優地に支えられた陽菜はレオに向けてプラグマ・ルーチで攻撃し続ける。
先程までゼロに近かった魔力が、優地が来た直後から急速に回復した上、先程から攻撃を繰り出しても魔力が殆ど減っていない―――正確にはすぐにもとに戻っている。
ふと、自分の
そして今、すぐそばに優地がいるおかげなのだろうか。なんとなくだが、いつもより強い攻撃を放てている気がした。
無論、レオが倒れる気配はまだない。しかし、レオも回復した体力を使い果たした上、能力を使いこなせていない優地が結果として不規則な動きをしている。その結果、図体のでかいレオではうまく攻撃を当てることができず、先程よりも速いスピードで体力を消費できている。
「どうだ陽菜、まだいけそうか?」
「全然問題ないよ、優地!」
声をかけられた陽菜は、つい力んでプラグマ・ルーチをとてつもない速度で放つ。
声をかけられるのがうれしい。一緒にいられるのが嬉しい。そんな想いが、時間が経てば経つほどどんどん高まっていく。
その結果、時々技の調整をミスってとてつもない威力ではなってしまう。無論、レオには効果バツグンだが、反面優地の体勢は崩れるので既に1回壁に激突しかけている。
「なに戦場でイチャイチャしてるんだよ…!!!!」
レオは思わず突っ込むが、陽菜と優地は完全に二人の世界に入っている。
最早、戦っている相手すら眼前にギリギリいる程度だ。
「舐めんじゃ…ねえぞ!」
そう言うとレオは斬撃を今までの倍以上の数放つ。
しかし、放たれた攻撃は 優地の力で止まり、離散してしまう。
―――負ける?この俺が?また?
レオは困惑していた。今まで多くの人間と戦った。魔法戦士もたくさんいた。
レオは全員に勝っていた。葬った者も多くいた。
なのにあの日、あの男は俺に勝った。メイオウの介入の結果、引き分けに放ったが…あのときはただ油断しただけだと思った。
なのに今、自分は負けそうになっている。
体力はもう限界だ。
咆哮はしばらく使えない。
このままでは―――負けてしまう。
―――負けてはならない。負けてしまったら、今まで苦しんできた生物の苦しみの跡すら残せない。これから生きていく多くの生物が人類によって苦しめられるに違いない。
「…負けるわけには、いかねぇんだよ!」
そう言うと、レオはレーザーを自身の周りにありったけ放つ。
光が、近くの建物をすべて破壊していく。
攻撃を終えた時、周辺の建物は全て完全に倒壊していた。
あたりを見回すとあの二人の姿はない。
やったか―――そう思ったその時だった。
「はぁぁぁぁ!!!!」
上空から大きな声が聞こえる。まさかと思い見上げると、空には自分に向かって急接近してくる陽菜と優地がいた。
遡るほど数分前。レオの周りを飛び回っている二人は、あることを話していた。
「そういえば、優地って咆哮を受けても体が動かなくならなかったの?」
ふと脳裏に浮かんだ疑問を陽菜が問いかける。
「そういや…確かになんで俺には効いてないんだ?」
あのレベルの爆音だ。聞いてないわけがないが、ならば何故少しほどしか離れてない優地には聞いてなかったのか?
そう思った途端、陽菜の壊れかけていた端末から突如音が鳴り始める。
はじめはノイズのような音だったが、やがて聞こえ始める。
『…さーん、聞こ…すか…陽菜さん、聞こえてますか?』
「青田さん!?」
先程の攻撃で壊れたと思っていたが、まさかまだ動くとは…。
『状況は?』
青田の声に続き、知らない誰かの声が聞こえる。
「えっと…誰ですか?」
知らない声に陽菜は困惑する。本来聞こえるのは赤井のはずだが、どうしてなのか。
『事情はあとだ。状況はどうなっている?』
『北支部から大宮の状況が先程から途切れていて、確認ができないんです。この端末は奇跡的に復旧したみたいなのですが…陽菜さん、今どうなっているんですか?』
そこで私は無線の先の誰かに状況を伝えた。
レオの咆哮で追い詰められたこと、優地が謎の力を手に入れたこと、今は二人でレオと戦っていること。
『成る程…』
謎の声は少し考えたあとに陽菜にあることを問いただした。
『咆哮は不可避なのか?』
「それが…音の聞こえ方はほとんど変わっていないのに少し離れたところにいた優地には効いてなくて…建物の後ろにいたおかげで、少しだけ低く聞こえたみたいですが…」
『多少の差は余り関係なさそうだが…なにか条件や我々が気づいていない何かがあるのだろうか』
『…もしかしてなのですが』
二人の会話に緑谷が割り込む。
『他の二つの頭がなにか特殊な攻撃をしている可能性はないでしょうか?』
『…可能性としてはあるだろう』
「でも…他の口は全く動いていませんでした」
レオの咆哮は中央の頭だけである。他の二つは口こそ開けていたが…
『…もしかして、見えない攻撃とかですかね?実は見えない部分があって、それを使って皆さんに毒で攻撃してたとか…』
『青田さん、流石にそれは…』
青田の発言に、陽菜がツッコむ。
可能性としてはあるだろうが、それなら最初から使うはずだ。例え、私たちが着いた時に何らかの理由で使えないとしても、最初から戦っていた大宮支部の魔法戦士たちが咆哮のことを何も言っていない以上、おそらくあのタイミングで使ったのが初めてのはずだ。
『…わかったかもしれません』
端末から、緑谷の声が聞こえる。
『レオが放った咆哮のタネが…多分ですけど』
『え!?わかったんですか、緑谷さん!?』
『はい…確証はありませんが…おそらく、咆哮は二段攻撃なんだと思います。一段目は耳で聞こえる大きな咆哮。もう一つは…耳では聞こえない、
超音波―――人には聞こえないレベルの周波数を持つ音波だ。確か、エコー検査などで使われていたはずである。
『予想ではありますが、超音波こそが皆さんが動けなくなった原因だと思います。咆哮で相手に恐怖心を与え、超音波で体の動きに障害をもたらす…という感じかと』
『それなら合点はいくな。実際、音に関する力を持った魔法戦士もいることから、超音波に魔力を合わせてそのような効果をもたらすのは可能だろう』
『でも…それならなんで陽菜さんたちは今無事なんですか?聞こえないレベルの音なら常に放っていてもおかしくないはずでは…』
たしかにそのとおりである。
仮に咆哮が恐怖心を与えるだけなら、超音波による行動妨害だけを使ったほうが良いはずである。
それなのに、どうして今の私たちには何も起きていないのか。
『
無線から突如聞こえた声に私たちは驚く。なぜならその声は―――
「メイオウ…なぜあなたが…!」
メイオウ、その人だからであった。