一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】 作:カウン
夏の終わりが迫るある日の事。私達はツクヨミでいつも通り、集まって雑談をしていた。そんな中、かぐやが立ち上がって何やらチラシを見せてくる。
「あ、そういえばさー……これ見てよ!」
覗き込むと、そこには昔、彩葉とかぐやが行った夏祭りの告知が書かれていた。それを見て、行かせた側の真実は思い出してか指をさして声を上げている。
「あっ、懐かしい〜!私達が彩葉に勧めたやつ!」
「あ〜、あったね。確かに懐かしいなぁ」
皆が思い出に浸る中、かぐやは楽しげに皆の目を見た。
「今年もやるみたいだし、皆で行こ!夏の思い出作りに!!」
「こ、これでいいんですかね?」
せっかくお祭りに行くなら、しっかりした格好で行きたいな〜。そんなヤチヨの提案から皆で浴衣を着ることになった。そして私は、不安になりながら鏡の前で自分の浴衣姿を確認していた。
薄い青緑の生地に紫のアサガオがあしらわれた、私には勿体ない位綺麗な浴衣だった。なんて事を考えていると、背後から手が伸びてくる。
「蓮夏、大丈夫。よく似合ってるよ〜」
私の肩に手を回しながら、ヤチヨが笑顔で肯定してくれた。ヤチヨの浴衣は紺に梅の花が描かれた美しいものだ。髪の毛も三つ編みで纏めており、お祭りを楽しみたいのがこっちにも伝わってくる。ヤチヨらしい浴衣だったので私は素直に思った事を口にした。
「ヤチヨも似合ってますよ」
「蓮夏も言うようになったねぇ。誰のお陰かな〜うりうり」
私の言葉に対してヤチヨは、イジるように肩を指で押してきた。べ、別に誰の影響とかないんですけどね。似合ってると条件反射で褒めちゃうんですよね!
心の中であたふたしていると、着付けが終わったのか、お店からもう一人出てくる。そこには、着慣れた様子で少し暗めのピンクの浴衣を纏った芦花が居た。私と目が合うと、開口一番こう言った。
「お、蓮夏も似合ってる。可愛いね」
私の不安は簡単に吹っ飛んでしまった。顔に熱が溜まるのを感じつつ、お礼を返す。
「ぅ……うん。ありがとう、です」
まだ慣れないやり取りに恥ずかしさを感じつつ、私は髪留めの位置を直した。と言うかヤチヨ!口元押さえながら嬉しそうに笑わないでください!
「かぐやちゃん登場っ!どうどう?似合ってる?」
なんてふざけ合っていたら全員の着付けが終わっていたようだ。かぐやに続く形で彩葉と真実もお店から出てきた。だが、一番の問題は先頭のかぐやの浴衣が似合いすぎていることだった。
「えっ女神?」
「流石かぐやだね。いい浴衣選んでるじゃん」
横にいた芦花からも称賛の声が上がった。しかし、かぐやは首を振りながら横の彩葉を指さした。
「違うよ芦花!これ選んだの彩葉なんだよ!」
「ちょ、恥ずかしいから言わないでって言ったのに」
聞いてみると、過去の花火大会に来たときに選びあった浴衣と同じ生地のものが偶然あったようで、今回もそれにしたらしい。
「ロマンチックなことしてますね。流石はいろP」
私がおだてると、彩葉は更に頬を赤くしながら顔を背けていた。やはり昔の事が絡んでるから恥ずかしいのだろう。
「あーもう……ほら、全員着替え終わったんだし早く行こう!」
「彩葉ちょっと待ってよ〜」
そう言って薄黄色の浴衣を着た真実が彩葉を追いかけて行った。少し弄りすぎてしまっただろうか。そんな心配をしていると、ヤチヨが私の笑い掛けながら口を開く。
「ま、彩葉も口元緩んでたし満更でもないのかもね〜。さ、ヤッチョ達も行こ!」
差し伸べられたヤチヨの手を握り返して、私達は夏祭りへと向かった。
電車で揺られること数十分。会場の最寄り駅に降りると、人々の喧騒が私の耳に入ってくる。改札を抜けると、そこには車が通れないほどの人が道を埋めていた。
