一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】   作:カウン

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8000年頑張ったんだ。きっと届いているはず。


お礼はしっかり伝えてこそ

3人の尾行(合法)をしてから数日たったある日の事。私はかぐやにツクヨミで会いたいと言われたため、その場に向かっていた。電話とかSNSでも良いのでは?とも一瞬考えたが、かぐやに会えるんだから理由なんて別に良いか、と思考を放棄した。

ただ、今回呼ばれたのは私だけではなくもう1名居る。

 

「お、ようやく来たな。レンゲ」

 

「直接会うのは久しぶりですね。FUSHI」

 

橋の手すりでこちらを見上げながら待っていたのは、FUSHIだった。そう今回、かぐやに呼ばれたのは私とFUSHIの2名だった。

 

「肩に乗せてもらうぞ」

 

どうぞ、と少ししゃがむと、FUSHIは跳ねて私の肩に飛び乗って一息付いていた。そんな彼を乗せたまま、かぐやの元へと向かう。

 

「にしても、ボク達を呼ぶなんてどう言う目的だろうな」

 

「うーん、プログラムに関することでしょうか」

 

行き交う人に流されながら、この2名である理由を考えていた。私単体ならコラボ等の予想は出来るが、肩の同行者の説明がつかない。首をひねっていると、FUSHIが思いついたのか口を開く。

 

「ツクヨミに何か実装してみたい、イベントをやりたい、とかあり得るか?」

 

「だったら、私達の説明がつきますね」

 

何故ツクヨミでの事に繋がるのかだが、一応このツクヨミの副管理人をFUSHIと2名でこなしている。力不足としか思えないが、過去にサーバーにアクセスする、負荷をかける等、色々と迷惑をかけている手前、頼まれた時に了承させてもらった。とは言っても、ヤチヨがサーバーの管理を行えない時や、ファイアウォールなどのウィルス対策、そんな感じのバックアップとして動いているので、そこまで表立っては動いて居ない。ちなみにFUSHIとはその仕事をやる中でそこそこ仲良くなれた。

とまぁ、FUSHIの予想も全然あり得る範疇だ。

 

「ま、直接聞いてみるのが早いですね」

 

「だな」

 

そう言いながら、私達は広場からかぐやのプライベートルームに飛んだ。

 

 

 

 

 

「2人とも、今日はわざわざありがとうね!」

 

私が腰掛けると、かぐやが楽しげにお菓子を並べていく。その中のお菓子にピクリと反応するFUSHI。好きなものがあったのだろうか。だが、すぐさま本題に話を進めた。

 

「で、かぐや。今日は何でボク達を呼んだんだ?」

 

「お、もう聞いちゃう〜?それはねぇ……これ!」

 

気にしていたのが嬉しかったのか、口角を上げながら、机に何かを置く。かぐやが手を引くと、そこには2枚のライブのチケットが置かれていた。

 

「え!?嘘、ライブやるんですか!?」

 

「声がでかい!ボクが肩に乗ってるの忘れるな!」

 

「あっ、すみません」

 

FUSHIに怒られたが、かぐやのライブがまた見れるのか……!しかもよく見ると、ヤチヨが定期的にライブしている鳥居を借りてやるらしい。そこでやるのは初めてだ。だからこそレア!だが、FUSHIと私が一緒に渡されているのは何故だろうか。そう思っていたら、かぐやが答えを言っていた。

 

「今回、2人を一緒に呼んだのは、いつもチケットを渡してもFUSHIが来てくれないからです!」

 

「え?何で行かないんですか?」

 

信じられないと思って、首を回して肩の彼を見る。すると、気まずそうに顔を反らしてボソボソとぼやいていた。

 

「ヤチヨも出るならともかく……かぐや1人となると、思い出して泣きそうになるから……」

 

その理由だったらFUSHIの気持ちも汲んであげたい部分もある。なにせ、待ち焦がれていた姿でまたライブをやってくれているんだ。だが、私からすれば泣く、という問題だけでは些細な問題だ。なぜなら……。

 

「大丈夫だよ!レンゲいつもライブの時ボロ泣きしてるし!」

 

お前マジか、と言いたげな表情でこちらを見つめるFUSHI。普通に泣いていたとしても、私が隣でボロ泣きしていれば、恥もゼロのはずだ。

 

「それにずっと見に来てほしいって思ってたんだ……お願い」

 

うぐっと、苦渋の唸り声を上げる。かぐやのお願いは効くだろう。私も何度も敗北してきたんだ。と、私の予想通り、溜め息とともに折れた。

 

「わかった……その代わり、あんまりこっち見るなよ!」

 

頬を赤らめながら、可愛い事を言うFUSHI。これがツンデレ……?なんてふざけた事を考えていると、かぐやが手を合わせたまま、こちらに向き直る……もしかして、流れ変わった?

