艦隊これくしょん「艦これ」―荒海の槍騎兵―2「激闘南シナ海」   作:黒瀬夜明 リベイク

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第一波、撃退

前方で次々に火を噴いては墜落していく僚機を見て、深海棲艦爆は一斉に急降下を開始した。見張り員妖精が、「敵機、赤城と加賀に急降下!」と報告を入れたが、古鷹は動じない。

「逃がさないよ!」

急降下を開始した深海棲艦爆に向けて、俯角を着けた長10センチ高角砲から射弾が撃ち込まれる。

急降下を最初に始めた深海棲艦爆は、機体後方を吹き飛ばされて、螺旋状に回転しながら墜落していく。

敵機が降下を始めたタイミングで、一航艦の六人の空母たちも、12.7センチ連装高角砲による対空射撃を開始している。

古鷹が放った10センチ砲弾で操縦系統を損傷したのか、よろめきながら降下していた深海棲艦爆に、赤城が12.7センチ高角砲を放ち、投弾前に撃墜する。

「これで八機目…」

古鷹の視界内で撃墜を確認したのは、これで八機目だ。

一航艦に近い位置にいた左の梯団は、直掩の零戦隊と合わせてことごとくを撃墜したことになる。

「後続が来るよ古鷹!」

「了解!」

衣笠が注意を喚起した所で、古鷹は後続の右の梯団に向けて長10センチ高角砲を二秒おきに発射し、投弾の阻止を図った。

まず一機目が、主翼に当たる部分を破壊されたのか、錐揉み状に回転しながら墜落した。

二機目は、10センチ砲弾が至近距離で炸裂したのか、ばらばらに砕け散って姿を消していた。

三機目は、二発の外れ弾が発生したが、三発目が深海棲艦爆の上空で炸裂し、黒煙を引きずって海へと墜落した。

古鷹の放った長10センチ高角砲は、後続の梯団に対して三機の撃墜に留まってしまったが、取り逃してしまった深海棲艦爆の投下位置や、爆弾の投下高度はばらばらだった。

赤城が咄嗟に身構えたが、赤城の周囲には水柱が奔騰するだけで、直撃弾炸裂の閃光は一度も瞬くことはなかった。

やがて水柱が崩れ、海水を多少被っただけの赤城が姿を現した。

それ以上赤城に向ってくる敵機はおらず、離脱にかかった深海棲艦爆に零戦が追撃をかけているのが少し離れた上空に見えた。

「高角砲、撃ち方止め!」

古鷹の指示を受けて、六基の長10センチ高角砲が咆哮を止めた。

古鷹は追撃をせずに腕を下ろした。次いで六人の空母たちへ視線を向けた。

対空戦闘中は敵機を墜とすことに集中していて、護衛対象である空母たちの姿をハッキリと見れていなかったからだ。

(みんなは大丈夫かな?)

しかし、古鷹の心配は杞憂に終わった。

被弾し炎上する者も、黒煙を立ち昇らせる者も、一航艦にはただの一人もいなかった。

「よかった、上手くいった……」

古鷹は、ふぅ。と息を吐いた。

呉での講習の際に、急降下爆撃は基本的に、最初の一番機以下が一本棒になって降下してくる。と桃園から教えられていた。

古鷹はその話に基づき、敵機が急降下を開始したタイミングで射撃を始め、結果として赤城への被弾を防いだ。恐らく、衣笠も同様だろう。

「旗艦赤城より、六戦隊へ。今の対空射撃、お見事ね!私も加賀さんも、かすり傷一つないわ」

「加賀より、六戦隊へ。とても助かったわ」

すると赤城と加賀から称賛の言葉が古鷹と衣笠に向けられた。古鷹も衣笠は素直に嬉しかったが、気を抜いてはいけないと感じていた。

「まだ安心はできないよ、赤城さん、加賀さん。今のはまだ、第一波だからね」

「そうだね…空襲が終わるまでは、気を抜けないよ」

古鷹も衣笠も、空襲がこれで終わるとは思っていない。

たった今押し寄せてきた深海棲艦爆の数は約四十機。大体、姫級空母一隻分の爆撃機の数だ。

事前情報では、比島*1に回航された敵空母は三隻と報告されているから、この後も第二波、第三波と空襲が反復することは、容易に予想ができる。

「古鷹さんも衣笠さんも慎重ね」

感心する赤城に古鷹は言った。

「戦いの帰趨は、最後まで分からないから…」

古鷹は前方を見据え――

桂木さん(あの人)の顔に、泥を塗る訳にはいかないからね…)

桂木の顔を思い浮かべていた。古鷹の顔が、一瞬だけ赤くなったような気がしたが、それに気づく者は誰もいなかった。

 

*1
フィリピン

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