一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】   作:カウン

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もうちょっとだけ、続くんじゃ。



……なんかルーティンで今まで通り投稿出来ちゃったんですけど、今後は不定期になるのであしからずです。


いーえっくす!
えっ、ここで踊れと?無理なんですけど!


「あ……あの、やっぱりやめませんか?こんなの需要ないですから……」

 

俯く私を取り囲む友人。恥ずかしさから更に下を向く。だが、周りの友人は遠慮なく言葉を浴びせてくる。

 

「大丈夫、レンゲは可愛いから。ヤッチョの保証書付きだよ〜」

 

「イロハも観念したんだから、レンゲも早く諦めな!」

 

「私は……まだ納得いってないけど。でも、やるなら、レンゲも一緒だから」

 

ひぃん。圧が強すぎる。助けを求めて、芦花と真美に飛びつこうとする。が、現実は非情である。

 

「ごめん、私もレンゲの見たい」

 

「まぁ、アバターなんだから、気楽にやろうよ〜」

 

全員がやる気だ。どうして……もう29歳なのに……。

 

「なんで踊らなきゃならないんですかー!!!」

 

 

 

 

 

 

事の始まりはこうだ。この前の復活ライブも成功して、かぐやも帰ってきて、めでたしめでたし。そのお祝いとして、ツクヨミに新規エリアを実装しよう!その記念としてライブもやっちゃうぞ〜!

 

と、ここまでは私もファンの一人として大喜び。またライブが浴びれる!また発狂して良いんですか!?と手を叩いて騒いでいたのも、つかの間、ヤチヨがとんでもない事を言い出した。

 

『せっかくなので、スペシャルなゲストを呼んで一緒にライブをしてもらいま〜す!ヒントは〜……私の友達かにゃ〜?』

 

戦慄した。これ、私のこと言ってないよな?自意識過剰なだけだよな?と。だが、ヤチヨならやりかねない。彩葉や芦花、真美と違って、私には出てもアドバンテージなんてない。旨味もないぞ!そう必死に言い訳をするも、無慈悲に連絡が届いた。

 

【レンゲも踊ろ〜?】

 

下手なホラーゲームより怖かった。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、ヤチヨに呼ばれ、ダンスの練習が出来る鏡張りのプライベートルームに案内された。結局、呼ばれたのは彩葉やかぐやだけではなく芦花、真美も呼ばれていたので、逆にこれで声がかからなかったら悲しくなってたかもしれない。

 

「あ、踊りはしないけど帝にも声かけたから〜。仲間はずれは淋しいからねぇ」

 

サラッと心を読むのをやめてほしい。だが、乗り気じゃないのは私と彩葉のみの様で、皆楽しそうに話していた。

 

「い、イロハは踊りたくないですよねぇ……?」

 

「……流石に29になって踊るのは……」

 

私達は目を見て頷き、力強く手を結ぶ。ここに踊り拒否の会が結成された。この結束を大切にして、強く断っていこう!そう意気込んでいると、かぐやとヤチヨが何やら話し込んでいる。

 

「ちょいちょい、ヤチヨさん。どうやらイロハ、ダンス拒否みたいですよ?拒否イロですよ?」

 

「ほうほう、かぐやさん。それは困った……じゃあ、いつものあれ、行っちゃおうか!」

 

2人は俊敏に彩葉との距離を詰め、両手を胸の前に持ってきて、目を潤ませる。不味くね?

 

「イロハぁ……ハッピーエンド、したいな?」

 

「イロハと一緒に、踊ってみたかったんだ。8000年分のお願い」

 

彩葉は左右に顔を振って二人の顔を見る。その顔は良心と葛藤しているのがよく分かる。耐えるんだ彩葉、頑張れ!

