一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】   作:カウン

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お酒は飲んでも呑まれるなってやつです。

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月に乾杯

「それじゃあ!かぐやとヤチヨのアルコール分解機能実装を祝して……乾杯っ!」

 

『乾杯〜!』

 

彩葉宅にてそれぞれのコップが音を奏でる。今日はかぐやとヤチヨに新しくアルコールを分解する機能を組み込めたので飲み会だ。1カ月程前に4人で飲み会をやっていたとき、かぐやがお酒を飲みたいと騒いでいたのが事の発端。

ヤチヨも羨ましそうにしていた為、二人の為に私と彩葉が全力で完成させた。だが、実際はアルコールを分解するだけだったはずなのだが、かぐやと彩葉が2人でテストをした際、何故か酔いも再現されてしまっていた。システムログをみる限り問題なかったのでヤチヨにも組み込んで、今日を迎えたと言うわけだ。

 

乾杯の音頭とともに、それぞれお酒を口にしつつ話をしていく。補足だが、今回は彩葉とかぐや、ヤチヨに芦花、真実。それと私が参加している。

 

「おつまみはかぐやが作った!まずはチャーシュー!コツはネギの青い部分を入れて煮込むんだ!」

 

そんな中、かぐやが楽しげに自分の作った料理の解説してくれる。私はそれに幸せを感じながら見ていた。推しと一緒に推しの作ったおつまみを食べながらお酒を飲む……!

 

「し゛あ゛わ゛せ゛!゛」

 

「わかるけど、オタクに戻るな〜」

 

真実が冷えた目で見てくるが関係ない!私の楽園はここにある!!ちなみに私は取り敢えずでサワーを飲んでる。だから酔ってないですシラフです。なのでそのエチケット袋を下げてください芦花。

 

「蓮夏ってたまに酔ってるか酔ってないか分からないよね」

 

「それな〜」

 

それを指摘され、私は目を逸らしながら頬を掻く。実際、かぐや関連では割と突飛なことをしたり言ったりするため、シラフと酔っている状態の区別がつかないことがあるらしい……今みたいな感じで。

 

「そんなにすぐに酔う訳ないじゃないですか」

 

そう言いながら、手に持った缶サワーをくぴりと飲む。ふつうに美味しい。そんな油断している私に、背後から抱き着いてくる者が。首を向けると目の前に推しが。

 

「かぐやには酔ってるけどね!」

 

「ニュョン!?」

 

久しぶりに横転した。手早く缶を置き、かぐやを巻き込まない様に反対側に綺麗にぶっ倒れる。人の家の床をゴロゴロと転がる私を見て顔を引き攣らせながら、彩葉が呟く。

 

「やっぱシラフと酔ってる状態逆でしょ……」

 

と、そんな風にふざけていると彩葉の家のチャイムが鳴った。それを聞くとヤチヨが嬉しそうに手をすり合わせて立ち上がる。

 

「お、来たね来たねぇ」

 

と、言い残して玄関に向かってすぐに戻ってきた。高そうな木箱を抱えて。

 

「ヤチヨ、それは何ですか?」

 

床から身体を起こして、持っているものを見つめる。パッケージを見るに外国産と言うことしか分からない。そんな私の質問にヤチヨは自慢気に腰に手を当てて答える。

 

「これはね〜、ヤッチョの古い友人が気に入ってたワインなんだ〜」

 

ヤチヨ曰く、過去にヤチヨの本体を輸送する際、手引きしてくれた人が気に入っていたワインらしい。その人の子孫と連絡を取るすべがヤチヨにはあるらしく、今回お酒が飲めるようになる事を伝えると快く送ってくれたとのこと。

 

「これ、お酒詳しくない私でも知ってるすごいやつだよ〜……すご〜」

 

真実が木箱に顔を近づけ、おっかなびっくりに観察する。確かに遠目から見ても存在感が違う。木箱を空けながら、ヤチヨがワインオープナーでコルクを外す。

 

「彼の言葉には、ヤチヨも助けられたなぁ……ようやく、貴方の伝えたかった味が飲める」

 

