一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】   作:カウン

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彩葉誕生日おめでとう!(一日遅刻)(投げられる石)

それと誤字報告ありがとうございます!助かります。


湯けむり温泉増刊号

真美がいつか言っていた『みんなで温泉に行こう』

それを叶えるべく、私はハンドルを握っていた。

 

「うっひょー!高速道路ってこんな速いんだー!!」

 

うぉぉ!高速道路久しぶり過ぎて怖い!!

 

 

 

 

 

 

きっかけはこうだ。研究所で嗅覚と味覚のシステムをどうにかアップデート、それをかぐやとヤチヨに組み込んでいたときの事。私と彩葉が頑張りすぎと考えた研究所一同に、休みを取れ!旅行にでも行ってこい!と2日の纏った休みと旅館のチケットを押し付けられた。しかも6人分。残業とかはしていない筈だが……なぜ心配されるのだろうか。みんな質がすごいと言ってくる。

と言うわけで、せっかくだから、芦花と真美も誘っての1泊2日の旅行という訳だ。あ、ちなみに旅館側にはかぐやとヤチヨについては説明済みだ。お金を1人分で払っていた事に頭を下げられたが当たり前だろう。

現在は、私の車、私の運転で高速道路を爆走中だ。

 

「蓮夏、そろそろサービスエリア寄って休む?」

 

「は、はぃ。結構疲れたのでそうさせていただくと……」

 

助手席の彩葉が気を使って提案してくれる。なお、後ろのかぐやは大騒ぎ。ヤチヨも初めてのSAにソワソワしている。私はバックミラーでその様子を見て、笑みを浮かべながら、ハンドルを切った。

 

「ここがサービスエリア!空気まずー!」

 

「まぁ、車が集まる所だからしょうがないよね〜。ほら、お店の方行こ〜」

 

げんなりするかぐやを気遣いながら真美がお店へ誘導してくれる。それに続いて、私達も入店した。ここが店舗内……すごい、見たことのないお土産がたくさん……!ここで買えて良いのだろうかと言ったお土産もある。

ちなみに、家族事情から察せられると思うが私も旅行が初めてでわくわくしている。憧れは止められねぇんだ。と、商品を物珍しく見ていると、かぐやが彩葉と話すのが聞こえる。

 

「かぐやこれ欲しい!」

 

「帰りでも買えるから、今買うべきじゃないって」

 

「じゃあ、ヤッチョはこっちが欲しいなぁ〜」

 

「ヤチヨのは買おう」

 

「うぇー!?理不尽だー!」

 

三人の日常を眺めていると、肩が叩かれる。振り向くと、芦花が目を細めながらソフトクリームを持っていた。片方をこちらに渡しながら、楽しげに言う。

 

「お疲れ、運転手さん」

 

「前からもっと高速道路を運転しておくべきでした……ここまで神経を使うとは……」

 

「ふふっ、彩葉とかに言って変わってもらったら?」

 

いやいや、一番研究所で頑張っているのは所長である彩葉なんだから。この旅行中位は休んでおいてほしい。そんな願いから、私は首を横に振る。

 

「まぁ、本当にしんどくなったら頼みますよ。それまでは私がドライバーです」

 

そう胸を張りながら、ソフトクリームを頬張った。ん〜、冷たくて甘くて美味しい。変哲もないソフトクリームでも旅行中だとここまで美味しいのか……はっ!これが旅行マジック!そんなくだらない事を考えていると、芦花から手が伸びて、私の鼻を掠める。

 

「アイス、鼻についてるよ?」

 

そう言って彼女は、掠めたアイスのついた指を舐め取った。……急にイケメンムーヴするのやめてほしいな。推しが増えるだろ……!