 

「ぅ……わかった踊るよ!」

 

「「いぇーい」」

 

嬉しそうに両手でハイタッチするかぐやとヤチヨ。彩葉城、一瞬で陥落。くっ、やはりチョロ葉か。拒否の会は一瞬で解散してしまった。まともなのは私だけか!!だが、嘆く暇もなく外堀は埋められていく。

 

 

 

「ねぇ〜、レンゲも踊ろうよ〜」

 

そして冒頭に戻る。既に味方はいない。孤立無援。でも私は屈しないぞ!そう決心したが、身長が低いのを良いことに、かぐやとヤチヨが私の耳元に口を寄せる。そして囁くように、語りかける。

 

「お願い、かぐやと一緒に、踊ろ?」

 

「私の手を取って。踊りましょう?」

 

「アラァァァ!?!?!」

 

「チョロ夏……」

 

「チョロ夏だね〜」

 

私はものすごい勢いで横転した。無理だ、勝てる訳がない。多幸感から顔を歪ませながら、私も諦めていそいそと、踊る準備をし始めた。全員が位置につくと、ヤチヨから細かい説明があった。どうやらライブで披露する曲は有名バンドの楽曲らしい。

 

「じゃあ、まず私が手本を踊ります!音源流すねー」

 

ヤチヨの掛け声と共に音楽が流れてくる。とても爽やかな曲調で良い曲だ。その曲に合わせて、ヤチヨがキレキレの可愛いダンスを披露する。彩葉が隣で限界化してるが、私には余裕がなかった。踊れる気がしない。

 

「〜♪はいっ!こんな感じ!まだまだ期間はあるからゆっくりやっていくよ〜」

 

ここまでの無理難題はかぐやを月から守る時以来だ。覚悟を決めて、床を踏みしめる。取り敢えず、ヤチヨの指示通り、最初の部分を踊ってみる。あっ。

 

「ぐへっ」

 

「レンゲぇ!?」

 

私は足が縺れて、盛大にすっ転んだ。顔面を打ち付けたので、びりびりと痛みを感じる。慌てて、近くにいた彩葉が駆け寄ってくる。痛いが、まだやれる。彩葉を手で制しながら、立ち上がる。

 

「これも推しのため……やってやりますよ!」

 

かくして、私達のダンストレーニングが始まった。期間がある、とは言ったものの私が足を引っ張るわけには行かない。だが、幸いにもメインで踊るのはかぐやや彩葉達で私や真美、芦花はバックダンサーの様な立ち位置で踊るらしい。

 

「ワン・ツー・スリー・フォー!レンゲ!ちょっとだけ遅れてる!」

 

「ヒィ……ヒィ……ごめ、ごめんなさい!」

 

でも、人様にお出しするなら、中途半端なものは出せない。やるからには全力で。練習の日は、なけなしの体力を使って必死に踊った。

 

「ちょ、蓮夏!」

 

「うぐっ……あぁ、芦花。受け止めてくれたんですね。ありがとう」

 

「……ん、問題ないよ」

 

今回は現実で身体を動かしてトラッキングするため、ツクヨミ外でも練習する事もあった。慣れないことなので何度も転びそうになったし、実際転んでる。皆に受け止められたのは何度やら。

 

「でもやっぱり私が踊るのに需要を感じないんですけど」

 

練習を始めてから半月が経った頃の休憩中。私は不貞腐れたように、飲んだドリンクを雑に置き、過った疑問をふと口に出した。ちなみに、今回の練習参加者は私と真美、ヤチヨの3人だ。

ヤチヨは私の疑問に笑顔で返答する。

 

「大丈夫!レンゲの配信で、可愛いって声が上がってるの、ヤッチョ知ってるから」

 

「だからなんで知ってるんですかぁ……?」

 

私の秘密を盛大に暴露するヤチヨに精一杯の怖い顔をしながら睨む。だが、むしろ和んでいる様な顔になりながら、真美と顔を合わせて答える。

 

「まぁ、見に行ってるから……ね〜」

 

「それに今も可愛いしぃ」

 

「いや恥ずかしいから来ないでくださいよ!てか怒ってるんですからね!」

 

と、不本意ながら和気あいあいと練習は進められた。そして肝心のサビなのだが……。

 

「ほらほら、もっとせくしーに腰を振って!そんなんじゃ足りないよ!」

 

ダンスの難易度が上がって表現力が必要になってきた。私ではせくしーが足りないらしく、かぐやが教官の様に細かく指摘してくれた。ご褒美!?

