一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】 作:カウン
お気に入りといいね、感想もありがとうございます!励みになります!
玄関の鏡の前で自分の服装を確認する。目立たないように、派手でなく、地味めな色を選定した。暗めのパーカーに三つ編みではなく髪を下ろす。今回はミッションを遂行しなくてはならない。そのためには、見つかるなんてもってのほか。改めて玄関を出る前に一人で意気込む。
「よしっ、これより推しの幸せ守護作戦を開始します!」
電車に乗り込み、今回の依頼を思い返す。昨日、ヤチヨとかぐやにデートをねだられた彩葉。だが次の日は祝日であり、人が大量に外出すると予測された。人口が多いとなると、アクシデントが起こってしまったら大変である。ましてや二人は有名人。
って事で所長からの依頼……と言うか私がねだったので二人のデートを陰ながら見守って、アクシデントが起こらないように立ち回ろうと言うことになったのだ!
……ま、可愛い推し二人が見たいってのと心配なのが主な目的だが。
そうこうしていたら、デートの予定場所である大型のショッピングモールに着いた。昔、芦花と真実に洋服を見繕って貰った場所だ。懐かしさを感じながら入り口で3人を待つ。すると、どう見てもオーラを隠せていない3人が現れた。
皆、眼鏡を掛けて、帽子を被っているがキュートが溢れ出ている。恐ろしく強い可愛さ。私じゃなきゃ見逃しちゃうね。なんて1人ふざけながら、後をつけようと、腰掛けていたベンチから立ち上がった。その時だった。
「ん?お〜蓮夏じゃん。奇遇〜」
「な……私の変装が、バレた……?」
声をかけられた方を見ると、見慣れた友人が楽しげにこちらを覗いていた。
「ふ〜ん、それで3人の後をつけてるのか。ストーカーはまずいぞ〜?」
「だから、彩葉には合意のもとですから、大丈夫なんですって」
3人の後を追いながら、真実に状況を説明していた。そう言えば真実は一緒に来ているが何かあるのだろうか。
「真実はこの後予定とか大丈夫なんですか?」
「実は今日旦那が休みでね〜、子供達見てるから、SNSの更新してくれば?って提案してくれてね」
だから面白そうだから付いてくよ〜、と笑いながら言う真実。どうやら同行者が増えたらしい。少し嬉しく思いながら3人を目で追う。
「ややっ、蓮夏。3人がカフェに入っていったよ」
「これは私達も行くしかないですね」
「よしっ、れっちご〜!」
「ご〜!」
作戦が段々と二の次になってきているのでは?そう思う心を隅に追いやり、私達は入店した。
3人が見える位置に席を取って様子を窺う。すると彩葉がこちらを見つけて軽く手を振ってくる。フゥン……眼鏡彩葉も可愛いじゃんか……そう思っていると、真実も着席した。驚く彩葉だったが、2人に声を掛けられてか、慌ててこちらから顔を背けていた。
「そう言えば、ここって昔来た所だよね〜。お店残ってたんだ」
店員さんが来たので注文を済ませて3人を眺めていたら、真実が懐かしい話を持ち出してきた。キョロキョロと辺りを見渡すと思い出してきた。確かに昔、真実と芦花に洋服を見繕って貰った時に来たカフェだった。10年間変わらないなんて、中々に好評なんだろうか。
「懐かしいですよね。あの節はどうも」
「いえいえ〜……って散々お礼は言ってたよね?」
「ふふっ、そうでしたね」
昔を振り返りながら、届いたパンケーキとカフェラテを楽しむ。勿論、しっかり3人の様子は見続けつつだが。あ、彩葉にあーんする権利を取り合ってる。彩葉も困ってるけど楽しそうだなぁ……他人への心配で出掛けるの遠慮してる節があったから、私の申し出で楽しめてるのならいいな。
「そうだ!蓮夏も一緒に写真とろ〜」
「良いですよ。あ、私自撮り下手なのでお願いします」
「おけ!任せたまえ〜」
写真も撮って、思い出と美味しさを貰えた私達。3人もしっかり楽しんだようで、ゆっくりしてからお店を出た。人混みに流されながら、遅めのペースで前に進んでいく。ふと、行き先が気になって、真実と話し合いを始める。
「次はどこに行くんですかねぇ」
「私の予想はアパレルかな〜。かぐや達、彩葉の服を話し合ってたのツクヨミで見かけたからね〜」
その真実の予想通り、3人は大きめのアパレルに入っていった。
「よしっ!そしたら彩葉に合う服を見つけたほうが勝ちで!」
「りょ!」
