一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】   作:カウン

18 / 19
流石にこの活躍は、切り抜き確定だな!


慣れないことをすると周りが見えなくなる

「公開収録にゲストとして出てほしい、ですか?」

 

「そうなんだよねぇ。実は今回出演を依頼してたライバーさんが当日に予定が入っちゃったみたいで。それでレンゲに白羽の矢が立ったってこと」

 

ある日の休日。なんとなく、かぐやのアーカイブでも観るかと思ってPCを開くと、ヤチヨからメッセージが飛んできていた。

呼ばれたのは、ツクヨミでよくみんなが集まるカフェ。そこで私はメッセージの概要を聞いていた。ヤチヨは定期的にNEWS TSUKUYOMIに出演しており、その公開収録にて代打を頼まれたって感じだ。

 

「加えて、今回、シークレットゲストって銘打ってサムネを出しちゃったから、記念ライブのライバーさんじゃないかって注目が集まっちゃってね〜」

 

ヤチヨの話に耳を傾けつつ、私はコップのジュースを口に含む。最近、軽度の甘みなら再現できたので、ツクヨミに実装した【味覚システムVer.5】を体感しながら話を聞く。うーん、もう少し強く甘みを出しても良いかもしれない。

 

「流石に期待を裏切る訳には行かないですよね……ヤチヨとオタ公に泥を塗るようなものですし」

 

って事は……!と目を輝かせているヤチヨを見ながら、過去に私のお願いを聞いてくれた彩葉はこんな気持ちだったのかなぁと思い返し、笑った。

 

「いいですよ、私でよければ出演します」

 

 

 

 

 

「みんなのためにわんわんお!忠犬オタ公でーす!今日はいつものスタジオを飛び出して、ステージの上で公開収録となってるぞー!」

 

観客席から歓声が上がる。うぅ、了承したけど、なんだかんだ緊張する。そう思いつつ、ステージ裏で呼ばれるのを待つ。尻尾も落ち着きなく右往左往している。

 

「ヤオヨロ〜!月見ヤチヨでーす!今日はあるスペシャルゲストに直撃取材をするために呼ばれましたー!」

 

そろそろです。と、スタッフさんから声がかかり、ステージ袖に移動して、ちらりと客席を覗く。この前のライブと同じくらい来ている……オタ公かなりの人気ライバーじゃないか、なんであの時の私は知らなかったんだ……。

 

「って事で、早速だけど呼んじゃうか!最近あった記念ライブでヤチヨの友達として一緒にステージに立った、コイツだ!

巷で話題沸騰中の歌い手!レンゲー!」

 

カーテンをくぐって、ステージ中央に向かう。スポットライトが当てられるのと同時にさっきの歓声と同等の物が上がる。びっくりして少し跳ねてしまった。こんなに期待してくれていたのか……と半信半疑になりつつ手を振って席に着く。

 

「それじゃあ自己紹介を頼む!」

 

そう言って話を振られたので、席の前にあるマイクを取る。緊張で声が震えるのをどうにか抑えつつ、声を絞る。

 

「定期的に配信で歌ってます、レンゲです。今日はよろしくお願いします」

 

変哲もない挨拶だが、それだけでも客席から拍手が上がる。そこまで人気になった覚えはないのだが……そう考えていると、オタ公が話を進めてきたので乗っかる。

 

「実は私とレンゲも昔からの友人でな、かぐやの路上ライブで知り合ったんだ。しかも、チャンネル開設して1週間だぞ!?」

 

「そんな事もありましたね……あの時は脳を焼かれたばかりでオタ公の事知らなかったですから」

 

「まぁ、その時のレンゲ、かぐやの事しか見えてなかったらしいからね〜」

 

ヤチヨの補足で会場から笑いが起こる。あの説はすみません、とオタ公に頭を下げると気にしていないと返ってきた。

 

「それ以降はかくやのライブで定期的に会ったりしたな。あとは帝とのクイズ対決で司会もやったか!」

 

