一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】   作:カウン

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開放的な場所では気持ちも素直になりやすいらしい。


揺れる水平線に沈む夕焼け

以前、綾紬さんと諌山さんが言っていた、海に行くという話。私が推し活にかまけて忘れかけた時に、そのお誘いの電話がかかってきた。

そして今、私は推しと海に居ます。

 

「推しが……!推しが!目の前に……あががっががっがががっ」

 

「ほら、かぐやちゃん、推しが唐突に目の前に現れるとこうなるんだよ〜。明日の我が身かもしれない」

 

「蓮夏、おもしろー」

 

久しぶりの2つの直射日光が、私の身体を焼き尽くそうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

砂浜にレジャーシートを敷き、パラソルを立て、諸々準備が終わったので、私は一息ついていた。やっぱり体力がないと外出に身体がついていかない……。

ちなみに水着は先日、諌山さんと綾紬さんに選んでもらった露出控えめのビキニである。とは言っても、ビキニである。まだ恥ずかしい。

さて、そろそろ現実を見ようか。そう思いつつ、私は一緒に準備をしてくれていたかぐやさんの方に向き直る。

 

「蓮夏ーそろそろ慣れてよー」

 

「ヒャイ!?」

 

気絶しなくなっただけでも褒めてほしい。そんな事を考えつつ、推しの姿を眺める。白い肌、金髪のツインテール、それに似合うオレンジの水着。うん!無理!そう思いつつ、レジャーシートに倒れ込む。

 

「まぁまぁ、上條さんも努力してるんだし、良いんじゃない?」

 

私の横に、食べ物を買いに行ってもらっていた酒寄さんが座りながらそう擁護してくれる。だが、かぐやさん的には物足りないらしい。頬を軽く膨らませながらこちらに寄ってくる。

 

「でも、蓮夏ともっと話したーい!」

 

「イヤナンテイウカオソレオオイッテイウカアッアッ」

 

「そんなに身構えなくても、かぐやはかぐやだから大丈夫なのに……まぁ私もヤチヨと同じ状況になったらわかんないけど……」

 

そんな話を3人でしながら、かぐやさんを宥めていると、残りの二人が食べ物を持って戻ってきた。荷物の整理なども終わり、これからどうしようと言う空気が流れた時、綾紬さんがカバンからチューブを取り出した。

 

「それじゃあ、日焼け止め塗ろっか」

 

「日焼け止め、ですか?」

 

「そうそう、かぐやちゃんも上條もせっかく肌真っ白なんだから」

 

そう言って、綾紬さんがキャップを開けようと捻る。すると、それを横から借り取る人物が。

 

「そしたら、かぐやが蓮夏に塗る!」

 

……えっご褒美!?じゃなくて、推しに肌触られるとか夢か!?

 

「背中塗るから、うつ伏せになってー」

 

指示を受け入れ、お腹を付けるとレジャーシートの下の砂から熱を感じる……夢ではないのか。としたら、推しの手を煩わせるなんてまずい!

 

「私自分でやります!」

 

「もー!かぐやがやるから大丈夫だって!」

 

軽く押し問答したが、結局かぐやさんに頼み込まれて、申し訳無さを胸に元の姿勢にもどった。身体に跨がられて、背中に人肌より冷たい液体が落とされる。

 

「ヒァ!?」

 

「ではお客さん。少しくすぐったいですよー!」

 

「あっちょっそこは、ひゃあ!くすぐったいですっ!」

 

そこからはもう、推しがしてくれていると言う事を忘れる程、くすぐったい思いをした。至る所に塗られたので日焼けの心配はないが、笑うのになれてなかったので、疲れて大変だった。

 

「ヒー、ヒー」

 

「どや」

 

「かぐや、よくそれでドヤ顔できるな……」

 

その後、かぐやさんのオリジナル曲を作ったのが酒寄さんだと聞いて横転しながら、酒寄さんに感謝を述べたり。

突然、蟹の大群に襲われて海に逃げる羽目になったり。

そのまま足をつったため溺れそうになったりした。

 

