一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】   作:カウン

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趣味が合えば意外とそんな事はない……かも?


友達の兄妹は不思議な距離感になりがち

いつもヤチヨさんがミニライブをする鳥居。どうやらそこで、ヤチヨカップの結果発表が行われるようだ。

 

「どうしようイロハぁ!」

 

「ロカさん、マミさん……私、推しの悲しむ顔は見たくないです……」

 

数時間前に行われた【Black onyX】とのKASSEN勝負。それに、あと一歩の所で負けてしまったヤチかぐいろチーム。そのため、ヤチヨカップの結果が危ういと考え、私は意味もなく、地面をつついていた。ちなみにかぐやさんは酒寄さんの肩を揺らしている。あれは現実で掴んでますね……。

 

「まぁまぁ、まだ負けた訳ではないし……」

 

「あんな大々的に公開されたもので負けたのなら厳しいですよ……」

 

諌山さんに慰めされるも、いじけている私は止まらない。やはりさっき教えてもらった通り、私は感情が出やすいのかもなぁ……。

 

「でも、まだ結果は分かりません」

 

スピーカーでオタ公さんの声が響く。どうやらこれから結果が明かされるらしい。いつの間にかしゃがんでいたかぐやさんと一緒にスクリーンを見上げる。上空に映された映像には帝さんとかぐやさんのグラフが互いに何度も抜き合う姿が映される。やがて、かぐやさんのグラフが画面に映らなくなった時点で、私は目を伏せた。

 

「優勝者は〜かぐやいろP!

めでたしや〜!!」

 

自身の想定していたアナウンスではないものが流れて、慌てて顔を上げる。すると、前にいたかぐやさんと酒寄さんにスポットライトが当たる。

 

「うそ……!やったぁ!!!」

 

私はそのままガッツポーズをしながらジャンプした。着地すると、後ろから綾紬さんと諌山さんが拍手をしながら声をかけてくる。

 

「レンゲ、なんで本人よりも跳ねて喜んでるのさ」

 

「でも推しにいいことがあったら嬉しいのはわかる」

 

本人よりも喜んでしまったことに恥ずかしさを感じながら、喜んでいるかぐやさん達を見つつ、くしゃっと笑って答える。

 

「だって、2人とも最高に幸せそうですから!」

 

嬉しそうに抱き合って、話す2人を見つつ、私は全力で拍手をした。

その後、酒寄さんのお兄さんが来たり、ヤチヨさんが来て話したりしていたが、こちらには大きく関わりのない話だった。

とにかく、ヤチヨさんとのコラボライブでは、かぐやさんも、酒寄さんも舞台に立つのだ。これ程の楽しみはない。

 

 

 

 

 

 

そんな期待感を抱きながら生活していた、そんなある日の昼下がり。何気なく、いつも通りアーカイブを漁ろうとPCを開くと、一通のメールが私のもとに届いていた。

まさか、このメールが私をも騒ぎの渦中に引きずり込むものだとは思っても居なかった。

 

『始めまして、レンゲちゃん。

俺はブラックオニキスの帝アキラ!

 

かぐやちゃんから聞いたんだが、かぐやちゃんの最初期のファンらしいな!

俺もいちかぐやちゃんのファンとして負けられないって思ってる……そこで、クイズバトルを挑ませてもらおうと思う!

 

勿論、参加は強要しない。でももし、かぐやちゃんのファンとして、譲れないものがあるなら、この勝負、受けてほしいな。

これからコラボライブが近くなるから、少しでも盛り上げていこうぜ!』

 

「……へぁ?ブラックオニキス???帝アキラ???」

 

 

 

 

 

 

 

「さぁさぁやってきました!ブラックオニキスの帝アキラ主催の【かぐやちゃんクイズバトル!!】実況はこの私、みんなのためにわんわんおー!忠犬オタ公が送らせてもらうぞ!ちなみに私もかぐやのファンだ!」

 

来て……しまった。メールを読んだ瞬間に、心の中のファンの部分が、やってやろうじゃねぇかこのやろう!って叫び声をあげてメールを返信してしまった……。

とにかくこの場を乗り切らなければ。

 

「まずは主催者であり、大人気チームのリーダー!帝アキラ!」

 

