星光の魔法戦士   作:あさぼん

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番外:二人の作業

陽菜と優地が赤井の元に訪れた頃―――

北支部のとある部屋では青田と緑谷が作業を行っていた。

 

「はー…やっぱり資料を書くのは嫌だなぁ…」

「青田さん、手が止まっていますよ」

 

緑谷の指摘に青田がため息を吐く。

 

「まとめるのって結構面倒くさいんですよ?」

「いえ、私はそういうの結構得意なので…」

「いや、得意とはいっても…まだここに入って数日なのに所属している管轄の魔法戦士の可能な範囲で分かるプロフィールを書けって…流石にきつくないですか?」

 

青田は半ば投げやりに緑谷に問う。

 

「いえ、平岡さん、熊田さんに関しては過去に作成された資料があります。それをもとに作っていけば問題ないでしょう。陽菜さんに関しては、直近で司令の作った報告書を見る必要がありますが…」

「それ早く言ってくださいよ、どこにあるんですか?」

「えっと…そこの山の上です」

 

そう言って緑谷は資料の山を指さした。

 

「…はぁ、こっから探すのか」

 

青田は頭を抱えながら資料の捜索を始めた。

 

 

 

 

「やっと見つかった…」

 

30分ほどして、ようやっと3人全員の資料を見つける。

 

「それでは、早速作業に取り掛かりましょう」

「えっ、ちょっと…休ませてくださいよ…」

 

そんな青田の言葉を無視して緑谷は作業を再開する。

青田も少し息をついてから作業を再開した。

 

「まずは…徳姫さんからですね。」

 

『平岡 徳姫  年齢:17歳 誕生日8月12日 リンク星は海王星』

 

「なるほど、だから水を操るのか」

「海王星のリンク星の持ち主は他の地域にもいますが、彼女が最も強いらしいですね。」

 

感心する青田を横目に、緑谷は黙々と資料を書き上げる。

 

『特技はなし。というかなんでもできる。どれも()()完璧にできる。』

 

資料を見て青田は驚いた。徳姫は英検から数検、漢検の1級は勿論、司法書士や気象予報士の資格まで持っていた。

 

「どんだけ資格持ってるんだ…?」

 

並んでいる資格の列を見て青田は思わずめまいを覚える。一方の緑谷は資料を青田の手から引っこ抜き、資格一覧の資料を見る。

 

「持ってない資格もありますね…装蹄師のようなマイナーな資格は無いようです」

 

青田は困惑しながら緑谷の方を向く。そんな資格知らないと言いたい顔だ。

 

『趣味は動物鑑賞。どんな動物とも触れ合えるし手懐けられる』

 

そういえばこの前の亀魔獣の時も動物好きな発言をしていたような気がする…

 

「おや、これは…」

 

緑谷はそう言うと開いたページを凝視する。青田も便乗してそのページを覗き込む。

 

『今後の課題について:自己肯定感が低い。ご家庭の事情で完璧を求めているが、素の実力が高すぎるので高止まりしており、伸び悩んでいることを気にしている模様。』

 

ご家庭の事情ってどういうことだろう…そんな事を考えていると、緑谷が思い出したように言う。

 

「平岡という名前…聞き覚えがあると思いましたが思い出しました。『平岡ホテル』という会社があったはずです。」

 

平岡ホテル。確か日本全国でリゾートホテルなどを運営している企業だ。たしか最近、海外進出したなどでニュースで見た記憶がある。

 

「そんなお偉いところのお嬢様だったなんて…」

 

そんな事を話していると緑谷は徳姫の資料を書き終える。

 

「次は熊田さんの資料を書きましょう」

 

そう言うと、緑谷は休むこともなく天音の資料を開く。

 

 

『熊田 天音 年齢:17歳 誕生日5月9日 リンク星はキロン』

 

「キロン…?どこですか、それ…」

「キロンは土星と天王星の間を約50年かけて一周する彗星・小惑星遷移天体です」

 

青田の疑問に対し、緑谷がすぐに答える。

 

「そうなんですね…ってか、緑谷さんってすごいですね、どんなことでも知ってるじゃないですか」

「いえ、この前も言いましたが、記憶力がちょっといいだけなので…」

 

「ちょっと」だけ…?にしては色々知っているような…

青田がそう考えていると、緑谷は作業を再開する。

 

『能力は炎による回復。当初は出力調整のミスで逆にダメージを与えることもあったが、現在はそれをうまく制御することに成功している。かつては浦和の方に住んでおり、そちらの支部の管轄だったが、昨年の9月頃にこちらに引っ越すとともに北支部の管轄となった。』

 

「天音さん引っ越ししたことあったんですか…友達とかと別れるの寂しかっただろうな…」

 

青田自身も魔除庁に入るに当たって東北から一度上京していたので、知り合いと会えなくなる悲しみはわかっている。

 

『彼女のいいところは人の心に寄り添えることであり、かくいう私も人生相談を受けたことがある。本人曰く、悩んでいる人のことを捨てておけないとのことであり、()()()()で落ち込んでいた司令にも寄り添っている。今後も職員に寄り添ってくれることを願っている。』

 

ある事件とは?青田はそのことが気になるが、緑谷はそんなこと気にせずに資料をしまった。

 

「次は桜庭さんですね。こちらは昨日司令が送った資料を見ましょう」

 

