一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】 作:カウン
でもこの回帝出てません!(再び投げられる石)
それと評価といいね、お気に入り感謝です!
ミスって一瞬投稿しちゃったの……バレてないですよね?
「チケットを貰った……ですか?」
「そうなんだよねー。テレリリが遊園地とコラボしたときに貰ったものが余ってたらしくて、それで良ければ皆でどうぞって譲ってくれた!」
研究所でシステムの改善案を組み込んで動作確認を済まして、これから帰宅しようとした時、かぐやが声を掛けてきた。どうやら聞いてみると、この前コラボした時テレリリさんから遊園地のチケットを譲ってもらったらしい。自分でも行ったが、かなりの量をもらって困っていたとのこと。それが丁度6枚。なので私にも声が掛かったようだ。
「遊園地、ですか。私は行ったことないですね」
「かぐやも!だから行こ!」
満面の笑みで手を差し出してくる推し。やっぱりこの元気で破天荒な感じが好きなんだなぁとしみじみ思いつつ、私は手を取って笑った。
「喜んで。芦花と真実にも声を掛けても?」
「勿論!みんなで行こう!」
そうして当日になった。エントランスをくぐった私は先を見上げて息を呑んでいた。まるで仮想世界にある様な大きさの建物達が奥に連なっている。そんな光景に圧倒されていると、後から来た彩葉が地図を見ながら楽しげに話しかけてきた。
「ねぇ、蓮夏。ヤチヨとかぐやがここ行きたいって言ってたんだけど、最初はここでいい?」
本人らよりも気合が入って居るように見えて、微笑ましく思いつつ返事を返す。
「はい、問題ないですよ。私は遊園地にはさっぱりなので、みんなが行く所で楽しみますから」
そんな私を見て、彩葉は小さく息を吐くと私に地図を押し付けながら言う。
「いい蓮夏、マジのエリートは遊びも疎かにしないんだから。行きたいところあったら言ってね」
かつて言ってた言葉が私に投げかけられると思ってなくて、驚いてしまった。まさか過去にライバル視していた人からエリートだなんて……軽く嬉しくなってきたな。
「わかりました。ですがまずは、推しが行きたい所へ行きましょう……!」
さっきよりも笑みを浮かべながら、後ろを振り向く。そこにはエントランスをくぐって歓声を上げるヤチヨとかぐやの姿があった。変装でキャップを被って伊達眼鏡してても可愛いな。そんな私を見て、呆れたように笑いつつ彩葉は帽子を被り直した。
「相変わらずだね、でも同感!」
私達は2人の元に、足早に向かった。そして真実と芦花も合流して、アトラクションを回っていった。最初は刺激の低めの物から回りつつ、何個かアトラクションを乗った後、私達はヤチヨが行きたがっていたアトラクションに並んだ。
「ここに来たかったんだよね〜」
楽しみなのが抑えきれてないからか、身振りが多くなるヤチヨ。このアトラクションはゴンドラに乗りながら手元の電子銃で的を撃つシューティングとなっている。ヤチヨは行く前にこれを見つけて、現実の射的をもう一度やりたい!となったらしくここを希望していた。
「どうやら2人乗りみたいですね」
ヤチヨは彩葉と乗りたいだろうが、残念なことにさっきヤチヨがメリーゴーランドで彩葉と2人乗りしていたため、今回はかぐやが横に乗るようだ。ちなみに彩葉とヤチヨの2ショットはしっかり写真に収めてある。すると、ヤチヨは真っすぐ私のところに来て、挑発的な表情で私の事を煽った。
「だったらヤッチョが蓮夏をボコボコにしちゃおうかな〜!」
そのヤチヨの発言にムッを来た。私だって反射神経にはちょっと自信があるし、ここ十年でエイム技術は相当高くなっていると思う。しかもここは現実、ヤチヨの庭ではないのだ。私は腰に手を当て、不敵に口角を上げて煽り返した。
「大口を叩いたことを後悔させてあげます……!」
まぁ、そんな風に啖呵は切ったものの、対戦するためには乗らないといけないので、2人でゴンドラにいそいそと乗車した。そして、動き出したゴンドラが、ゆっくりとレールの上を進んでいく。
私もヤチヨも、全神経を集中しているため、空気が張り詰めている。ゴンドラが広い空間に出て、周囲を見回すように回る。
「そろそろかな〜……!」
ヤチヨの予想通り、周囲に光点が一斉に煌めいた。これを手に持っている電子銃で撃ち抜けば得点だ。私は片目を瞑り、ひたすらにトリガーを引いた。一つ二つ、と心の中でカウントしながら、撃ち抜いていく。大方落とし終わった所でゴンドラが先へと進む。小休憩なのか、的が出なくなったため、ヤチヨがこちらの点数を覗き込んでくる。
「へぇ〜、蓮夏は私と10点差かぁ。やっぱり気が抜けない相手だねぇ」
意気込んで髪を揺らしながら、銃を構え直すヤチヨ。様になるなぁなんて思いながらも、負ける気は全くない。銃を握り直して、軽口を叩く。
「すぐに追い抜きますから覚悟してくださいね?」
「お、言うようになったねぇ。でもヤッチョは負けないよ〜!」
そのままゴンドラは加速して、トンネルの中を駆け抜ける。その間にも多くの的が通り過ぎようと後方に流れていく。
「そこっ!」
「あ、蓮夏の撃ち忘れもらい〜」
目まぐるしく流れる景色の中からどうにか的を見つけ、トリガーを絞っていく。上下左右、見逃しそうな場所にも配置されているため、何度かヤチヨに点を取られている。だが……!
