艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―2「激闘南シナ海」 作:黒瀬夜明 リベイク
攻撃隊の報告電を受信した南遣艦隊残存部隊の艦娘たちから歓声が上がった。
圧倒的と言ってもいい戦闘だった。上空に現れた零式艦上戦闘機、通称「零戦」が深海カモメ水偵を追い散らしている間に、魚雷を抱えた九七艦攻が、四連装砲塔搭載型戦艦ル級に肉薄。果敢に航空雷撃を加えて航行不能に陥れたのだ。
「いつ見ても凄いなぁ」
青葉は上空を飛ぶ、零戦と九七艦攻の群れを見上げながら、思わず呟いた。
「あたしらには出来ない芸当だよな…」
どうやら加古も、青葉と同じ思いのようで、上空を見上げている。
何度か空母の艦娘の掌の上に乗っている艦載機を見たことがあるが、その艦載機は如何にも青葉たちよりも小さく、非力な存在に見える。
だが実際には、敵が戦艦であっても撃沈にまで至らしめる程の攻撃力を秘めているのだ。
恐ろしいと思えると同時に、この上なく頼もしくも思える。
「横須賀の
青葉は、横須賀鎮守府で提督をしている槍田の顔を思い浮かべながら加古の方を振り向いた。加古も、同感だ。と首を縦に振る。
横須賀鎮守府提督の槍田は、日本連合艦隊の提督の中でも生粋の航空主兵思想家だ。
長門や陸奥をはじめとした戦艦部隊の威力を信じつつも、これからは航空機が深海棲艦との戦いの主役になる。と思っている人物だ。
現に、中止となったであろう「真珠湾作戦」は彼が立案した作戦だ。航空機の力を信じていなければ、深海棲艦の本拠地である真珠湾を、機動部隊の艦載機で叩こうなどとは思わないだろう。
次いで青葉は、正面に向き直りながら、桃園の丸顔を思い浮かべた。第六戦隊の砲術参謀である桃園も、航空機の威力を脅威と考えていたからこそ、砲術の中でも傍流と言われる「対空射撃」を専攻したのだ。
(ある意味、桃園参謀の見識は当たっていたように思えるなぁ)
青葉は再び後方を振り返った。天まで届きそうな黒煙を噴き上げる四連装砲塔搭載型戦艦ル級が遠目に見える。
自分たちでは戦闘力を削ぐだけでも苦労した相手を、対空戦闘力が下がっているとはいえ、いとも簡単に行動不能に追い込んだのだ。
改二乙への改装を受ける前であれば、ここまで深く考えなかったかもしれない。と青葉は、口内で独り言ちた。そんな時、上空の九七艦攻から「貴艦隊ノ無事ヲ祈ル」と無電が入った。上空では零戦と九七艦攻が速度を上げて飛び去って行くのが見えた。
青葉が周りを見渡すと、零戦と九七艦攻に向って手を振っている艦娘たちが何人かいた。加古も彼女たちと同じように手を振っている。
青葉も彼らへの感謝を込めて手を振った。
やがて零戦と九七艦攻が見えなくなった。南遣艦隊残存部隊は十四ノットの速度で連合艦隊主力と合流するべく先を急ごうとしていた。
青葉が再度、後方を振り返った時だった。
四連装砲塔搭載型戦艦ル級が黒煙を上げている辺りから、爆発光とは異なる眩い光があふれ出した。