通信期から、突如聞こえたメイオウの声に、一同は戸惑う。
『あ、ジャックさせていただいてますよ。それよりです。レオはまだ生まれたてなんです』
「生まれたてって…」
青田がメイオウに問う。
『彼が産まれたのは二年ほど前、いろんな生物の意思の集合体ではありますが、その実は生まれたての赤子も同然です。実際、彼はあの力を使いこなせてませんし、体力配分は下手くそですし』
「あれで使えてないのか…」
優地が驚くのも無理はない。あれほどの脅威ですらまだ赤子レベルだと。
あと数年経っていたらどれほどの脅威だったのかは想像に固くない。
『…何故敵であるお前が協力する』
『彼にはまだ利用価値があるんです。今回のことで彼も少しは反省するでしょう。彼にはもう少し手伝ってほしいことがあるのでね』
メイオウの企みはわからない。しかし、今この助言にだけは感謝せざるを得なかった。
『最後に。今のレオの体力では咆哮は放てませんし、レーザーも
そう言うと、メイオウは意味深に笑いながら通信を切った。
同時に、レオの口が光り始める。
「よくわかんないやつだったが…今回ばかりは感謝するしかないな」
「うん…」
正直、癪ではあったが同時にこの上ない助け舟であったのも確実だ。
「優地…一つ作戦があるの」
そう言うと、陽菜は地面にフィリア・シールドを展開する。
「なるほど、空までは流石に攻撃してこないな!」
そう言うと、優地はフィリア・シールドに向けて反発の力を放つ。先程まで飛んでいたのと同じ要領で、どんどん天に登っていく。
そして―――
「はぁぁぁぁ!!!!」
天空から陽菜と優地が、今度は陽菜が優地を背負い、勢いをつけてレオに急接近していく。
その勢いは凄まじく、気づけばもうすぐそこにまで近づいてきている。
レオはとっさにありったけの斬撃を放つが、優地の力で逆にレオに返ってくる。
レオは自分の斬撃を退けつつ、全魔力を右拳に集中させ、そして陽菜に向けて放つ。
「アガペリオ……ストライク!!!!!!」
負けじと陽菜もありったけの力を込めた渾身の一撃を放つ。
力は拮抗していた。両者ともに、拳を合わせてから一ミリも動かない。
「舐めんな…クズどもが !」
そう言うと、レオの力が一回り強くなり、陽菜たちが押され始める。
「なんの…!」
優地がそう言うと、レオの拳にとてつもない重さが加わる。
レオの拳を押し返すのではなく、自分自身をレオの拳へ引き寄せているのである。
「土壇場の応用だが…これでも駄目なのかよ!」
気づけば既に五分ほど経過していた。両者は互いに一歩も引かないまま、攻撃を続ける。
レオは以前力を保っている。しかし―――陽菜には限界が近づいていた。
人である以上、体力には限度がある。
魔力は無限に湧いてきても、それを使う体が既に限界を迎えていた。
間もなく、陽菜の体が再び浮かび始める。レオに押され始めたのだ。
それは徐々に、どんどん広がっていく。
「はは…長引かせやがって」
レオの力が一層強まる。
なんとか抑えていた陽菜も、どんどんレオから遠のく。
「これで…終いだ!」
レオがトドメの一撃を放つ直前。
レオの胴体に強烈な
攻撃が来た方向に振り向くとそこには、ボロボロの徳姫と天音がいた。
「トドメは…お預けだよ!」
「クソっ…死にぞこないが!」
攻撃を妨害されたレオは反射的にもう片方の手で二人に斬撃を放つ。
「かかりましたね…!」
攻撃が当たる直前、天音が言う。
直後、レオの攻撃が二人に命中し、二人は勢いよくふっ飛ばされる。
一瞬。ほんの一瞬。レオは拳に注いでいたエネルギーを斬撃に割いてしまった。
その隙を、二人は見逃さなかった。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」
二人はレオに向けて全力で迫る。間一髪のところで受け止めたレオだが、先程の攻撃のせいで受け切るだけの魔力がない。
レオの拳から―――魔力が消滅する。
「これで…」
「最後!」
陽菜と優地。二人が残りの力をすべて使い、絆の一撃を繰り出す。
「「アガペリオ・ストライク!」」
その一撃は、レオの強靭な体を貫いた。
そして―――
「ありえない…俺が…負けるはずが…!」
レオはそう言うが、間もなく体が光り始め―――
その身体もろとも大爆発を起こし、残った体は徐々に崩れ落ちて消滅するのだった。
爆発によって発生した煙を二人はじっと見る。もし生きていたら…そう考えて優地は陽菜を背負い、陽菜も攻撃の構えをする。
しかし、煙が晴れるとそこには何もなかった。二人は安心して深く息を吐いた。
レオの討伐を確認した二人は、徳姫と天音がふっ飛ばされた場所へ向かった。
二人はレオの攻撃をくらってかなり離れたところまでふっ飛ばされたが、幸い命に別状はなかった。
「二人とも無事だったんですね…!」
レオの攻撃のあと、ピクリとも動かなかった上、レオのレーザーが二人のいた建物を破壊してしまっていたことから、安否がわからなくなっていた二人だが、優地が覚醒した直後に目を覚ましたようだった。
「大変だったよ、天音ちゃんが回復してなければ今頃建物ごとおさらばだったよ…」
「ギリギリ動ける程度しか回復できませんでしたが、それでも陽菜さんのサポートができて幸いでした」
天音はそう言うと陽菜の足に癒炎を使う。すると、足の激痛は引き、優地が陽菜をゆっくり下ろすと陽菜は問題なく立てるようになった。
「ありがとうございます、天音さん!」
「こちらこそ…陽菜さんと優地さんがいなければ、今頃生きてすらいないでしょうし」
そう言うと二人が優地の方を向く。
「そういえばあの力って
「言われてみればそうかも…
優地はそう言うが、特に何も起きない。
「なんでだぁ…」
「不思議ですね…変身できないのに固有能力のような力を使えるなんて…」
四人が話していると、後ろから数名の足音が聞こえる。
振り返ると、何名かの魔法戦士がいた。
おそらく、支援に来る予定だった本部の魔法戦士だろう。
「…あの魔獣にトドメを刺したのはあなたですか?」
先頭に立っている金髪ロングの魔法戦士が私に聞いてくる。
「トドメはそうですが…でも、徳姫さんと天音さん、そして優地がいなければ倒すことはできませんでした」
「…どうでもいい話ですが、まあいいでしょう。間もなく、本部の医療部隊が到着します。それまでしばらく待っていてください」
そう言うと彼女は他の魔法戦士を率いてその場をあとにした。
「…感じ悪くないですか?」
優地が去っていく魔法戦士を睨みながら言う。
「まあ確かにそうだけど…実力は本当だよ」
「あんな感じ悪い奴がですか?」
「うん…だってあの人は…最強の魔法戦士、
優地は唖然とする。まさかあんなドライな人が最強だと思っていなかったからだ。
「マジかよ…あんな感じ悪い人がトップとか、本当に大丈夫なのかよ、なあ陽菜…」
その時だった。優地の横にいた陽菜が力を失い―――そして倒れた。
「おい、陽菜…大丈夫か!?」
優地が陽菜を揺さぶり呼びかける。徳姫と天音も陽菜の様子を見る。
「…すぅ」
「寝てるだけか…驚かせやがって」
陽菜は眠っていた。優地の肩を枕に、ぐっすりと。
それを見た徳姫と天音はくすくす笑うのだった。