「ヤチヨも忘れ物ですよっ!」
「っ、撃つ前に取ったな〜!」
素早く反応して私もヤチヨ側の光点を盗むように撃っていく。そのまま激しい点の奪い合いとなり、トンネルを抜けるまでに多くのポイントを取り合った。
そして、ゴンドラが最後の地点に辿り着く。そこには誰がどう見てもどう見ても【ボス】と分かる機械人形があった。点差はほぼ互角。これを倒せたほうが勝者になれるのは明確だった。直ぐ様、私とヤチヨの攻撃が集中する。ボスがありえないうめき声を上げながら、ダメージを受ける。お互いが容赦なく弱点を撃ち抜き、一瞬でボスが倒されてしまった。ゴンドラが流れて結果発表がされた。そこには5点差でヤチヨの名前が上に表示されていた。
「ふふん、ヤッチョに勝つなんて8000年早いのです!」
「くっ……あと少しでした!」
悔しさを感じていると、本日の最高スコアも表示されていた。ありえない高得点で私もヤチヨも唖然としていたら、前方で彩葉が最高スコアの景品を貰っているのが目に入った。すごく申し訳なさそうにしているため、恐らくかぐやがいるから張り切った結果だろう。それを見て、私とヤチヨは噴き出して笑った。やっぱり彩葉には敵わないらしい。
ちなみにこのあと、負けた罰ゲームと称して皆でジェットコースターに行くことになった。たかが位置エネルギーを利用した機械と高を括っていたのだが、終了後、とてつもなく震えていたことをここに記しておく。泣いてなんかないし……!
その後も、ゴーカートやバイキングなどで楽しく遊んでいたのだが、私の推しが何やら不穏なことを言い始めた。
「そういえばさー、ここのお化け屋敷めっちゃ怖いんだって!彩葉〜行こ!」
「まぁいいけど、みんなは?」
私は大丈夫、楽しみ〜と言った声が上がる中、私の額に冷や汗が流れた。お化けなんて科学的に存在しないんですかから……大丈夫。そう考えると、いつの間にか、目の前に来ていたかぐやがこちらを見ていた。
「蓮夏?」
「ピャイ!?しょ、所詮作り物ですから!!大丈夫ですよ!」
かぐやが楽しそうにしていたのと、見栄を張ってしまったので後に引けなくなってしまった。流されるままに待機列に並び、あれよあれよと入場前まで来てしまった。ちなみに彩葉とかぐや、ヤチヨは先発でもうお化け屋敷の中だ。
「蓮夏、大丈夫?明らか無理してるけど」
芦花が労ってくれるが、もう退路はない。ここで自分だけ入らなかったらかぐやが申し訳なさそうにするに決まっている!