優しく注ぎながら、ワイングラスを傾け、匂いを楽しむ。私達はそのヤチヨの姿に目を奪われていた。グラスに口をつけ、含んだワインをゆっくりと飲み込む。少し涙を貯めながら、口をほころばせて呟く。

 

「本当だ……美味しい」

 

嬉しそうに、でも夢を見ているよな表情でグラスを傾けるヤチヨ。そんな彼女に、彩葉が微笑みかけながらグラスを差し出す。

 

「ヤチヨの友人の味、私も飲んでみたいな」

 

「……うん、皆で飲むために貰ったんだから。彩葉!今日はとことん飲むよ!」

 

「ふふっ、程々にね」

 

ヤチヨが涙を拭いながら、皆のグラスにワインを注いでいく。私達の楽しい飲み会は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

飲み会開始から2時間が経過して、すっかりみんな出来上がっていた。最初こそ、ヤチヨの貰ったワインをみんなでお上品に飲んだり、和気あいあいとしながら、話していたのだが……。

 

「彩葉……ごめんね、8000年もずっと思ってたなんて重いよね……こんな重いヤッチョは嫌だよね……」

 

「あー!そんなことないよ!ヤチヨは可愛いからね!大丈夫!どんと来い!」

 

「ねぇ……彩葉がヤチヨばっか見る……かぐやの事嫌いになっちゃったのかなぁ……」

 

「えへへ〜、かぐやは可愛いから大丈夫だよぉ……そうだ!うちの子にならない?三女が空いてるよ!」

 

「蓮夏はもうあんな事しないよね……私を置いて、一人で居なくなったりしないよね……?」

 

阿鼻叫喚である。何故かヤチヨとかぐやはしなしなになり、それを笑いながら励ます真実、そして泣きながらもたれかかってくる芦花。そんなみんなを私と彩葉でどうにか落ち着けさせている。

完全に悪酔いだ。楽しくなり過ぎて、結構飲んでいたらしい。ちなみに私は、酔ってはいるものの意識ははっきりしているタイプのようだ。なので今は彩葉と共に場の収拾に努めている。

 

「芦花、私はもうあんな事しないですから、ここに居ますから大丈夫ですよ」

 

まずは、泣きながらお酒を飲んでいる芦花のお酒を水にすり替えて、頭を撫でながら、落ち着けさせる。

 

「ほら、かぐやは彩葉にくっついてきてください」

 

「お、おいでかぐや〜!」

 

次に、しなしなしたかぐやを彩葉にパス。多分これが一番早いと思います。

 

「うん……彩葉好きぃ……」

 

「私もだよ、かぐや」

 

「ん、きす」

 

「えぇ!今!?」

 

「だめぇ……?」

 

抱き着きながら、キスが欲しいとねだる推し。大胆すぎる……推せる。要求を聞いた彩葉は慌ててこちらに顔を向ける。正直友人である前に推しだから可愛い所は見たいが……。

 

「彩葉、私は下でも向いてるので、さっどうぞどうぞ」

 

私が背を向けて下に顔を向けると、彩葉はえぇ〜、恥ずい。なんて呟きながら数秒間、周りが静かになった。やけにしっとりとした接触音が聞こえてしまい、顔を赤くしながら上げようとするととんでもない爆弾が飛んでくる。

 

「えへへっ、いろはだーいすき!」

 

「ヴッ!」

「ン゛ンッ!」

 

油断した……かぐやの純粋な、赤子のような大好きが聞けるなんて……。

 

「我が生涯に、一片の悔いなし」

 

「って、わーっ!逝くなー!蓮夏!帰ってきてぇ!」

 

はっ!?推しがカプでキスする幻覚!?危うく三途の川が見えたぜ……っとと、真実のお酒もお水とすり替えて置かなければ。

 

「お〜、蓮夏だぁ。相変わらず可愛いね〜。うちの子になりなさい」

 

「だからなんで家族に受け入れようとするんですか……」

 

話を流しながら、コップを素早く入れ替える。取り敢えずこれで、悪化することは無いはずだ。一段落したので横を見ると、彩葉が大変なことになっている。

 

「ヤチヨにもキスして〜」

 

「ずるい!かぐやももういっかい!」

 

「ちょ、蓮夏!ヘルプっ!お酒こぼれそう!」

 