「やっぱり混んでるなぁ……まぁこの方がかぐや達がバレにくいしいっか」
顔を顰めながら、彩葉が混んでいる事を前向きに捉えていた。でも私からしたらこの程度の人混みか……と思えてしまう。ヤチヨの方を向くと、同じ事を思っていたのか視線が交わり笑い合う。
「同人即売会に比べたら、どうってことないですよね」
「だよね〜」
私達は別の方向にポジティブに捉えながら、人混みに流される様に夏祭りの会場へと歩を進める。
そうして、川辺付近に辿り着くと、屋台が見え始める。
すると、かぐやとヤチヨの目がキラキラと輝き出す。そうですよね、二人とも8000年ぶりだ。駆け寄った二人は彩葉の手を握る。
「「ねぇ、彩葉っ!」」
握ってからお互いの存在に気がついたのか驚いた素振りを見せると、納得したように互いに彩葉との距離を詰める。
「わかったから。かぐや、ヤチヨ、屋台周るよ!って事で、3人とも後で合流で!」
そう意気込んで、彩葉が挟まれるように手を繋いで三人で前に進む。その場に残された私達は優しく彩葉達を見送ってから、こっちもこっちで屋台を見始めた。
「かき氷も焼きそばも美味しい〜!夏祭り最高っ!」
数分後、真実がすごくはしゃいでた。片手に焼きそば、反対にかき氷の二刀流スタイルで幸せそうに食べ物を頬張っていた。そんな様子を片目に、私と芦花はかき氷を食べていた。氷を削っただけだと言うのに何でこんなに美味しいのだろうか。
そんなことを思っていると、芦花がかき氷をスプーンで持ち上げながら私に問いかけてきた。
「蓮夏知ってる?かき氷ってシロップの味は全部同じで違うのは色だけなんだってさ」
「ふふん、舐めてもらっちゃ困りますよ。流石の私でもそれは知ってます」
初めて食べる物だが、知識はあった。私はどや顔で答えながら自身のかき氷を口に含む。すると、芦花がそのスプーンに乗ったかき氷をこちらに差し出しながら悪戯に微笑む。
「そしたらさ、試してみよっか」
私の心臓が跳ねる。た、確かに間接キスの上は体感したが、それはそれこれはこれだ。緊張しない訳がない。葛藤する私は、芦花の善意を無駄にしない為にも、溶けかけたかき氷を芦花のスプーンから口に入れる。冷たいかき氷は私の熱の溜まった顔を冷やすように、口の中で溶ける。そうして飲み込んでから、私は肝心な事を思い出し、照れながら笑った。
「緊張し過ぎて、味がわからないや」
「それもそっか」
芦花も楽しそうに笑うと、私の目を見つめながら、私のかき氷を指した。
「なら次は蓮夏の番ね」
……えっ!?私のも!?ま、まぁ!その流れになるのも仕方がないか!開き直った私は自分のかき氷を掬って、芦花に差し出す。芦花はそれを髪の毛が付かないように耳に掛けながら口に含んだ。芦花は少し咀嚼すると、飲み込んでから首を傾げた。
「……確かに、味分からないね〜」
が、困ったように目を細めている彼女の耳が紅くなっているのを私は見逃さなかった。芦花も照れていた事が分かって少し嬉しくなっていると、テーブルの下からぬっと真実が生えてきた。そしてジト目で私たちを見ながらぼやいた。
「二人とも〜、公共の場でイチャイチャしすぎじゃない?」
「……まさか見てたの?」
静かに真実は頭を上下に振る。すると、芦花はさっきよりも顔を赤くしながら真実を追いかけ始めた。慌てて真実も芦花から逃げる。両手に綿あめと焼きもろこしを持ちながら……と言うか、また買ってきたのか。
「何で黙ってたの!」
「だっていい雰囲気だったしさ〜?」
「真〜実〜!」
バタバタと追いかけっこをする2人を見ながら、私はかき氷を食べた。恥ずかしさを冷ますのにちょうどいい、やっぱり美味しいなぁ。こういう時こそ現実逃避、この手に限る。
そんな戯れもあったが、気がつくと花火の時間が迫っていた。私達は着崩れした浴衣を直してから、花火が良く見えそうな土手にレジャーシートを敷いて場所を取った。そうして真実が買ってくれていた食べ物を皆でつまんでいると、三人がやって来た。皆、手には色々な物を持っており、思い思いにお祭りを楽しんできたのが分かる。
