星光の魔法戦士   作:あさぼん

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デュエット

「お待ちなさい!」

 

突然後ろから聞こえた大きな声に振り向く一同。

そこにいたのは真音とメイオウだった。

 

「真音さん…!」

「翔子!あんた…どうしてそんな奴らのことなんか聞いてるのよ!」

 

真音の顔は真っ赤に染まり、額からは滝のような汗が流れていた。

 

「私…やっと思い出したんです。自分が本当に願ってたことを…本当にしたかったことを!」

 

すると翔子は真音に向けて頭を下げる。

 

「力を手に入れた私は真っ先に真音さんを頼りました。あの日から私のことをずっと支えてくれてありがとうございます…だけど、もう過去をずっと引きずるわけにはいかないんです」

「ふざけるんじゃないわよ!」

 

すると真音は先程よりも大きい声で怒鳴る。

 

「そんなこと…そんなこと認めない…認めちゃならないわ!」

「そうですよ、真音さん」

 

するとメイオウが真音に石(・)のようなものを渡す。

 

「彼女はあの愚者どもにたぶらかされているんです…きっと助けられるのは彼女を最も理解しているあなただけですよ!」

「ええ、そうね…!」

 

真音の様子がおかしい。異常な発汗だけでなく、目の焦点も定まらない。

 

「翔子…安心しなさい…私が…助けてあげるからぁ…!」

 

真音はメイオウが渡した石を、粉々に砕く。

すると、砕け散った石片から、瘴気のようなものが漂い始め、真音の体を包み込む。

 

「陽菜…!」

 

優地が横から小さな声で陽菜に声をかける。

 

「多分あれ、前俺がメイオウにやられた召喚(サモン)とかいうやつだ」

 

召喚―――メイオウはそれを人から魔獣を生み出す力だと言っていた。優地がされた際はどういうわけか失敗に終わったそれが、今目の前で再び行われようとしていた。

 

「あれから色々と調整してね…なんとかア(・)レ(・)の中に力を組み込むことに成功したんだ。お試しで使ってもらったけど、使用者が意識を失っちゃうこと以外は問題はないみたいだね」

 

メイオウはクスクスと笑っている。

まもなく、真音から発生した瘴気は段々と形をなしていく。

顔から胴体、肩、脚部に至るまで、その全身がスピーカーで構成された異形の巨人だった。

 

「今までの魔獣と違う…!?」

「ああ、今までの連中はレオがやってたからね…それよりも、出来は十二分のようだ」

 

魔獣は完全に形を成した。

 

『グゥォォォン!!!』

 

魔獣は体中のスピーカーから爆音を発する。

あまりの音圧にホールの天井にミシミシとヒビが入る。

魔獣はまもなく、大ジャンプをして天井を突き破り外に出ていく。

 

「まずい…追いかけないと!」

「待ってください!」

 

陽菜が飛び出そうとすると、後ろから翔子が止める。

 

「私にも手伝わせてください!」

「翔子さん…」

「これで完全に恩を返せるとは思っていませんが…少しでも力を貸したいんです!それに…」

 

翔子はすぐ側で意識を失っている真音に視線を向ける。

意識を失った真音を優地たちが介抱しているが、目を覚ます気配はない。

 

「あの魔獣を倒さないと真音さんはもとに戻らないと思います…私、真音さんにも言いたいことがあるんです」

「…わかりました、一緒に行きましょう!」

 

陽菜がそう言うと同時に、二人は大きな穴の空いた天井から魔獣を追い始めた。

 

 

『グォォォン!!』

 

魔獣は陽菜たちのいたホールからそう遠くに離れていない大通りに居座っていた。

魔獣は手当たり次第に音波を放ち周囲の建物を破壊している。

 

「うーん…彼女が人々をホールに動かしちゃったせいで人が全くいないなぁ…」

 

メイオウは残念そうにしながら魔獣を観察している。

そこに、陽菜、翔子の二人がやってくる。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

先陣を切った陽菜が、魔獣に渾身の蹴りを放つ。

魔獣は一瞬体制を崩すが、倒れる気配はまったくない。

 