 

 

 

 

 

午後になり、海上が混み始めたので私達は、ビーチバレーをして遊ぶ事に決めた。

丁度良く、ネットも借りられたので、今はチーム分けをしている最中だ。

 

「5って端数なんだよね〜2対3で良い?」

 

「はい!かぐや、彩葉と組みたい!」

 

今日も最推しが可愛い。なんてことをぼんやりと考えていると、私の名前が会話であがってくる。

 

「となると、上條はかぐやちゃんと組んだらまともに出来ないから必然的に私と真実のチームに入ることになるね」

 

「分かった。じゃあかぐや、こっち側に来て」

 

「おっけー!」

 

話がまとまり、ついに試合が始まる。ネットを挟んで向かい合うは、かぐやいろPチーム。サングラスをかけて準備万端な酒寄さんに腕をぐるぐる回すかぐやさん。

 

「やるからには負けないから」

 

「かぐやも頑張るぞー!」

 

対するは私達のチーム。こちらの心配をしてくれる諌山さんに挙動不審な私、サンダルを確かめて地面を踏みしめる綾紬さん。みんなやる気は十分だ。

 

「蓮花、無理しないでね〜」

 

「が、頑張ります!」

 

「フォローはするから、任せて」

 

先手でいろPかぐや……長いな、いろかぐチームでいいか。とにかく、かぐやさんからのボールが飛んでくる……レアじゃんそんなの!

 

「かぐやさんのボール!?受け止めなきゃ損でブベェ!?」

 

かぐやさんからのボールなんて相当レアだから受け止めようとしたら、顔面にヒット、奇跡的に私の頭上に打ち上がる。

 

「上條ナイス!打ち込むよ!」

 

「させない!」

 

咄嗟にブロックに飛ぶ酒寄さん、だが、スパイクをすると言った綾紬さんは助走をつけ、飛ぶ直前に足を止める。

 

「真実!」

 

「あいよ〜っと!」

 

「んな!フェイント!?」

 

なんと息の合った連携か。直前で足を止めた綾紬さんの後ろから、諌山さんが飛び込みブロックの反対側にスパイク。

だが、かぐやさんが走ってボールをボレー、打ち上げる。

 

「彩葉!トスお願い!!」

 

「あーもう!分かった!」

 

掛け声に合わせて、酒寄さんがトスで落ちてきたボールをもう一度空に打ち上げる。そのまま、走ってきたかぐやさんが、美しいフォームでスパイク。

私は反応できずに尻もちをつく。

 

「いえーい!」

 

「はいはい、ハイタッチね」

 

1点取られてしまった。でも私達のチームはまだまだ諦めてはいない。

 

「まだ、1点!取り返すよ、真実!上條!」

 

「あいよ〜!」

 

「はい!」

 

次のサーブは酒寄さんから。綺麗な軌道を描いて、コートへと迫る。

 

「しまった!」

 

それを綾紬さんがレシーブ。が、あらぬ方向に飛んでいってしまう。ぐ、このままでは点があちらに……。いや、私の位置からならまだ……!

 

「っ!間に合ってくださいっ!!」

 

人生初、遊びでの全力疾走。腕を思いっきり振り、前傾姿勢で前に飛び出す。うぉぉ!届けぇ!

