艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―2「激闘南シナ海」 作:黒瀬夜明 リベイク
敵機、迫る
「直掩戦闘機隊は、直ちに発進してください!」
和弓から零戦二一型の矢を放ちながら、一航艦の旗艦赤城が各空母たちに指示を飛ばした。赤城の僚艦である加賀、第二航空戦隊の蒼龍と飛龍、第五航空戦隊の翔鶴と瑞鶴も、矢継ぎ早に零戦を発進させていく。
上空へと上がっていく零戦を一度だけ見上げた古鷹は、右腕を丸ごと覆った艤装を撫でながら目を閉じた。
(いよいよ、初陣…)
古鷹は、今から防空艦としての初陣が始まることを理解していた。
一時間ほど前、一航艦は敵偵察機の触接を受けた。その時は迎撃が間に合わず、敵空母部隊に一航艦の位置を知られてしまった。
敵機がいつ現れるのかは分からなかったが、直掩戦闘機隊が発進する直前に、索敵を行っていた偵察機から「敵戦爆連合、貴隊ニ向カイツツ在リ。貴隊トノ距離、六十浬」と報告が届いた。
あと三十分もしない内に敵機がやってくる。
迫る対空戦闘に向けて、古鷹はいつものルーティーンである「艤装を撫でて目を閉じる」をすることで気持ちを落ち着かせていたのだ。
「古鷹さん、衣笠さん、よろしくお願いしますね!」
古鷹が目を開けるのと同時に、赤城から声が掛かった。古鷹は赤城のいる左舷側を見た。赤城の凛とした表情から、期待の眼差しが向けていられることを古鷹はすぐに察した。
「任せて!赤城たちには、指一本触れさせないから!」
古鷹は左手を胸の前で握りながら、笑顔で答えた。
現在古鷹は、一航艦を中心に形成した輪形陣の右前方で配置についている。僚艦の衣笠は反対側、左前方だ。古鷹は赤城の右正横を、衣笠は加賀の左正横をそれぞれ護っている。
「加賀さんのことは、衣笠さんがシッカリ護ってあげるから、安心して大丈夫!」
「…それなりに期待しているわ」
輪形陣の反対側では、衣笠が加賀に自信ありげな笑顔を送っていた。
「加賀さんったら、素直じゃないわね!うふふっ」
加賀のそっけないように見える態度を見て、赤城にも笑みが浮かんだ。
間もなく戦闘が始まるというのに、何処か緩い空気が流れていた。
だが、古「直掩戦闘機隊は、直ちに発進してください!」
和弓から零戦二一型の矢を放ちながら、一航艦の旗艦赤城が各空母たちに指示を飛ばした。赤城の僚艦である加賀、第二航空戦隊の蒼龍と飛龍、第五航空戦隊の翔鶴と瑞鶴も、矢継ぎ早に零戦を発進させていく。
上空へと上がっていく零戦を一度だけ見上げた古鷹は、右腕を丸ごと覆った艤装を撫でながら目を閉じた。
(いよいよ、初陣…)
古鷹は、今から防空艦としての初陣が始まることを理解していた。
一時間ほど前、一航艦は敵偵察機の触接を受けた。その時は迎撃が間に合わず、敵空母部隊に一航艦の位置を知られてしまった。
敵機がいつ現れるのかは分からなかったが、直掩戦闘機隊が発進する直前に、索敵を行っていた偵察機から「敵戦爆連合、貴隊ニ向カイツツ在リ。貴隊トノ距離、六十浬」と報告が届いた。
あと三十分もしない内に敵機がやってくる。
迫る対空戦闘に向けて、古鷹はいつものルーティーンである「艤装を撫でて目を閉じる」をすることで気持ちを落ち着かせていたのだ。
「古鷹さん、衣笠さん、よろしくお願いしますね!」
古鷹が目を開けるのと同時に、赤城から声が掛かった。古鷹は赤城のいる左舷側を見た。赤城の凛とした表情から、期待の眼差しが向けていられることを古鷹はすぐに察した。