「よ、小兎ども、お前らの帝様が来たぜ!」

 

うぉ……黄色い声援って初めて聞いたなぁ……いや私も同じような声で鳴いた事あったっけか。

 

「そして、その帝に真っ向から勝負を挑むは、少し前のかぐいろPチャンネルで行われた【かぐや争奪KASSEN選手権】にて、前座にも関わらず、思想の強さを見せつけ、鮮やかに戦ったコイツだ!」

「かぐやいろPチャンネルの古参勢!レンゲー!今日はよろしくな!」

 

「ど、どうもです」

 

私の登場とともに、想定よりも多めの拍手を貰う。前の切り抜きの影響か、意外と知られてしまったらしい。うぅ、やっぱり出演は辞めておけばよかったかもしれない。

 

「レンゲちゃん、今日は参加を決めてもらってありがとうな、いい勝負にしよう」

 

すごい陽のオーラだ……私は陰寄りだからこそ、眩しすぎる。だが、私にも、かぐやさんが好きという、負けられない物がある!

 

「簡単には負けませんから」

 

精一杯の虚勢を張りながら、どうにか返事をする。勝手にビビり倒している私を横にオタ公さんが高らかに宣言する。

 

「さぁ、今回の演者は揃った!ここでルールを説明するぞ!ルールは簡単、こちらの出題するかぐやに関するクイズをどちらが多く答えられるかで勝敗を決める早押し形式だ!ちなみにクイズは私が監修して作ったぞ!」

 

私と同じ時期からこのツクヨミでかぐやさんを見ていたオタ公さんの問題か……これは難易度が高いかもしれないな。

 

「オタ公ちゃん、問題ありがとな」

 

「私も改めてかぐやを知れたから問題ない!では早速始めよう!第1問!」

 

開始の合図を聞き、私と帝さんは身を構える。

 

「まずは肩慣らしだ、かぐやの好物は何だ!」

 

それを聞いた瞬間、私と帝さんが机のボタンを同時に叩く。同タイミングだ。

 

「「パンケーキ!」」

 

「2人とも正解だっ!」

 

私は平然とこの回答速度についてこれる帝さんに驚愕し、そちらの方を見てしまう。どうやら、かぐやさんへの思いは本当だったらしい。

 

「レンゲちゃんもやるねぇ、これは気が抜けなさそうだ」

 

帝さんも帝さんで私の推しへの理解の深さを再認識したのか、好戦的な笑みを浮かべる。

 

「少し簡単すぎたか?それなら、第2問!

かぐやが耐久配信をしたゲームの名前は!」

 

しまった、そう来るか!ゲームの名前はすぐに出てこない。私は頭のなかのアーカイブを遡ってゲームの起動画面を思い出そうとする。が、私の対戦相手はプロのゲーマーである帝さん。どうやら相手のテリトリーの様だ。

 

「太ももうさぎの大撃腿、だろ?」

 

「帝が正解!ここで一歩リードだ!」

 

カメラに向かってファンサをしている横顔を見つつ確信する。あの速度での回答、この人……出来る!

 

「ではでは3問目!かぐやのオリジナル楽曲【私は、わたしの事が好き。】これの作詞をしたのがかぐやなのは有名だが、作曲をしたのは誰だ!」

 

言い終わった瞬間、ボタンを押す。これに関しては友達だから知れたと言うか、同じクラスだから気づけたと言うか……ずるい気はするが、ファンとして負けられない気持ちがあるので答えさせてもらおう。

 

「いろPです!」

 

「正解だぁ!レンゲもまだまだ負けてない!」

 

私が帝さんに並んだことで会場が沸き立つ。まだまだこれからだ、そんな意味を込めた視線を帝さんに送ると、先ほどのように笑いつつボタンに手を添える。それを見届け、オタ公さんも楽しげに声を上げる。

 

「まだまだ始まったばかりだ!私も盛り上げていくぞ!」

 

そこからは一進一退の攻防が繰り広げられた。コラボフードの名前や、ペットボトルロケットの飛距離結果、果ては恵方巻き耐久配信の動画の時間まで問題にされてた。

オタ公さんの問題の作成力に称賛しながら、回答を続ける。互いに譲らず、気がつくと最終問題に突入していた。

 

