一人くらい彩葉のクラスメイトにかぐやに脳を焼かれた人が居てもバレない説【完結】 作:カウン
海に出かけてから何日か経過した。
かぐやさんのKASSENを事前知識込みで見れたのでほくほくしたり、コラボグッズ、フードを買い漁り、部屋がだんだんとかぐやさん色に染め上げられたり、色々な事があった。
そんな中でも一番の変化といえば……。
「ねー蓮夏、ここの設定ってこれであってる?」
「あっはい。そこはそのままで、ウインドウに開いてある、配信用のソフトを起動してください」
みんなとちゃんと友達になれたって所だ。
ちなみに今はかぐやさんが配信前にソフトウェアの調整を見て欲しいとのことで、一緒に調整中だ。
「そこのメニューに起動中のソフトと同期するってあると思うので、それを押せば……」
ぽこん、と小気味の良い音が鳴り、ソフトウェア同士が相互で動き出したようだ。
「おぉ〜!さっすが!パソコン関係だったら蓮夏、最強じゃん!」
「いえ……それ程でもない……でひよぉ」
たまに限界化することがあるが……まぁそんな簡単に人間変われるという訳ではないって事で。
「ありがとうね!蓮夏!んじゃ、かぐやは配信頑張ってくるから!」
「はい、私もリアタイで見るので、あとで感想送りますよ」
そう言って通話を切る。切ると同時に、友達であり推しと話していた事実に顔がにやける。
「えへへっ……友達かぁ」
配信が開始され、私は普段通り視聴していた。だが見ていると少しコメントの民度が悪い気がする。普段だとここまで求婚紛いのことをする輩は居ないはずなんだが……やはり有名になりすぎるというのも辛いものか。
あっ、酒寄さんが頑張ってコメントを削除してる。いつもかぐやさんのためにお疲れ様です。
だが、いくらコメントを消そうと、かぐやさんが諦めるように言葉で誘導しようと、止まる様子はなかった。
なんてことを考えていると、かぐやさんの口からとんでもない事が飛び出す。
「いろPに勝ったら結婚な!名付けて、かぐや争奪KASSENせん」
ブツッと配信が切られる。私は自身の顎が段々と下方向に伸びでいくのが分かった。いやこれ口が塞がらなくなってるだけだ。
「は???」
辛うじて絞り出した声は衝撃でほとんど出ていなかったと思う。
そして枠を建て直して始まったかぐや争奪KASSEN選手権。明らかに酒寄さんへの負担がデカすぎるこの企画は結構な人が挑んでは負けてを繰り返していた。
「そろそろ10連勝か……大丈夫かな酒寄さん」
以前の自信満々な様子を思い返すに、負けはしないだろうが、明らかに疲労が溜まると予想される。ましてや日々のバイトや学校、予習復習……本気で心配になってきた……。
そんな私の元に、都合良くかぐやさんから連絡が入った。
かぐや[想像より挑む人が多くて……彩葉を手伝ってあげて!]
以前の私なら恐れ多くてー、とか色々理由を並べていたが、今の私なら、友達のため、更には推しのために、断る理由はない!
「で、次は誰?」
11連勝を達成して、沸き立ったコメントが高速で流れる。
もしかしたら勝てて、かぐやとお近づきになれるかも、なんなら負けても認知されるかも、そう考えた視聴者が次々と参加を申請する。その申請に待ったをかける人物が一人。そう私である。
「次の対戦前に一ついいですか?」
声を出しながら、人込みを縫ってイロハさんと参加者の間に立つ。
「レンゲ!?どうしてここに?」
着ぐるみを着たイロハさんが驚いている。まぁ、配信中に半ば乱入している様なものだ。びっくりもするはず。事情を説明するために、イロハさんに寄ってこっそりと耳打ちする。
「かぐやさんに言われて手助けに来ました」
イロハさんはそれを聞くと、コクリと頷く。
このまま頑張らせるのも、後に響くはず。拒否されても無理矢理にでも介入させてもらうつもりだった。
と言う事で、戦う人数の肩代わりをする言葉はそれっぽいのを適当に言えばいいか。
「私は、今(配信で)かぐやさんの隣に居るべきはいろPだと思っています。異論がある者は私と戦ってください!いろPに挑むのはその後です!」
……ん?言ってて思ったがこれでは固定カプの厄介オタクでは?
