BRAVE STEP ―小さなお菓子屋さんを夢見て―   作:クレナイハルハ

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STEP29─終った挑戦─

あれから、ユウリとホップは残りのジムへ挑むため早々にこの町を旅立っていった。

応援の言葉と共に渡したお菓子に目を輝かせる二人には少しだけ笑ってしまったっけ。

ジムチャレンジ期間の終了日は今日、明日にはここのアルバイトを辞めてシュートシティのセミファイナルトーナメントを見に行く予定だ。

応援すると言ってしまった手前、引き返せないのも少しだけある。

温泉宿のおじさんとおばさんにはアルバイトを辞めること事前に話して、許可もちゃんと貰っている。

真っ暗な部屋、スマホロトムが細かく表示した時計を見て私は心臓が煩く鼓動するのを片手で押さえる。

そんな私にアブソルにグレイシア、マホイップが体を寄せていた。

まるで、私を守るように。

私を、安心させるようき。

そうして日付を越えた私のスマホロトムに、メールが届いた。

内容はジムチャレンジ敗退のお知らせ。

その内容はローズ委員長の関与しない、事務処理メールだった。

あなたは規定のジムチャレンジ期間で8つのバッジを集めることが出来なかった為、敗退となります。

セミファイナルトーナメントへ進む事は出来ませんが、シュートシティのシュートスタジアムにて行われるセミファイナル、ファイナル、チャンピオンマッチの観戦が可能となります。

纏めるとこういった内容だった。

その文面には、特別な配慮も、名前もなかった。

ただ一人のチャレンジャーとして処理された結果。

スマホロトムの画面を閉じる。

それ以上、見る必要はなかった。

 

「ようやく、終わったんだ」

 

長かったこれまでの日々、ジムチャレンジという非日常からようやく終わる。

スマホロトムを持っていた手を下ろし安堵して息を吐く、頬を涙が伝った。

 

「みんな、ありがとう。お掛けでジムチャレンジは負けられた」

 

そう話すと、アブソルは何時通り頷く。

グレイシアは負けたことに安堵するのはあんたくらいだよと、ジト目を向けつつも良かったねと目を閉じため息をついた。

マホイップは良かったねと、静かに私の掌へと腕をちょこんと乗せる

 

ようやく、終ったのだ。

 

でも、少しだけ楽しかったとも思う。

こんなきっかけがなければ、私はきっと大人になってもジムに挑むなんて事はしなかったと思うから。

でも、これで全部が終った訳じゃない。

まだ、ローズ委員長……ムゲンダイナやダンデとユウリ、ホップに帰ってくるであろうビートのバトルがある。

私は、当然だけどムゲンダイナに挑むことは出来ないし挑まない。

ローズ委員長もムゲンダイナも、止めるのは主人公であるユウリとホップなのだから。

私が動いた瞬間、ポケモンソードシールドという物語は破綻するのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、私は働いてきた旅館での最後の朝御飯を済ませ、おじさんとおばさんに見送られていた。

荷物の入ったリュックを背負う重みに懐かしさを感じながら、私はおじさんとおばさんには向き直る。

 

「おじさん、おばさん。本当にお世話になりました」

 

「シアンちゃん、もし働き先で困ったら何時でもうちにおいで。シアンちゃんなら、大歓迎だ。」

 

「この人のいう通り、何かあったら頼ってね」

 

「……あ、ありがとうございます」

 

そう言いながら、二人へと頭を下げる。

私は将来はお菓子屋さんになるという夢を追いかけている、まだまだだけど。

でも、私は前世の記憶から夢は必ずしも叶うとは限らない。

叶うとしても、自身の望むような未来になるとは限らないことを知っている。

だからかそ、本当に色々とチャレンジしてダメだったらここにもう一度、お世話になりたいな。

そんなことを考えた。

手を振るおじさんとおばさんには手を振り替えし、キルクスタウンを歩く。

 

「ミュッ……ピッピカ!!」

 

そんな私の肩には、少しだけ色の薄い感じのピカチュウの姿に変身したミュウが乗っていた。

これまでほとんどボールの中にいたミュウが、外に出たいと強く懇願してきたので外に出る代わりに、ピカチュウの姿になって貰っている。

最初こそ水色の髪が特徴的な少女になろうとしていたけど、少しだけアニメのサトシのような気分を味わいたくて、ピカチュウに変身して貰えないか、願いしてみたのだ。

ピカチュウよりもミュウは軽いためか、思ったより肩への負担は少ない、これより重いピカチュウを常に肩に乗せていたサトシは本当にすごいと思います。

こうして、少しだけ羽目を外しているのはジムチャレンジを終えられたからなのかな。

 

「行こっか」

 

「ミュッチュウ!」

 

少し怪しい鳴き声をあげるピカチュウに変身したミュウに少しだけ不安を感じながらも、私の心は少しだけ軽かった。

明日には、セミファイナルトーナメントが始まる。

ユウリ、ホップ、マリィ。

誰が勝つのか負けるのか、何が起こるのか全ては分かっている筈のに心の奥からみんなを応援している。

スマホロトムでユウリ達と作ったメッセージグループへと、メッセージを送信した。

 

 

──────────────────────

                  〔シアン〕

 

『セミファイナルトーナメント進出おめでとう。

三人とも、ジムを全部突破して本当に凄いトレーナーになっちゃったね。

私はバッジ二つしかとれなかったから、三人のように並んで一緒にそこまで行けなかった。

ライバル、そう呼んでくれたのにごめんね。

でもジムチャレンジの最後の最後まで、みんなのこと応援してるから。

全部終ったら、みんなでケーキを食べよう。

作れる限り、大きなケーキを作るから

ジムチャレンジお疲れ様会、したいな。

その、みんなが良いならで、良いから

返事、待ってるね。            』

 

 

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