少し離れた私にも聞こえる声でかぐやが戦いを宣言していた。ちょっと周りの反応が心配になり見渡すが結構騒がしいので気にしていなかった。胸を撫で下ろしながら、こちらもお店に入る。
「でも、最近の蓮夏って結構お洒落だよね〜。芦花に教えてもらってんじゃないの〜?うりうり」
近頃は気にかけるようになった洋服を手に取り見ていると、真実から拳がぐりぐり押し当てられる。ふざけてだから全然痛くないので、笑いながら質問に答える。
「あぁ、芦花が教えてくれるのもそうなんですけど、実は試作品の衣類をそのまま私にくれるんですよね。どうやらサイズが合わないみたいで」
「アッ……芦花そこまでやってるんだ〜……」
それを聞いた真実は頬を引き攣らせながら、拳を引っ込めた。お、この服とか良いかも。肌寒い時に羽織れそうです。
「ね、蓮夏。彩葉コーディネートバトルが始まりそうだよ〜?」
私が衣類を吟味している間に、向こうも洋服選びが終わっていたらしい。素直に気になるので、声が聞こえる位置まで移動する。更衣室で着替えた彩葉がカーテンを開ける。
「じゃーん!やっぱ彩葉と言ったらカジュアル系っしょ!大きめのオーバーオールにTシャツ!あとアクセントにお洒落用のヘッドホン!どうよ!」
「着やすくて良いね。これなら普段使いできそう」
私と真実は感嘆の息を漏らす。やはりかぐやは彩葉の事をよく分かっているようだ。だが、ヤチヨは諦めていない。
「ぐっ……!流石はかぐやだね。でもヤッチョも負けないよ〜!彩葉っ!次はこれ着て!」
少し面倒くさそうな、それでも満更でもない表情で彩葉が更衣室に入っていく。数分たってから、戻ってきた表情は羞恥に塗れていた。
「ヤチヨ……本当に見せなきゃ駄目?」
「お願い、彩葉!」
「はぁ〜……やっぱずるいなぁ。でも、この年齢で着るもんじゃないと思うんだけど……」
と、恥じらいを出しながら、開かれたカーテンの中には白いブラウスと白黒チェックのフワッとしたスカート、それから眼鏡を掛けたままの彩葉の姿が。
「は!?ヤチヨ!!これはずるいって!!」
「 〜季節の彩葉 フレンチガーリー系〜 なんてね。需要と供給を考えれば、彩葉に着て欲しいのはこっちでしょ〜」
私達は無言で親指を立てた。満点だ、あの表情に加えて眼鏡を残したのは天才だろう。それに大人な彩葉に合うように、色を落ち着いたものにしたのもグッドだ。さすヤチ。真実と無言で頷き合っていると、彩葉と目が合ってしまった。すると、彩葉は途端に頬を紅く染めながら、更衣室のカーテンを閉める。そんな事をしている間に、ヤチヨとかぐやはこのバトルの核心に気づいていた。
「……でもこれ審査員彩葉だったら、彩葉恥ずかしがってたら駄目じゃね?」
「あっ……」
結局、勝敗は有耶無耶になり、彩葉は2人の選んでくれた服と言うことで、2コーデ分買っていた。それと、彩葉がすごい恨みの念をこちらに飛ばしてきたので後が怖い。まぁ可愛い彩葉を見れたし、良いとしよう。
その後は色々な場所を回り、次に訪れたのはゲームセンターだった。3人を付けながら、この場所が物珍しいので見入るように見ていると、真実が以外そうな顔で聞いてきた。
「ありゃ、まさか蓮夏ゲームセンターにも来たことなかった?」
「はい、初めてですね。高校生はバタバタと終わって、そのまま大学だったので来る機会がなかったですね」
へ〜、こう言う場所で遊ぶんですね最近の人は。なんて呟きながら、クレーンゲームを眺める。名前は聞いたことあったが、細かく見たことなかったなぁ、なんて考えていると、真実が私の手を取ってゲームセンターを縫うように進んでいく。
「だったらさ、プリクラ撮ろ〜!」
「プリ……ん?なんですかそれ」
されるがままでついていくと、筐体にくっついた個室のような所に入った。真実がお金を入れて、色々設定しながら、説明してくれる。
「これはね〜、写真を撮ってくれて、その場で加工して、シールにしてくれるの。高校生は定番だよぉ」
「高校生……私達もう10年も前なんですけど」
「細かいことは良いの〜!今からでも青春は遅くないからね」
設定が終わったのか、撮影のカウントが始まる。写真なんて撮られ慣れてないので慌てていると、真実が横からピースで良いよ、と促してくれて咄嗟にピースを出す。フラッシュが焚かれると、またカウントが始まる。次々に撮られるため、真実とくっついたり、ポーズを取ったりして、あっという間に終わってしまった。
