BRAVE STEP ―小さなお菓子屋さんを夢見て― 作:クレナイハルハ
色違いの水色のミュウ、彼?は驚いたまま固まっている私の顔の前で佇んだまま、不思議そうに首をかしげた。
「ミウー?」
可愛い……じゃなくてなんでミュウ、それも色違いがここに!?
しかも、私のプレミアボールだから私がゲットしたことになっちゃうよ!?
絶対にロケット団とか、プラズマ団とかの標的に……。
一瞬、脳裏にフラッシュバックするロケット団の男に襲われたときの記憶。
少し震える体を深呼吸して落ち着かせる。
私は普通に暮らして、お菓子屋さんになりたいだけ。
アニメやゲームの主人公のようにチャンピオンだとか、ポケモンマスターだとかを目指している訳じゃない。
なのに、なんで私のような人の元にミュウが?
ミュウは会いたいって願った心の綺麗な人の元に現れる、私は一度もミュウに会いたいと願ったことはない。
だって、ミュウを見付けるのもゲットするのも全部、主人公がやることだから。
私は、主人公じゃない。
だから、こんなこと。
起きるはずがないのに。
「な、何で私なの?」
思わずそんな言葉が出た。
今まで過ごしてきた水色の髪の女の子がミュウなら、私がガラルで旅立つ少し前に会ってケーキをあげたのが最初の出会いだった筈。
それなのに、なんで私に捕まるような事を?
グレイシアのように、甘いものが好きで、私の作る食べ物が美味しかったからとか?
それこそあり得ない、幻のポケモンと呼ばれるようなこの子が、そんな理由で私を選ぶとは思えない。
探せば私より美味しいお菓子を作る人も、好きなだけお菓子をくれたりご飯を食べさせてくれる人達がいる筈だ。
そんな疑問ばかりが脳裏に浮かぶ中、色違いのミュウはゆっくりと私へと近寄る。
そして、その小さな手が私のおでこへ触れた瞬間、目の前が真っ暗になった。
驚くのも束の間、真っ暗な風景にぼんやりと何かが浮かんでくる。
そして浮かんできたもの、それは前世で最後に遊んだポケモンを遊んでいたゲーム機だった。
しかも電源が着いており、画面には最後に遊んだ時のポケモンの手持ちが映った画面が映っている。
懐かしい……確かダイマックスアドベンチャーの後だったっけ?
画面には色違いのミュウにドラパルト、ニンフィア、ルカリオにインテレオン、レシラムが映っている。
このミュウ、ダイマックスアドベンチャーで初めて遭遇した上に色違いだったから、必死になって倒して捕まえたんだよね。
嬉しかったなぁ、ゲットしてからすぐにキャンプしてなつき度をすぐにマックスまであげたんだっけ?
ポケモンをやってた所謂ガチ勢の友達からは真顔でキレられたのを思い出すなぁ。
次の瞬間、目の前の景色がゲームから切り変わった。
視点が高い、そして見れば隣にはダイマックスした色違いのミュウがいた。
そして足元の方には四人のトレーナーが立っている、そのトレーナーの中には見覚えのある
私はダイマックスバンドの力で巨大化した
色違いのミュウに触れたプレミアムボールが開きミュウをプレミアムボールへと吸収する、そして数回プレミアムボールが揺れた後にカチッという捕獲が完了した音が響き渡った。
『やった!ミュウの色違いゲットだぜってね!これから、よろしくね』
前世の私の声が聞こえた。
次の瞬間、目の前には色違いのミュウが浮いており周りには心配そうな表情を浮かべるアブソルとグレイシア、マホイップの姿があった。
「さっきのがミュウのテレパシーなら……」
「……私、知ってる」
ミュウは、嬉しそうに笑った。
私を見ながら嬉しそうに笑いながら首をかしげ、まるで『おもいだしてくれた?』というように。
「もしかして、私が捕まえた色違いのミュウ……なの?」
恐る恐るそう言うと色違いのミュウは嬉しそうに笑顔を浮かべ、私の周りを楽しそうに飛び回る。
「ほ、本当に!?」
嘘、本当に前世の私の捕まえたポケモンが目の前にいる?
あり得ない、でも目の前にあり得ている現実がある。
夢のようで、現実とは思えないような奇跡。
頬に顔を擦り付けてくるミュウを、恐る恐るなで返しながら考える。
取り敢えずポケモンセンターに行くときはミュウのボールは必ず提出しないようにしよう。
見られた瞬間にどうなるかなんて想像はしやすいし。
逃がすと言う選択肢もあるけど、せっかく前世の私が捕まえた手持ちのポケモンが、こうして現実に来てくれたんだ、責任もってお世話しなきゃね。
「ミュウ、あのね。普段からあなたをボールの外に出してあげるのは難しいかもしれないの」
ミュウにそう話すと、ミュウは不思議そうに首をかしげた。
「この世界で、貴方は希少だから。捕まえようとする人達が恐らく沢山いる、それこそ私から奪ってでも手に入れようとするような人が」
すると、ミュウは少しの間考えるような仕草を見せるとやがて私の持っていたプレミアボールに触れた。
きっと可能な限りプレミアムボールにいるよ、という意味なのだろう
「そっか、ありがとう。改めて、よろしくね」
そう言いながら私はミュウが登録されたプレミアボールを腰のベルトに固定する。
「みんな、この子もこれから私たちと一緒に暮らす家族……だよ」
そう言うとアブソル達にミュウを指すとそれぞれが鳴き声を上げた。
見る限り、みんなは歓迎する様子を見せている。
マホイップは恐る恐るその小さな手を振り、グレイシアのはいつも通りの様子で少しすると横になり始めた。
アブソルも短く鳴くと即座に先程のように瞳を閉じて座り込む。
そんなみんなの姿を見たミュウは楽しそうに宙を飛んだ、そんな空を飛ぶミュウの姿を眺める。
まさか、私がミュウをゲットすることになるなんて思っても見なかったな。
そういえば最後のメッセージを確認した限りだと、恐らくはユウリはアラベスクシティに着いてジムチャレンジをしてる頃だろうか。
そんなことを考えていたときだった、メッセージアプリに通知が入った。
メッセージの送り主は、ソニアさんだった。