星光の魔法戦士   作:あさぼん

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二人の決意

亀型の魔獣の動きは、見た目通りかなり鈍かった。

その一方で甲羅の硬さも予想以上で、先程から私たちの攻撃はまるで通じていない。

 

「ちょっと…硬すぎません!?」

 

あまりの硬さに私は悲鳴を上げる。

 

「確かに……これじゃ埒が明かない!」

 

徳姫さんがそんなことを話している間にも魔獣は間髪入れずに甲羅の一部を飛ばして攻撃してくる。

そんな攻撃を交わし、天音さんが斬撃を繰り出す。

狙ったのは―――頭部だ。

 

頭部に攻撃が当たると魔獣が咆哮を上げた。甲羅は硬いが、それ以外の部分は普通の耐久度らしい。

 

「弱点は頭部、と見ていいでしょう」

 

天音さんが冷静に言った。

 

「確かに……亀って、甲羅は硬いけどそれ以外は結構ぷにぷにしてるよね……!」

 

…なんかいつもの徳姫さんと違うような…

 

「…徳姫さん、動物大好きなんですよね。」

 

天音さんが微笑みながら言った。

 

「それはさておき……先ほど仕留めきれなかったのは、かなり痛いですね。あちらも警戒しているようです」

 

――天音さんが言ったとおり、先程の一撃を受けてから、魔獣がかなりこちらを警戒している。

おそらく、次に攻撃するときはきっと甲羅に入られてしまう…ん?

さっきの攻撃は完全に不意を突いたはずだ。普通の亀みたいに引っ込めるなら、反射的にそうしていてもおかしくない。

 

そこまで考えて、初めて気づいた。

 

「そういえば、さっきの攻撃のとき……あの魔獣、甲羅に引っ込もうとしてました?」

 

「いいえ、特には……」

 

そこまで話して二人も気づく。

あの魔獣は甲羅に入ろうとしなかった。つまり、()()()()()()()()()のかもしれない。

 

「試してみる価値はありそうね」

 

そう言うと、徳姫さんは手元に大量の水を集める。

 

「ハイドロ・ストリーム!

 

放たれた激流が、そのまま魔獣の体を絡め取るように拘束した。

魔獣はもがいて抵抗するが、脱出することはできない。

 

その隙を突き、私と天音さんは亀型の魔獣の頭部へ全力の一撃を叩き込む。

 

「はぁぁっ!」

 

聖炎(せいえん)!」

 

魔獣は甲羅の一部を頭部に集中させて守ろうとする。そこに私のパンチと天音さんの炎の攻撃が襲いかかる。

私のパンチは甲羅の防御に阻まれたが、その一方で、天音さんが放った炎は命中し、魔獣の体が燃え、咆哮を上げる。

 

「天音さんの炎…すごいですね!攻撃にも回復にも使えるなんて!」

 

「いえ、まだまだです。特に回復は、少しでも気を抜くと逆にダメージを与えてしまうこともありますし……」

 

そんなことを話していると、

 

「二人とも、来るよ!」

 

徳姫さんがそう言うと、魔獣の甲羅から破片が一気に飛んでくる。

二人はそれぞれの能力で防壁を展開する。だが、防壁の作り方がわからない私は、一方的に攻撃を受けるしかなかった。

 

甲羅の破片は、一つひとつがガラス片のように鋭く尖っていて、肌に当たるとかなりの痛みを感じる。一方的に攻撃を受ける私を見て徳姫さんが言った。

 

「盾を作るようなイメージをしてください!そうすれば私たちのような防壁を作れるはずです!」

 

イメージ――そう言われても、形にするのはかなり難しい。

魔力をうまく固めて、かろうじて薄い壁のようなものは作れた。けれど、完璧に防げるほどの強度はない。

 

次々と飛んでくる破片によってすぐに砕けてしまった。

間髪入れずに飛んでくる破片を徳姫さんの水が割り込んで防御した。

 

「陽菜ちゃん、イメージするの、やっぱり難しい?」

 

「…はい。」

 

「そっか。まあ確かに、新人だとまだ難しいかもね。」

 

徳姫さんは微笑みながらそう言うと、

 

「技名をイメージしてみて。技の形と名前を結びつければ、イメージがしやすくなるから。」

 

言われたとおりに名前を考えてみる。

 

「…フィリア・シールド!」

 

そう口にした瞬間、私たちの前方一帯を覆うように広範囲の防壁が展開された。

広範囲に広がった防壁を見て、徳姫さんが言った。

 

「…やっぱり陽菜ちゃん、才能ある?ここまでスムーズに、しかも広範囲にできるなんて…」

 

そう言われると少し恥ずかしいが、これでしばらくは防御することができそうだ。

 

「徳姫さん、天音さん!私がお二人を守るのでお二人は攻撃を!」

 

そう言うと、二人が防壁から攻撃を繰り出す。

 

「ハイドロ・ストリーム!!」

「聖炎!!」

 

防壁の内側から放たれた二人の攻撃が、魔獣へと真っ直ぐ突き刺さる。

 

 

 

 

その頃、中庭でも戦闘が行われていた。

斬撃を次々繰り出す謎の少年。その攻撃を辛うじて優地は避ける。

 

(どういうことなんだ…?)