 

 

 

 

 

そうして、車を走らせること数時間。私達は目的の旅館まで辿り着いた。荷物を受付で受け渡して、チェックインの手続きを待つ。運転してたんだから蓮夏は休んでて、と言い残して彩葉が行ってくれた。私は疲れた頭で旅館の内装を見ていた。広い吹き抜けに豪華なシャンデリア、下には噴水。まるでおとぎ話の舞台の様だ。ぼけーっと眺めていると、肩に両手が乗せられる。

 

「蓮夏ぇ〜、呼ばれたからそろそろ行こ〜」

 

「ん、お母さん。わかりましたよ」

 

「3人目の子供を産んだ記憶はありませ〜ん」

 

そう言いつつ、疲れた私の手を真美が引いてくれる。やっぱり面倒見が良いなぁ、なんて思いつつ今日泊まる部屋の前まで案内される。扉を開けると、全員が息を呑む。

 

『おぉ〜!』

 

目の前に広がる絶景。渓谷を流れる川が眼下に広がり、山には雄大な自然が青々とそこにある。かなり良いところの旅館取ったな、と部下たちのお財布事情を心配しつつ、荷解きをしていく。その後ろでヤチヨ達が話している内容が聞こえてくる。お風呂に力を入れている旅館の様で、複数個あるらしく全部回ると意気込んでいた。

 

「ヤッチョ、温泉は初めてだから楽しみだな〜」

 

「それはかぐやも!」

 

「お二人とも、その前にもう一つ楽しみがあるんじゃないかな〜?ここはご飯も美味しいらしんだから!」

 

真美が意気揚々と補足している。流石、グルメ系インフルエンサーだ、的確に情報を仕入れているらしい。そんな真美の情報を聞いてか、2人とも嬉しそうに飛び跳ねている。ここまで喜ばれていると、頑張ってシステムを組んだ甲斐があるってもんだ。

 

「それじゃあ、先にご飯を食べに行きましょうか」

 

みんなが返事をする中、私も急いで会場に向かう準備を始めた。

 

 

 

 

 

「いや〜、美味しかったね〜!」

 

私達はビュッフェを堪能して、今はお風呂に向かっている。ちなみにビュッフェは種類も豊富で美味しかった。真美もご満悦だったし、かぐやも、これなら再現できるかも!と食事のレパートリーに加えていたりした。

 

「やっぱりかなりいい旅館だよねぇ。ヤッチョも満足だよ〜」

 

ヤチヨも足取りが軽く、長い髪を揺らしながら楽しげだ。そう話していると、かぐやが上を指差しながら現実味がないように言う。

 

「にしても、最上階に露天風呂なんて、すごすぎない?そんな所に作れるとか信じられん……」

 

そんなかぐやにヤチヨが絵に描いたような笑いを見せて口を開く。不味い!Yach8000だ!

 

「馬鹿と煙は〜ムグッ」

 

「それ以上はいけないです」

 

咄嗟に口を押さえつつ、エレベーターに皆で乗り込む。なんかの事件みたいだなこれ。と、皆でふざけながら着替えて外へと出る。

 

「うひゃ〜、すごい!」

 

宇宙を埋める星、それが届きそうなくらい近く感じる。温泉に足から浸かると、じんわりと身体の疲れを溶かしてくれるようで自然と息が漏れてしまう。とても贅沢だなぁ。

 

『はぁ〜』

 

全員、入った時に心地良さから脱力して声が出ていた。それを皆でクスクスと笑う。そのまま最近の事や、昔の事を話し始める。少し早い時間だからだったからから、誰も居ないのでプライベートな話も出来た。

 

「そう言えばなんですが、かぐやはなんで電子機器に強いのに、私にプログラムを頼んできたんですか?」

 

なので、ずっと抱えていた疑問をぶつけてみた。髪を纏めたかぐやが振り向く。月でその手の仕事をやっていたなら私の手を借りずとも、やってのけたよな。そんな疑問がずっと私の胸にはあった。私の質問に対して、かぐやは恥ずかしそうに頬をかきながら話す。

 

「あー、あれ実は蓮夏に甘えたかったんだよね」

 

