一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】 作:カウン
コラボライブから1日が経った。
あの日は綾紬さんと諌山さんに声をかけられ、なんとかログアウトして床に就いた。それでも、
不安を感じながら、夏期講習を受けていると、ツクヨミに集まるから蓮夏もどうか?と誘われたので夕方、スマコンを起動し、そのお店へ向かった。
「昨日のライブ、良かった〜!」
「良すぎちゃってた!」
2人が酒寄さんに顔を寄せながら感想を言っている。私はその横で赤ベコのように首を上下に動かしてた。
「「イロハの演奏、感動して泣いた〜!」」
「あ、ちなみにレンゲも泣いてたよ」
「ちょ、ロカさん!?」
後方で同意だけしていたら、突然私に被弾したので、大慌てで取り繕う。
「いやあれはかぐやさんが可愛かったのが大きくてですね……いや、イロハさんもとっても良かったんですけど、ライブ全体に感動したってのもありましてぇ……」
どうにか口を動かしていたが、酒寄さんがじっと目を見つめてきたので、恥ずかしさを感じながら、本心を話す。
「ィ……イロハさんも可愛かったです……」
そこまで言うと、隣の二人が満足気に頷く。酒寄さんも元気はないものの、少し恥ずかしそうに俯いていた。そんな酒寄さんに綾紬さんが身を乗り出し、指で線を描く。
「はなまる付けたげる」
まぁ、事実可愛かったから花丸一個じゃ足りないよな、とほほ笑ましく見ていると、なぜか諌山さんが私にも腕を伸ばしてくる。
「本音を言えたレンゲにもはなまる〜」
「わ、私はいいですよ!」
頬を紅くしながら、両手で顔を隠す。それよりも、いつもより元気のない酒寄さんに話を振るべきではないか……?
「そう言えば、かぐやはどたん?」
遂に、私も気にしていたことを諌山さんが切り出した。そわそわしながら酒寄さんが口を開くのを待つ。
「なんか、魚捌いてたよ」
「よかったぁ……」
それを聞いて、安堵の息を吐きながら机に突っ伏す。それを見ながら、気になるなら自分で聞けばいいのに、ね〜って言ってるそこの二人、聞こえてるからな……気まずくて聞けるわけないじゃないか。
「ま、そこの人は置いといて……」
私が体を起こすと、綾紬さんが何かのチラシを酒寄さんに送っていた。何を見ているのか覗き込もうとしたら、答え合わせが横から飛んできた。
「夏の終わりに花火大会などいかがかな〜?」
どうやら電車で1時間程で行ける所らしい。みんなで行くのか酒寄さんが尋ねると、2人は首を振った。
「ノンノン、我らには大事な使命があるのです!」
「夏休みの宿題を完全に放置していたのです!」
そうなのか……割と2人とも宿題をやっていた記憶があるがそこまで残っているのか……そう残念そうに目線を合わせると、諌山さんが突然コクンと頷く。
「あ、ちなみにレンゲは一緒に見てくれるって約束してたよね〜?」
「んな!?」
そんな約束したっけ?でも勉強を見るっていうのもやってみたかったし……私はどうすれば。なんて悩んでいると2人はログアウトの動きを取る。
「という訳で」「後はよしなに〜」
そう言い残して2人はログアウトしてしまう。私だけ残されたため、2人がいた虚空を呆然と見つめていたが、気がついて慌ててログアウトの画面を開く。
「さ、酒寄さん!かぐやさんと楽しんで来てください〜!」
そう言い残して、私は勢いよくログアウトした。
その後、私はスマホを手に取り、2人に連絡を取る。
| 二人とも。課題終わってないんですか?そしたら一緒にやりましょうよ。私は予習しながら、分からないことがあったら教えられますから |
| あれ、気を使って演技してた訳じゃなかったんだ…… |
| ちょっと申し訳ない事したねぇ〜 |
| でも、今はそのほうが助かるか。おっけ、じゃあ当日ね |
2人の返信に違和感はあったものの、後日行われた勉強会はとても楽しいものになった。でも、私が見なくても2人共、自力で課題ができていて、早めに終わった勉強会がお茶会に化けたのはここだけの話だ。
そんな夏休みの終わりを過ごした私は、二学期が始まってから酒寄さんにツクヨミで呼び出された。とっても真面目な雰囲気だったので、私はあのライブの時の話だと直感した。
身構えて話を聞きに行くと、その内容は信じがたいものだった。