「プラグマ・ルーチ!」

 

陽菜はすかさず連撃を放つが、魔獣の体には傷一つついていない。

 

「硬いっ…!」

「陽菜さん!」

 

後ろから翔子の声が聞こえる。

それを合図に陽菜が後ろに下がるとすかさず翔子が攻撃を放つ。

 

『止まって!』

 

魔獣は一瞬動きを止めるが、まもなく再び動き出し二人に向けて攻撃を放つ。

 

「無駄だよ、魔獣に目立った意思はないからね。あるのは意味もなく破壊しようとする本能だけさ」

 

メイオウが魔獣の頭部をつつくが魔獣は特に反応を示さない。

魔獣は再び大きな爆音を上げる。

魔獣は陽菜に向かって剛腕を振りおろしてくる。

 

陽菜もすかさず避けるが、魔獣はすかさず陽菜が避けた方向へ腕をそのまま動かす。

障害物すら意に介さず、剛腕は陽菜に迫る。

 

「陽菜さん!」

 

迫る剛腕の前に翔子が立ちはだかる。

 

「陽菜さん、耳をふさいでください !」

 

陽菜はすぐに耳をふさぐ。それを確認した翔子はせまる剛腕に向けて叫び声を放つ。

翔子の叫び声が超音波となって剛腕にぶつかり、その動きを止める。

魔獣も負けじと、反対側の腕を翔子の背中に向けて振り下ろそうとするが、すかさず陽菜が受け止める。

剛腕に挟まれ、背中合わせになる二人。しかし、二人の顔には焦りではなく喜びが垣間見えていた。

 

「不思議ですね…ついさっきまで敵対していた二人なのに、こうして共闘できるなんて」

「はい…デュエットみたいで、私も心が高鳴っています…!」

 

そういうと、二人は魔獣の剛腕を一気に跳ね飛ばす。

 

『ギギギ!?』

 

二人の強烈な一撃が両腕に入り、魔獣の腕が空に舞う。

それを見たメイオウは驚きの声をあげる。

 

「おお、あの魔獣のボディを凹ませるどころか吹き飛ばすとは」

 

メイオウは魔獣の方をじっと見る。

 

「意思はない…と言ったけど、これは改良の余地があるかもね」

 

先程までの優勢とは一転、魔獣は陽菜と翔子の絶え間ない攻撃に追い詰められていた。

全く傷がつかなかった鋼鉄の体がドンドン凹んでいく。

そして、再び二人の強烈な一撃が魔獣の胴体に命中し、胴体に大きな凹みができる。

 

「陽菜さん!そろそろフィナーレとしましょう!」

「はい!」

 

翔子はそう言うと、手を空にかざす。

すると、光り輝くマイクが翔子の目の前に現れた。

翔子はマイクを手に取ると、歌い始めた。

 

歌によって周囲の魔力が音符のように集まり始め、やがて一つの楽譜が出来上がる。

 

「陽菜さん!」

 

翔子がそう言うと、楽譜が大きな魔力の形となって陽菜の周囲を漂い、吸収される。

 

「力が…すごく湧いてきます!」

「ラストは任せましたよ!」

「はい!」

 

陽菜はそう言うと、勢いよく走り出して飛び上がり―――そして急降下する!

 

「アガペリオ・ストライク―――デュオ!」

 

翔子から受け取ったありったけの力を込めた一撃が魔獣に命中する。

両腕を失った魔獣は抵抗することなく攻撃を喰らう。

 

 

攻撃は魔獣の頭部に命中した。

一瞬固まった魔獣だが、まもなくまばゆい光を放ち―――そして爆散した。

 

魔獣が消え去ったのを見て、翔子は陽菜の方へ歩み寄った。

そして二人は―――ハイタッチをするのだった。

 

 

 

 