懐かしむように月に手を伸ばしながら、かぐやは薄っすらと微笑み、話を続ける。湯船から、お湯が音を立てて流れる。いつの間にかみんなも耳を傾けているのか、周りの話し声が止まっていた。

 

「月で同じようなことはやってたけど、あそこは他人に頼れなかったから。他の人にやってもらうってどんな感じなんだろうって気になってね」

 

彼女は上げていた手を下ろして、振り向き歯を見せてニヤける。

 

「あと、純粋にめんどくさいじゃん?」

 

「ふふっ、確かにですね」

 

「ヤッチョも最近は蓮夏に手伝ってもらえて助かってるよ〜」

 

「それはあの時、私を信じてくれたお礼ですよ」

 

他人に甘える事を知れたからこその行動だったのか。私は内心納得しつつ、再開されていく会話に混ざった。え、芦花、私の引きこもってた時の話してたんですか?する必要ないと思うんですけど。やめて!みんなそんな憐れむような酷い目で見ないで!

……なんかまだみんなこっち見てくるな。なんでだ?

 

「てか浮いてる……すっご」

 

「昔よりも大っきくなってない?」

 

芦花が私のを突き、ヤチヨが興味深そうに覗き込む……。

 

「だからこれやめにしませんか!?」

 

とまぁ、そんな風に思い出話や、くだらない話に浸っていると、かぐやとヤチヨが改めてと、声をかける。

 

「真美、みんなも約束を守ってくれてありがとう」

 

「あの時の約束、私も本当にいけるなんて思わなかったなぁ」

 

彩葉が湯船を移動し、2人の手を握る。そして目を見つめながら優しく語りかけた。

 

「これからも、行きたい所あったらまた約束しよう。それでもっと、思い出を増やしていこう」

 

「今度は海も行こうね」

 

優しい風が頬を撫で、湯気を巻き上げて空へと上がる。空の月は、柔らかい光で私達を照らしてくれていた。私は肩まで浸かり直し、胸の内にも暖かさを感じながら静かに呟く。

 

「本当に、いい湯ですねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

「みんな寝ちゃってるね」

 

「まぁ、結構遅くまで起きてましたもんね」

 

あっという間に帰り道。あの後、卓球をしたり、部屋でゲームをやったり、布団のなかでおしゃべりをしていたら気がつくと遅い時間になっていて、慌てて就寝したのだ。起きてからも、お土産選びで楽しそうにするかぐやが記憶に新しい。

現在は帰りの高速道路を走行中だ。

 

「ま、私達しか起きてないのは’慣れ’かな」

 

彩葉が呆れた様に言う。バックミラーには、互いに肩を寄せ合って眠る4人が2人ずつ座っていた。研究職は割と夜まで起きてる事が多いので、私も睡眠には耐性がある。だから車内は彩葉と私しか起きてなかった。

 

「慣れちゃ駄目ですよ」

 

「ま、そうだね」

 

行きよりも高速道路の運転に慣れてきた。こっちは慣れていいことだ。なので話しながらでもこなせるな。そう手応えを感じていると、彩葉が話をきり出す。

 

「蓮夏、少し良いかな」

 

「ん、なんでしょうか」

 

流れる景色を目で送りつつ、眼鏡の位置を直す。少し遠慮気味の彩葉は静かに話を進めた。

 

「あの時、私のわがままで巻き込んじゃったからさ。本当に良かったのかなって」

 

あの日のことを気にしているのか。彩葉らしいな。そうやって感じながら、私の想いを告げる。

 

「この選択に後悔は無いですよ、私は」

 

この道を選び取ったから、私は今の私になれたし、彩葉や、他のみんなとも深く仲良くなれた。何よりかぐやの、推しの為に働くことが出来てるのが嬉しい。

 

「彩葉、こちらこそ誘ってくれてありがとう」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

帰りましょうか、私達の街へ。踏んだアクセルペダルは、心なしか軽く感じた。

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