはお構いなしに、屑ヤミーはミナトに襲いかかってくる。ミナトは錬成していた長剣を振り回し、薙ぎ倒していく。しかしわらわらと湧いてくる屑ヤミーに、思わず辟易する。

 

「ハハッ。未来ある若者でいいじゃないですか。昔を思い出すなぁ」

 

 フランクな調子でミナトに話しかけながら、ジョージは冷静に屑ヤミーを倒していく。現在彼は仮面ライダージュウガに変身する事が出来なかった状態であった。変身に使用するジュウガドライバーの細部メンテナンス中だったが故だ。

 

「しかし……あの二人の戦いは未だに拮抗している。いつ戦いが終わるのか……」

 

 ある程度倒し終えると、ミナトはガッチャードとマジェードの二人を見守る。彼等の実力は差がなく、宝太郎は多彩な形態を活かした戦い方。りんねはそれぞれのフォームに合わせた戦闘スタイルやスペック、そして自らの錬金術の技術でガッチャードとの戦力差を埋めている。

 

〈アルケミスリンク!〉

 

 そんな時だった。マジェードがじりじりと倒れ伏せていたガッチャードに歩み寄る。音声が聴こえたミナト達は、堪らず二人の方へ顔を向ける。

 

「This is bad! このままでは彼女の勝利で終わってしまう!」

「もしそうなれば、一ノ瀬は……」

「当然、悪魔化した彼女は殺す覚悟で戦っているからね。この局面を凌げなければあのボーイは死んでしまう!」

 

〈ムーンケルベロス! ノヴァ!〉

 

「ハアアアアアアアアッ!!!」

 

 少女の掛け声とともに放たれたライダーキックはガッチャードの胸部に命中し、そのまま彼がいた地点で爆発が起きた。爆発の規模は大きく、ミナト達五人が倒していた屑ヤミーをも巻き込む程のものだった。

 爆発の勢いに、ミナト達は堪らず目を塞いでしまう。やがて爆発が収まると見守っていた皆は目を開き、そこにある光景に驚いた。いるはずガッチャードの姿も、変身解除した宝太郎の姿もなかったのだ。

 まさか、宝太郎が負けたのか────? 脳裏でそんな想いが過ぎってしまう。

 

「い………一ノ瀬ぇーーーーーーーー!!!!」

 

 八神の宝太郎を呼ぶ声が、グラウンドに木霊した。

 その十数秒後のことだった。

 

〈ガッチャーイグナイター! ターボオン!〉

 

 何処からともなく、力強さを感じさせる音声が鳴り響いた。音声を聴いたミナトはほっと胸を撫で下ろす。

 

〈HOPPER1! イグナイト!〉

〈STEAMLINER! イグナイト!〉

 

「ホオ……どうやら、戦いはまだこれからのようだ!」

 

 続いてジョージも、喜びを体全体で表す。肩唾を呑んで見守っていた康祐達も、歓喜の色を見せる。

 

〈ガッチャーンコ! ファイヤー!〉

〈スチームホッパー! アチーッ!〉

 

 マジェードの背後に立つ爆煙の中から、人影が見えた。ゆらゆらと揺れる煙が消えだすと、そこには仮面ライダーファイヤーガッチャード・スチームホッパーが悠然と立っていた。

 

「戦いはまだこれからだぞ…………! 九堂!!」

「それでこそ一ノ瀬だね……行くよ!!」

 

 ガッチャードとマジェードが同時に脚を蹴り出すとほぼ同時に、二人の拳と拳がぶつかり合った。

 

 

 




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