「ありましたね。とても有意義な時間でした。よい問題をありがとうです」

 

「とまぁ、昔からかぐやの熱烈なファンであるとレンゲだが、ここ最近急にライバーとして歌を始めたんだよな?どう言う心境の変化があったんだ?」

 

流石の司会力だ。アイスブレイクの様に会話で会場の空気を掴んでから、本題に入る。普段はかぐや推し仲間としての側面が強いが、やはりプロと言うのを実感した。

聞かれたことに関しては、かぐや本人に対して歌ったのがきっかけだが、それを言うとファンに刺される可能性があるので暈した。

 

「実は過去にとある人(・・・・)に心を伝える時、かぐやのマネをして歌ったのがきっかけですね。その時に歌う楽しさを知って、人に歌ってみたいってなったのが配信に繋がりました」

 

「だとすると、今のレンゲの歌を聴けるファンはその人とかぐやに感謝だな」

 

「はい、ありがとうって伝えたいです」

 

隣でヤチヨが嬉しそうに笑ってこちらを見ていた。自分がきっかけで歌うことを選んでくれたのがよっぽど嬉しいらしい。

 

「と、未だ配信では歌しか歌わないので分からない、レンゲの素顔が見えてきた所で、質問タイムだ!せっかくの公開収録、活かさない手はないよなぁ!」

 

ここで公開収録と言う利点を使い、直接質問を募集するらしい。私に聞きたいことなんてあるのだろうか。

 

「ちなみに変な質問した人には、ヤチヨからのおしおき(・・・・)があるから覚悟してね〜?それじゃ、聞きたいことある人〜?」

 

ヤチヨが釘を刺したためか、積極的に挙手する人が現れない。すると、1人のアバターが手を挙げ、ヤチヨから声がかかる。ん……どこかで見たことあるような?

 

「質問だ、いつも配信で歌う曲はどう選んでるんだ?」

 

顔を見るとますます見覚えしかない。眉を寄せて、顎に手を当てて記憶を探る。すると、ぼんやりと斧を持って振り下ろす姿が出てきた。あ、もしかして初めてKASSENで戦った相手の人か?なんでこんな所に……っと、質問に応えなければ。

 

「大体はかぐやの歌枠やライブで聞いた曲が多いですね。あとはヤチヨとか、他の人の曲もたまに。そこから歌いたいと思ったのを選んでる感じです」

 

私の回答に満足したのか少し嬉しそうに頷いて座ろうとする。が、ピタリと動きをやめて、再び口を開いた。

 

「助かる。あ、あとファンなんだ……なにかファンサをしてくれたら嬉しい……です」

 

それを聞いて、私は耳を疑った。ファン!?私の!?こんなペーペー見る価値ないぞ!?慌てふためく私を他所に、ヤチヨとオタ公は嬉しそうに私の肩を揺らす。

 

「なぁ!せっかくだし、やってみたらどうだ?」

 

「ヤッチョも見てみたいな〜、レンゲのファンサ」

 

え、ファンサ。何を、かぐやはどんなのやってたっけ……あ!あれで行こう!私は勢いよく席を立ち、両手でピースをしながらウィンク!会場がまた静寂に包まれる。

 

「お、応援ありがとうでふ!」

 

瞬間、悲鳴のように歓声が上がる。えっ、私何かしてしまっただろうか。席に着き直すと、ヤチヨがニヤける口を手で押さえながら、こっそりと教えてくれた。

 

「……レンゲ、ウィンク両目つぶってたよ。可愛いね」

 

し、しまったぁぁあ!!やったこと無いからこうなるとは思わなかった!!オタ公の方を確認すると、同じように口元を手で押さえつつ、サムズアップ。これはしっかり見られているな……恥ずかしぃ!私は両手で顔を覆いながら机に伏せる。

 

「やっぱり私の見立て通りレンゲには魅力があるな!」

 

