一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】 作:カウン
あと水着回を期待してた方もごめんなさい。
ある日のこと。私は推し活として動画サイトを回ろうと思い、かぐやさんのチャンネルを開いた。すると、投稿予定の動画のサムネに見たことのないゲームが写っていた。
「KASSEN……?」
「KASSENをプレイしてみたい?」
ツクヨミにて、酒寄さんと会った際、その時の疑問を私は口にしていた。
「はい、一応この仮想世界で出来ることってのは分かるんですけど……」
「……本当にプログラムしか見てないんだね、レンゲ」
呆れるように笑いながら酒寄さんがそう話す。それを言われると恥ずかしい限りだ。プログラムを調べていたのにこの仮想世界で出来ることなどは把握していないなんて。
「お恥ずかしながら……」
「そしたら教えてほしいってことでしょ?KASSENについて」
どうやら私の未知に助け舟を出してくれるようだ。頭が上がらない。
「いいんですか?」
「うん、私もわかるし。推しのやってること知りたいって気持ち」
さらに、酒寄さんは自信に溢れるような笑みで付け加える。
「あと、私そこそこ上手いから任せて」
KASSENとは!
ツクヨミ内で遊べるゲームであり、参加人数に応じてルールが変わる!櫓を占拠し、相手の天守閣を攻め落とした方の勝利となる!
道中の敵を倒しながら、相手プレイヤーを退け、城を落とそう!
「って感じ、後は習うより慣れろ、だね」
ヤチヨさんの動画を見せながら大まかに説明してくれた。
つまりは攻城戦と防衛戦の2つの側面を持つゲームってことか。だいたい分かった。
と、ゲームの待機室で私は受けた解説を咀嚼していた。
「それで今回は何のモードでしたっけ?」
そう言うと酒寄さんはメニュー画面をこちらに見せながら説明してくれる。
「今回のルールはSOUJIN、2対2の対人戦で櫓の占領は不要。天守閣を先に落とした方の勝利で、残機はチームで共通の1つ」
そこまで説明したあと、酒寄さんは心配そうにこちらを見てくる。
「とは言ったけど大丈夫?いきなり対人戦なんて。最初はPvEとかの方がいいと思うけど……」
「大丈夫です。失うものがないなら、何事も挑戦ですから」
昔の私だったら考えられない発言だな、これも推しの力か。そう思いつつ気合いを入れる。
「ま、そのとおりかもね。気楽に行こっか」
「お願いします!」
かくして、私たちは戦いの舞台へと降り立った。ツクヨミは結構歩き回った筈だったが、このエリアは初めてだ。背後の天守閣を興味深そうに見ていると、酒寄さんが手元に武器を呼び出し、軽く振るう。
「ほら、レンゲも武器出してみなよ」
私は言われた通り、メニュー画面から武器を出力する。シャランと綺麗な音と共に手元に武器が収まる。
「それがレンゲの武器か、槍……いや、薙刀かな」
「形状から分かるとは流石です、確かプログラムを調べてるときに出した以来ですかね」
青緑色をベースに黒めの緑が差し色として使われた薙刀。私のツクヨミでの服装にもマッチした見た目で結構お気に入りだ。刃にはパソコンのキーボードの様な意匠が使われており、切っ先には銃口みたいな物が配置されている。
使い心地を確かめるように軽く振っていると、酒寄さんから声がかかる。
「さて、開始したらまず直進して距離を詰めるよ。今回のステージは一本道だから、おそらくそのまま接敵する」
「後は当たって砕けろ、ですね」
「いや砕けちゃ駄目でしょ」
目の前にカウントが表示され、数字が減っていく。お互いに視線を合わせながら軽く頷きながら姿勢を取る。
「それじゃ、行ってみよっか!」
「了解です!」
カウントがゼロになり、合図が鳴り響く。ゲームスタートだ。私達は事前の作戦通り、真正面から敵に近づいていく。少し移動したところでミニオン、と呼ばれる歩兵の様な立ち位置の敵が行く手を阻む。
「レンゲ!蹴散らしながら前行くよっ!」
そう言いながら酒寄さんは前の敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、前へと進んでいく。私も負けじと拙い操作で薙刀を振るう。
なんとか操作に慣れてきた所で前方から斬撃が飛んでくる。すんでの所で酒寄さんが武器で受け止めた。
「俺の斬撃を受け止めるなんて、やるじゃねぇか」
木々の隙間から斧を持ったアバターが現れる。斬撃はこの人の仕業か。でも、もう一人が見当たらない。そのことに違和感を感じて、私が前に出る。
「私が囮になって、彼と戦います。イロハさんはその隙にもう一人を見つけてください!」
勿論、酒寄さんの腕を信じての行動だ。酒寄さんと話している時に感じた自信から相当上手いと仮定できたから、この行動が迷いなく取れる。目を見て笑うと酒寄さんも笑いながら、任せた、とだけ言い残して木の上に移動していった。
