艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―2「激闘南シナ海」   作:黒瀬夜明 リベイク

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「M.B機」

飛来した敵第三波の深海棲艦戦と深海棲艦爆の編隊は、海面に輪形陣を展開している艦娘艦隊を認めた。

その中に、深海海月姫艦爆隊の第三小隊の隊長機である胴体横に、深海棲艦にのみ判読できる文字で「M.B」と書かれた深海棲艦爆*1があった。

そこへ艦娘の艦上戦闘機「シーク(零戦)」が現れ、襲い掛かってくる様が見えた。

二四機の深海棲艦戦が速力を上げ、立ち向かっていく。

シークの数は十機前後で、深海棲艦戦よりも少ない。「M.B機」の目の前で空中戦が始まった。

数で劣るシークを深海棲艦戦が抑え込むと思われたが、空中戦の様相はその真逆だった。

猛スピードで突っ込んだ深海棲艦戦を、シークは恐ろしいほど小さな旋回半径で避けていく。

そしてあっという間に背後を取ったかと思えば、両翼からほとばしった真っ赤な火箭が深海棲艦戦を捉え、二機の深海棲艦戦が白煙を引いて墜落し、一機の深海棲艦戦がよろめきながら姿を消した。

深海棲艦が運用する艦上戦闘機の中に、あれほどに身軽な機体は存在しない。深海棲艦戦が散開し、どれほど機体を急角度に倒し小さな半径で旋回しても、シークはそれよりも小さな旋回半径で背後へ回り込んで、真っ赤な火箭を放ってくる。

主翼に当たる部分を破壊された深海棲艦戦が、錐揉み状になって海面へと落ちていき、制御に携わる個所を破壊された深海棲艦戦は、白煙を引きずりながら力尽きたように、機首から真っ逆さまに墜落していく。

深海棲艦爆が、機体同士の間隔を詰めていく。

「M.B機」の小隊も、二、三、四番機が間隔を詰めてくる。

密集した深海棲艦爆の編隊に、シークが襲い掛かってきた。編隊の右後方から向かってきたシークは、最後尾の第八小隊に取り付き、攻撃を仕掛けている。

深海棲艦爆の尾部に装備された旋回機銃が応戦を始めた。

しかし、深海棲艦戦でも苦戦を強いられるシークが、深海棲艦爆に襲いかかればどうなるか、結果は火を見るより明らかだった。

第八小隊の三機の深海棲艦爆が敵弾を浴び、瞬く間に撃墜された。

まるで肉食獣の群れが草食獣の群れに襲いかかり、逃げ遅れた獲物を喰らっていくような光景だ。

「M.B機」の右前方からシークが迫ってくる。

深海棲艦爆の機首に装備された機銃から青白い火箭が吹き伸びたが、それはシークの手前で下方に逸れて空を切る。

シークの主翼に発射炎がほとばしるが、こちらは深海棲艦爆の右方をかすめるようにして、下方に逸れた。シークは右旋回によって離脱していく。後方の二番機、三番機も機首に発射炎を閃かせるが、こちらも空振りに終わる。

編隊から離脱したシークが反転し、再び襲いかかってきた。

「M.B機」が機体を左右に振って、敵弾を回避すると、後方から青白い火箭が吹き伸び、シークに突き刺さった。シークは一瞬でバラバラに砕け散るようにして姿を消す。

しかしその間にもシークの攻撃は続いていた。新たに四機の深海棲艦爆が撃墜され、南の海へと姿を消していく。

執拗に深海棲艦爆を追い立てていたシークだったが、爆撃隊の編隊が輪形陣の外郭に到達すると、機体を翻して離脱していった。

海面を進む艦娘艦隊には合計で六隻の空母が見えた。しかし黒煙を上げている空母は一隻の存在しなかった。

当初は深海珊瑚海水鬼と空母ヲ級、そして深海海月姫から発進した攻撃隊は、空中で合流してから進撃を開始する予定だった。

しかし深海海月姫から飛び立った攻撃隊は、深海珊瑚海水鬼と空母ヲ級の攻撃隊と合流できず、艦娘艦隊への攻撃は母艦毎による攻撃となったのだ。

先に攻撃を仕掛けた深海珊瑚海水鬼と空母ヲ級の攻撃隊はシークの迎撃に合い、戦果無しに終わったことは、黒煙を上げている空母がいないことを見れば一目瞭然だった。

深海棲艦爆の編隊が密集隊形を解くと、斜め単横陣を組み始めた。第一から第四小隊までの目標は敵空母の一番艦。第五から第八小隊は敵空母の二番艦がそれぞれ目標とされた。

そんな中、深海棲艦爆の編隊前方に黒い爆煙が湧き出した。

輪形陣の外郭を固める護衛の艦娘が対空射撃を開始したのだ。

対空射撃を浴びながら、第一から第四小隊は左、第五から第八小隊は右へ旋回し、各々の目標へと向かっていく。

第一小隊の隊長機を先頭に、「M.B機」は敵空母の一番艦へと向かっていく。

だがそれは唐突に訪れた。

「M.B機」の左方で発射炎が瞬いたその数秒後、先頭を行っていた第一小隊隊長機の真上で爆発が起こり、機体は力尽きたように墜ちていく。

爆発は連続して襲い掛かる。

二秒から三秒くらいの間隔で空中に黒い爆煙が湧き、深海棲艦爆の編隊に襲いかかってくる。

飛び散った弾片が深海棲艦爆の機体を叩き、爆風が左右に機体をあおる。

第一小隊の三番機が、主翼に当たる部分を破壊され、続けて四番機が炎を噴いて墜落していく。

更に敵弾が深海棲艦爆を襲い、第二小隊の一番機と二番機が白煙を引きずって消えていく。

堪りかねたように、残存する第一小隊と第二小隊の深海棲艦爆が機体を翻し、敵空母一番艦に向って急降下に入った。

「M.B機」は残った第三、第四小隊を率いて右の水平旋回を掛けた。

敵空母の一番艦には、強力な防空艦の艦娘が張り付いている。

敵空母一番艦への攻撃を避け、後方にいる三番艦へ攻撃を掛ける態勢を見せたのだ。

 

*1
以降、「M.B機」と表記

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