私、
今日の死をもって、
そうすれば…きっと私は生まれて初めて
私の死はきっと
誰かにとってはトラウマで
誰かにとってはイベントで
誰かにとっては
それでも…ここで終わらせるのだ
誰よりも、自分のために
私という作家の手によって、連載17年『京塚恭子』という作品を打ち切るのだ
持ち得た希死念慮を抱え、少女は屋上へ登る
普段の彼女の足取りと比べれば、かなり軽い足取りに見えるかもしれない
だが…その一歩には確かな意志による重みが垣間見える
それでも足取りが軽いのは、
天へと上る前触れか、それとも…
彼女は登る、昇る
上へ、上へ、
二階、三階、
屋上前
屋上の扉前には三角コーンやら、いつ使うのか分からない木製の何かしらが雑多に散乱していた
昨日とも…一昨年とほとんど変わらない今日の景色…
不変の光景の中で、私は
ふぅ…と肺に溜まった重みを一つ吐き出す
そして…少女はくすねた死への扉の鍵を刺し込み…
『開』へと鍵をぐるりと右へ…
(………?)
…おかしい…手ごたえがない…
開けた時のガチャッ…という音も、開けた時特有のあの振動…感触も…
私に伝わっては来なかった
まさか…と思い…
…ドアノブを捻り…少し引く…
……………
…私はずっと前からこの扉について事前に確認したが、この扉が開いていたことは無い
だからこそここの鍵を頭のゆるい私なりに頑張ってくすねたのだ
だというのに…
(………ハァ…なんで…?)
……予期せぬサプライズによって…なんで開いてるの?…だとか
…私なりに頑張って取ったのに…無駄骨じゃん…だとか考えちゃいながら
ハァ…と溜息を吐き…彼女は扉を開ける
ガチャリッ…
扉の先には雲一つ無い晴天
広がる灰色のコンクリート
高めに張られたフェンス…そして
そのフェンスの先に居る白い髪の少女が下に広がっているであろう地べたを見下げている様子が見えた
そして…先の私が扉を開けた音でその娘はこちらへと振り向く
「…え?」
『……え?』
目が合い、お互いに十数秒間がフリーズする
「………」『………』
気まずい…
『…あ…その…えーと…あはは…』
「………」
『…えと…確か…京塚さん…だよね?』
「……え…まぁ…はい…」
…えーっと…誰だっけ…この子…
…確か…違うクラスではあるはず…
『…私がしようとしてる事…分かっちゃう…よね…?』
気まずそうな笑みを浮かべながら…白髪の少女は言う…
「…え…あー……まぁ…」
……ビックリしてまともな返答を返せる気さえしない
『……止めない…でね?…』
「………あの」
うん…
『……だって…ね?…もう…ね?…息を吸うだけで…胸が痛いの……目線が刺さるの…』
「………えと」
うん……
『……眠れないの…目を閉じたくないの…』
「………うん」
…え?…これそういう事…?
『……こんなの…もう死ぬしかないじゃん…?』
少女はボロボロと泣き出してそう言う
「……あー…うん…」
私は理解した状況があまりにもあまりにもな状況なせいで相槌BOTと化している
我ながら何とも哀れ…
『……適当な返事ばっかだね……』
「……」
…怒られた…
『…まぁそりゃそっか…こうやって行動に移すくらい死にたいって思う人なんて…そう何人も居ないし…
簡単に同情も何も出来るわけないよね…』
…とりあえず…まぁ…一応私から伝えておこう
「…あのー……一つ…言わせて?」
『……何?』
「…その…私も…死にに来たんだけど…」
そう…私は心底気まずそうに言う
『……………え???』
「……私達…ブッキングしちゃったみたい…なんだけど…」
『………え????』
それは…ブッキングという言葉の隣に立つにはあまりにも物騒で、
そして状況としてはまずないであろう縁起でもない奇跡
J県N市L高校初の
【自殺ブッキング】である