「14問目は帝が得点!これで帝が1点をリードしたまま、最終問題に突入だぁ!」

 

手を掲げる帝さん、会場は熱狂、対して私の内心は冷えていた。このままだと負けるからだ。最近気が付いたが、私自身、意外と反射神経はあるらしく、ゲームなどで戦えていたのもそれが理由だろう。だが隣にいるのはゲームで生計を立てれるプロだ。反射神経でかなうわけがない。

つまりは……次の問題は私がすぐ回答できる問題じゃなきゃ負ける、ということだ。

 

「では最終問題!ここでVTRだ!」

 

今まで答え合わせに使われていたディスプレイに映像が映し出される。そこにはかぐやさんが……アイエエかぐやサン!?かぐやサンナンデ!?

 

「かぐやっほー!かぐやだよ!私の提案で面白そうな事やるみたいだから、オタ公に連絡して一枚噛ませてもらったんだ!」

 

この前、ヤチヨカップを優勝した話題の人だからか、会場も騒然としている。というか、かぐやさんからの出題とか限界化してまともで居られる気がしない!

 

「じゃあ問題!私が作ったこの子名前は!2人とも頑張ってねー!」

 

かぐやさんが呼ぶことで、その胸に飛び込んで来た小さな存在。それをよく知る私は、狂ったまま勢いよくボタンを叩きつける。帝さんもボタンを押すが狂ったお陰か、奇跡的に帝さんより早く回答ランプが灯る。私は息を吸い込み、声を張って答える。

 

「犬DOGE!!」

 

会場が静寂に包まれ、オタ公さんの発表を固唾を呑んで待つ。緊張のせいか、やけに煩い心臓の音すら意識し始める。そしてついに、オタ公さんが口を開く。

 

「正解っ!!これにて同点!!まさかの引き分けです!!!」

 

会場が一瞬でお祭り騒ぎに。オタ公さんが締めの挨拶をする中、私は一息つく。なんとか、かぐやさんのファンとしての面子は保たれたか。そんな事を考えていると、帝さんがこちらに来て、手を差し出してきた。

 

「今日はいい勝負が出来たぜ、ありがとなレンゲちゃん」

 

私も、ここまで張り合えるかぐやさんのファンが居たという事実を喜びながら感謝を述べ、手を握る。

 

「こちらこそ、いい勝負でした。ありがとうございました!」

 

こうして、帝さん主催の【かぐやちゃんクイズバトル!!】は大盛況で、幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

収録後、今回使っていた舞台が撤去されて行くのを見ていると帝さんが話しかけて来た。

 

「よ、レンゲちゃん。さっきも言ったけど、今日は出演を受けてくれてありがとな」

 

「いえ、私も楽しかったです」

 

そう言えば、帝さんは酒寄さんのお兄さんなんだよなぁ、と収録中は緊張から意識できなかったことをぼんやり考えていると、少し小さめな声で帝さんがこちらに尋ねてくる。

 

「なぁ、彩葉の友達って聞いたんだが、学校であいつ無茶とかしてないか?少し心配でな」

 

それを聞いた私は微笑んでしまった。今回のオファーは表の目的以外もあったらしい。

 

「最近友達になった、私でもわかるくらいには頑張りすぎてますね」

 

私の言葉に、予想通りかと心配そうに眉を下げる帝さん。でも、とそのまま言葉を続ける。

 

「かぐやさんや、他の人にも支えられて、以前よりも明るくて楽しそうですよ」

 

私の今の言葉を聞いて、帝さんは安心したような表情になる。その表情はとても見覚えのある表情だった。

 

「?、何かアバターおかしくなってるか?」

 

私が顔を見過ぎたからか、帝さんが自身に何かあったのか勘違いしてしまっているので弁明する。

 

「やっぱり兄妹なんだなぁって思いまして。人のために動く姿や表情が重なって見えたんです」

 

「ま、悪い気はしないな」

 

その後、ツクヨミのフレンドを交換しておいて、解散となった。

ちなみに何故か今回の動画は伸びた上に私へのコメントも多かったらしい。なんでぇ……。

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