「だだだ、大丈夫!楽しんでいこう!」
「明らか動揺してるね〜」
2人の心配を無視して、私が先頭となってお化け屋敷に入っていった。扉をくぐると、視界が一気に切り替わり、病院の中へと移っていた。やけにリアルに消毒液の匂いまでする。清潔感があるべき場所が汚れて荒れているこの違和感が更に私の恐怖心を煽る。
「幽霊なんて……居ないんですから」
さっさと脱出して、かぐやを拝むんだ。そうと決まれば、歩幅を広げて、速く歩こうとする。しかし、目の前のロッカーから激しい物音が、
「ヘェア!?」
途端に足が竦んで動かない。すると、そのロッカーから掠れた小さな声が辺りに響く。
「タスケ……イタイ」
「うわぁぁん!!」
私は飛び引くように、来た道を引き返し、芦花に飛び付いた。無理無理無理!怖い私が助けて!!
「ちょ、蓮夏!?」
「おぉ、引っ付き虫〜」
私は芦花の背中に顔を埋めていた。芦花の匂いだ……落ち着く……。
「真実、蓮夏の、む……胸が」
「芦花、今は我慢。頑張れ〜」
芦花も苦しそうな反応をしているが怖いのだろうか。なら私も怖いから恥ずかしくはないはず。そう安心していると、入り口側からストレッチャーが動く音が聞こえてしまった。
「ヒッ芦花!逃げて!超逃げて!!」
「蓮夏って、苦手な事は本当にからっきしなのがよくわかったよ」
芦花は苦笑しながら、私を庇うように腕を回して守ってくれた。その温もりが私を少しだけ落ち着けさせてくれる。
「安心して、私と真実がついてるから」
「そ〜そ〜。私らで幽霊追い払お〜」
「2人とも……!」
これなら攻略できるかもしれない。そう安堵を抱きながら、私達は歩を進めた。がその後、お化け屋敷の演出にいちいちビビり散らかして悲鳴を上げ、外に出る頃には足元が産まれたての子鹿の様に覚束なくなっていた。先に外で待っていたかぐやが震える私に駆け寄って、支えてくれる。
「ちょ、蓮夏なんで無理したの!かぐやに遠慮しないでよかったのに!」
女神や……あ、推しか。そんな安心感と共に、私はお化け屋敷がとても恐ろしい所だと認識できた。もう行きたくない……。
そんな遊園地での楽しい時間はあっという間で、気がつくと日が沈みかけていた。ふと、夕日を見ていると、遊園地で一際大きなアトラクションが目に入った。不思議と乗ってみたいと感じ、皆に向かって口を開く。
「あの……観覧車に乗ってみませんか?」
私の提案を皆は笑顔で受け入れてくれた。なんなら待っててくれたようで、少し申し訳なく感じた。
「い、意外と高いですね」
「でも、観覧車は景色を楽しむものだからね、怖くないよ〜」
現在、さっきのお化け屋敷と同じ組み合わせで観覧車に乗っていた。ジェットコースターを思い出して、身震いする私を真実が宥めてくれる。そうしていると、黄昏れている芦花が感慨深そうに呟いた。
「にしても、不思議な感じだよね。今はこんなに仲いいのに、最初は蓮夏の事嫌って思ってたなんて」
そんな芦花の言葉を、私は遠くを眺めながら、受け止める。確かに、最初の頃にはこんな状況想像できないだろう。私は思い出のいっぱい詰まった髪留めに触れて、微笑んだ。何度も伝えた言葉だがそれでも足りない、なんて感じてしまう。
「だからこそ、二人には感謝しかないんです。なんどでも言わせてください。ありがとう、友達でいてくれて」
私の言葉を聞いて、二人は息ぴったりに笑うと、同じ様に告げた。
「「こちらこそ、ありがとうね」〜」
少ししてから、観覧車の天辺で真実が芦花をつつきながら、改めて言った。
「……景色いい所だと感傷的になっちゃうよね〜芦花にも可愛いところあるじゃん」
「べ、別にいいじゃん……」
さっきのしっとりとした空気感はどこへやら、いつもの感じが戻ってくる。確かにいい雰囲気に流される芦花は可愛いなぁ。そんなことを感じつつ芦花に同意する。
「まぁこれだけいい景色だと、そう言う風に考えちゃいますよね」
私の同意を聞いて、真実は顔を上げて前のゴンドラへと顔を向けた。
「って事は、今頃彩葉達はキスを……!」
対する私と芦花はドライにそれを流した。
「まぁしてるだろうなぁ、ヤチヨやってみたかっただろうし」
「かぐやならやりますよ」
「なんで冷静なの!?」
私たちの予想通り、待っていた彩葉の肌には無数の虫刺されがあって、私達は顔を合わせて笑った。