一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】 作:カウン
「おぉ〜、やっぱ蓮夏って可愛い系が合うね〜」
どうして……。
「じゃあ、上條次こっち着てみよっか」
どうして……!
「なんで私がこんな面積の小さい水着を……!!」
事の発端は数時間前に遡る。
休みの日なので予習復習をして、終わらせた頃。推し活として過去のアーカイブを漁ろうとパソコンを立ち上げようとしたら、滅多にならないスマホが鳴り響いた。
「もしもし、上條です」
「お、でたでた。私、真実だよ」
「諌山さん、どうしました?」
最近学校やツクヨミで話すことが多くなった諌山さんからの電話だった。今日は特に約束などはしてなかったはず、と考えつつ用件を聞く。
「今ね、芦花とショッピングモールに行くって話になってて、良ければ蓮夏も一緒にどうかなーって」
私は顎に手を当てて考える。これは私の憧れていた友達……と恐れ多くて呼んで良いのか分からないが、とにかく一緒にお買い物ができるのではないか?そうと決まれば、とキーボードを片しつつ返事をする。
「是非ご一緒させてください」
集合場所、時間を聞き、電話を切った私は荷物を纏め家を出た。
そして集合場所にて、私は話している2人の後ろから声をかけた。
「2人とも、お待たせしました」
「お、蓮夏。急に呼び出してご……」
「上條、時間ぴった……」
2人は私を見た途端、目を見開いた。それからまじまじと2人で私の服装を見て、小声で話し合う。
?そんなに似合ってないだろうか、中学校の時に着ていたジャージなので間違いないはずなんだが。
そう考えていると諌山さんが私の手を取る。
「よし、蓮夏。アパレル行こう」
「出掛けるのに、流石にそれはない」
そのまま私は連れ去られるようにアパレルショップに入店した。
あれよあれよと更衣室に詰め込まれると、二人がカーテンの隙間から頭だけを出した。
「取り敢えず、何系……って聞いてもジャージ着てくるくらいだもんね、わかんないか」
と、顔を顰めながら綾紬さん。
「そしたら私と芦花で、見繕ってくるから待ってて〜」
と、考えるように目を細めながら諌山さん。
「なんか……ごめんなさい」
そしてようやく、自身の服装の異様さに気がついた私。服を持ってきてもらうまでの間、第2回脳内反省会が開かれてしまいました。
「じゃあ、一旦これ着てみて」
反省会が佳境に入りそうなタイミングで、カーテンの隙間から衣服が差し込まれてきた。着てた服を脱ぎ、頭を通して、カーテンを開ける。
「おぉ〜!可愛い!」
「うん、私の目に狂いはないね」
私に渡されたのは淡い青色のワンピースだった。着るのも簡単だったし、通気性もよく、夏にも合っている。丈も少し身長が小さめの私にぴったりだった。その場でくるりと回りながら自身と服を見る。
「な、なんか可愛い服は違和感があります……」
「なにおう、そこまでにあっといてこのこの〜」
諌山さんが頬をつついて褒めてくる。恥ずかしくなり、視線を下ろすと前髪が目を覆った。眼鏡も相まって少し落ち着く。
「せっかくだし、色々着てみよっか」
綾紬さんがイタズラをする様な笑みを浮かべ、色々と洋服をちらつかせる。これは何着も着る事になりそうだ。
「お、お手柔らかに……」
そこから綾紬さんによる怒涛のファッションショーが開催された。
「まずは無難にストリート系で纏めてみた」
今着ているのは、オーバーサイズのパーカーにカーゴパンツと呼ばれるズボンらしい。私の中では割と高評価だ。
「割とフリフリしてなくて落ち着きます」
「あんまり可愛いのは嫌なの?」
諌山さんが覗き込むように質問してくる。昔は割と着ていた事があったが今の私に似合うとは思えない。
「子供の頃は着てたんですけど、あまり自信が……」