「お待たせ〜!」
かぐやが満面の笑みでこちらにやって来る。手元の袋にはカニが3匹。金魚じゃないのか……?と疑問に思ったが、可愛いから良しと脳内で解決する。
「待ってませんよ、かぐや。屋台はどうでした?」
「ヨーヨー釣りも射的も、食べ物もさいっこう!!めっちゃ楽しかった!」
「ヤッチョも楽しかったよ!」
推しの可愛さを再認識していると、ヤチヨも話に混じってくる。お面を頭に着けていたり、綿あめを持っていたりとヤチヨも満喫しているようだった。そのまま2人は真実達と話し始めた。すると、彩葉が息を吐きながら私の横に腰を下ろす。
「いやぁ、お姫様2人のエスコートは大変だったわ。自分達が有名人であることを忘れて楽しんじゃうんだもん」
聞くと、せっかく人混みでバレにくいのに大声で名乗ってしまったり、迷子の子を送り届けた時アナウンスを代わりにしてしまったりと、彩葉が振り回されていたらしい。それでも、彩葉は満更でもない表情だった。
「良かったですね。また2人と来れて」
だから私もそれを汲んで話を進める。対する彩葉も幸せを噛みしめるように笑って見せた。それから彩葉は、真面目な表情になり、私を見つめる。
「実際、蓮夏が居なかったらこの景色を見れるのにはもう少し時間がかかってたと思う」
「彩葉程の人なら、私が居なくとも二人とも呼べていたと思いますよ」
私が居なくとも、彩葉ならやり遂げそう。そんな熱量は、2人の復活を進める中、何度も感じた。
「だけど私は、蓮夏が居たからこの景色を観れたって、そう信じたい」
それを彩葉は否定してくれた。花火を待ちながら話に花を咲かせる皆を見て、笑顔でこう言った。
「蓮夏、ありがとう。これからもよろしくね」
私も同じ様に笑って、彩葉の肩を照れ隠しも込めて、軽く小突く。
「こちらこそ、ですよ!」
「あっ!そろそろ花火上がるよ!」
いつの間にか準備が終わってたらしく、かぐやが空を指さして声を上げた。甲高い音と共に光りが空へと舞い上がる。それは低い音を響かせながら、空を彩る花になった。
「やっぱ良いなぁ」
それを聞き、感じ、見て、ヤチヨは目頭を押さえながら静かに呟いた。そんなヤチヨを真実が優しく頭を撫で、寄り添っていた。そんな光景を見ていると、不意に彩葉が言葉を零した。
「前に来たときは花火どころじゃなかったからなぁ。こんなに綺麗だったんだ。ここの花火」
かぐやは芦花と楽しげに話していた。相変わらず身ぶり手ぶりが大きく、そういう所も推せる。だから私は、立ち上がって、彩葉に手を差し出す。
「そしたら、もっと前で見ましょうよ。みんなと一緒に」
彩葉は口角を上げると、私の手を取って、立ち上がる。そのままみんなの元へと近づく。私たちに気が付き、振り向いたかぐやとヤチヨが、花火の音に負けないくらいの大きな声で私達を呼ぶ。
「「彩葉、蓮夏。ありがとうね!」」
空に咲く大輪の花と推しの笑顔。うんまた脳が焼けそう!最高ですね!
こんにちは、作者です!あ、くだらないあとがきですので、気になる方のみどうぞ〜。
またおまたせしてすみませんでした!でなんですが、察しのいい方ならわかると思いますが、番外編は今回で終わりになります。前回続きますみたいな事言っときながら……って思われても仕方がないと思うのですが、これの次の回が蛇足にしか思えなくてですね……なので纏めさせて貰いました。
なんだかんだダラダラ続けてしまったのだけが反省点かもしれません……。でもこんな作品を待ってくれていた皆さんが居たのはとても励みになりました。これからも公式からの供給が来ると思うので、超かぐを楽しんでいきましょう!
って事で作者でした!読んでくださり本当に、ありがとうございました!