多くの人が駅前を行き交う大宮の午後。
少し早く家へ帰ろうとするサラリーマンや学校終わりの学生が遊歩道を歩いている。
その中にいる二人の学生。その正体は魔法戦士である。
「この前の魔獣ヤバかったねー」
「めっちゃデカいくせに広場をぴょんぴょん跳ね回るんだから、攻撃当てられないのマジでヤバかったって」
二人はそんな話をしながらクレープを片手に話し合う。
「ま、うちら二人を含めた県内最強級の大宮支部の最強メンバーにかかればチョチョイのちょいなんだけどね!」
「たしかに、あたしらですら下の方なんだから。私たちよりもっと強い人達がいるうちは大宮は安泰…」
その時だった。突然、辺り一帯が暗くなる。
「うわ、もしかしてゲリラ豪雨ってや…つ…」
上を見た一人はそれを見て言葉を失ってしまった。
何しろ、上にいたのはとてつもなく巨大ななにかだったのだから。
「は…?」
もう一人が動揺していると、巨大な何かはそのまま駅へと突っ込む。
周囲の賑わいがなくなる。
そして巨大な何かは駅に停まっていた新幹線を持ち上げると―――近くのビルへ思いっきり投げ飛ばした。
新幹線はビルに衝突するとともに大爆発した。
まもなく、遊歩道にいたサラリーマンも、学生も、悲鳴を上げながら一直線に逃げ始める。
「あれって…魔獣…?」
「わかんない…でも戦わないと!」
そう言って二人は持っていたバッグを投げ捨てて、巨大な何かと対面する。
「「
そう言うと二人の姿はたちまち光りに包まれて変身するのだった。
それから一時間ほど。陽菜、徳姫、天音の三人は赤井からの緊急招集で北支部に来ていた。
司令室には四人の他、青田、緑谷もいる。
「で、どうしたんですか?緊急招集なんてかれこれ半年はなかったと思うんですけど」
早速、徳姫が赤井に問う。
「単刀直入に言おう。一時間ほど前、大宮にてネームド級の魔獣が現れた」
「ネームド級…この前のヘビ魔獣以来ですね。陽菜さんとあった時の魔獣は、レベル3の準災害レベルでしたよね…今回もそれぐらいでしょうか?」
天音は複雑そうな顔をしつつ、赤井に問う。
「今回現れたのはレベル4…災害級だ」
その言葉を聞いて、陽菜以外の四人は唖然とする。
「え、レベルって…」
「ネームド級魔獣の危険度の目安となる数値です。下から1,最大値で5となっています」
陽菜の問いに対し、緑谷が答える。
「…ってことは、私が戦ったあれより強いんですか?」
「…ああ」
状況に気づいた陽菜は戸惑う。
「あれより強い魔獣が…!?」
「…既に大宮支部にも被害が出ているようで、近隣の支部に緊急支援要請が出されています。一般人への被害も確認されており、状況は一刻を争う状態です」
青田が状況を素早く報告する。深刻な状況に、三人も身を引き締める。
「…必ず生きて帰ってきてくれ」
赤井がそう言うと、三人は頷いて司令室をあとにした。
三人が出た直後、赤井の電話がなる。
「もしもし…」
『久しいな』
電話からは男性の声が聞こえる。
「…黄坂」
『俺は今、私情で本部に来ている。戻るまでの間、お前に大宮支部の指揮権を全て預ける』
「…なぜだ」
『本部の指示だ、一時間あればそっちに着く。それまででいい』
そう言われると通話は切れた。
指揮権を託された赤井の手が震えていたことを、青田と緑谷は気づいていなかった。
魔法戦士になって現場へ向かっていた陽菜たちは、20分ほどで大宮駅付近まで来ていた。
「ひどい…」
現場の惨状はひどいものだった。駅の最上階は魔獣の攻撃で跡形もなく無くなっており、壊れかけの駅の中では大勢のけが人が手当てを受けている。
付近の建物も原型をとどめておらず、目の前のビルには大きな穴が空いてしまっている。
「…魔獣は既に、ここからは動いているようですね」
天音が見た方から、絶え間ない戦いの音が聞こえる。
『魔獣は駅から北東に2kmほど動いたようです。現在、数名の魔法戦士が交戦しています』
「私はここにいるけが人を一通り見てから向かいます。すぐに向かうので、お二人は先に行ってください」
「「了解!」」
天音の指示のもと、二人が魔獣のもとへ向かう。
二人が去ると、天音が付近にあった石を壁に投げる。
「…いるんですよね、優地さん」
「…なんでわかるんですか」
壁の影から優地が現れる。
「どうしてここへ?」
「バ先で配達してたら巻き込まれたんですよ。そしたら巻き添えくらって…」
優地が頭をかきながら言う。
「そういう理由でしたか。…それはそうと、なぜ逃げないのですか?」
「それは…」
「『陽菜さんを手助けしたい』とは言いませんよね?」
優地が言おうとするのを遮って天音が言う。
黙り込む優地を見て、天音は呆れながら言う。
「この前も言ったでしょう。今のあなたは無力なんです。」
「それはそうですけど…!」
「あなたは魔獣に対して何もできない。それどころか、足手まといなんです。陽菜さんのことを思うなら、せめて安全な場所にいてください。それがあなたのためであり、陽菜さんのためにもなるんです」
「でも…!」
「じゃあ優地さんにはなにかできるのですか?」
天音の問いに、優地は答えられない。
「優地さんのお気持はわかります。でも今は、安全なところへ今すぐ行ってください。」
そう言って天音は怪我人の確認にまわった。
優地は立ち尽くしながら自分の無力さに悔し涙を流すのだった。
一方、陽菜たちは魔獣のもとへ向かっていた。
薄っすらと魔獣の姿が見える。
「司令、魔獣の姿を視認しました!」
『二人とも、魔獣に接近し、順次攻撃を仕掛けてくれ』
そう言われると、二人は魔獣に接近し、攻撃を構える。
土煙で魔獣の詳細な姿は見えないが、魔獣の影に向かって二人は攻撃を繰り出す。
「ハードヴァッサー!」
「プラグマ・ルーチ!」
二人の攻撃は魔獣に命中する。しかし、攻撃は全く聞いていないようだ。
魔獣は二人に向けて何かを投げつける。
二人はとっさに避けようとするが、投げられた何かを見て動きを止める。
「あれって…人!?」
陽菜は驚き、大きな声を出す。投げられた人は、勢いが落ちないまま、二人の方へ飛んでくる。
「ハイドロ・ストリーム!」
徳姫は咄嗟の判断で大量の水を広げ、飛んできた人の勢いを抑える。
「陽菜ちゃん!」
「はい!」
徳姫の合図とともに、陽菜がフィリア・シールドを貼る。
陽菜のフィリア・シールドによって人は動きを止める。
「…良かった、息はしてる」
徳姫が飛んできた人の息を確認する。意識はなかったが、幸い呼吸は止まっていなかった。
「良かった…!」
安堵する陽菜。しかし―――
「よく受け止めた…と思ったら、お前たちだったのか」
どこから聞こえた声なのか。二人はあたりを見回す。
「おいおい、目の前にいるだろ?」
すると、目の前を覆っていた土煙が晴れる。
まさかと思い、二人は魔獣の方を向く。
土煙から、やがて、近くにあったビルと同じくらいの大きさの魔獣が姿を表す。
人のような二つの足に四つの腕に鋭い爪、翼、そして首から生える三つの首と―――
「まさか…レオ!?」
「ああ…これが俺の、最強の姿だ…!」
巨大な魔獣―――レオはその姿を表し、二人の前に立ちはだかるのだった。