BRAVE STEP ―小さなお菓子屋さんを夢見て― 作:クレナイハルハ
きょうもからのボールもってない
まえももってなかった、はやくあたらしいボールをかって。
そしたら、このすがたにならなくてもまた……
サイトウさんと別れ、バウタウンのジムへ挑んでバウバッジを手にした。
ターフタウンと同じくらいのジムバトルは大変だった。
水で満たされた場所に用意された迷路にあるボタンを押して、どうにかジムリーダーであるルリナさんの元へ向かう。
濡れないように、慎重に前世の記憶を頼りにジムバトルを進めた。
水タイプへの有利なポケモンは又してもグレイシアだった、フリーズドライを覚えているグレイシアしか、いない。
当然、最初はめんどくさそうなグレイシアだったけどおやつの作ることを約束しなんとか頑張って貰った。
グレイシア頼りのチャレンジャー。
そう思われていたのか、ジムバトルを終えた私へとルリナさんは、こう言った。
『ヤローのところでも、そのグレイシアで戦っていたわね。でもその戦術がいつまでも通じるとは思わない方がいいわ』
きっと、ジムリーダーとしてアドバイスしようとしたのだろう。
ルリナさんの言葉に、また胸が痛んだ。
自身でもこんな戦法は続かないと分かっている、でもこの調子でエンジンスタジアムでカブさんへと挑んで、それで負けたなら。
きっと私は、ローズさんに見放されるだろう。
強いポケモンのいつもと同じ戦術に頼って、負ける。
あぁ、きっと見放されるに決まっている。
その後は心が折れましたとばかりに、ワイルドエリアへと引きこもればいい。
そう考えて、カブさんの元へ向かう前。
私はワイルドエリアへと引きこもっていた。
随分前にユウリやホップからエンジンシティをジムチャレンジの報告が来た。
私と違い、どんどんとジムチャレンジを進めているらしい。
ユウリとホップは、既にカブさんのジムをクリアし新たなジムへと旅立っている。
だとすると、ホップがビートにポケモンバトルで叩きのめされるのは、そろそろだろうか?
どうか、このまま何も変わらずに物語が進んでいってくれると良いな。
カレーの入った鍋をかき混ぜていて、ふと自分の事はニュース等ではどう思われているのだろうか。
そんな疑問が浮かび、スマホロトムでエゴサを行う。お願いだから、変な期待がされていないと良いなと思う。
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チャレンジャー背番号46 シアン
あのローズ委員長の推薦された少女。
今までのジムチャレンジでも珍しいダイマックスバンドを使わず、ジムチャレンジに参加している。
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公式サイトにはこのように載せられているらしい、推薦されたというか
続いて、ポケッター……前世で言う所のXの方を見てみる。
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『ポケモン任せで草』
『トレーナーって何する人?見てるだけ?』
『グレイシアいなかったら終わりじゃん』
『あれでジムバッジ取れるの普通におかしいだろ』
『ローズ委員長の推薦って聞いて期待してたのにこれ?』
『金で推薦枠買ったってマジ?』
『あれバトルじゃなくてグレイシアのワンマンショーだろ』
『指示すらまともに出してないの笑う』
『いや普通にあれ新しい戦い方じゃね?』
『フリーズドライ一点読み構築って割り切りすごくない?』
『あそこまで徹底できるの逆に強みだと思う』
『環境に刺さってるなら戦術としては正解でしょ』
『ああいう戦い方でもいいんだって思えた』
『正直バトル苦手だからちょっと勇気出た』
『全部完璧じゃなくても挑戦していいんだって思った』
『ポケモンに頼るのも一つの形じゃないの?』
『おやつでやる気出すグレイシア可愛すぎる』
『完全に餌付けで草』
『あの氷タイプ絶対甘党だろ』
『ご褒美バトルであそこまで強いのズルい』
『グレイシア「やる気出ない」→おやつ→覚醒 は笑った』
『あの子、自信なさそうに見えるのがちょっと心配』
『叩かれすぎじゃない?まだ挑戦者でしょ』
『完璧じゃないから叩くって風潮キツいな』
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取り敢えず、このままワイルドエリアに引きこもっていれば安全だと言う事は間違いないだろう。
出来上がったカレーを皿に盛り付け、アブソル達の分を盛り付けていると、
またかと、振り向けばそこにはイーブイのキグルミを来たポケモンごっこの女の子がいた。
綺麗な水色の髪の毛が特徴的な少女は、私を見た後に皿に盛っているカレーへと目を向ける。
ジムチャレンジに参加する前のバーベキューした日、ターフジムにチャレンジする前にポケモンセンターに泊まった日にも現れた不思議な子。
こうして私の元に来て少し、一緒に過ごせばいつの間にか消えている。
そしてまた、こうして突如として私の元に現れる。
何を聞いても話さない、黙ったままで意思の疎通は首を振ったり頷いたりだ。
私は苦笑しつつ少女の分のカレー皿を用意して盛り付けてスプーンと一緒に渡すと、眩しい笑顔で私に笑いかけるとカレーを食べ始めた。
そんな彼女に続くように、私やアブソル達も食事を始める。
何でだろう、なんだがこの子を見ていると………何処か懐かしい、そう感じる。
なんでだろ?
カレーを食べ終えた後も、ポケモンごっこの少女はずっと宙を見つめていたり、私を見ていたりする。
本当に、不思議な子だ。
名前も知らないのに、何故か私は彼女を世話している。
洗い終え、リュックに閉まってからテントへとリュックを入れて寝袋を敷いて毛布を取り出す。
「アブソル、グレイシア、マホイップ」
そう呼び掛け此方へと歩み寄って来るみんなをボールに戻し、枕元に置く。
これなら何かあった時に、すぐに対応できるだろう。
そんなことを考えていると、ポケモンごっこの少女がテントに入ってきて私の横へと寝転んだ。
「今日も、一緒に寝るの?」
そう聞くと、コクりと頷くポケモンごっこの少女に分かったよと答え、テントの入り口を閉じる。
毛布を私と少女にかけて私は瞼を閉じる。
明日も今日と同じように過ごすんだろうか、そろそろカブさんのジムに行って負けてしまおうか。
そうさえすれば、その後の行動は全部。
何も気にせずに、ワイルドエリアへと引きこもっていられる。
罪悪感から、苦しみから逃げられるんだ。
「おやすみ」
そんな決心を胸に秘めながら、やって来た睡魔に身を委ねる。
どうか、上手く負けられますように……。
そうすればきっと、ローズさんから見放されて。
……ジムチャレンジを無事に終われる筈だから。
「ミュウ」