BRAVE STEP ―小さなお菓子屋さんを夢見て―   作:クレナイハルハ

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STEP11─期待という名の嘘─

小さく手を振り見送ってくれたシアンへ、笑顔で返しながら研究所への帰り道を歩く。

シアンが感じた、ガラルで語り継がれているブラックナイトと英雄への違和感。

それは私に新しい方向から、ブラックナイトについて調べるきっかけを与えてくれた。

 

「取りあえず、おばあさまの伝手を使って別地方の伝説ポケモンや幻のポケモンの伝承を調べてみようかしら」

 

そんなことを呟きながら歩いていた時、ふと自分の言葉を思い出し足が止まった。

 

『じゃあね、シアンちゃん。ジムチャレンジ頑張って!貴方ならきっとファイナルまで進めるわよ』

 

大人って、どうしてこうも辛い役割を担わないといけないのかしらね。

身に覚えのある苦い経験と自己嫌悪。

ユウリとホップが話していた彼女がポケモンバトルが苦手だという話は、本当なのだろう。

実際、会った時私は可哀想だけど全くポケモンバトルが強いとは思えなかった。

昔とはいえ、私だってジムチャレンジをしていた身だ。

私の勘だとシアンは努力してもジムバッジを二つ取れるだろうが、カブさんのジムで躓く未来が容易に想像できてしまった。

子供の可能性を潰してしまうような事を考える自分が、こんなにも嫌に感じる。

それは、私が少し前まで彼女たちのように挑む側だったからだろうか。

ユウリやホップのバトルは見たことがある、まだまだ伸び代がある様に見えた。

……自分と共に旅立った、彼のように。

でも、あの子は恐らくバトル向きの子じゃない。

雰囲気が、優しすぎるんだ。

きっと、バトルをする事でお互いのポケモンが傷付くのを嫌がるタイプだろう。

 

地上絵を眺めるシアンの後ろ姿に、何故か過去の私が少し重なって見えた気がした。

 

周りから期待されて、ジムチャレンジに送り出され、私はダンデ君とジムチャレンジに参加した。

でも、私よりダンデ君の方が凄くて。

私よりも早く、強く成長していった。

焦った、最初こそ順調に勝ち進んだ。

でも途中からは負けることが多くなった。

何度もポケモンを変えたり、作戦を変えた。

 

でも、負けてしまった。

 

私はダンデ君に負けて、悔しいと思った。

でもそれと同時に私は“きっと勝てない”そう思ってしまった。

彼と私には大きな差がある、とても大きな才能と言う差が。

そして今、伸び代のあり元気なホップとユウリ、それに対してポケモンバトルに向かず内気なシアンに自分を重ねた私は言ってしまった、応援してしまった。

 

『貴方ならきっとファイナルまで進めるわ』

 

と、思ってもいない期待の言葉を送ってしまった。

嘘を吐いてしまった。

期待をさせてしまった。

でも、ホップとユウリの話だと、とても強いポケモンを持っていると聞いた。

そのポケモンはホップ達から聞いたところ『アブソル』と言うポケモンらしい。

アブソル……わざわいポケモン。

災いをもたらすと言われるけど、実際は穏やかな性質で、災害の危機を人に知らせると判明したポケモンだ。

本当に優しい雰囲気を持った彼女を表すようなポケモンだ。

可能なら、そのポケモンを見て一度シアンちゃんのポケモンバトルを見て判断した方が良いのだろう。

あくまでも彼女がバトルに向かないと言うのは、まだ私の勝手な妄想に過ぎないのだから。

でも、何故だろう。

先を走るホップとユウリに並ぼうと必死に走りながらも、追い付けず間の距離ばかりが広がっていく彼女の姿を想像してしまった。

追いかけて、必死に努力しても才能という高い壁がそれ阻む。

気付けば、シアンの足は止まり張り付けたような笑顔で駆けていくホップとユウリを見送る立場になって───。

 

「ダメダメ、子供たちの可能性を信じるのが……大人の役目なんだから」

 

だから私は彼女に声をかけ、連絡先を交換した。

 

もし、何かあったら連絡して貰えるように。

 

少しでも、相談を受けられるように。

 

「それにしても───」

 

『やっぱり、隠されてるんだね』

 

私が声をかける前にシアンが呟いた言葉。

地上絵を眺め、少し悲しそうにそう呟いていた。

隠されている?一体何が、誰に?

何を知っていて、知っているソレを誰にも話さず抱え込んでいる?

分からない、シアンの声はその場の喧騒で消えてしまったが、私にはどんな意図があってそのような言葉を呟いたのか分からなかった。

例え、あなたが何を感じて。

何を考えているのだとしても、私は貴方に寄り添いたいなと考えてしまっている。

きっとホップとユウリ、シアンに頼られたなら私はきっと二人よりシアンに真摯に相談に乗るかもしれない。

 

 




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