「任せて!赤城たちには、指一本触れさせないから!」
古鷹は左手を胸の前で握りながら、笑顔で答えた。
現在古鷹は、一航艦を中心に形成した輪形陣の右前方で配置についている。僚艦の衣笠は反対側、左前方だ。古鷹は赤城の右正横を、衣笠は加賀の左正横をそれぞれ護っている。
「加賀さんのことは、衣笠さんがシッカリ護ってあげるから、安心して大丈夫!」
「…それなりに期待しているわ」
輪形陣の反対側では、衣笠が加賀に自信ありげな笑顔を送っていた。
「加賀さんったら、素直じゃないわね!うふふっ」
加賀のそっけないように見える態度を見て、赤城にも笑みが浮かんだ。
間もなく戦闘が始まるというのに、何処か緩い空気が流れていた。
だが、古鷹には一つ懸念していることがあった。古鷹は輪形陣の陣容を頭に思い浮かべていた。
(一航戦は古鷹と衣笠で護れるけど。もし五航戦に敵が向かったら…)
古鷹は後方を振り返った。視線の先には、五航戦旗艦の翔鶴。そして、翔鶴の右正横で護りに付いている第三戦隊の比叡が見える。
その反対側では、瑞鶴が同じく三戦隊の霧島が護りに付いているのだろうが、ここからではよく見えない。
比叡も霧島も、水上砲戦を主眼にした大規模改装を受けており、対空火器は12.7センチ40口径連装高角砲が四基と、古鷹たち六戦隊には遠く及ばない。
(青葉と加古がいてくれたらなぁ…)
古鷹はここにはいない、二人の戦友の顔を思い浮かべた。
青葉と加古がいれば、六人の空母たちを満遍なく護ることが出来るのだが――。
「…私たちは、私たちに出来ることをしなくっちゃ!青葉と加古には、負けられないからね!」
両手の掌で頬を叩き、気合を入れなおす古鷹。
彼女は上空で旋回待機を続ける零戦が奏でるエンジンの爆音を聞きながら、戦闘の開始を待った。
一二時二二分*1。
「左二〇
輪形陣の前方で配置についていた第一水雷戦隊旗艦の阿武隈が声をあげた。
「来たっ!」
古鷹は右腕と、背中に背負った煙突型の艤装から伸びるアームで接続された長10センチ高角砲を左舷側へ向けた。
鷹には一つ懸念していることがあった。古鷹は輪形陣の陣容を頭に思い浮かべていた。
(一航戦は古鷹と衣笠で護れるけど。もし五航戦に敵が向かったら…)
古鷹は後方を振り返った。視線の先には、五航戦旗艦の翔鶴。そして、翔鶴の右正横で護りに付いている第三戦隊の比叡が見える。
その反対側では、瑞鶴が同じく三戦隊の霧島が護りに付いているのだろうが、ここからではよく見えない。
比叡も霧島も、水上砲戦を主眼にした大規模改装を受けており、対空火器は12.7センチ40口径連装高角砲が四基と、古鷹たち六戦隊には遠く及ばない。
(青葉と加古がいてくれたらなぁ…)
古鷹はここにはいない、二人の戦友の顔を思い浮かべた。
青葉と加古がいれば、六人の空母たちを満遍なく護ることが出来るのだが――。
「…私たちは、私たちに出来ることをしなくっちゃ!青葉と加古には、負けられないからね!」
両手の掌で頬を叩き、気合を入れなおす古鷹。
彼女は上空で旋回待機を続ける零戦が奏でるエンジンの爆音を聞きながら、戦闘の開始を待った。
一二時二二分*3。
「左二〇
輪形陣の前方で配置についていた第一水雷戦隊旗艦の阿武隈が声をあげた。
「来たっ!」
古鷹は右腕と、背中に背負った煙突型の艤装から伸びるアームで接続された長10センチ高角砲を左舷側へ向けた。