それを聞いた瞬間、綾紬さんの目が光る。
「そしたら次はこれ、カジュアルガーリー系」
鏡に映る私は今時な格好をしており、まるで自分ではないようだ。
「上條、タイトな服は苦手そうに感じたから、ゆとりのあるトップスとロングスカートで纏めてみた」
「おぉ〜流石美容系インフルエンサー!」
綾紬さんの解説を聞きながらふと疑問に感じたことを尋ねる。
「よく私がキツイ服は苦手ってわかりましたね」
それを言うと2人は少し気まずそうに私の胸元を見つめながら呟く。
「まぁ、蓮夏の性格を考えると、ねぇ……」
「ジャージ着てくる時点でなんとなく……?」
視線の意味を理解し、顔に熱がたまるのを感じる。
「……そんなにおっきくないです!」
その後、色々と選んでもらい着てみるの繰り返し。1時間近く経ったタイミングで私の体力が尽きかけたので、最初の3着を購入して店を出た。勿論、最初のワンピースに着替えて。
「んく、生き返ります……」
現在はカフェにて休憩をとっている最中だ。
「そう言えば上條、運動できなかったよね」
「あ〜、言われてみればランニングの時とか最後尾だったっけ」
目の前では私の痴態で話が盛り上がっていた。別に、私には座学とパソコンと推し活があるので問題はない……負け惜しみなんかじゃないし。
「それは置いといて、そんなに買っちゃってよかったの?」
諌山さんが私の足元の紙袋を指差しながら心配してくれていた。
「両親からお金は貰ってるので大丈夫です。今までも服は何を買えば良いか分かりませんでしたし、いい機会だなと」
私からしたら当たり前の話だが、2人はなぜか申し訳なさそうにしていた。こちらも申し訳なってきたため、どうにか空気を変えようと口を開く。
「お二人には感謝してますから、そんな顔をしないでください。今日も誘われなければ私は家で勉強と推し活しかしませんでしたから」
あえて冗談っぽく話すと2人は少し笑いながら頷く。
「そっか……ならこれからはもっと積極的に誘わなきゃね、芦花」
「だったら今度、彩葉とかぐやちゃん誘って海に行く話、上條もきてもらおうか」
「そうと決まれば……」
2人は残っている飲み物を飲み切ると、席を立ってある提案をしてきた。
「水着、買いに行こう!」
そして冒頭へと戻る……そんな事を考えながら私は現実から目を背けていた。
「そもそも今日水着を買う必要ってありますかぁ!?」
「だって蓮夏、絶対学校の水着で来るつもりだったでしょ〜」
私の上げた声は、諌山さんの正論でたたっ斬られた。ぐぬぬ、無念。
「ほら、こっちだったら肩の部分布が多くて、腰にパレオ巻けばそこまで肌出さないで済むから」
「じゃあ今のを着る必要はありましたか?」
私の質問を聞くと、綾紬さんが目を逸らしながらこう言った。
「似合うと思ったから……」
「着る必要なかったじゃないですかぁ!!」
結局、最後に提案してくれた肌面積少なめの水着を買って、お店をでた。
「今日はありがとうございました」
私は両手に紙袋を持ち、ほくほくとした気持ちで頭を下げる。
「いいって、この前のお詫び、みたいな感じだから」
「そうそう、遠慮しないでって。私らなんも奢ってないけどね〜」
私的にはこっちの方が迷惑をかけたんだよなぁ、そう思いつつ頭を上げる。
ん、最近髪を切りに行けてないから前髪が眼鏡の隙間から目を……あっ、両手塞がってたんだ。
1人で前髪をどかそうと困っていると、少し屈んだ綾紬さんがバックから髪留めを私の前髪に着けてくれた。
「私の予備の髪留め。それあげるよ」
「えっでも」
「ま〜貰っときなって。芦花がいいって言ってるんだから」
2人とも笑顔でそう言ってくれた。少し気恥ずかしくなり、照れてしまう。それでも笑顔で、私はお礼を伝える。
「ありがとう、ございます」
大切にしよう、そう心の底から思えた。