が、何度踊っても皆のように踊れない。せくしーとは何ぞや。首を傾げる私に助け舟を出すべくかぐやが指示を出す。

 

「よし!イロハ!お手本を見せてあげな!」

 

サビのメロディーが流れてきて、彩葉が私が習った踊りと同じものを踊った。でも何故か私のものよりもいかがわしく感じる。私の隣で見ていた芦花の口からも感想が漏れた。

 

「おぉ」

 

「これは余りにもおぉ」

 

「……って、なんで私が見本見せてんの!」

 

流石のノリツッコミだ。プロデューサー歴は伊達ではないか。そんな彩葉のお陰で要領を掴めたので何とか形にしていく。そんな努力を続けて気がつくと、ライブは前日に迫っていた。

 

「よし!それじゃあリハーサルも問題なさそうだから、明日のライブに備えて、みんな早く寝ること!」

 

取り敢えず、何事もなく無事にリハーサルを終えられた。他のみんなは返事をしながらログアウトして行く。だが、私はステージに立つ不安からか、小刻みに震えながらヤチヨに話しかける。

 

「ヤチヨ、緊張して眠れそうにないのですが……」

 

それを言うと、いつかの時のように優しく笑いながら手を差し出してくれた。

 

「そしたら少し、ヤチヨとお話しよっか」

 

 

 

 

 

連れられてきたのは、明日のライブで初公開となる新規エリア。まだ、開放されていないので人っ子1人居ない。私達は、その鳥居の上に隣り合って座った。さざ波の音が響く中、ヤチヨは口を開く。

 

「レンゲも可愛いところあるよね〜。緊張で眠れないからって、話がしたいだなんて」

 

ヤチヨの指摘が的を得ているので、何も言えずに口を尖らせながら下を向く。私だけ大舞台未経験者なんだぞ!しょうがないだろう!そんな抗議を心で呟く。だが、そんな私にヤチヨは寄り添いながら肯定してくれる。

 

「私も、初めてのツクヨミでのライブはすっごく緊張したなぁ。なんせ人前で直接歌うのなんて8000年ぶりだし。でもね、終わったら全部楽しかったんだ。レンゲもそういう経験、したことあるでしょ?」

 

私は話を聞きながら、初めて配信で歌った日のとこを思い出していた。初めは興味本位だった。かぐやの様に、ヤチヨの様にみんなに聴いてもらえたら楽しいのかなって。治したPCで硬くなりながら、歌った。皆の声が怖かったけど、目を開けると、温かった。優しかった。私は静かに頷いた。

 

「そう言えば、そうでした。何で忘れてたんでしょうか」

 

「それは忘れたんじゃなくて、自分のモノに出来たんだよ。そうやって、初めてを乗り越えて、人は成長出来るんだから」

 

やっぱり敵わないな、私のもう1人の推しには。そう思いながら、私はヤチヨに笑いかける。そんな様子を見ながら、ヤチヨも嬉しそうに笑った。

 

「一歩を踏み出せれば、怖くないんだよ。もし怖いなら、ヤチヨが一緒に踏み出してあげる」

 

「ふふっ、無理矢理誘ったのはそっちなのに……わかりました。当日、失敗しても笑わないでくださいよ?」

 

その後、眠くなるまでヤチヨは話に付き合ってくれた。それによって、緊張に少し楽しみを混ぜることができた私は、当日のライブで過去最高のパフォーマンスを披露することが出来た。ヤチヨの言った通り、終わったら楽しい思い出だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、後日私が配信を開いた時に事件が起こった。珍しくコメントが早く流れると思い、細かく見ると……。

 

【今日は踊らないんですか?】

 

【可愛いダンスを見に来ました!】

 

【初見です!踊るんですか?!】

 

私は頭を抱え、机に向かって叫んだ。

 

「あーもう!こうなる気がしたから踊りたくなかったんですよー!!!」

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