魔獣が倒された後、陽菜と翔子は再びホールへ戻った。

ホールに倒れていた大勢の人は殆どがいなくなっていた。

優地曰く、パニックになりそうだったのでひとまず魔獣がいると言って避難させたらしい。

徳姫や天音も目を覚ましたらしく、壊れかけたホールの椅子に腰掛けていた。

 

「ごめんね陽菜ちゃん、力になれなくて…」

「いえ、二人があの時正気じゃなかったら私もここまでこれませんでしたから」

 

徳姫と陽菜が会話するのを天音が微笑みながら見ている。

すると―――

 

「お、目を覚ましたぞ!」

 

優地がそう言うと、意識を失っていた真音が目を覚ました。

 

「うぅ…ここは?」

「真音さん!」

 

目を覚ました真音を翔子が抱きしめる。

 

「良かったです…無事で!」

「…翔子、元に戻ったのね」

 

真音はどこか安心したような、申し訳ないような顔をしながら立ち上がった。

 

「…私、ずっと後悔してたのよ。あの日、あなたを庇ってやれなくて、あなたを一人にして…でも、あんたはその力を持って戻ってきた。最初あんなこと言われた時は動揺したわよ…でも、それがあなたの望むことなら断るわけにはいかなかった」

 

真音は翔子に背を向けて言った。

 

「たとえ、どんな間違いだろうと、地獄の果てまでついて行ってやろうと思った…でも、そんな弱みに付け込まれたみたいね。間違いを咎めるどころか、言い訳をして自分の間違いを正当化しようとしたの」

「そんなことはないんじゃないでしょうか?」

 

翔子と真音に対し、天音が言う。

 

「人というのは案外そういうものです。間違いだと自覚しててもそれが正しいことだと信じ、そして突き進もうとする…愚かではありますが、時には美しくさでもあると思います」

「確かに…人は間違いを経て成長していくものですからね!」

 

天音の言葉に陽菜が頷く。

すると、翔子が後ろを向く真音に手を差し伸べる。

 

「もう一度、やり直しましょう。今度は、間違えないように」

 

真音は少し決めかねていたが、まもなく翔子の手を握る。

 

「ええ…あなたが新たな一歩を踏み出すっていうのに、マネージャーがついていかないわけにもいかないからね!」

 

二人のやり取りを見て、四人も笑みを浮かべるのだった。

そこへ―――

 

「今朝ぶりですね、桜庭 陽菜」

 

声のする方を見ると、明日奈と数人の魔除庁職員がホールに来ていた。

 

「随分と遅かったじゃないですか」

 

優地が明日奈に野次を飛ばす。

 

「…県内の魔除庁は軒並みダウンしていたので、独断で行くには無理があると判断しました。本部の魔法戦士を総動員させる予定でしたが…派遣する前に片付いてしまったのは感謝しましょう」

 

すると、翔子と真音を職員が囲む。

 

「ちょっと…!」

「…本件に関しては魔術を悪用した大規模なテロ行為という結論が採決されました。したがって、お二人は今後こちらで処分を下すこととします。…いいですね?」

「…はい。」

 

翔子がそう言うと、職員が手錠のようなものをかけ、二人を連れて行く。

 

「待ってください!」

 

陽菜は去ろうとする明日奈を引き止める。

 

「二人は…二人は色んな理由があってこんなことをしたんです!だから…」

「やっていること自体はクーデターと大差ありません。それにこれは既に本部での会議で決まったこと。今後の判断は本部で行います」

 

明日奈は気にせず去ろうとするが、ふと、足を止めた。

 

「…しかし、情状酌量の余地はあるかもしれません。私の方から多少は進言してあげましょう」

 

明日奈はそう言うと、ホールをあとにした。

 

「…ありがとうございます!」

 

 

 

外に出た明日奈は、護送車に乗せられる翔子と真音を見ていた。

 

「…何故、進言するなどと言ったのでしょうか」

 

明日奈は違和感を覚えていた。

二人は大罪人―――本来なら異論なしで極刑のはずである。それなのに…何故?

 

胸の内に違和感を覚えたまま、明日奈はその場を後にした。

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