「んじゃまぁ、始めますか……ねッ!!」
わざわざ攻撃する時に合図するなんて……近くに仲間が居ると仮定出来そうだ。向こうは大きく踏み込みながら斧を振り上げて突っ込んで来た。私は敢えて移動せずに斜に構える。
そして斧が振り下ろされると同時に、薙刀の柄を使い、後ろに受け流す。
「なっ!?」
「パワー負けするのがわかってるのに、真正面からは受けません!」
プログラムを調べていた事が功を奏した。斧の動きが細かく調整出来ないことは把握済みだ。そうして隙を晒した相手に一撃を叩き込もうと踏み込む。その時草を掻き分ける音が背後から耳にはいる。それでも私は止まらない。
「振り返りもしないとは!素人か!」
まぁだって信じてますからね。あんな表情見せてくれたなら、守ってくれるでしょう。
「イロハ!頼みますっ!」
「どんだけ信用してくれてるんだかっ!」
背後で金属同士がぶつかる音が響く。貰った、そう思って薙刀の切っ先を向けつつ突っ込む。が、相手の表情が歪む。
「甘いな!この程度なら!」
相手は敢えて斧を手放し、流された勢いを無理矢理殺し、後ろに飛び引く。浅い、避けられたか。
「油断するよなぁ!」
「ぐっ!」
まさか素手でも攻撃出来るとは想定しておらず、拳が腹部に突き刺さる。そのまま、殴り飛ばされ。相手に斧を回収されてしまう。
「仕切り直し、だな」
「ええ、そのようですね……」
お互いに距離を取りつつ、武器を構える。せっかくのチャンスを落としてしまった、その事実を歯痒く思いつつ、両手で得物をしっかり握る。
「お、来ないようだな……ならこっちから行くぜぇ!!」
相手は振り上げた斧を地面に力強く叩きつける。地面が大きくひび割れ、足場が不安定になってしまう。狙いはこれか!
この地面に慣れているのか、相手が素早く距離を詰めて来た。先程の受け流しを警戒し、隙の少ない攻撃で斧を振るってくる。私はどうにか薙刀を取り回し、相手の攻撃をいなし続けた。
「おらおら!さっきまでの勢いはどうした!!」
攻めようにも足元が踏ん張れず思うように動けない。万事休すか、その時、酒寄さんの声が届く。
「薙刀で跳んで!」
「っ!!」
咄嗟に相手の横振りをしゃがみで避け、石突と呼ばれる刃とは逆の方で地面を突く。
「跳んだだとぉ!?」
相手の真上を棒高跳びの要領で超える。上空から、素早く薙刀を振るい、切っ先が相手を捉える。
「ぐっ!!まだやられてはねぇぞ!」
致命の一撃ではない。攻撃した瞬間に理解した私は、着地と同時に振るった薙刀を逆手に持ち替え、相手に更に接近する。
「近っ!?!」
「これだけ距離を詰めれば確実に当たりますからっ!!」
下から上へ、弧を描く様に振るわれた薙刀は相手を切り裂き、花弁を散らさせる。
「お見事……!」
花弁を見送りながら、私は長く息を吐き、心を落ち着けさせる。
「レンゲ、初戦で倒せるなんて、やるじゃん」
横を見ると、酒寄さんが武器を担ぎながら嬉しそうに声をかけて来る。苦戦せずもう一人の敵を倒したようだ。
「イロハさんのお陰ですよ。あのアドバイスがなけれ胴体が泣き別れしてましたから」
「マミが槍でその動きしてたのが参考になったね」
「お礼を後でしないとです」
そんな話をしながら相手の天守閣に向かって二人で走り出す。相手の1人が復活している筈なので、警戒しながら前へと進んでいく。木々が開け、城が見えた所で、相手の相方が待ち構えていた。どうやら酒寄さんが相手をしていたプレイヤーが復活していたようだ。
そう言えばこの武器で試していないギミックがあるんだった。やってみるか。銃口を向けて……っと。
「へっへっへ、ここを通りたくば俺を倒し「ちょっと失礼します」
パァンと甲高い音が広がり、相手が花弁に変わる。そう、これは薙刀に狙撃銃の様な機構が組み込まれた遠近両用の武装なのだ!
と、誇らしげに思っていると、隣の酒寄さんの表情が引いたような物になっていた。
「うっわ、えげつないことするね……」
「……戦いの場で待ったは無しでしょう」
「……なんかレンゲ、かぐやに似てきてない?」
えっ!?推しに似てきた!?それは嬉しいような、駄目なような……ぐぬぬぬ」
「いや、声に出てるし」
その後、何事もなく私達は天守閣を破壊して、勝利となった。
「でも、なんで私のお願いを快く受け入れてくれたんですか?忙しいって話はマミさんやロカさんから聞いてますが」
終わった後、純粋に気になっていたことを、酒寄さんに聞いてみた。すると、とても小さな声で返事をくれた。
「まぁ、いつもかぐやを助けてくれてるし?お礼、的な……?」
は?推しのために?プロデューサー自ら?神か?
「やっぱりイロハさんはプロデューサーの鏡です!貴方をおいて他に「ほらぁ、こうなるから言いたくなかったんだって!」