 

「せいっ!」

 

ぽーん、と心地よく跳ねる音がしてボールはコートへと戻っていく。安心して、頭上のボールを見送っていると次に視界を埋めるのは砂。

 

「あぁ、彩葉!蓮夏が砂に突き刺さってる!」

 

「コヒュー、コヒュー、私は後でいいので続けてください……!」

 

足をじたばたさせながら、砂の中からどうにか返事をする。うえ、少し口がじゃりじゃりします。

 

「犠牲になった蓮夏の仇討ちだぁ!」

 

「なんの!真実!簡単にはやられないよ!」

 

「ノリいいなぁあんたら」

 

勝手に殺されていることになっている私を他所に、みんなの話し声が聞こえてくる。

……ふと思ってしまう。なにも認められない私がここにいて良いのかって。みんな程、私は上手に出来ていないとも思う。

暗い所だからか、少し物思いにふけっていると、足音が。足を捕まれ、砂から引っこ抜かれると、チームの二人がこちらに助けに来てくれた。

 

「1点取れたよ、上條のおかげ」

 

「ナイスダイブ〜!」

 

二人がそれぞれ手を挙げて、こちらを待っていた。私は胸に残した苦味を押し込んで、2人の掌を両手で叩く。

 

「……やってみたかったんです、これ!」

 

今は忘れよう。楽しめる時に楽しまないのは損だ。そう思いつつ、私はみんなが待つコートにもどった。

その後は、私が足を引っ張りながらもどうにか食らい着いたが、2点差でかぐいろチームの勝ちとなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、水着を脱いで、選んでもらった服装に袖を通して、海岸をみんなで歩いていた。

 

「かぐやちゃん、どうだった〜?」

 

「海も最っ高に楽しかった!」

 

かぐやさんが楽しげに話している。拝んでおくか……そんな事をしていると目を開けたら、眼前にかぐやさんが。

 

「蓮夏も!楽しかった?」

 

突然目の前に来られたので、驚いて飛び引いてしまう。申し訳なさから眉を下げながら、私も楽しかったです、と声に出す。

 

すると、かぐやさんが少し寂しそうに、距離をとったまま、話しかけて来た。

 

「……蓮夏がかぐやのファンなのは嬉しいんだけどね、ファンとしてだけじゃなくて、友達としても蓮夏と仲良くなりたいんだ」

 

みんなが振り向いて、足を止めて私の言葉を待っているようだ。ふとさっき過った事が、口から溢れてしまう。

 

「私なんかが、みんなと一緒にいて良いのでしょうか……」

 

夕焼けが目に染みる。海の反射がキラキラと眩しい。私には場違いみたいだ。思わず足元を見つめる。

 

「……友達が今まで居たことなかったので、距離間が分からなかったんです。友達って思うことすら恐れ多くて」

 

良いのだろうか、私なんかと友達になってもらって。私には、何もないのに。認められる事も、尊敬される事も、慕われる事もないのに。

 

親にすら、見てもらえないのに。

 

「じゃあ、かぐやと改めて友達になろ!」

 

そんな私の心に、臆することなく飛び込んで来てくれた。顔を上げると、満面の笑みでかぐやさんがこちらを見つめて、手を伸ばしてくれた。じわっと心が暖かくなるのを感じる。

 

「も〜、ここまで誘っといて言葉にしないとなんて……蓮花と私は友達!分かった〜?」

 

「上條さん、せっかく仲良くなったんだから、友達って思ってても迷惑なんかじゃないから」

 

「上條遠慮しすぎ、一緒に買い物行ったら友達。難しく考える必要なんてない」

 

みんなから次々と声がかかる。心配を混ぜたような笑顔、呆れたような笑顔、私の心持ちに対して怒ってくれている笑顔、みんなの気持ちが私を許してくれる。

みんながそっと近づいて来てくれた。

だったら、私の推しの様に、少しわがままになってもいいだろうか。

我慢しなくていいのだろうか。

一歩を踏み出しながら、震える声で、今まで言えなかった一言を、勇気を出して言葉にする。

 

「……私と、友達に、なってくれますか?」

 

『勿論!』

 

かぐやさんの手を取って、前に歩き出す。あぁ、涙が止まらない。

今日は最高の日だ。私が一歩を踏み出せた。私の記念日。




私ごとですが、ネトフリに加入しました!
これでいつでも超かぐや姫!が見れます!!
なんならさっき泣きました(投稿1時間前)
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