 

未だに状況が掴めない。使ってくる攻撃は陽菜たちのソレと同じような感じがするが、それなら何故俺を攻撃するのか。

そんな事を考えつつ、飛んでくる斬撃を辛うじて避ける。

 

「…へえ。たかが人のくせに、ここまで避けられるとはな」

 

―――喋った!今まで一言も喋らなかった少年が声を出した。

 

「そりゃどうも…ところで、どうして俺を攻撃するのかな?」

 

あえて強がった言動をとる。おそらく敵対されてる以上、少しでも強気を崩さないようにしないとあっけなく潰されてしまうような感じがしたからだ。

 

「何って…理由なんているのか?」

 

「そりゃ…いきなりそのひっかき攻撃を繰り出されたら普通は嫌だろ」

 

そもそも普通の人間が斬撃なんて繰り出すこと自体ありえないのだが……そんなことを考えていると、少年がまた喋る。

 

「強いて言うなら―――お前らが()()だからか?」

 

「は、人間って…お前も人間だろ」

 

冗談交じりに言った。だが、それが彼の癪に障ってしまったそうだ。

俺の横を彼の斬撃が今までより速い速度で頬をかすめた。

 

「俺が…人間だと…?冗談も大概にしろ!!」

 

そう言うと、少年はあっという間に俺の眼の前へ迫る。

咄嗟の判断で後ろに飛び退くが、少し遅かった。やや前に出していた左足に斬撃が命中する。

 

「ぐっ…」

 

かなりの痛みにうめき声をあげるが、間髪入れずに彼の右手が腹部にクリーンヒットし、近くの茂みまで飛ばされる。

おおよそ人に殴られた時の痛みではない苦痛が腹部を中心に全身に響く。

 

「なんだ、あっけなかったな」

 

少年がそう言いながら迫ってくる。

必死に逃げようとするが、先程地面に激突した時に左腕も痛めてしまったようでまともに動けない。

彼が俺にとどめを刺そうと、大きく手を振りかざす―――

 

その時だった。少年の後方から爆発音とともに学校が崩れ、煙が立つ。

 

「…運が良かったな、次はない」

 

そう言うと、少年は姿を消した。煙からは先程現れた魔獣と、交戦中の陽菜がいた。

 

「これでトドメだぁーーー!!」

 

そう陽菜が言うと、陽菜の拳にエネルギーが集まり、魔獣の頭部に向けて放たれる。

 

「アガペリオ・ストライク!!」

 

攻撃が命中し、魔獣が活動を停止する。

まもなく、魔獣は紫の粒子となって消滅した。

 

痛みをこらえながら、足を引きずって俺は陽菜のもとへ向かう。

 

「陽菜…」

 

「優地…!って、どうしたのそれ!」

 

陽菜が指さしたのは先程斬撃を食らった左足だった。傷口は塞がっておらず、まだ血が垂れている。

 

「何、こんなのかすり傷…」

 

そんな言葉を遮るように陽菜が俺を抱きしめる。

 

「…馬鹿」

 

背中のあたりを掴む力が強まる。

ああそうか。俺自身は別にどうなったっていいと思っている。だけど陽菜は違う。

ずっと言っていた。陽菜は俺を守りたいのだと。もう既に、俺と陽菜の立場は逆転したのだと。

 

「…さっきの話の続きだ」

 

覚悟を決めて俺は言う。

 

「やっぱり、俺は陽菜が危険なことをするのは反対だ。だけど…そう言ってもお前はもう止まらないんだろ?」

 

「…うん。例え優地のお願いとはいっても、今回だけは嫌だ。」

 

「なら…最速で終わらせる。陽菜が一日でも早く戦うことがなくなるように俺は応援する。」

 

そこまで言うと、陽菜が再度抱きしめてくる。

 

「ありがとう…優地」

 

「ただし、条件がある。俺にも、その手伝いをさせてくれないか?後方支援だけでもいい。少しでも陽菜の力になりたいんだ。」

 

陽菜の力になりたい。それは事実だが、それ以上に先程の異変のことが気になっていた。魔除庁の人ならもしかしたら心当たりがあるかもしれないと思って、そう頼んだ。

そしてお願いに、陽菜は頷いた。

 

 

「あのー…私たち忘れてない?」

 

そう言えば二人の世界に入ってしまってお二人を忘れていた。

 

「確認ですが…これで正式に魔除庁による公認を受けるということでいいですか?」

 

天音さんの質問に対し、陽菜は頷く。

 

「では、皆さんで一緒に戻りましょう。おそらく、司令が待っています」

 

こうして俺たちは魔除庁の来た支部の建物へ向かうことになった。

尚、負傷してる俺は歩けないので陽菜に担いでもらった。正直すごい恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

 

とある廃ビル。その一角に一人の男がいた。顔を不思議な仮面で隠し、タブレットを片手に陽菜たちの戦闘映像を見る。

まもなく、彼の横に突如歪みが生まれる。そこから先程の少年が出てきた。

 

「おつかれ、レオ。どうだったかい、小手調べは」

 

「…まずまずといったところだ、あのレベルならまだ恐れるに足りない」

 

少年―――レオは元からいた男に戦績を報告した。

 

「やれ、この前の結構強力な魔獣を倒した人物だから注視してたが…案外期待外れだね」

 

そう言うと男は持っていたタブレットを床に叩きつけ粉々に砕く。

 

「まもなく――我々の野望は成就する」

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