かぐやとヤチヨに群がられるなんて、流石は天下のいろPだなぁなんて呑気なことを考えつつ、二人の持ってるお酒を取り上げる。そのまま始まる接吻パーティ。彩葉が手を上げて助けを求めているが、幸せそうな二人の邪魔は出来るわけがない。私はサムズアップをしながら、芦花と真実のもとに戻った。

 

二人の席に行くと、とろんとした目で二人がこちらを見上げてくる。そして、二人は抱き着いてきた。

 

「私、蓮夏が危ないことしないように見張らないと……」

 

「心配だからさ、やっぱり養子になりなよ」

 

うーん、心配させた原因は私自身にあるからこそ、申し訳なさが勝ちますね……だから、少しくらいお酒のせいにして二人に甘えるのも、悪くないかもですかね。短い両手を思いっ切り広げて、眼鏡が落ちそうになるのも気にせず、二人に飛び込んだ。

 

「うん、やっぱり二人の所が一番落ち着きますね」

 

精一杯両手で抱き締めようともぞもぞと動くと、芦花と真実が合わせて寄ってきてくれた。恥ずかしくなり笑いながら顔を寄せる。

 

「少しこのままで居させてください。ニ人とも、温かいから」

 

「甘えん坊だ〜」

 

「珍しいじゃん……」

 

今日の事は全部お酒に責任転嫁しよう。なんて思いながら、二人の温かさを堪能した。いつもありがとう。大好きですよ。そんな気持ちが伝わるように。

 

 

 

 

 

 

 

「ん……まだ起きてたんですね」

 

「あ、なんでさっき見捨てたの?」

 

皆が寝てしまい、一段落。全員にブランケットを掛けてから窓際で一人飲んでいる彩葉に合流した。私は平謝りしながら横に座る。

 

「すみません、やっぱ二人の幸せな時間は壊せませんよ」

 

「……まぁ許すか」

 

彩葉も納得してくれた様でちょっとむくれた様な表情がもとに戻る。窓の外を見ると、いつにもまして大きな丸い月がこちらを見ていた。

 

「月、見てたんですか?」

 

「うん、今日やけに近く感じて」

 

「辛く、ないですか?」

 

「今は大丈夫かな」

 

かぐやが帰った後、現実に二人を呼び戻すまでの十年の間、彩葉は月を見るたびに苦しそうな、切なそうな顔を見せていた。ヤチヨや私が宥めていたのでよく覚えている。持っているグラスを口に当て、傾け飲み込む。そんな彩葉の動作を私は見守った。思い出したように彩葉が口を開く。

 

「なんだかんださ、月の人たちも優しいよね。連れ戻すにしても無理矢理じゃなかったし、結局かぐやが帰ってくるのを許可してくれたし」

 

「確かに、私のハッキングもバックドアも許されました。それを考えると、今でも見守ってくれているのかもしれませんね」

 

隣で気持ちよさそうに寝ているかぐやとヤチヨ。軽く頭を触ると気持ちよさそうな表情で寝返りを打つ。彩葉は月を見上げながら穏やかに言う。

 

「そう思ったら、辛さもしんどさも大丈夫になった」

 

「そしたら感謝に乾杯でもしますか?」

 

私のふざけた提案を聞き、口角を上げながら、彩葉はこちらに目線を合わせる。手に持ったグラスを持ち上げて。

 

「ずいぶんロマンチストになったじゃん。それじゃあ、月に乾杯」

 

「乾杯」

 

静かに私たちのグラスが音を鳴らし、感謝を奏でる。その時、月が優しく光った気がした。

 

 

 

 

 

頭の痛みを感じながら、身体を起こす。どうやら、床で寝てしまっていたらしい。あの後彩葉と話しながらそこそこ飲んでしまったしなぁ。そう思いつつ、ソファーへと視線を動かした。そこには芦花を膝枕して、グラス片手に花丸をつける彩葉の姿が……。

 

「こんの……女たらし!」

 

流石に酔ってそうだが彩葉が悪いだろこれは……やっぱり、こう言うイケメンムーヴ無意識に出来るのは遺伝なのだろうか。そう思いながら、二人を引き剥がしてから、彩葉に水を飲むよう促した。

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