「意外と楽しいですね」
「ふふん、そうでしょ〜。まぁ、ここからも楽しいんだけどね〜」
筐体の横に回ると、さっき撮った写真が写されており、そこにペンを使って色々と書き込めるみたいだ。
「取り敢えず、今日の日付と……蓮夏の名前書くから、真実のをお願い〜」
「わ、わかりました!」
そんなこんなで、文字や加工をして出来たものが出てきた。た、確かにこれは思い出にもなるし、手元にあると嬉しい。
「嬉しそうじゃん〜。そしたら今度は皆誘って行こ〜」
「良いですね、楽しそうです!」
真実の提案に賛成の意を示す。あれ……そう言えば何か忘れているような……。その時、私の前を早足で通り抜けていく人が話していた。
「あっちにご本人顔負けのダンスする人が居るんだって!!」
「3人の事忘れてました!」
「あっ……まぁ大丈夫じゃないかな〜?」
さっきの人についていくと、ダンスゲームの前で観客に囲まれて、自分らの持ち歌を堂々と踊るかぐやとヤチヨ、その後ろで頭を抱える彩葉の姿があった。
「大丈夫じゃなかったか〜……」
や……やってしまったぁぁ!!!目を離した隙に注目を集めるなんて流石私の推し!って感心してる場合じゃない!ちょうど終わったのか、2人とも額を擦りながら、振り向くと目を見開いていた。このままでは今日のミッションが失敗に……彩葉も悲しんでしまう……!どうしようと慌てていると、真実が手を打って何かを思いついたようだ。騒がしい周りに配慮して顔を近づけて教えてくれる。
「えっ!?で、出来ますけど、恥ずかしいんですが……」
「でもここでやれるのは蓮夏だけなんだよ〜……!」
が、それはかなり想定外なものだった。私としても避けれるなら避けたい……。だが、3人の推しのためだ。腹を括るか……!
「や、やります!どうすればできるんですか?」
「わかった!任せて〜!」
筐体にお金を入れて、真実が設定をしてくれる。すぐに慣れ親しんだイントロが流れる。音に合わせて、リズムを取る。
「朝起きて今日は何しよう」
歌詞を口ずさみながら、身体を動かす。真実の作戦、それは隣の筐体で更に目を引く踊りをすれば良いと言うものだった。単純だが、成功すれば、3人が立ち去る時間稼ぎ位はできるはずだ。後は私が踊れるか、だが……。
何度も何度も見た動きだ。好きすぎて部屋で踊ることも何度もあった。だからやれる、私にもできる!すると、段々と私の周りに人混みが移ってくる。
「……!かぐや、ヤチヨ、今のうちに逃げるよ!」
「私の曲じゃん!誰が踊ってるのか気になる〜!」
「かぐや!バレたら不味いからこっち!」
私の意図を汲んで彩葉が二人を連れて立ち去る。よし、何とかなったみたいだ。一瞬ヤチヨと目が合った気がするが、変装しているしバレないはず。そしたらこのまま、踊り続けて3人を追わせないように……!
曲がサビに入る。ステップを踏み、両手を上げて、かぐやを表現する。かぐやを宿せば何とでもなるはずだ!持ってくれ私の身体!うぉぉ!!
「この人もすごーい!」
「本物みたいでした!」
終了した瞬間、私は地面に突っ伏した。それはもう凄まじい勢いで。肩で呼吸しながら。それでも観客が囃し立てるので、どうにかお礼を言おうと口を開く。
「ゲホッ……ヒュー……アリガ……ゴザマ……」
ぷるぷるしながら立とうとすると、真実が素早く、手を抱えて、人の間を抜けて、人混みから脱出する。グェ……呼吸できないぃ……。
「蓮夏!かっこよかったよ〜!推しのために我が身を張るなんて!」
真実に励まされながら、その場を立ち去った。そんな騒ぎもあった為、彩葉も家に帰ったらしく、私達も解散となった。任務、完了……ガクッ。
後日、ヤチヨと合った時の話だ。
「蓮夏〜あのときはありがとうね〜!ヤッチョ、かぐやに負けられないと思ったら、周り見えなくなっちゃったんだぁ……ごみん……」
何故かバレていた。それはもうはっきりと踊っていた所も見られていた。
「な、なんで……変装は完璧無はずじゃ……!」
私の驚く顔を他所に、ヤチヨはくすくすと笑いながら私の髪の毛を指差す。
「いくらお気に入りでも、変装のときは髪留め、外さないとねぇ」
自分が間抜けすぎて開いた口が塞がらなかった。そりゃ真実にも、ヤチヨにもバレるに決まっていた。
「蓮夏、ダンス可愛かったよ」
こうして、3人の平穏が守られたものの、代償として私の弄られるエピソードが一つ増え、無事お出かけは終わった。