かぐやさんは月から地球に来た、正真正銘のかぐや姫だった。そして仕事を放り出してきたから、連れ戻しに来たのがライブに来ていた個体だと言う。
確かにかぐやさんは本物のかぐや姫レベルで可愛いと思っていたが、まさか本物だったとは……目から鱗だ。
「かぐやちゃんが本当に月のプリンセスとは!わかる!」
「完全同意です」
帝さんの横で同意する私。だが、これから何か打てる手立てはあるのだろうか。そんな空想みたいな集団からかぐやさんを護れるのだろうか。酒寄さんも同じ考えのようで、ヤチヨさんに話を聞いていた。だが、期待とは裏腹に、ヤチヨさんから返ってくる言葉は現実を突きつけるものだった。
「調べてみたけど、どこからアクセスしてるかもわからなかったんだよねぇ……ごみん」
せめて分かればこちらから直接出向く事も、ハッキングも出来たと思うのだが……そう思っていると、帝さんが意気揚々と口にする。現実に手出しできないならツクヨミ内で追い払えばよいと。
酒寄さんが頭を下げ、頼み込むのを見て、私は覚悟を決める。どんな手を使っても、私の全力で護ってみせる。推しと、友達を、曇らせるわけには行かない。
「私も力になります。できることは少ないけれど、推しのためにやれることはやりたいんです」
それを聞いて、帝さんがこちらに歩いてくる。あの人も、覚悟をした目をしていた。
「なら、頼みたいことがある。後でこの場所に来てくれ」
そう言い残すと、帝さんは二人のところに戻ってしまう。酒寄さん達も決意を胸に、立ち向かうことを決めていた。だったら私も。
「ヤチヨ、さん。頼みたいことがあるんです」
「───────────────────」
「正気か!?そんなの許すわけないだろ!!」
私の頼みを聞いたFUSHIさんが怒る。それもそうだ。こんなの私のわがまま。許されるわけない。でも、
「でも、護りたいんです。たとえ、可能性が少しでもあるのなら」
私の推しが笑顔で歌う姿が脳裏を過る。瞳を見て、想いを伝える。昔の私ならできなかったことだ。今なら、みんなが背中を押してくれる今だったら!
「うん、そしたらヤチヨはレンゲを信じるよ」
そんな想いが通じたのか、ヤチヨは笑顔で答えてくれた。肩に乗ったFUSHIさんが色々とリスクを伝えているがヤチヨさんは動じない。それどころか頷きながら、
「そしたらこれは1日だけ使えるものだから、来たる日に使ってね。変なことに使ったら……ってレンゲはそんなことしないよね」
何故かその笑顔は、とても見覚えのあるものだった。
「お、来てくれたなレンゲちゃん」
「おそ〜い」
私が先程、提示された場所は、ブラックオニキスのホームだったらしい。これファンにバレたら抹殺待ったなしだな……と、私が身震いしていると、帝さん達は呼び出した経緯を話し出す。
「ここに呼んだのは他でもない。プログラムが得意なレンゲちゃんに頼みたいことがある」
さっきの酒寄さんの様に頭を下げる帝さん。私は次に続く言葉に耳を疑った。
「チートツールを、作ってくれないか」
「あんなに強いのに、ですか?」
私からすると、あの腕前があれば異星人だろうと倒せると思っていた。だが、顔を上げた彼の目は覚悟で染まっていた。その彼を支える2人も、だ。
「万が一、いや億が一、負ける気はない。それでも、その億が一があるなら、どんな手を使ってでも妹とかぐやちゃんの生活を守ってやりたいんだ。兄として」
「ま、帝が凹んでるのは、俺としても看過できないからさ〜頼むよ」
「……リーダーには従う。加えてだが、悲しむ姿は誰であれ見たくはない」
帝さん達の覚悟は硬い。昔の私には眩しいくらいに。でも、今の私も同じ目をしているのだろう。だから頼んでくれたはずだ。ならば私はその覚悟に応えなければ。
「……
それを聞いた帝さんは少し申し訳なさそうに尋ねてくる。
「頼んでおいて何だが、これは犯罪になる可能性もある。それでも乗ってくれるか?」
何を今更。私は不敵に笑いつつ、帝さん達と考えを共にする。
「ぶっ壊してやりましょう。月からのお迎え式なんて」
準備をしよう。もう二度と推しにあんな顔をさせてたまるか。絶対に。
期待されていた皆様……こんな繋ぎ回でごめんなさい!
それからですが、なんとこの作品が日間ランキングに乗りました!!
感謝!感激!雨アラモード!作者は果報者なのです……!皆さんが読んでくれるから作者も頑張れます!ありがとうございます!