BRAVE STEP ―小さなお菓子屋さんを夢見て―   作:クレナイハルハ

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STEP40─答えから目を逸らして─

ポケモンセンターでカルボウを治して貰い、ようやく寮へと戻ってきた。

この地方のポケモンセンター……いや、センターなのだろうか?

何処か前世で言う所のガソリンスタンドのような雰囲気のポケモンセンターは違和感がすごかった。

簡単なお菓子を作り、グレイシアに渡せばいつものようにグレイシアはお菓子を味わい、ゆっくりと床に置いたクッションへと倒れる。

あれから、まだカルボウはモンスターボールから出していない。

てっきり、ポケモンセンターでの治療後にすぐに出てくるかと思ったが治療後に出てこなかったのだ。

なんで、私の言葉を聞いてくれなかったのか。

どうして勝手にバトルをしたのか、分からない。

もしかしたらグレイシアが、私の元から離れていたのかもしれない。

そう思うと怖かった。

アブソルの時はどうだっただろうか?

私の手持ちで卵から生まれたのはカルボウ以外だとアブソルだけ。

そんなアブソルは幼い頃、ポケモンバトルの真似みたいな事をする私の指示は聞いてはくれていた。

だからこそ、はじめてだった。

どう接すれば、どう話せば良いか分からない。

そんなカルボウが何を望んでいるのかも、何を求めているのかも。

グレイシアは、何も変わらない。

さっきまでの戦いなんて、最初から無かったみたいにクッションに体を埋めている。

暗めの思考を振り払い、気分をあげるためにもスマホロトムで動画サイトを開く。

いつも通りに並ぶオススメ欄に、何故かお菓子やさんを紹介している動画があった。

見出しを見る限り、パルデア地方のお菓子屋を紹介しているらしい。

 

『やぁ皆の者ー!あなたの目玉をエレキネット!何者なんじゃ?ナンジャモです!おはこんハロチャオー!ナンジャモの~?ドンナモンジャTVの時っ間だぞー!』

 

見るからに派手なコイルらしき髪飾り?を着けた黄色い容姿の女性の姿と独特な挨拶。

前世で言うユー○ューバーやブイ○ューバーといった配信者の姿が脳裏に過る。

 

『今回はパルデア旅行するならここへ行け!ナンジャモセレクションを進めていくぞ☆!第1回で私のジムがあるハッコウジムは紹介してあるから概要欄から見てくれ!』

 

ハイテンションな出だしの中、動画に映っているのはテロップにセルクルタウンと描かれた町だった。

 

『今回はセルクルタウン!パルデア地方が誇る虫タイプのジムリーダーが店長をしているお菓子やさん"パティスリームクロジ"を紹介してイクゾー!』

 

動画の中で、軽快な音楽と共に画面が切り替わる。

カラフルな街並みを抜け、落ち着いた雰囲気の一角へと映像が移っていく。

 

『皆の者!ここが“パティスリームクロジ”!外観からしてオシャレすぎ!』

 

木で作られた暖かな印象の建物に、木目調の看板。

整然と並べられた焼き菓子やケーキは全部が虫ポケモンのようなデザインと商品名がついていた。

 

『しかもただのスイーツ店じゃないんだなぁ〜!なんとここ、セルクルジムのジムリーダーが店長をやってるんだよね!』

 

画面にテロップが入り、一人の女性が映し出される。落ち着いた雰囲気の服装に、優しく細められた瞳。

どこか柔らかく、それでいて芯のある佇まいの女性だった。

 

『その名も――お菓子の虫、カエデさん!』

 

店内で手際よく生地をこねる様子や、丁寧に焼き上げられていくお菓子の映像が次々と流れる。

 

『いや〜これがまた人気でね!バトルも強いし、お菓子も美味しいって、そりゃ並ぶよねって話だよねぇ』

 

画面の中では、焼き上がったクッキーが並べられていく。

ほんのりと色づいた表面、均一に整えられた形。

思わず、目が止まる。

 

『ちなみにカエデさん、バトルになるとちょ〜っと雰囲気変わるんだよなぁ〜!普段はおっとりした優しい雰囲気のパティシエさんなのに、バトルになると結構グイグイ来るタイプ!』

 

小さく、呟く。

 

「ジムリーダーであり、パティシエ……」

 

『だから初心者トレーナーにも人気なんだよね〜!優しく教えてくれるって評判だし!そんな訳で!』

 

動画の中で、カエデが来店した客に微笑みかけている。

その表情は、どこか安心させるような柔らかさがあった。

 

「……」

 

『はいということで〜!セルクルタウンに来たらここはマスト!お菓子好きもトレーナーも要チェックだぞ☆』

 

動画が盛り上がりのまま締めに向かっていく。

この人のところで、お菓子屋さんの夢を追いかけられないだろうか。

パルデア地方での短期留学、どうなるかと心配だったけど、この人のところで、お菓子屋さんを開く夢のための勉強が出来そうだ。

せめて、アルバイトをするとかでお菓子作りを学べないだろうか。

でも、そうしたらグレープ学園での勉強はどうなるんだろうか?

ためしに聞いてみようかな。

そう思った私は、スマホロトムを操作しクラベルさんへとメールを打つ。

カルボウのことを考えなきゃいけないのに。

 

今は、少しだけ後回しにした。

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