 

「後、レンゲにもお願いがあるんだ〜この前ショッピングモールでかぐやの曲、踊ってたのレンゲなんでしょ!?一緒にライブで踊ろうよ〜!」

 

「な、なんでそれを?!」

 

まさかバレていたとは思わず、驚いてしまう。だが、ヤチヨと彩葉しか気づいていなかったと聞いたがまさか……。

 

「実は、ヤチヨが教えてくれたんだ!今度ヤチヨともコラボライブしようって言ってたよ!」

 

私は頭を抑えた。確かに秘密にするように、と釘は刺してないが伝えるのが早すぎる。それより、この流れは不味いのではないか?

 

「ね、レンゲ。一緒に踊ろ?」

 

手を合わせて、目を煌めかせて、期待を込めた眼差しでこちらを見つめる。何度も彩葉や私をへし折ってきた'お願い'だ。断ろうと口を動かそうとするが口が開かない。やがて私は唸るように声を出しながら目を合わせた。

 

「……わかりました、一曲なら」

 

やったー!と喜びながら両手を挙げる推し。まぁ、それが見れただけでも、お釣りが来るか。そんな事を思いつつ、微笑んで息を吐いた。すると、肩に乗ったFUSHIが小さく笑いながら、こちらに言葉をかける。

 

「かぐやに弱いな、お互い」

 

「ですね」

 

お願いされるのも悪くない。なんてお互いに感じながら、2人で笑った。

 

 

 

 

 

 

そしてあっという間に当日になった。練習はかぐやと何度もしたが舞台の上で踊るのはちょっと久しぶりだ。そんな緊張を感じながら、ライブ会場である、鳥居にてFUSHIを待っていた。

 

「わ、悪い遅れた!」

 

ペンライトの調子を確認したり、揺れる尻尾を気にしていたら、足元から声がかかる。見ると、そわそわしながら焦っているFUSHIの姿がそこにはあった。私はしゃがんでから手を差し出して、乗ってもらった。

 

「まだライブの5分前だから大丈夫ですよ」

 

落ち着けさせながら、私の肩に移ってもらう。見てるとなんか懐かしい気持ちになってきた。私が初めて見に行ったかぐやのライブの時もこんな感じだったっけ。思い返しながら、FUSHIを宥めるために頭を撫でる。

 

「ちょ、撫でるな!」

 

「なんか昔の自分みたいな緊張の仕方で懐かしくてですね」

 

「勝手に重ねるな!」

 

そんな風にガヤガヤ騒いでいると空が暗くなる。どうやらライブが始まるらしい。期待を胸に鳥居の上を見る。そこには立ち上がってにこやかに笑う推しの姿が。

 

「かぐやっほー!!かぐやだよ!今回はヤチヨからこの場を借りてライブさせてもらいます!」

 

かぐやの登場に周りがざわめき、悲鳴のような歓声が上がる。ちなみに私も上げている1人だ。肩の同行者が迷惑そうな表情でこちらを見るが、関係ない。

 

「今回、この場所でライブするにあたって、ヤチヨからどーしても借りたい曲があったからさー、どうにか話をつけて借りてきた!だから歌わせてもらうね」

 

この場所、ヤチヨと言う単語だけでなんとなく曲が分かってしまった。周りのファンも同じ様にどよめく。

 

「それにお礼を伝えるならこの曲が良いなって、思えたから」

 

かぐやが優しい目でこちらを見つめた気がした。それはいつかのヤチヨを思い出させるようだった。そうして、かぐやは番傘をインベントリから取り出し、開く。静かに息を吸うと、絞るように声を出した。

 

「幾千の時を巡って今 僕ら出会えたの

 ほら見失わないように 手を離さないで」

 

予想通り、星降る海だった。いつものかぐやとは打って変わった様な大人しい歌い出しに周りが驚くが、かぐやらしさがしっかりと残っている。ヤチヨのライブ同様、手を振り上げると、水面が足元から上がり私たちを包む。

かぐやが指を振るうと星の道が現れ、それをゆっくりとくだりながら歌を紡ぐ。

 

「ねぇ耳を澄ませて星の降る音が聞こえたでしょう?

