艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―2「激闘南シナ海」   作:黒瀬夜明 リベイク

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飛龍、健在

爆発の閃光が瞬いたのは、一度だけだった。

その後に四度、飛龍を囲うように水柱が奔騰し、先頭の深海棲艦爆のみが、飛龍への攻撃を成功させたようだった。

「護り切れなかった…」

古鷹は動揺していた。彼女は目を見開き、飛龍から目を離せなかった。

黒煙は飛龍の姿を隠していて、ハッキリと見えない。古鷹にとっては、気が気でならなかった。

やがて黒い爆煙が晴れると、飛龍の無事な姿が古鷹の目を射た。

橙色の弓道着は若干煤けているが、左肩の飛行甲板の艤装から煙は上がっていない。

左手に握られた和弓も、変わらずに弦を張り続けている。

「痛てて…あちゃぁ、一番高角砲がやられちゃった」

「飛龍さん、被害を報告して!」

赤城が声を張り上げ、飛龍に被害報告を迫った。

飛龍は緑色のスカートの裾を叩きながら、報告をした。

「一番高角砲に一発命中しただけだから、発着艦に支障はないかな」

飛龍の報告を聞いて、古鷹の見開いた眼はようやく落ち着きを見せたのか、安心した様子にゆっくりと閉じられた。

「よ、良かったぁ…」

古鷹は安堵の声とともに、胸に撫で下ろした。

空母の艦娘たちへの被弾は防げなかったが、被害は最小限に抑えられたようだ。

飛龍は古鷹に顔を向け、はにかんで見せた。

「ありがと古鷹!古鷹の援護のおかげで、私はまだ戦える!」

「お礼を言われるようなこと、古鷹はしてないよ…ごめん」

それでも古鷹は申し訳なさそうに頭を下げた。防空艦である自分が付いていながら、と顔に書かれているような暗い表情だ。

だが飛龍はそれでもいつも通りの口調で言った。

「じゃあ母港に戻ったら、一緒に反省会しよっか!」

「え…」

古鷹が顔を上げると、飛龍は空を見上げながら言った。

「さっきの古鷹の動きを見てたけど、対空戦闘は秒単位で勝負が決まる。って、改めて思い知らされたからさ」

「――っ!」

その時古鷹は、横須賀での訓練中に桂木から教わった言葉を思い出していた。

「敵機との戦いは、一瞬で明暗が分かれる。素早い決断が何よりも重要だ」

古鷹はその言葉を無意識下に実践していたことに気付いた。

無意識の内に目標の変更が出来たということは、古鷹は訓練通りの動きが出来ていたことを意味する。

飛龍は続ける。

「だからさ!母港に帰ったら、六戦隊の参謀たちも交えて反省会すれば、私たちはもっと強くなれるんじゃないかな?」

「ナイスアイデアね、飛龍さん!」

話を聞いていたのか、赤城が脇から肯定した。でしょ!と飛龍は親指を立ててみせた。

だが、あくまで冷静な加賀が注意を喚起した。

「その話をする前に、現状を打開するのが今は先じゃないかしら?」

「加賀さんは、まだ空襲が続くと思うの?」

蒼龍が加賀の言葉に質問をぶつけた。加賀は敵機が飛び去ったほうの水平線を見ながら呟いた。

「分からないわ。でも、さっきまでの空襲に、雷撃機はいなかったわ」

加賀の言葉を受けて、一航艦全体が張り詰めた空気に引き戻される。

古鷹も加賀の言葉に同意し得ない。

「敵は私たちの発着艦能力を奪ってから、雷撃機で止めを刺す気でしょうか?」

「その可能性はあるわ。飛行甲板に直撃を受ければ、私たちは戦えない」

翔鶴の疑問定期に加賀は答える。だが一連の対空戦闘の結果を見れば、敵の目論見は失敗に終わったと言って良かった。

空母で被弾したのは、飛龍のみでしかも飛行甲板への直撃弾はない。

一航艦の空母たちは一人も欠けることなく健在なのだ。

「だとしたら、深海棲艦の連中の目論見は崩れたってわけでしょ!やったじゃない!」

「瑞鶴さんの言う通りでもあるけど、深海棲艦(奴ら)の考えはわからないわ。もしかしたら、雷撃機を無謀に突撃させてくるかもしれないわ」

「うっ…た、確かに」

赤城の言葉を受けて、瑞鶴はその光景を想像したのか、特段苦い薬を飲み下ろしたような表情を見せた。

赤城は次いで古鷹と衣笠を交互に見やり、一航艦全艦娘へ通達した。

「空襲の第四波の危険性がある内は、警戒を怠らないようにお願いします。特に、雷撃機が向かってくるかもしれない低空への警戒は厳として」

了解!という声が、一航艦全体から聞こえてきた。

だが、恐れていた第四波の空襲はすぐにはなかった。赤城は決断した。

「第二次攻撃隊、発艦準備!」

 

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