そう言うと緑谷は横においてあった資料を開く。

 

『報告書 新たな魔法戦士について この度、北支部に新たに誕生した魔法戦士が加わりましたので、現状分かる範囲での報告を行わせていただきます。』

『桜庭 陽菜 年齢:16歳 誕生日7月7日 リンク星は金星 能力は愛の力による自身の強化』

『昨日鶴ヶ島市のワカバウォークにて発生した魔獣災害にて覚醒。初変身にも関わらず北支部所属の平岡 徳姫、熊田 天音の苦戦したネームド級魔獣を討伐。以降も着実に実力を付けており、加入からわずか1週間程度で二人に並ぶレベルの力をつけています』

 

「へぇ…陽菜さんすごいですね。まだ僕達と一緒で成りたてなのに…」

「陽菜さんは文字通り期待の新星ということですね。」

「にしても、能力が愛の力による自身の強化って…本当に優地くんが好きなんですね」

「ですね…でもこれ…同時に()()にもなりませんか?」

 

緑谷の指摘に青田が問う。

 

「弱点って…どうしてですか?」

「自身の精神状態によって能力の変わる魔法戦士って、ある程度いるんですよ。でも、その人達の弱点って実は共通していて…精神状態が悪化すると能力が弱まったり、人によっては変身することが不可能になる人までいるんです」

「待ってください、それじゃあ…」

「はい、優地くんに万が一のことがあると、もしかしたら立ち直れなくなってしまう可能性があるかもしれません」

 

青田は考えた。優地くんといえば、陽菜さんのために生身で動く子だ。相思相愛と考えればいいが、戦場まで着いてくるとなると話が変わる。仮にも魔獣は災害である。万が一巻き込まれたらどうなるか…想像に固くない。

 

「…今度優地くんに一回注意しときますか」

 

そんな事を青田が話していると、緑谷は作業を終わらせる。

 

「資料の制作、完了です」

「えっ、いつの間に」

 

緑谷は青田が気づいた頃には作業を終わらせており、青田が困惑する。

 

「それでは、司令に資料を見せに行きましょうか」

「緑谷さん!ありがとうございます!」

 

青田が頭を下げると緑谷は困惑する。

 

「えっ…青田さん、私に悪い事しましたっけ?」

 

そう言われて青田は困惑する。

 

「えっ…いや、確かに任せっきりは悪いことかもしれませんが…それよりも作業をやってくれてありがとうって意味の礼ですよ」

「…あっ、そういうことですか!すみません、勘違いしてました。」

 

そう言うと緑谷は少し恥ずかしそうにその場をあとにする。

 

完璧な人…そう思っていたが、案外抜けているところもあるんだな、と青田は感じた。

 

 

 

 

新宿。防衛省から数百メートルほど離れた場所。そこに、とても高い建物があった。魔除庁本部であり、同時に『天国コーポレーション』の本拠地とも呼べる建物である。

 

その最上階、広大な一室に一人の男が佇む。直ぐ側には、身長の高い女性が立っている。その男は送られてきた魔法戦士の資料を見て言う。

 

「明日奈くん。この資料を見てどう思うかい?」

「お父様。申し上げにくいですが…最近の魔法戦士は質が落ちているかと」

「ふむ…そうかい。だが、面白い子もいるようだよ?」

 

男はそう言うと、陽菜の資料を開く。

 

「明日奈くん。この長きに続く戦い…私の勝利で終わるだろう」

 

窓の外を見て、魔除庁最高司令―――天国《あまぐに》 明王《みょうおう》は高らかに告げるのだった。

 

 

 

一方その頃。魔除庁の職員たちが作業を行う部屋。様々な職員が行き交う中、一人の中年の男が一つのデスクへ向かう。

 

「この資料の担当は君かな?」

「はい、そうですが…」

 

職員の男は上から威圧的に見てくる男を見て恐怖する。

 

「この部分。記憶が正しければだが…去年のデータと一緒じゃないかい?念の為、確認させてくれ」

「あっ、はい…」

 

そう言うと職員の男は自身の端末を操作し、データを確認する。

 

「あっ、去年のものをそのままコピーしていました!すみません、今すぐ修正します!」

「何、慌てなくていい。ただ、来週の会議で使いたいからそれまでに直してくれ」

 

そう言って中年の男は去っていった。

職員の男は、ボーッとしながら男の背中を見ると、隣の席の男が声をかける。

 

「お前、ラッキーだな。あの人に話してもらえるなんて」

「あの人って…有名な人?」

「有名も何も、うちのNo.2、増田(ますだ) (おぼろ)さんだよ」

 

 

 

資料の修正を行った朧は、エレベーターに乗って上の階へ上がる。

隣には白い髭を生やした老人が立っている。

 

「…で、例の者を見てきた感じはどうだったか、霞ヶ関くん」

「期待以上、と言っていいでしょう。結論から言うなら、桜庭 陽菜の力は異常の域です」

「…そうか」

「朧さん。これからはどうされますか?」

「桜庭 陽菜の監視はこれまで通り続けてくれ。後日、直接会いに行くとする」

「御意にございます」

 

(桜庭 陽菜…彼女の力は、どれほどのものなのだろうか…)

朧はそう感じながら、自身のオフィスへ戻っていった。

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