時は結構進んで、数年後。
輝かしきスマホデビューから僅か3ヵ月で、魔法界を席巻するトップ配信者に昇り詰めた我が君。
またの名を、ヴォルちゃん。
ヴォルちゃんの圧倒的強者感と厨二病的ワードセンスが若いリスナーにウケ、「闇の帝王ヴォルちゃんネル」は大変盛況であった。
ヴォルちゃんネルと共にトップの座に君臨する、ホグワーツ時代の恩師であり、編み物系大手古株配信者であるアルバス・ダンブルドア(チャンネル名「ダンブルドアおじいちゃんの編み物教室」)と同接数・リスナー数等を競い合い、切磋琢磨する順風満帆な毎日を送っていた。
筈だったのだが。
順風満帆な毎日は突如、音を立てて崩れ去る。
ある日のダンブルドアと通常同接数5人の予言系You〇uberのコラボ配信が、事態を一変させたのだ。
その配信で突如そのYou〇uberは、ある予言を口にした。
「闇の帝王を打ち破る力を持ったものが近付いている。7つ目の月が死ぬ時、帝王に三度抗った者たちに生まれる……」
ここでライブ配信は途切れてしまった。おそらく、ダンブルドアが配信を切ったのであろう。
ある忠実なる僕からこの予言の話を小耳に挟んだヴォルちゃんは、早速行動に移る。
まず、死喰い人達にその者とはどこの誰かを特定させ、2人の赤ん坊にまで絞る。
一方は、闇祓いの両親を持つ赤ん坊、もう一方はゲーム実況者&イン〇タグラマーの両親を持つ赤ん坊。
一目瞭然だった。
早速、ヴォルちゃんは彼ら、ポッター夫妻とSNS上でコンタクトを試みる。
全ては、自分の配信者人生を終わらせるであろう赤ん坊が、将来ネットの世界に飛び込む事が無いように。
まず、ゲーム実況者の夫ジェームズとDM上で連絡を取り合うも、一方的に妻と息子の惚気話を聞かされて一向に会話が出来そうにない。
リア充撲滅せよという当初の目的とかけ離れた想いを抱きながら、ジェームズのアカウントが映る画面に向かってアバダケダブラを撃った。
途端にジェームズの垢は凍結し、二度と復活する事は無かった。
こうやってヴォルちゃんは、ハッカー技術を取得した無敵の魔法使いたちが編み出した、許されざる呪文の中でも最もタチの悪い死の呪文「アバダケダブラ」を駆使し、自身の前に立ちはだかる邪魔者達の垢を凍結し、黙らせてきたのだ。
ネット廃人達、特にSNS廃人達にとって死の呪文は、実際の死よりも恐ろしいものだった。
次に妻リリーと連絡を……とは言っても、どうやら彼女はヴォルちゃんと同じSNSツールの垢は持っていないようで。
何故なら、彼女はイン〇タグラマーなのだ。
ヴォルちゃんは、面倒なアカウント登録をちゃっちゃと済ませ、リリーの垢に接触する。
どんな面倒事も乗り越えて見せるヴォルちゃん。
全ては、永遠に語り継がれるトップ配信者であり続ける、その為に。
彼もまた、既に重度なネット廃人だった。
一人息子の成長を日々アップし続ける彼女の元にも徐々に、ネット廃人の魔の手が忍び寄っていた。
彼女は凍結の間際、最後の足掻きをする。
どうか息子の写真だけはバックアップさせて欲しい、と。
だが、そのような言葉、最早ネット廃人と化したヴォルちゃんには届く筈もなく。
彼女のアカウントもまた、夫同様、永久凍結の道を辿ったのだった。
これにて一件落着……と安堵したの束の間、ヴォルちゃんは真っ青になる。
なんとあの凍結の間際、彼女は光のような速さで投稿写真にバックアップ魔法(そんな魔法があったのかと驚くヴォルちゃん)をかけ、新しいアカウントを開設していたのだ。
アカウント名は「ハリーポッター」。息子の名前だった。
あり得ないと焦りを見せ、狼狽えるヴォルちゃん。
だが、闇の帝王たるもの、ここで引き下がるわけにはいかない。
赤ん坊の写真のバックアップをSNS上で行うなとまたもや当初の目的と違う想いを抱きながら、非情にもアバダケダブラを撃つ。
が、その瞬間。
何が起こったのだろうか。
ヴォルちゃんの手元のスマホ画面が白く発光したかと思うと、小さく爆発を起こし粉々に砕け散ったではないか。
これには、闇の帝王も発狂。
すぐさま、別の端末に買い替えるも、スマホに残っていたデータが全て消え去っていた事実は変わらず、自身のSNS・チャンネルに至るまでヴォルちゃんとして活動していた全ての垢が凍結し存在が抹消されていた。
バックアップ魔法を聞いておくんだったと後悔しても、もう遅い。
こうして、闇の帝王に唯一打ち勝った生き残ったアカウント「ハリーポッター」の伝説が語り継がれ、物語は幕を開ける