艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―2「激闘南シナ海」 作:黒瀬夜明 リベイク
四連装砲塔搭載型戦艦ル級から眩い光があふれ出した頃、その海域から南に大きく離れた海域で、新たな戦闘が始まろうとしていた。
第一航空艦隊の総飛行隊長を務める妖精「
バンクしたのは、「淵山」の所属している赤城の僚艦、加賀の艦攻隊長を務める妖精「
「淵山」は左前方を向き、「あれか…」と独り言ちた。眼下に広がる海原に数十隻分の航跡が伸びている。進路は東。艦隊の速度は十四、五ノットといったところだ。
索敵機が発見した、深海太平洋艦隊の主力と見て間違いないだろう。
「体制を立て直させはしない」と、渕山は眼下の深海太平洋艦隊に投げかけた。
二航戦の蒼龍と飛龍から南遣艦隊残存部隊への救援部隊が飛び立った直後、深海太平洋艦隊の所在を探っていた索敵機が、「敵艦隊見ユ。位置、『三亜港』ヨリノ方位九〇度、一六〇浬。敵ハ戦艦九、巡洋艦、駆逐艦多数。敵進路九〇度。
今にしてみれば、南遣艦隊残存部隊への救援部隊を絞ったのは正解だったと言えるな。と淵山は思った。報告電を受け取ってからの一航艦の動きは非常に速かった。
一航艦旗艦の赤城は、二航戦が放った救援部隊を除いた艦爆、艦攻の全機を以って、発見された敵艦隊を攻撃すると決めた。敵艦隊の位置と規模から見て「昨夜、南遣艦隊が戦った敵艦隊と見て間違いない」と赤城は判断し、「
敵艦隊の発見当初は、敵空母の存在も懸念されたが、「淵山」が率いる各空母から飛び立た攻撃隊は、敵戦闘機の襲撃を受けることなく敵艦隊上空に到達し、直掩の零戦隊も動きを起こさない。
敵艦隊の上空は丸裸も同然だった。
赤城からは零戦二一機、九九艦爆二一機、九七艦攻三二機。加賀からは零戦四四機、九九艦爆と九七艦攻二〇機ずつ。翔鶴からは九九艦爆と九七艦攻が二七機ずつ。瑞鶴からは九九艦爆と九七艦攻が二六機ずつ。
零戦が計六五機、九九艦爆が計九四機、九七艦攻が計一〇五機。合計で二六四機の攻撃隊が、今まさに深海太平洋艦隊へと襲い掛かろうとしていた。
直後、電信員を務める妖精「
お預けとなった「真珠湾作戦」で溜まった鬱憤を、引っさげた九一式航空魚雷に乗せて、奴らの
「どうする?」と「淵山」は独り言ちた。敵艦隊は九隻の戦艦を二隊に分けて、各個に輪形陣を組んでいる。左前方の輪形陣には戦艦は五隻、右後方は四隻だ。
「淵山」は断を決し、「全機宛打電。『目標、左前方ノ敵艦隊。赤城隊、翔鶴隊目標、敵一、三番艦。加賀隊、瑞鶴隊目標、二、四番艦。突撃隊形作レ』」と「水島」に伝えた。
手前に見える輪形陣の戦艦に対して、雷爆同時攻撃を仕掛け、一挙に大打撃を与える。「淵山」はそう考えて目標を決めたのだ。
「『
加賀と瑞鶴の艦攻隊も、「橋本」機の誘導に従って敵艦隊の左方に展開し、高度を下げていく。
九九艦爆隊は現在の高度を維持したまま、各隊指揮官機を先頭に斜め単横陣を形成していた。
赤城隊の九七艦攻は、「淵山」機の誘導に従って海面すれすれの高度に舞い降りた。「淵山」が直率する第一、二、三中隊の十六機が各中隊ごとに分かれて単横陣を形成し、左方では赤城飛行隊長兼艦攻隊長を務める妖精「
全機宛発信。全軍突撃セヨ!
「淵山」機から発せられた無線を合図にして、低空の九七艦攻が一斉にエンジン・スロットルを開いた。
上空の九九艦爆は主翼の翼端を目標となる深海棲艦に重ねると、エンジン・スロットルを絞り、真一文字に急降下を始めた。
九九艦爆九四機、九七艦攻一〇五機の同時突入は圧巻と言っても差し支えないだろう。しかし、深海棲艦も黙ってやられる訳もなかった。
上空の九九艦爆、低空の九七艦攻の分別なく、激しい対空射撃を開始したのだ。「弘崎」が操る「淵山」機の面前で、左右で次々に敵弾が弾け、黒い爆煙が沸き立つ。
爆風に煽られる機体を「弘崎」は巧みに操って機体を立て直し、対空砲火の中を海面すれすれに突っ込んでいく。後続する三一機の九七艦攻も機首に備えた、中島「栄」一一型を轟かせ、「淵山」機に後続してくる。
エンジンの風切り音と炸裂する敵弾の音量に負けぬよう「淵山」は「右前方に巡洋艦!艦尾付近を抜けろ!」と怒鳴るように「弘崎」に指示を飛ばす。「艦尾付近を抜けます!」と「弘崎」が即座に復唱し、操縦桿を操る。
直後、電信員の「水島」が「『飯島』機被弾!」と声をあげた。第二中隊所属の九七艦攻が一機、対空砲火を浴びて海面に突っ込んだようだ。
「淵山」機と右前方に見えていた巡洋艦との距離が詰まり細部が見え始めた、黄色いオーラを纏った重巡リ級のフラッグシップ個体だ。機体が重巡リ級に近づくにつれて、対空砲火は更に熾烈になったように感じられた。飛散した弾片が、九七艦攻の外板を次々に叩き、不気味な異音が「淵山」の耳を突く。
「弘崎」が操る九七艦攻が、重巡リ級の艦尾付近を抜けたのは、その直後だった。「淵山」の目に、巨大な戦艦ル級の姿が入ってきた。