 もっと近くに来て、誰も知らない世界が待ってるの」

 

そして、小さなステージに着くと、舞うように踊る。傘を振るい、しゃがんで跳ねて、そうしながら楽しそうに歌い続ける。そんなステージを彩る様にファンのペンライトは一層輝きを強める。そうしていると、かぐやの下に小舟が着く。小舟は海月が漕いでいるようだ。そんな小舟にかぐやが乗り込み、宙へと漕ぎ出す。

 

「宙、海の向こう 君の元まで

 響くように歌えるかな」

 

ヤチヨと違い、この歌を歌いながら揺蕩う様に踊るかぐや。ペンライトが波を描き、宙を舞う魚たちがまるで会場が海であるように、錯覚させた。

 

「ほら、くしゃくしゃになって笑う日を

 集めて紡いで 未来へ踏み出す先も

  きみと心震わせて 叶うさ今

   物語を巡ろう」

 

ふと、初めて来た時のライブを思い出していた。あのライブには心は奪われなかったが、心地よさは感じていた。それは、ヤチヨがあの時から、私のことを想ってくれていたから、なのかもしれない。そして、今回のかぐやの歌は肩で泣いているFUSHIに向けたものだと、想像がついた。誰かを想った歌が優しく、温かいのを私は知っていたから。だから、8000年分の労いは今の歌で十分だろう。私は涙を流しながら、優しく肩の上のファンに声をかける。

 

「よかったですね、FUSHI」

 

「……うん。今、かぐやが元気に踊って歌って、ボクの努力もちゃんと形になったんだなって」

 

「貴方のお陰で、私はまた推しを推し続けられています。だから、1ファンとしてお礼を言わせてください。ありがとう」

 

私のお礼を聞き、FUSHIは鼻をすすりながら、軽く笑うとかぐやを見上げながら、眩しそうに目を細めて言う。

 

「ま、かぐやのついでだからな」

 

 

 

 

 

「それじゃあ、次の曲なんだけど、ゲストを呼んだんだ!ヒントはかぐやの友達兼ファン2号!」

 

あ、しまった。ライブに感動してて、完全にこの後私が踊ることを忘れていた!と言うか、ヒントになってないだろう!慌ててファンの人達を掻き分けて、鳥居の下にある海に飛び込む。すると、海面が私を押し上げ、鳥居の上に着地できた。

 

「レンゲ〜!タイミングばっちしだね!」

 

かぐやが嬉しそうに傘をしまいながら、こちらに駆け寄ってくる。さっきまで泣かされていた張本人の下に来るのが恥ずかしくて顔に熱が溜まるのを感じる。

 

「おい!なんでボクもステージに来てるんだ!!」

 

「あれ?FUSHIも連れてきたの?」

 

「あ……忘れてました」

 

焦っていたのと、恥ずかしさで完全に頭から抜けていた。すると、かぐやは自分の肩を指差しながら悪戯に笑う。

 

「感想は後で聞くけど〜、取り敢えずは最高の特等席でライブを見てけば?」

 

その提案をFUSHIは諦めた様に受け入れた。かぐやの肩に飛び移って小さくぼやく。

 

「……まぁ、どのみちボクだけじゃ降りれないからな」

 

「って事で、ゲストのレンゲと〜!FUSHIでーす!」

 

「だからって紹介するな!」

 

怒鳴っていたが、いつもより数倍楽しそうなかぐやを見て、彼は呆れたように笑った。そんな姿が何故か嬉しくて、私まで楽しくなってくる。

 

「って事で!かぐやちゃんのソロ曲行っちゃうよ〜!レンゲ、準備はいい?!」

 

「勿論です!」

 

サイリウムの海が曲に合わせて激しく波立つ。貴方が繋いでくれた景色はこんなにも綺麗で、尊いものだってことが伝わればいいな。なんて思いながら、私は踊った。




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