一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】   作:カウン

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近すぎても、多すぎても。


何事にも限度がある

私のカフェ裁判から1週間が経った。あれ以降、私と酒寄さん達の関係は変わった。学校でも話すようになり、ツクヨミでもたまに会う事が多くなった。

距離間が近くなったと言う点ではいいのだが……。

 

「ね〜蓮夏〜かぐやのパソコンのシステム見直して!お願い!」

 

「ピャァッ!い、いいですよ」

 

推しとも、なので他のファンに夜道で襲われないか心配です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、上條さん。かぐやのわがまま聞いてもらって」

 

机のスマートフォンから声が響く。その声を聞きながら私はキーボードを叩いては、画面とにらめっこしていた。

 

「いえ、推しのためなので」

 

キリッと顔を作ってそう告げる。かぐやさんにパソコンを見るように頼まれたため、酒寄さんに電話で色々と聞きながら作業を進めている。

一度パソコンの最適化と動画編集ソフトのプログラムの解析はやった事があったのが功を奏した。ふふん、得意分野なら負ける気がしない。

 

「でも私もわかる気がする。推しのためなら頑張れる……ってね」

 

「酒寄さんの推しは月見ヤチヨさん……でしたよね」

 

カタカタと私が音を奏でながら、酒寄さんの言葉に耳を傾ける。向こうではカリカリと線を引く音がするので、勉強をしているのだろうか。

 

「うん、私の話を聞いてもらえた、歌を貰えた、まだ頑張れるって思えた」

 

月見さんはただのAIなんかじゃないんだな、人を救ってるんだもの。私は自分のなかでの彼女の評価を改める。

 

「……大切なんですね」

 

「うん、ヤチヨは最高なんだ」

 

スピーカーから酒寄さんの笑い声が漏れる。多分笑顔で話すその言葉は私には眩しいくらいだった。

 

「でも、上條さんがかぐやに脳を焼かれてたなんて……」

 

「意外ですかね?」

 

「うん、イメージないし」

 

「ふふっ、私もそれは思います」

 

私は笑いつつ、推しを思い浮かべる。私の真っ暗な人生を照らし出した自由な光。私の対極の様な存在。

 

「それでも、私はあの自由が心地よくて、羨ましいって思ってます」

 

「えー、でも勝手にもの買うし、巻き込むなって言ってても巻き込んでくるし、騒がしいんだから」

 

同居してる本人だからこそわかるエピソード!レアすぎる!無理!

 

「そこが良いんじゃないですかっ!」

 

「うわ声でか」

 

そんな風にやいのやいのと話しながら作業をしていたら、気がつくと終わっていた。

 

「よし、これで以前よりも動作も軽くなったと思います。動画のエクスポートや編集などもやりやすいようにシステムを見直したので問題ないはずです」

 

「ありがと、かぐやからもお礼言っとくように伝えとく」

 

「まぁ、貰えるものは貰っておきます」

 

嬉しすぎて声がうわずってしまった。推しからの感謝とか耐えられる気がしない。

 

「声、うわずってるのばればれ。やっぱ上條さんわかりやすいね」

 

酒寄さんから笑われるも悪い気はしない。少し頬に熱がたまるのを感じながら話をそらそうと、話題を変える。

 

「そ、そう言えば、今日もツクヨミでライブやるんですよね?」

 

「あぁ、そうそう、このあと20時からって言ってたかな。もうすぐでお風呂出て準備するって言ってたよ」

 

またライブが見れると思うと胸が高鳴る。ツクヨミで一度会う約束をしてから、私は通話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ、レンゲ」

 

「私も来たばっかですよ、さか……イロハさん」

 

うぐ……名前呼びのせいか、恥ずかしいな。そんな様子の私を見て、酒寄さんは楽しそうに笑う。

 

「ふふ、一応ネットだから、本名じゃなくてハンドルネームでお願いって約束、ちゃんと覚えててくれたね」

 

「プライバシーですから」

 

なんで頬が紅潮するのを反映するシステムが組んであるだ!?向こうに慣れてないのがバレるじゃないか!

そんな行き場のない小さな怒りを抱きつつ、歩を進める。

 

「かぐやは先に行って準備を進めてるってさ。私はパソコンを優秀にしてくれたお礼としてレンゲを案内してほしいって頼まれた」

 

そこで私はおかえしの意味も込めて、人生初の弄りを敢行する。2回も恥ずかしい思いをしたんだ。これくらい許されるだろう。

 

「イロハさんもなんだかんだ、かぐやさんのわがまま聞いてあげてるんですね。相性ぴったりかも?」

 

「す、すごく頼んでくるし?しょうがなく!しょうがなくだし!」

 

想定以上に効いたらしく、かなり動揺してくれた。やはりこの人にしかプロデューサーは務まらないだろう。

 

 

 

その後、路上ライブ会場に到着して、他のファンと合流し、ライブを楽しんだ。ライブ中、突然名前を呼ばれ感謝されたり、恒例行事の横転をしてしまったりと、楽しいひとときを過ごせた。

 

「くっ!この感謝をかぐやさんにぶつける方法はないんですか!?」

 

ライブ後、自身の熱いパトスをどこに向ければ良いんだ、と口に出ていた。すると、横にいたオタ公さんが声をかけてくる。

 

「レンゲは投げ銭を知らないのか?」

 

「投げ銭、ですか?」

 

私の調べた推し活にあった単語だが、やり方までは知らなかった。なのでオタ公さんの説明に耳を傾ける。

 

「このふじゅ〜を使うと出来る。ログインやリアルマネーを変換する事で手にはいるぞ」

 

「へぇ、そうやって使うんですね、これ」

 

やり方は〜、とメニューを見せながら詳しくレクチャーしてくれるオタ公さん。それを聞き逃すまいと、食い入るように聞き入った。そして、教えてもらったように操作して、桁を打ち込む。

 

「そしたらこれで、こうですね!」

 

それを横から見ていたオタ公さんが慌て出す。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれレンゲ、桁がおかしくないか???」

 

?何もおかしくないと思うが。今まで感謝を伝えられなかった分、投げるのが投げ銭と言うものではないのではないか?

 

「え……でも、今までの分の感謝を……」

 

「いや、初めての投げ銭でその月の限度額まで使おうとするやつ初めてみたぞ!?」

 

周りでは、おぉまたレンゲ殿が狂っておられるぞ!なんて声が聞こえるが、もう止まらんよ!流れ出したエネルギーと同じだ!

 

「えい☆」

 

「本当に投げちゃったぁ!?」

 

後にオタ公さんは、投げ銭を教えなきゃよかったって思ったのは後にも先にもレンゲだけと言い残している。

ステージで感謝を述べていたかぐやさんに通知が行ったようで目の前に表示される。すると、眉を下げながらこちらを見て声を出した。

 

「レンゲ……流石にこの額は心配になる……」

 

刹那、騒がしかった会場に静寂が訪れる。その静けさが私の申し訳なさを助長させ、決壊した。

 

「……ごべんなさいぃ!!」

 

爆速でログアウトして布団にうずくまって反省していたら寝落ちしてしまっていた……限度があるな、そう学んだ。




あ、私ごとですが超かぐや姫の聖地に行ってきました。
最高でした。
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