嬉しそう語るオタ公を聞きながら私は頭を起こす。うぅ、まだ顔が熱い。照れ隠しから目を逸らすと、会場の数人がが明らかに慌てていた。そのうちの1人が声を上げる。

 

「レンゲちゃんに投げようとしたふじゅーが無くなってる!」

 

前半の私への投げ銭は理解できないが、何か起きてるのか?そう考えていると、FUSHIから緊急の連絡が入ってきた。

 

「ヤチヨ!レンゲ!収録中悪いがその会場に不正なツールを用いて、他人のふじゅーを自身の持ち物に移動させている奴が3人いる!対応を頼めるか!?」

 

何故私も収録してるとバレて?と、それは置いておいて、オタ公に少し断りを入れて席を立つ。この場でやるのは恥があるが、四の五の言える状況ではない。ヤチヨに視線で訴えかけてから、管理者のウィンドウを開く。目の前に現れるデジタルのキーボードを素早く叩き、特定には入る。

 

「管理者権限から、アクセス履歴、ふじゅーの受け渡しのログを確認」

 

この会場に居る全員の個人的なアクセスログが流れていく。キーボードを叩き、画面を指が滑る。そこから直近で送り先として選択された数人をピックアップ。

 

「数秒前にこの会場で大人数からの送り先になっているのが1……2……3人!ヤチヨ!そこの3人です!」

 

最後にエンターに指を叩きつけ、ロック。プレイヤー名の上に赤いカーソルが点灯する。不正を働いた者への目印だ。

 

「おいたはダメだよ!」

 

ヤチヨが立ち上がり、指を下に振るうと、2人が地面に押し潰される。が、1人は既に逃げる姿勢に入っていたからか、その範囲外に飛び出していた。

 

「っ、レンゲ!1人逃がした!」

 

私は素早く武器を構えて、机に足を乗せる。今からで間に合うだろうか、そう思って前を向くと、先程質問してきたアバターが斧を構えて進路を絶っていた。

 

「どけよ!」

 

「ヤだね。大人しく、レンゲに撃たれるといい」

 

いつかの様にこちらの目を見つめて、やれるだろうと訴えてくる。私は口角を上げながら、トリガーを引きはなった。

 

「任せてっ!」

 

私の放った弾丸は、逃げようとしていた犯人の片足に直撃し、動きを封じる。その隙に裏で実行していた、不正ツールの修整パッチとバックアップを、直接アカウントに叩き込んだ(ダウンロード)。そのまま、全員にお金が戻ったのを確認して、息を吐いた。

 

『ワァァァアア!!!』

 

突如として上がる歓声。そして投げ込まれる私の取り返してあげたふじゅー。私は目を白黒させながら、武器をしまって足を下ろした。

 

「ギャップがすごい!」

 

「何今の!?天才ハッカー!?」

 

「これからファンになります!」

 

取り敢えず、席に着きながら現状を確認すべく、オタ公に声をかける。

 

「スーッ、オタ公、これ、どういう状況」

 

するとオタ公は突然立ち上がって、マイクを持って吠えた。

 

「何ということだ!レンゲとヤチヨの活躍により!ふじゅー泥棒が逮捕された!!やはりレンゲは!私の見立て通りただ者ではなかった!!」

 

その煽りを受けて、会場は大騒ぎ。レンゲとヤチヨコールが止まらなくなる。そんな状況が読み込めなくなってきた私の肩にヤチヨがそっと手を添える。

 

「かっこよかったし、めでたしだね〜」

 

私はため息を吐きながら、呆れて空を見上げて笑った。

 

「……出なきゃよかった」

 

 

 

 

 

ちなみに後日FUSHIから、オタ公とヤチヨは元々(・・)蓮夏を呼ぶつもりだった所に、事件が重なってしまい、凄まじい撮れ高をうんだらしい。私は怒りに身を任せ、精一杯の怖い顔をしながらヤチヨに殴り込みに行った。

 

開発者には勝てなかったよ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。