案の定、一瞬の静寂の後に大騒ぎになってしまい、収拾に時間を要した……さすがに適当すぎたか。
そんなこんなで、私も争奪戦の防衛側で、前座として戦っていた。
SETSUNAと呼ばれるこのモードはKASSENのゲームモードの一つで1対1の体力で勝敗が決まるものである。
「すみませんいろPさん、3人に負けてしまったのでこれからそちらに3人行きます」
「大丈夫、結構余裕あるし」
私も初心者ながら、なんとか参加者を減らしながら戦っていた。なんて思っていると、転送され試合が始まる。
「正面ですか」
「さっさと倒して、かぐやちゃんに求婚するんだよ!」
相手が突っ込んでくる。同じ槍種の様で、刃先がこちらに向いている。対する私も、敢えて正面に武器を構えて走り出す。そしてそのまま攻撃圏内に。
「貰ったぁ!」
相手が槍を突き出すその瞬間、刃の反対、石突で地面を蹴り、懐に飛び入る。リーチの長い武器はこうする事で完封できる。歴史でも書かれている。
後は慌てる相手の横をすれ違う時に、刃で脇腹を切り裂き、片足を支点にその場でターン。持ち替えた薙刀で首を捕らえる。相手は何も言えず退場って訳。
「その強さでかぐやさんに求婚なんて100年早いです」
呆れを込めて吐き捨てながら、私は次の戦いの場へ。
カウントがゼロになると同時に、左から矢が飛んでくる。私はどうにか反応して、薙刀で防ぎつつ、木に隠れた。
「矢の方面的に……あちらですね」
顔をどうにか出すと、相手の武器が光に当たり、場所を示す。私はそこに向かって、距離を詰める。
相手も気がついたのか、射撃が再開された。武器で矢を斬り払いながら、銃口を向ける。
「終わりですっ」
爆ぜる音と共に相手が弾け飛ぶ。この銃、威力は高いのだが再使用までに時間がかかるのが難点だ。今回の様な連戦では厳しいな。次だ。
今回は開始と同時に、大太刀を叩きつけられてしまう。
「随分と生意気な事を言いやがったなぁ!」
相手の怒りを間近で浴びつつ、私は蹴りを入れられ、後ろに吹き飛ぶ。相手は威圧しながらこちらに武器を肩に担ぎ、歩いてくる。
「別にお前のかぐやちゃんじゃねぇんだからよぉ……お前が色々言う事ねぇよなぁ!」
言い終わると同時に、大きく跳躍、回転を加えながら太刀を振るう。私はどうにかそれを横に転がり、避ける。明らかな隙だ。回避と同時にコマンドを入れ込む。立ち上がり、今度はこちらが武器を相手に叩きつける。
「くっ……うざってぇ……!」
先程と状況が逆になる。私は瞬時に思考を巡らせ、最善の択を取ろうと模索する。取り回しが悪い武器なら、的を絞らせなければよい。
「ふっ!」
先程のお返し、と言わんばかりに相手の胴に蹴りを入れ、吹き飛んだ相手に向かって走り出す。相手は起き上がるも、まだ武器は構えられていない。斬りつけながら背後をとるが挑戦者は倒れなかった。そうしていると、武器を構えたまま、相手は大きく身体をねじる。
「……後ろだろぉ!」
大太刀が広範囲を巻き込まんと振るわれた。だが既に私はそこには居ない。何故なら薙刀を使い、宙に舞っていたからだ。
「上ですよ」
煽るように声を出すと、顔だけこちらを向く。うわ怒りで本当に歪んでる、おっそろしい。尚の事、こんな奴を推しに合わせる訳には行かない。空中から下方向に薙刀を振るい、相手の肩口をきり裂く。
「そんな一撃じゃあ、やられねぇよ!!」
相手がこれで終わりだと思い込んで、嬉しそうに武器を振るい直そうと身体に引き寄せていた。銃もクールタイム、刃は相手から遠のいている。なら私が取るべき行動は……。
「大丈夫ですよ、
石突側を相手に突き出しつつ、最近追加した択を押し付ける。相手に石突が到達する直前に、
「ば、かな」
「貴方みたいな人は、画面の前でROM専してなさい。口が悪すぎます」
薙刀を構え直しながら、静かに怒りを告げた。
その後10人程戦い、かぐやさんが待っていた、ツクヨミ内のステージに戻ってきた。殆どの参加者と戦った後のためか、ステージにはかぐやさんしか残っていないようだ。
何人かに負けてしまったが、あの人数なら、大丈夫だろう。私が一息ついていると、かぐやさんがこちらに向かってきた。
「終わったならかぐやとイロハの応援してよ!」
なんとも嬉しい提案だが、動画に映ってないとしても今は不味いだろうと思い、頭を下げる。
「でも今はファンと推しですから……」
だが、かぐやさんに通用するわけなく、肩を抱かれ椅子に座らされる。
「硬いこと言わないでほらほらー」
「ひゃい……」
その後、対戦相手全員をボコボコにして、イロハさんが帰還した。少し疲れているようだが、全員と戦うよりはマシだったろう。そう思っていると、かぐやさんがイロハさんを引き連れてこちらに来た。
「レンゲ、今日は助かったよありがと」
「いやーレンゲに来てくれて、本当に助かったよー。まさかここまで参加者が居るとは……かぐやちゃんも愛されてるなぁ」
「自分で撒いた種なんだから少しは反省しろ!」
「ぎゃー!!DVだ!!」
イロハさんが武器を用いてのお説教が始めてしまい、かぐやさんは慌てて走って逃げ出す。私は遠目でそれを見つつ、かぐやさんに手を合わせておいた。南無。
ちなみに、イロハさんの戦闘シーンのみならず、何故か私の戦闘シーンもオタ公さんに配信で取り上げられ、実況されてしまった……。
私を持ち上げる様な、可愛い、カッコいい、と言う実況がされており、恥ずかしくなってオタ公さんに連絡を取った。
「可愛いし強かったんだから、いいじゃないか」
「消してください!い、ま、す、ぐ!」
「え〜、コメントも高評価だぞ?私としても鼻が高い」
「私よりもかぐやさんを映してください!!」
かなりイキってたのに加えて、何故か、視聴者からかなり褒められていたので、慣れない私は顔を真っ赤にしながら、動画を消してもらうように話をつけた。
穴があったら入りたい……。